83歳にして二度目のアカデミー賞を受賞したホプキンス先生主演の映画を早速観てきましたよ。
それにしても設定が残酷すぎて、個人的には心配しました。
だって主人公の名前がアンソニー。役者本人と同じ名前。
確か劇中の誕生日も、実際のホプキンスさんの誕生日なんですよね。
ひどいよ、80代の役者にこんな酷な役柄。しかも、認知症がどんどんひどくなるという内容ですよ。ホプキンスさんに「アンソニー」と話しかけながら展開する様は、あまりにも皮肉すぎました。
なんとなく「アメリカ人がつくる映画じゃない」感満載でしたけど、案の定イギリスとフランスの共同制作でしたね。非常にシビアでネガティブな内容ですが、淡々と描かれていくという感じが。
老いに対して、ノマドランドはどちらかというとポジティブで良い側面を描き、少々ファンタジーでしたが、ファーザーはリアルすぎると言わざるを得ない。
しかし、ホプキンスさんをずーっと見てきましたけど、かなりのタフガイという印象です。英国の役者ってほんとスキルが高くて、ギリギリ寿命まで芝居を続けるんだろうなっていう印象を受けます。プロ意識がすごいというか。 あと、この人は役柄では老いぼれを演じることもあるんですが、ものすごい利発で頭の回転も滑舌も速いので、騙されてはいけません…w
この映画のおもしろいところ(?)注目すべきところは、なんと認知症や老いが老人本人の視点で展開するところなんです。これはすごいと思いました。
なにしろ最初から記憶がごたごたしてるので、時系列がポンポン飛びます。これが認知症の人間の頭の中なのか。大混乱です。ホプキンスさんの芝居もその混乱っぷりをよく表わしているなと思いました。
アカデミー主演男優賞ということですが、あまりにもホプキンスさんの芝居のレベルが高くて、むしろそっちだけで全部理解できるという感じです。なんならセリフもいらないのではないかという感じ。実際に、娘に失望したり、見放されたと感じた時の絶望感など、セリフが無い時などもありました。ホプキンスさんの泣く寸前で止める芝居とか凄すぎました。
あと、これは自分の親がボケはじめた時にも覚悟して心にとめておきたいと思うのですが、人間は記憶があいまいでも感情は非常にはっきりとあらわれたりします。感覚が鈍っているわけじゃないんですね…。粗雑に扱われればちゃんと傷つくし、怒ります。彼らは決して、人間を捨てたわけではありません。
私は、祖母でそれを経験したので、いかに介護が「精神的に」大変なのかを、ほんのちょっとの間でしたが観察して、理解したと思います。
まあ、詳しく書くとまた私の家最悪じゃんとかなっちゃうので省略しますけど、認知症の人と暮らすのってとても、ストレスがたまるようですね。周りが悪魔みたいになっちゃって、映画と同じく、ただボケてきただけの老人本人は、自分が悪いだなんて思っていません。今まで通り、この家に住むんだ!と誰もが主張するし、施設には行きたがらないですね。
私が見てた感じだと、いくらなんでもおばあちゃんがかわいそうかな、っていう印象は受けました。そしてやはり同じく、彼女は施設に入れられました。
それからも時々会いにいったんだけど、私は、彼女が自分の旦那が何年も前に亡くなったのを忘れていても、いいんじゃないかなと思いました。嫌な思い出なんか、忘れればいいじゃないですか。最後くらいね。
この映画のいいところは、うちの親よりは、娘さんが優しいかなと思ったところですかね。もちろん彼女はすごく消耗していくのですが、関係は比較的良好で、同居する旦那が嫌がってもちゃんとかばっていますもんね。それから、アンソニーが娘が消耗しているのに気づいて優しい言葉をかけたり、肩を優しく触ったりするシーンは愛を感じました。
あと、ラストは投げやりというか、ひどいなあと思いましたけど、その反面、アンソニーの感情はクライマックスに達します。ホプキンスさんのお芝居もラストが一番凄かったです。
もう、自分が死ぬんだ、とわかっている時の芝居ですね。ドクタースリープを思い出しました。死ぬのが怖い。まだ心の準備ができていないんだ。果たして、自分が死ぬ時に本当にそう思うだろうか?あまり、生きることに対する幸福を感じた記憶がないので、自分にはまだよくわからないのです。でも、あのホプキンスさんを思い出すと、とても泣けるのですよね。
なんというかあまり「いい感じ」のエンディングではないけど、やり切った感があるので、そういう意味では良いエンディングなのかもしれません。感情面に軸を置いて、ひたすら「自分の老いについてどう感じるか」をメインに追っていくひたむきな姿勢を感じました。それに、実際の認知症の現場はもっと汚くてひどいと思うけれど、ホプキンスさんのお芝居はとても上品で趣があり、リアルなのに映像作品として完成していると思います。
まあでも、人におすすめするかって言ったら絶対勧めませんねぇ、この映画を観る人は、老いの残酷さに果敢にも立ち向かえるタイプ(備えておきたい!という立派な人)の人か、アンソニー・ホプキンスの大ファンかのどちらかじゃないですかね。これは本格的な鬱映画だと思いますよ。 アカデミー賞主演男優の芝居を観察したいという人もいるかもしれませんが、それはもうクリエイティブ職の人たちですよね…(私もそうかw)。
私はよく「死」について考えるんだけれども、おそらくはそれが自分のライフワークなんじゃないかなと思っていて、死から生を逆算することによって、自分の生き方が決まるんじゃないかなと思っています。
最近「最高の体調」という本を読み終えたばかりなので、これから、本に書いてある実際のワークショップをやって、自分が一番大切にするべき価値観がなんなのか、深堀りしていこうかなと思っているところです。でないと、いつまで生きることにモチベーションが保てるか、自分でもわからないから。
自分の中で最強に足をひっぱり続けているのは「インナーチャイルド」、要は私はアダルトチルドレンに分類されると思うのですが、残念ながら私のインナーチャイルドは相当な頑固者であり、ワークショップがいまいち効きませんでした。なので、別ルートで「最高の体調」に書かれているワークショップをやってみたいと思います。
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