この本を選んだのは特に大きな理由はないんですが
私は普段から、ネットの記事とかで気になった本はアマゾンの欲しいものリストにぶっこんでいます。
この本はいつリストに入れたか覚えてないんですが、たまたま図書館にありました。
前にアメリカでベストセラーになったそうで。
実は今、「アメリカンスナイパー」の原作も読んでるのですが、そっちはやや退屈というか、あまりまとまってなくて途中からだらけてしまっています。
アメリカンスナイパーはCMはいい感じだったんですが、映画の方は、「米軍を讃えよ!」とアメリカ国内の人間向けに作られた感が満載でした…特に戦場(基地じゃなくて現場)から電話して、途中で爆撃が始まって電話が切れて奥さんが泣くシーンとかひどいですね。
あそこでアメリカ人なら同情して泣くのかもしれませんが、私なんかは「戦場から電話すんなしw」って思ったし、奥さんも、彼氏がシールズだって知っていて結婚したのでそのくらいの覚悟は必要だと思うんですが、本にも奥さんの愚痴が満載ですw
まあ、それは置いといて、こちらの本は、真逆を行っていると言っても過言ではないかと思います。
最後の方に、「アメリカ人は戦争を美化しすぎ」とはっきり書いています。
そしてこの少年兵士、イシメールはアメリカンスナイパーよりはるかに若いのですが…非常に大人びていて、
「異なる考え方を知ることで悲惨な状況を防ぐことができる」
「戦争は健全な人間関係を破壊してしまう」
等、戦争の根本についてはっきりと理解しており、ただ戦ってたまたま生き延びて、運良くアメリカ人に拾われたなんていう安い話ではありません。
(ただ、アメリカンスナイパーは米軍に望んで入った普通の優秀な兵士なので、反戦感情が強いなら入隊しないと思われます)
非常に賢い少年だなと感じます。
シエラレオネの教育のレベルはちょっとわからないですが、
農業中心の村で育ったわりには、シェイクスピアの一部を暗唱できるという学力です。
村の皆に朗読をしたり、軍隊に入った後も中尉にシェイクスピアを暗唱して見せて、最終的にはお気に入りの兵士となっています。
兵士としても優秀だったみたいなので、やっぱり、全体的に能力が高い人間なのでしょう。女性にもモテるという描写もあります。
村を襲われて逃げ出したあとは、かなりの長時間さまよって、行く先々で着く村で苛められたりします(ある程度の年齢の少年は戦えるので、身元がわからない少年は全員警戒される)。
最終的に拾ってくれたのが政府軍で、これがRUF(反乱軍)側だったらもっと悲惨だったかもしれませんが、兵士が足りないので半強制的に戦う羽目になります。
ここの初陣のシーンは、「いやー、この子達には無理だろ」って思ったのですが、
イシメールはものすごい運が良い(と本人が言っている)らしく、初陣から敵を仕留めることに成功し、その後も戦い続けます。
でも、やっぱり、仲間はどんどん死んでいきます。
中にはAKが重くて持てない、AKより身長が低い子供なんかもいます。もちろんあっさり死んでしまうんですが、なんで死ぬとわかってるような子供を連れて行くんだろう…とそこは疑問に思いました。
戦いそのものの凄惨さについてはそれほど書かれていませんが、正直ひどいなと思うことはたくさんありました。政府軍だからってあんまり関係ないですね。
まず戦う動機を子供に教えるときは、「自分の家族を殺した人間に復讐しろ」と教えます。実はこれが一番まずい考え方で、復讐をしているとどんどん連鎖して行って止まらなくなってしまいますよね。でも子供に戦う動機を与えるためにはこれしかありません。お国のためになんて言っても理解はできないでしょう。
それから戦いの前に錠剤を飲まされますが、確実に覚せい剤か、それに近い薬物だと思われます。特に止める人もいなければほぼ強制的に飲まされるのでそのまま薬漬けになります。そして薬が切れてしまうと、情緒が不安定になるので、また飲むという生活の繰り返しです。
反乱軍は彼が入隊する前からひどい行動をしていて、おそらく人間が一番残虐になったらこんな感じでしょう。もはや理由がわからない。何のために戦っているのか?という感じです。まあ戦うっていうより暴力の限りを尽くしてるっていう感じです。この辺はちょっと理解が及ばないです。盗んだ腕時計を5個腕につけている、っていう描写で、もはや価値観が狂ってるんだなあと思いました。
ですが、政府軍も「復讐」とか言ってるくらいなので、反乱軍に同じようなことを仕返しして、苦しむのを見て楽しむシーンがあります。
イシメールは後々ユニセフに連れて行かれてからは、この時の自分の行動がフラッシュバックして苦しめられます。
イシメールはまともな少年なので、自分が他人にやった行動も、他人が他人にやった残虐な行動も全て覚えていて、薬物が切れるまではかなり苦労をしたようです。
しかしイシメールの元々の賢さ、強運が幸いして、彼はニューヨークの会議に召喚され、全てを伝えることになります。そしてそこで出会った女性に最終的には養子として迎えられます。
イシメールは非常に幸運な少年ですが、仲間は戦いの最中で死んだり、一緒にさまよっている最中に死んでしまったり、更生施設に一緒に入ったのに最終的になんと戦場に戻らざるをえなくなったり…(これが一番ひどいなと思いました)
やっと親戚に引き取られて安心して暮らしていたら、いきなり、例えば、日本で言えば国会議事堂が爆破されて、いきなり首相が殺されて、「今日から俺が首相だー!!」っていう人が現れて、反対デモをしていると虐殺されて…
ちょっとでも反対意見を言ってるラジオを聴いていたら、一家惨殺。
なんか無茶苦茶すぎますね。
でもきっとイスラム国がやってんのもこんな感じなんだろうなと思います。
このあたりでイシメールはシエラレオネを諦める決意をして、アメリカに渡るところで話が終わっています。
仕方なく戦争に参加して、やっと薬物も抜けたかと思ったら、また戦争。知らなかった親戚に惜しみない愛をもらってやっと打ち解けたと思ったら、戦争のせいでその人も死んでいきます。希望を感じるたびに打ち砕かれる。これだけ酷い目に遭ったからこそ、イシメールは精神的に根本的なところを突き詰めていけたのだと思います。
無論米軍はもっとコントロールされた戦争をしていると思います。でも根本のところはイシメールの言っていることと同じですね。
価値観の違いを理解し合わなければ終わらない、ということでしょう。
日本社会でよく話題になる「いじめ」も結局戦争と同じことだと思います。自分たちとちょっと違うあいつが許容できない。上履きを隠すのは窃盗と同じだし、机に落書きしたらそれは器物破損と同じ。殴る蹴るはただの暴力で、同じ条件下でなければ喧嘩ではない。要は犯罪なんですよ。いじめっこは全員、犯罪者であり、戦争になったら暴力を振るうときに罪悪感のわかないタイプの人間です。
イシメールもきっとわかっていると思いますが、戦争が酷い場所ではまともな教育をされていないのも事実です(まあ日本の教育の水準は?って聞かれると微妙なんですが)。これからの教育には、価値観の違いを許容する、という項目をもっとクローズアップしたものが必要かもしれませんね。
追加で一応言い訳程度に書いておきますが…多分イスラム系のところで戦争が絶えない理由の一つは植民地時代の他国支配の名残がかなりあると思います。宗教が悪いというのは、理由のほんの一部であり、本来宗教は平和と理性の持続のためにあるものです。過去の歴史のしこりをどう解決していくのかも、今後の大きな課題なのかなと思います。
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