Amazon Prime Videoでは先月から割と面白い映画が配信になっていて、この映画もそのリストに入っていた。
予告編を見てぜひ劇場で観たいと思っていたものの、神奈川県だとやはり上映劇場が少なく、ギブアップした映画である。
自宅の粗末な環境で再生したものの、マルセルの可愛らしさは冒頭から私を虜にした。
これぞストップモーションアニメ映画のベストに入る作品だろう。アカデミー賞ノミネート当然である。
手間暇もそうなんだけど、
- キャラクターのオリジナリティ:貝に目と足をつけるというデザイン、そしてなんと口もついている
- 情緒的なストーリー
- マルセルの性格づけと、声優の秀逸な演技
- SNSの良い面悪い面の正確な描写
全方位から見て隙のない作品でありながら、ほんわかとした雰囲気にビターな「少年の成長」を織り交ぜ、それでもなお悲劇の作品ではないところなど、非常に完成度が高い。
老いる者からの励ましの言葉は、誰にでも突き刺さる、普遍的なアドバイスである。
アニメ作品として私が一番に評価したいのはマルセルの声優の技力である。演技もさることながら、声の出し方がすごい。一体どうやっているのか気になった。
キャストは絶対子役の少年に違いないと思って調べて仰天した。なんとコメディアンをしている成人の女性(アラフォー)だというのだ。どうしたらあんなハスキーな男の子ボイスが出せるのだろう。
普段の声をYouTubeで聴いてみたところ、元から声のトーンが高めでハスキーではあった。良いところは、彼女の英語の発音である。教材みたいな喋り方だったw絶対に聞き取れる滑舌の良さ!
ちなみにジミー・キンメルライブで声を披露してくれるのだが、片耳に指を入れないと自分のマルセル声が聴こえないんだそうだ。やっぱ特殊技能だな。
海外の声優は技力がすごいという印象がある。今までで一番驚いたのがロードオブザリングの「ゴラム」であった。私はてっきりアンディ・サーキスの声を加工していると思ったのだが、なんとあれを地声で出しているらしい、、もちろん、演技はしているのだが……
アンディ曰く「家の猫が毛玉を吐き出そうとしている時の声を真似した」そうである。
そういえば、ロバート・パティンソンは「君たちはどう生きるか」で完全に声を変えてアオサギを演じているが、彼はもともと地声の存在感が希薄なので(笑)、たまに映画を見てると「ああ今回は声を変えるのか」なんて思っていた。特に「悪魔はいつもそこに」ではわざとらしいくらい声を変えていた。パティンソン君は声を変えることで役になりきれると思っているらしい。
声や滑舌はもっと重要視されていいと思っている。なぜなら、邦画で字幕がないとき、滑舌の悪い役者がいると何を言ってるか理解できないことがあるからだ。字幕というのは案外便利なツールなのだが、本来は字幕がなくても理解できないといけないし、字幕は映像制作側から見たら無いのが前提である(ただしエルフ語などは除く)。ちなみに日本の実写俳優だとやっぱり堺雅人さんの滑舌は綺麗。すごい特訓しているそうだ。
ところでオッペンハイマーを観た後「私は貝になりたい」をなんとなく観てみたのだけど(悪趣味)、あれに出演している米兵は異様に発音が綺麗で、なんなら日本人より聞き取りやすいのでは?と思った。無論相手が日本人だからわざとやってるのかもしれんが。
あの映画は、英語に字幕をあまりつけないという意図的な演出により、英語を理解する視聴者が「あ、今絞首刑って言った」と理解した数秒後に遅れて日本語に通訳され、中居くんが絶望するという、なんともいえない独特の味わい方がある。
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