私が「ノマド」という不思議な単語を知ったのは、確か4、5年前くらいだったと思います。そのころ私はフリーランスのWEBデザイナーをしていました。
まだコロナウイルスも全く関係ない自由だったあの頃、IT系フリーランスノマドはWi-Fiさえあればどこでも働けるので、それこそ、東南アジアなどの物価の安い国を転々として、Wi-Fiのあるカフェなどを利用して仕事をし、 ツイッターやブログなどでそれを見せびらかしていました(笑)。しかも、ノマド向けの、全世界コワーキングスペースを検索できるWEBサイトなどもありました。
私は物価の高い(というか家賃?)東京を飛び出したいと思っていたので、それにずいぶんあこがれたものです。
この「ノマドランド」という映画に出てくるノマドたちは、60歳前後の高齢者が主です。さまざまな理由から、大した年金も出ないので、日雇いやバイトみたいな仕事で食いつなぎ、住む場所は「トレイラー」大きなキャンピングカーですね。
実際コロナ禍でキャンピングカーが流行っていて、それで各地を転々として暮らしている若者のYouTubeとかも観たことありますが、私物がかなり限られるので、大変なイメージがあります。
でも、私に言わせれば映画全体に悲壮感があるかっていうと、そういう感じではありませんでした。
「自由」という喜びをわかちあって、今までの悲しみをわかちあって、独特のコミュニティが出来ていて、私はむしろ「最後この生き方がいいなあ……」と思いながら観ていました。
最近「FIRE」という単語を知りました。「Financial Independence, Retire Early」の略で、とても簡単に言うと「早期退職」。しかし超大手企業じゃないと早期退職金は出ませんので、コツコツとお金を貯めることにはなるのですが、FIREの場合は早い時期から投資信託で運用を始め、年収の半分くらいを全部投資するという豪快な方針で資金を増やし、なるべく早く雇われるというしばりを卒業して自由になろう!というものです。
ノマドしている登場人物はそれぞれ、自分の過去を語ります。定年まで働いてもボロボロになったころに野に捨てられる。残された時間を無駄にしたくない。そのために、RV車で自由に生きていくことを選んだ。そう、彼らは決して、「仕方なくホームレス」ではないんですよね。そういう「生き方を選んだ」のです。
この辺は非常にFIREとも共通するところを感じます。同じ会社に8時間以上毎日拘束される毎日は、確かにつらい。だいぶ自由にはなってきましたが、若い時ほど時間は長く感じるし、若い頃はつい無理をしてがんばってしまいますが、がんばっても正直あまり手ごたえは得られない。「会社に搾取されてるなあ」と感じ始める頃にはだいぶガタがきていたりします。私に言わせれば、会社の有休は身体にガタがこないためにあるものなので、最初は勇気がいるかもしれませんが、「有休は使いつくしましょう」w「体調が悪いから休む」と言えばいいだけです。一回休むと、有休を使うこともある人というキャラになれるので…。
「生き方が選べない」と思うと会社に搾取され、給料も上がりにくくなります。ほうっておいても会社に依存し続けてくれるからですね。 なので、「この人いつでも辞めるかもしれない」感は出しておいたほうがいいかもしれないです。
会社の人間関係は煩わしいですが、私みたいな破天荒な人間だと強引に女性同僚とのランチの誘いを断ち切ったり、飲み会に×をつけたり、上司に愛想悪く振舞ったりしますが、まあ、その程度だとクビにはならないです。居心地は悪くなるかもですがw
話を戻すと、主人公のファーンは一種、自暴自棄にも見えないこともないくらい自由で勇敢でフレンドリーで、職場を転々としてもどこでもさっとなじんでしまいます。これは実際にこんなにうまくいくものなのかわかりませんが、結構貧乏な生活だと思いますがかなり楽しそうに生きているので、あまり悲壮感を感じませんでした。
この映画は、「貧乏大変だよ、貧困層はこんなにきつい」という映画ではないんですね。
彼女は結構周りから好かれるので、定着することを勧められたり、もっと南にいけば…などと色々持ち掛けられますが、彼女はこの「ノマド」の生き方を頑なに守り続けます。その辺の理由は、映画でご確認いただければと思います。
ただ、その辺の自由な生き方の美しさは大きく描いているものの、現実を考えたら、彼女はおそらく「定着」を勧められた場所にい続けるべきだったかもしれないし、南に移動するのが普通に考えたら合理的でしょう。実際彼女のいる場所は寒すぎて、貧乏人の発想で言うと確実にあたたかい場所のほうが、光熱費は浮きますね。(だからITノマドは東南アジアが好きなんですねw)
その辺のフィクションだからこその非合理性は映画だからこそ楽しめるのだと思います。貧困層のドキュメンタリーだと思うとちょっと的外れな印象を受けるかもしれません。
彼らは、精神状態は非常に豊かだと思うからです。
現実問題を考えると、病気した時はほんとどうするんだ…って思ったし、そういう感じのシーンもいくつもありましたので。
しかし、個人的には「新しいものを買わずに修理したり、コミュニティで要らないものを交換しあう」生活はすごくエコだし悪くないなと思いました。完全に資本主義の反対を行っているけれど。あと、ファーンが時々アクリルたわしを編んでいるんですが(笑)、私も時々編むのでなんとも言えない共通点を何度か感じました。アメリカではアクリルたわしとは言わないのかもしれないけど、ダスターみたいなアイテムですね。
これを手作りするのはまったく合理性はないのですが、「なにかを作っている実感」を得られるのと、ストレス解消になるのと、あと手作りって「なんか心が豊かになる感じ」がするから。
生き方とか、心の豊かさについて考えるには、非常によい映画だと思います。
あと、
アメリカで困ったときは
Amazonで働けばいいのかな
ってちょっと思いましたw
(ハードだよって言ってる人もいましたけどね、実際どうなんだろう…)
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