かねてより性行為は人間がケダモノに戻る瞬間であり、そこに愛がなければ悪魔の所業とも言えるのではないか?と思っていた。すなわち男性に性欲が湧いた途端に彼らは悪魔に取り憑かれるとも言える。その時は彼らを人間として捉えてはならないと私は思っている。
そんな女性側から見た恐怖をそのまま映画化したような、素晴らしく的を射たホラー映画であった。
例えば「エイリアン」シリーズは強姦・妊娠・出産で死ぬという一連のメタファーである。特に「プロメテウス」では明らかにそのようなシーンがある。「妊娠によって母体が危険だ、母親が死ぬかもしれない」といった状況をホラー化しているのがエイリアンシリーズだ。
私はオーメンシリーズにあまり興味がなくて無視していたのだがこれは結構面白かったので、他のもみようかなと思った。監督が、明らかに女性の持つ本能的な恐怖を描き出している。
他者に騙されケダモノ(悪魔)に強姦される悲劇の女性
急激な妊娠の後、麻酔もそこそこに強引に取り出される赤子
分娩室ではなぜか手枷足枷がはめられ、女性の意思は無視される
生まれてくるのは悪魔とのハーフで死産がほとんど
悪魔はケダモノ…つまり…
と見事なまでに、女性側の恐怖を描き出すことに、かなり集中しており、モザイクをかけてまで出産シーンを詳細に描いている。
しかもこの映画を最後まで見ればわかるが、悪魔の子供を継承させるために近親相姦までさせるのである。強引に。
この作品の面白いところは登場人物がほとんど女性というところだ。
彼女らが襲われるのはあくまでも「悪魔に」である。実在する男性ではない。だが、それが余計に恐怖感を煽る。人間では勝てないケダモノであるが、あくまでも「男」のメタファーなのである。男は「俺は悪魔ではない、全ての男が悪魔ではない」と言うだろう。
だが女性が常に恐れるのは、全ての男性が持つ「悪魔の一面」である。
少子化が騒がれる日本という国で、ただ「女に産ませればいい」「出産の何が怖いのか、何が嫌なのか」と言っている人に一通りこの映画を観せてみたいところだが、おそらく「自分は悪魔ではないので」とか言いそうである。そうじゃない、意図しない妊娠や出産はとても怖いものなんだよ。子供は生き残らないと出産した意味がないでしょ。だけどそれが悪魔の子供だったら?
だってこの映画このあと何作続くと思う?悪魔の子供を継承しただけで。