久々に見たパティンソン君は一児の父になったにもかかわらず、相変わらず迷子の末っ子王子様オーラが抜けておりませんでした。最高か。
しかも今回SF的な設定でパティンソン君が増えるわけです。画面上には最大2人ですが。
この世界では、人類が別の惑星に移住する宇宙開発のための「エクスペンダブル」つまり消耗品になる人間を募集していました。なりたがる人があまりいなかったのか、主人公のミッキーは消耗品枠で移住計画に参加し、訳あって地球を逃げ出します。
そして過酷な惑星開発の途中で死んだら次のミッキーが「プリント」複製されるというシステムです。
このシステムで、17番目が死んだと思われていたら生き残っていて、18番目がプリントされてしまっていて、そこでマルティプルズという違反が起きてしまいます。
全体的にブラックコメディテイストなので、悲壮感は和らげられていますが、過酷は過酷です。
ロバート・パティンソンは悲惨なキャラが似合いますが(選んでるのか?)、今回倫理観ギリギリを攻めてくるので(倫理的にはアウトなんだが、SFというのは本来そういうもので、映像的にはギリギリということです)、「パティンソンいじめないでよぉ!」と思うタイプの人には向いていません。が、私でも結構胸がギシギシと痛みました。
この映画は好き嫌い、共感できるできないが分かれると思いました。
私は結構共感できた方です。
ミッキー17と18の性格がちがいすぎて面白かったから、というのもある。
どちらもベースは自分自身。記憶は一週間単位のズレしかない。つまり自分の分身みたいなものです。ですが、やはり人間だからなのか、複製するたびに少しずつ性格が異なり、17と18は極端に違いました。
17は元々のミッキーの性格だと思います。おバカで素直でいい人キャラ。言われた通りに労働をこなして殺されるのが契約であれば仕方なく受け入れてきました。
しかし18から性格が豹変します。予告編で、なぜパティンソン君が変なアホ声で喋るのかよくわかりました。18は17に言わせれば「サイコパス」。冷酷冷淡で、表情も声も違うww表情でもどっちか大体わかりますが、喋らせれば一発でどっちかわかります。
この二人が口論するシーン、終盤の会話のやり取りなどもめっちゃ面白かったです。
「なんでお前はそんな扱いされて笑顔で受け入れてんだ!やり返せ!ばか」的な罵られ方をしてしょんぼりする17もめっちゃ可愛いし、全く同じ外見なのに「そういうこと言ってるんじゃねぇよ!」と怒り出す18もめっちゃ面白かったです。言うなれば、自分の別人格と対話しているんだとも言えます。私の脳内会議なんて大体こんなもんです。
ただ、ポン・ジュノ監督が深いなと思ったのは、実は18にはいいところがすごくたくさんあることがどんどん判明していくところなんです。特に終盤の会話でやたら過去の思い出を悔やむ17に「あれはお前のせいじゃないぞ。何度も言ってんだろ」と冷たいけれど17を救うような言葉を投げかける18。真相はどっちなのかわかりませんが、これは
「実は記憶というのは受け取り手によって解釈が違う」
ことを示唆しているのでは?と思いました。
これってとても重要で、ミッキーに兄弟がいない場合(出てきませんが)ミッキーは「あれは自分のせいだ」と思い込んで自分を責め続けると思うのですが
18が出てきたことで、「実は自分の解釈が違っていて、自分を責める必要がない」という考え方が登場する訳です。そこで、17は救われるわけ。
私は妹が2人もいるので、たまに2人に昔の記憶を吹っかけて、どう思うか聞いたりします。子供の時は親とは全く視点が異なるので親だと共感はまず得られないというのがあります。ですが、年齢が近い姉妹に同じ記憶を思い出させると、過去の記憶を正すことができる訳です。もちろん、「あれは最悪だった」という嫌な結論で終わることも多いですが。
ずーっと自分が悪いことをしたから罰を受けているという解釈は、わかるにはわかるのですが、そこを脱却しないと次のステップへ進めないというのはあると思うんです。サイレントヒル2もそういう話なんだと思っています。
17は少々アホですが、素直なので、18の強気な意見や考え方に多少の影響を受け、これからも何かと嫌なことが起きた時、18ならどう思うのか?と考えるようになるでしょう。あれは一見はただの事故で誕生した複製ですが、自分の新しい視点が生まれたと考えることができます。
女性の視点から観る「ミッキー17」
ナーシャがとにかくすごいですよね。
ナーシャはミッキーの恋人ですが、18が現れて増えたとき言い放った言葉が衝撃的でした。
「どっちもミッキーなのでどっちも私のもの!」
なんだそりゃ!って感じです。同じ肉体が2つあって、記憶もほとんど同じで人格だけ違うのに、気持ち悪くねぇのかよって思って、その時、17が麻薬みたいなものを見つけて酔ってるからだろ!ってツッコむのですが、彼女は多分本気で言ってると思います。
なのでナーシャも、これも捻りのある設定で面白かったのですが正直ちょっと頭おかしいところがあるんだけど、言うなれば、重い女、愛が深すぎる女であることが後半はわかってきて、いいなと思いました。
ただ、まあ、私は、双子のどっちかと付き合っててそっくりの奴がもう一人現れても普通に一人目を選び続けるし割と勘がいいので騙されないと思います…w
ある意味、ナーシャもちょっとサイコなところがあって全体的にまともな人を探すのが難しいところが、ポン・ジュノなんじゃないですかね。
雇い主のサイコっぷりも、ある意味アメリカ人の考えるラスボスより狂気感じたし、自称友人のあいつも、、、ものすごいヤバかったですwww
スカっとする復讐劇というよりは、絶望的な状況まで持っていって、なんとかかんとか辛くも解決するという感じだったので、笑えそうで笑えないギリギリなところ攻めてくるなと思いました。ストレスは溜まるので、やっぱその辺がポン・ジュノだなって思います。ブラック企業の闇を暴く社会派ムービーと捉えることもできます。SFとしては少し弱いかな、と感じましたが、SFじゃないとこの設定使いづらいですからね…