2020年4月19日日曜日

テリー・ギリアムワールド:「ゼロの未来」

私は、この映画に関してあえて、他人の評価は見ないで感想を書こうと思う。

私は映画「12MONKEYS」の大ファンである。

大学生の時、レンタルDVDで初めてその映画を見たとき、最初からビジュアルなどに釘付けになった。展開などもうまいし私好みの味付け。
今、新型コロナウイルスが蔓延しているなか、ウイルスによって地下暮らしを余儀なくされている主人公が、ウイルス蔓延の原因を過去に探しにいく話を見るのは、少々不思議な気分になるかもしれないが、探しにいったら解決するならすごい話である。

なお、新型コロナウイルスと同様に、12MONKEYSのウイルスは基本的に人間にしか感染しない(今回の新型コロナは猫などにも感染するらしいが、今のところバタバタ死ぬとかそういう報告はない)。
外に出れば動物が闊歩しているが人はいないという不思議な世界である。
(ちなみに今福岡を出歩くと公園でカラスが幅を利かせており、少々怖い)

「ゼロの未来」は、ビジュアルは12モンキーズに酷似しており、実に私好みである。古びた教会の中に住む主人公は、12モンキーズの主人公とよく似ており、最初は、ブルースウイリスをまた使ったのかと思った。
だが、クリストフ・ヴァルツであった。神経質なスキンヘッドの、エンジニアのような職業の男だ。

彼が、冒頭で「会社に来てもそれぞれがひとりで違う仕事をしているんだから、在宅でいいじゃないか!」と駄々をこねる。まるで私のようである。

だが、この主人公のしている仕事…「エンティティ」を解析して「ゼロを100%にする」は終わりがない。
100%になることはないというのだ。

まあエンジニアの仕事というか、研究者の仕事なので、例えば円周率の計算を延々とやっているような話であり、正直飽きる。

12モンキーズはウイルス蔓延の正体をつきとめなくては!という使命感をずーっと感じるのだが、このゼロの定理はおそらく終わりがないことを、視聴者も感じる。なので、飽きる。

しかも、ゼロの定理を解析することの理由も、コーエンにはわからない。

彼は、自分の存在意義だけを、教えてもらうことを祈っている。

この辺の「目的」はよい。12モンキーズと少し似ている。実は12モンキーズの主人公ジェームズも、自分の、人生の目的をずっと探している男だ。

だが、ジェームズが具体的なのに対して、コーエンは抽象的すぎて、よくわからないし、終わり方も哲学的すぎる。

12モンキーズは決して、明るい話ではないが、全体に漂う絶望と希望の間を揺れ動く詩のような美しさと趣があった。

しかしゼロの未来は、どちらかというと絶望しか見えないのだ。

舞台は素晴らしい、古い教会をモチーフにするのは、なんとも趣があって美しい。
衣装なんかも趣向をこらしているし、ちょっとフィフスエレメントや、ブレードランナーみたいなビジュアルもある。

だがこの作品はあまりにも現実に近いのである。

舞台が教会なだけで、やっていることは、毎日エンジニアリングしているだけだ。ちょっと面白い画面にしているが、毎日PHPやRubyを書いているのとあまり変わりがない。


もしこの作品に無理やりテーマを持たせるのであれば、コーエンのように生きてはならないよ、という皮肉なのかもしれない。

というわけで、テリーギリアムを見るなら、「12モンキーズ」がおすすめです^^

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