映画.comに投稿したものですが、ネタバレで伏せられているのでこちらに転載してみます。
ところで、オデュッセイアと比べるものでもないけれど、スピルバーグは愛の伝道師だと思いました。どうも、、ノーランのはダメだな。しっくりこないです。どうせなら愛とかかなぐり捨てればいいのに。
--------------------------
スピルバーグは50年近く前に、「未知との遭遇」を作り、それから何かと宇宙人を出したがる宇宙人大好き監督である。こないだもインタビューで「宇宙人になかなか会えない」とぼやいていたとか…。
50年経った今、この映画を作る意味、私にはよく伝わってきた。
あまりにもタイムリーなテーマであった。ニュースでは連日、戦争に突入しそうな世界状況を報道している。人々は、(これ世界どこでも同じですね)物資が足りなくなるのではないかと、ガソリンスタンドやスーパーに詰めかける。まさに今がそうだと思う。ヨーロッパでは突然警告が発せられたり、日本もじわじわと軍事に向かっているように思う。
このタイミングで「Disclosure(開示)」することに意味があるんだと思った。
この映画は、サスペンスやアクションの形をとって観客を惹きつけてはいるが、その本題は「開示する意味」にある。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「メッセージ」にも似たような、メッセージ性の強い映画なのだ。だから、SFスーパー超能力エンタメものとか思っていると、はて?テンションが低いし、意味がわからない、となってしまう。
ジェーンはクリスチャンである。ここも大きなポイントである。ジェーンがいるから、我々は「神とは何か」「信仰とは」を考えることができる。ジェーンは十字架を握りしめながら脳にダイブされることに抵抗するが、最後は十字架を落としてしまう。一時的には信仰が敗北するのだ。
これは人間の「信仰」に対する挑戦である。敵であるスキャンロンは宇宙人から奪い取った技術(デバイス)で、信仰を打ち砕こうとする。しかしスキャンロンは、以前は愛妻家で、人を尋問や洗脳するなどしたことはなかったらしい。
これは愛の物語である。スピルバーグはずっとそうだった。怖い映画も作っているが、いつも善人は救われ、悪人は酷い目に遭う、という王道の筋書きであった。今回の最大のヒントは「E.T.」にある。子供の時は単純に面白いワクワク映画だと思ってみていたが、大人になって見返したら号泣してしまった。スピルバーグは永遠の少年なのである。宇宙人から利益を得ようなど、微塵も考えていない。主人公の家に押しかけてくる科学者たちは無言で無粋で、化け物のように描かれていて、大人たちの恐ろしさが如実に描写されていた。
ディスクロージャー・デイはその最たるもので、大人の視点から描かれる「E.T.」だと思っても差し支えないだろう。大人たちは物質主義で利己的になり、「共感力」を失い、愛と信仰を忘れていく。少年は記憶を無くして大人になり、なぜか宇宙人からのメッセージを理解できることに気づく。宇宙人は、マーガレットとダニエルが子供の時に、能力を授けることにした。なぜなら、子供の方が、利己的ではないからだろう。
そして「キューバ危機の再来」とも言える戦争前夜に、その能力を突然呼び覚まし、情報開示するために奔走させる。現代の人間は「フェイクか?AIだろ」と当然疑うが、ビデオ映像の多さから画面に釘付けになる。
昨今、様々な都市伝説が本当だったという証拠が「開示」されている。エスプタインの件は、全てのファイルが開示された(らしい)。ジャニー喜多川の件もそうである。私がティーンの頃は、ジャニーズ事務所のよくない噂はあくまでも都市伝説レベルだったが、生々しい証言が出てきて、本当になってしまい、ジャニーズは実質無くなってしまった。
我々はもう、噂やゴシップをあんまり笑って流している場合ではないのかもしれない。
ところで減点理由によく挙げられているのが、宇宙人のデザインが50年前から変わらないところだ。だが、これもあえてなのだろう。開示される映像はだいぶ前のものという設定だし、そのころはグレイが普通だった。スピルバーグの中では「グレイ」こそが宇宙人なのである。そもそもプロジェクトヘイルメアリーを読んでも思うのだが、酸素と窒素の化合物を宇宙人が呼吸できるのだろうか?重力は?など、ツッコミどころ満載なのだが、そこは逆手に取るべきである。宇宙人は事前に自分が地球の重力に耐えうるか、空気の構成要素などを調べてからやってきたのだと考えるのが妥当だ。(ここは忖度)
あと大人向けだからというのもあるが、セリフが多いのもマイナスである。(内容的にどうしても多くはなるんだろうけど)
最後にマーガレットが伝えようとしていた、宇宙人からのメッセージは、おそらく、「戦争をしている場合ではない。あなたたちは愛する人たちを失いたいか?人間に滅亡してほしくない」などの激励と愛の言葉ではないかと推測している。ここで主人公たちや宇宙人がその力を行使して攻撃してしまうとメッセージが崩れてしまうため、あくまでも、マーガレットたちは愛の伝道師なのである。