ゴールデンカムイのアニメ第27話の「いご草ちゃん」について
原作でも結局いご草ちゃんの結末はわからないままになっている。
気になって夜もよく眠れなかったので(笑)、簡単に考察してみたいと思う。
(この先は少々ネタバレするので、これから観る人は気をつけてください)
いご草ちゃんは月島がかつて戦争に行く前に、将来を誓い合った仲の女性である。
月島は荒くれもので父親の素行も悪いため、島の人間からは嫌われていた。同じく、いご草ちゃんはいご草そっくりの縮れ毛をバカにされていじめられていた。つまはじき者のふたりは妙に気が合ったのである。
月島が戦争から帰ってくると、なぜか月島は死んだものとして扱われており、その噂の所為か、いご草ちゃんは姿を消していた。自殺した可能性を考えた月島は必死で遺体を探すが、見つからない。月島戦死の噂を流したのが父親だという噂を聞いて、怒りに任せて父を殺害。死刑囚として捕まっているところに、鶴見が現れ、いご草ちゃんは生きていると伝える。だが、そのあと鶴見と戦っているところ、別の同僚が「いご草ちゃんの遺体があんたの実家の床下から出てきたよ」と話しかけてくる。
その後、鶴見が月島に語った話は、「月島の父親がいご草ちゃんを殺したことにして、遺体は偽物を使い、島人と役人を納得させ、お前を監獄から連れ出すことに成功した」と語る。
さて、最後までいご草ちゃんが生きているのか死んでいるのかがわからない。月島はさんざん振り回されて最後はあきらめる描写が入っているが、いったい何が真実なのか考察してみたい。まずは生死から。
パターン1)いご草ちゃんは生きている
生きているなら、鶴見のやけにうまくできたお話の通りになる。
ここで、鶴見の話を疑う要素について考察したい。鶴見に問題があるとしたら、「いご草ちゃんに会ってきて、髪の毛をもらってきた」と月島に渡すシーンだ。
「お前が生きていることを伝えるべきだったか」と聞くが、これもなんだか胡散臭い。本気で良い人だったら、いご草ちゃんにも月島が生きていることを伝えてもいいんじゃないだろうか。これは、月島が「いまさら伝えても」と言うことを、事前に予測した上での鶴見の作戦&月島の意志確認ではないかと思われる。
パターン2)いご草ちゃんはやっぱり死んでいる
ここで、いご草ちゃんの死の理由で考察をわけていきたい。
1)自殺のパターン
これはちょっと難しい。おそらく自殺ではないものと思われる。自殺の場合、海に流されたりした遺体を引き上げるのが大変なはずだ。鶴見が髪の毛を手に入れるのが難しいのでは。
2)他殺:月島の父親が殺した
動機がわからない。この話はちょっと難しいと思われる。島人も遺体を見せられて無理やり信じさせられたといったところか。
さてここからが最悪の考察である。
3)他殺:鶴見が殺した
よくよく考えるとこれが一番しっくりくる、それが私はとても恐ろしい。
鶴見は月島の能力に目をつけたが、いご草ちゃんが目の上のたんこぶであった。戦争が終わったら結婚されて、もう二度と一緒に戦ってくれないかもしれない。鶴見はどうしても月島を引き留めたかったので、戦死の噂を自ら流し、父親も殺させた。
いご草ちゃんが絶望し自殺しようとしているところを、もしかしたら言葉巧みに誘い出し、殺したのかもしれない。
そうして、遺体を家の下に埋めても、掘り出さなければ見つからない。その前に髪の毛を切っておく。
月島が投獄されてから、しばらくしたら掘り起こして月島を無罪放免にする。
これで、鶴見の筋書はすべて彼の手中。主体的に進めることができる。
誰かが自殺するのを待つ必要はなかった。父親がデマを流したという「デマ」を流したのも鶴見だろう。もし月島が父を殺さなかったとしても、おそらく彼の性格的に、めちゃくちゃ殴るだろうから、そのあとそっと殺してしまえば彼がやったことにできるかもしれない。また、いご草ちゃんを「生きている」ことにして、安心させてあえて「探させない」ことも読んでいたのかもしれない。(もし東京に逃亡したのを見つけたら、刺客を送りそうである)
問題は、最後の「島の人間」が話しかけてくる内容である。
内容的には、おそらく鶴見の言う通りで、「月島を牢獄から出すため」であろう。
しかし、最初の鶴見の「生きている」話が嘘であることを今更伝えるわけにはいかない。
掘り出された遺体はあくまで偽物だと、彼は伝えた。月島を解放するための。(偽物で島人が納得するとも考えにくいので、これも嘘だと思われる)これも、月島に恩を売るための話にしている。(鶴見はよく芝居をうって、ターゲットに恩を売る)
話のつじつまは合う。
島の人間がテントの中を覗いたのは、月島にとどめを刺して、完全にいご草ちゃんをあきらめさせる(結婚の可能性をゼロにする)ためのおそろしい作戦のコマとして、使われたからだったのかもしれない。実際、月島は弄ばれているのに気づいているような描写もある。そして、この最後のオチを月島に強引に信じさせることで、島人たちが本当のことを言ってももう月島は動揺しないし疑うこともしなくなるので、完全につじつまが合うのだ。
いずれにせよ、他の部下に関してもそうだが、ターゲットの性格をよく読み解いた上での綿密な計画と、強引で残忍な実行力で、鶴見はターゲットを自分の忠実な部下に育てあげてしまう。
かつてMONSTERという漫画でヨハン・リーベルトは周囲の人間を殺してターゲットを孤独にするという方法をとっていたが、ヨハンは特に大きな目標もなく、ただあてもなくさまよっているような、世の中への怒りと憎しみを殺人で発散してるだけのように見えた。でも鶴見は違う。彼は合理的なのだ。ゴールデンカムイの登場人物の中で重要な人間は基本的に合理的である。それはウイルク、キロランケを見ればわかる。尾形は少々ヨハンなところがあるが、やはり少し子供っぽい感じが残る。単なるサイコだからだ。
鶴見は、合理的に作戦を進めて、壮大な計画を達成させようとしている。合理的に、周りの人の命を平気で好きなように使う。恐ろしいキャラクターではあるが、どこまで彼の手のひらで踊らされているのかを考えると、おもしろいところがある。
0 件のコメント:
コメントを投稿