2013年3月15日金曜日

マスターキートンの感想(前編)

最近すごくはまっているアニメがある。

いまさらだが、GyaOで無料配信している「マスターキートン」だ。

以前TVで、浦沢直樹まつりと称してちょっとだけ抜粋を放送していた。
その時の録画も何度も繰り返し観ていた。

浦沢直樹、そして主人公はもと英国陸軍特殊部隊、SASの出身。観ない理由はなかった。

そして 、例にもれず大変話が面白い。

いいなと思うのは、殆ど話が一話完結になっているところだ。
キートンの温和な性格や浦沢直樹の作風もあると思うが、一見、非常に淡々と話が進むようにみえるが、きちんと完結している。
無駄な演出も派手な演出もないが、それがかえって知的好奇心を刺激する。
その淡々と穏やかな語り手の中に、とんでもないドラマが展開し、
何度もキートンは殺されそうになる。
が、何事もなかったかのように、彼は生き延びる。
この驚異のドラマを、うるさいBGMも派手な演出もなく、地味にきちんと語り上げるこの作風は素晴らしい。
時には泣ける話もあるが、そこにも、派手に泣く主人公は存在しない。
すべてを観客の感性に任せ、語り手は、ただ静かに語るだけ。
そんなものづくりの姿勢には感銘を受ける。
非常に上品で、上質なワインか何かを味わっている豊かな気分になれる。

以下、前半抜粋でお気に入りの話をば。


CHAPTER 3 「ラザーニェ奇譚」/STRANGE STORY OF LASAGNE
出てくる小さい女の子に散々批評されたキートンだが、最後に踊ってくださいと申し出るキートンに萌え萌えする話。
キートンは別れた奥さんに未練たらたらで、かわいすぎる。

CHAPTER 4 「不死身の男」/THE IMMORTAL MAN
非常にテンポのいい話で大変気に入っている。オチもいい。
ユーモアがありながら、真剣にサバイバルもする。
キートンの名セリフのひとつが
「あのホラ話で十分でした。昨日は本当に楽しかった!」これを危機的状況で叫ぶキートンが面白すぎる。対する老人はさらに上を行くが。

CHAPTER 20 「臆病者の島」/COWARD’S ISLAND
とてもドキドキした話。ミリタリ好きならたまらないだろう。
キートンも優秀だが、酒飲みの元傭兵の銃さばきがすごい。
どんなに酔っていても、その傭兵が強いだろうということはなんとなく想定できたので、楽しみにしていた分、クライマックスは燃えた。映画みたいな話だ。

CHAPTER 22 「シャトー・ラジョンシュ1944」/CHATEAU LAJONCHEE 1944 (00:23:39)
これは本当に泣ける。特に理由などない。リベロの命をかけた忠誠心が、胸を打つ。
合理化した現代社会の中で、リベロには、命をかけて守り続けたいものがある、というその事実が、胸をうつのだと思う。フィクションでアニメで泣ける作品はしばらくぶりだ。
そして登場人物は、派手に泣くやつはいないし、キートンにいたっては、「このワイン一千万…」と相変わらずののほほんっぷり。
押しつけがましくない感動が小憎らしい。

CHAPTER 25 「砂漠のカーリマン」/A KAHRIMAN IN DESERT
キートンは、複数の一般市民を抱え、砂漠でサバイバルをする。
このSAS出身のキートンの淡々とサバイバルを進める姿勢は、何度観ても驚愕する。
実に無表情。時には楽しそうに、窮地を乗り切ろうとするのだ。
彼が感情を見せるのは、仲間があきらめようとした時だけ。
訓練されているとは言え、あの状況で マイナスの感情を見せないのは尊敬に値する。
私は人が窮地に陥る時、無表情に事実を伝え、ただ無表情に助かる努力をする、ああいう人間を尊敬したい。

CHAPTER 29 「禁断の実」/THE FORBIDDEN FRUIT
キートンがちょっと嫌な探偵として描かれるが、それがまた小気味いい。
SASは特殊部隊として、時には現地にスパイ入りしなければならない。
その時、高性能な軍人でもあるはずのSAS隊員は、「どこにでもいる一般の無難な良い人」を
演じるように訓練されている。
それがキートンにはうってつけなのだ。
わざと車を壊して人に助けてもらったり、小鳥を懐に隠していたり、子供っぽい好奇心を全面に押し出したり…
演技とは思えない無邪気っぷりなのだが、途中からこれが彼の策であることに気付いた時は、驚いたものだ。
その彼の狡猾な対人スキルと、最後のクライマックスの静かな緊張感がいい作品。

CHAPTER 32 「背中の裏街」/A BACK IN THE BACK STREET
キートンがいろんな女性(娘含む)に翻弄される話だと思うが、冒頭で娘に容貌や姿勢を指摘されうろたえるキートンに萌えて、のちほど、泥棒に入る勇気がないから酒を飲むキートンに萌える話。
全体的にキートンに萌える話w


これ以外の作品でも、サスペンス仕立ててよくまとまっている作品がいくつかある。
題材としてもハリウッド映画にひけをとらないレベルで、ただのサスペンスにおさまらず人生の在り方にまで言及し、非常に良質。
また、キャラクターも、特に主人公が多面性やユーモアのある無邪気で非常に魅力的な人物であり、万人に興味をもたれるだろう。

ドラマ化しても人気出ると思う。

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