この映画はCMやビジュアルを観てから大変期待していましたが、思っていたよりはシビアな内容だったと思います。
まず日本人男性で40代以上だとこれはきついかもしれません。一緒に見に行くのは避けたほうが無難でしょう。日本人男性にはこの映画は刺激が強すぎると思います。
かつて「プロミシングヤングウーマン」を見た時もそう思ったのですが、あれは明らかに怪しいからダメな人は避けると思うんです。でもバービーは難しいんじゃないかなとちょっと思ったので。
以下、ざっくりを感想をまじえながらどの辺がヤバかったかまとめようと思います。
個人的にはとても勇気づけられる映画ではありましたが、絶賛しようとは思いませんでした。
バービーは、なんにでもなれる。女の子は、なんにでもなれる。というのが、バービーのコンセプトでした。
バービーはそれを信じて疑いませんが、身体に異変が生じたため、原因を探りに「リアルワールド」(カリフォルニアのどっか、ロスの近く)に旅に出ます。
冒頭の世界説明の時点で、ケンが思ったよりかなり不安そうにしているのが印象的です。彼は、本気でバービーを愛している(ということになっている)のですが、バービーは友人としてしか見ていません。
ですが正直うざキャラになっているケンは、印象自体があまりよくありません。また、かなりの依存症であることも示唆されます。
このタイプの男性は、病気に近いですが、現実世界には腐るほどいます。
バービーは現実世界で女性のステレオタイプとして扱われ、セクハラされまくります。この辺ですでに気分の悪い方もいらっしゃることでしょうw
バービーが女の子に「バービーはファシストよ」とすごい悪口を言われ、嘆き悲しんでいるところに、ケンは別行動で「バービーのおまけではない、男性が中心の世界」を見て感動します。
悪夢の始まりです。
ケンは一足先にバービーランドに帰り、なんとバービーランドを男性優位の世界に洗脳してしまいます。
ここの描写も極端ですが、印象的だったのは、今までキャリアウーマンだったバービーが「頭使わなくてよくなったから楽だわ!」と言っているシーン。このセリフ、実は私たち女性にも突き刺さります。
男性優位の社会では、重い責任や面倒な仕事は男に任せておけば楽ができます。30年前くらいまではそうだったかもしれません。この怠惰な発想が、女性の自立を妨げてきたのです。
しかし、いくらケンが頭悪くてセンスがないからといって、この世界はどうしたことでしょうか。男性は偉そうにしているだけで、ごりごり働いているわけでもなさそうです。工事のシーンだけがあり、そこでは「KEN AT WORK」というギャグな看板が立っています。工事しかできんのかい!
他のケンは女にビールを持ってこさせるか、それっぽくサンドバッグ殴ったりしているだけです。
リアルワールドを一通り体験して目が覚めかけているバービーは洗脳されず、ケンから世界を取り戻すために一計を案じ、ケンたちを騙して同士討ちを誘発します。
(この作戦会議のシーンでリアルワールドの女性が数分間ぶちまける「女の苦悩」は首がもげそうなくらいうなずきました)
この辺のシーンは「プロミシングヤングウーマン」と同じで、目を覆わんばかりの「男のバカさ」が描かれております。これ、さらに気分が悪くなること、うけあい。
特に笑ったのは、「ゴッドファーザー」のよさを男性に語らせれば夢中になって隙ができる、という作戦。ひどいですねww
私が女性だからかわかりませんが、ゴッドファーザー観たとき、全然頭に入ってこなくて、唯一覚えているのが、女性がブチギれて家じゅうの食器を割るシーン。
男性向けの映画なのかもしれないですね。
私は、ちょうど先週体調を崩しており、「真の男女平等はお互いに助け合うことだ」という結論に至っていました。ひとりで生きていくのは苦しいかもしれない。だけど、依存関係は正しい関係ではない。ましてや、お互いの性欲を満たすためのパートナーというのも違う。
ケンはどうしても手に入れることのできないバービーを前に泣き崩れますが、彼に必要なのは自立だったのでした…。
私は、この映画は多くの真実を突いていると思います。
まず、バービーランドでは、女性が自立していますが、男性は脇役として飾りのようにおかれていました。バービーは政治に学問に大活躍しているのに、男性が表彰されるシーンがありませんでした。この時点で、この世界は不平等ということになります。
不平等ではかならず軋轢が起こり、反乱が起きます。
ですが、哀れな男たちは、「女性に認められたい」という承認欲求で生きているため、女性を殴ったり殺すことができないのです。
我々女性が権力を握れば握るほど、男性側にもストレスがかかる。
「どうしたら平等になれるのか?」それは、お互いに依存しない生き方を見つけ出すこと。
男性の自立は、女性と平等な土俵で戦い同じくらいの成績を出すことなのかもしれません。
またもう一つのテーマがあります。それはバービー自身のテーマです。
マーゴットロビーのバービーは「ステレオタイプ」のため、特技がありません。 キャリアもありません。絶望して泣くバービーは、下手すると笑っているときより全然かわいいのですが。
「でも、それでもいいんだ」というのがメッセージです。
もちろん、可愛ければなんとかなる、みたいな話ではありません。
別に、「大統領」「弁護士」「看護婦」などの大層な職業につかなくても、落ち込まないで!ということなんだと思います。
「普通のバービー」で、いい。
そして、恋をしたりケンと結婚をしなくてもいい。
でも、ケンが自立してしっかりしたら、対等な話ができるようになるかもしれません。
ライアン・ゴズリングの役どころは大変だったと思います。ケンは元来悪いキャラクターではないのです。そんな「もとはイイ子」でも、抑圧され自分の使命を間違えると悪党になってしまい、似合わない毛皮のコートを羽織って、無駄にサングラスを二個もしています。
甘えん坊な自立できてない男性なら「女性が相手にしないのが悪い」というかもしれませんが、優秀な遺伝子を選ばなければいけない我々としては、子供に子供をつくらせるわけにはいかないのです。
かっこつけているよりは、素直に自分の問題点を語ってくれたほうが我々も寄り添える。映画はまさにそういうことを言っているように感じました。
ですが、正直映画自体が男性の問題まではしっかり解決していないので、男性が不満を持つか、メッセージを受け止められるかで、感想が変わって来そうですね。
マーゴット・ロビーが面白いなと思ったのは、
彼女、泣いている時のほうがかわいくて美しいんですよね。
すごく不思議でした。
冒頭のハッピーなマーゴットもいいのですが、どうしても笑顔が張り付いているような印象を受けました。
途中から、なんども涙を流すバービーが、口調も変わり、だんだん大人になっていくのが、とてもよかったです。
決してハッピーな映画ではないし、結婚に夢を見る女性には絶望を抱かせ、依存している女性は夢の世界からたたき起こされ、独身女は「もっとしっかりしろ!」と叩かれているような、厳しい内容だと思います。
と同時に、現実だからこそ、みんな苦しいから完璧でなくても、落ち込むなと励まされているようにも思えます。
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