2024年9月29日日曜日

ベイビーわるきゅーれナイスデイズ とても良かったです

https://babywalkure-nicedays.com/

例によって小島監督のポストでベビわるにあっさりハマってしまった勢です。

1をアマプラで観て「これは良い」となり、「ある用務員」も観て、これもなかなか良いとなり、2も観て、今は毎週の30分ドラマも録画しています。 

一応言っておきますが、欠点はめっちゃ人が死ぬことです。なので人が死ぬのはちょっと、と言う人には残念ながらお勧めできません。

ベビわる全体の良さについて

まず女子2人組のアサシンってところがいいですよね。

今回の映画は特にそういう点があるので後述しますが、女の子同士でバイトみたいに殺しの案件を片付けていく感じがいい。

あくまでも仕事。食っていくため。1は生活費はバイトで賄えと言われ、せっかくアサシンやってるのにバイトをやる羽目になったり、2も借金を背負っていることが判明してやはりバイトをやっている。あくまでも、働く女子の話なんですよ。

男とのいざこざは殺し以外ではゼロで恋愛要素皆無、ハニトラ仕事もなし、女同士で暮らしてるの最高に気楽だよね!って感じがいい。2はレズ展開あるかと一瞬思ったけど、多分この二人はない。仲のいい女友達ってたくさん見て来たけど、本物のレズにあったことはないです。恋愛感情はね、邪魔だよね。

あとはもちろん、キレッキレのアクション。

そして個人的に「ファッションセンスの抜群の良さ」を挙げたい。これはドラマ版も素晴らしくて、毎回ファッションチェックに余念がないです。

基本的にコメディなのですが、ギャグのゆるさもいい。最近じゃお決まりのカフェで仕事の話をするシーンがもうお馴染みになってて見ててくつろげる。あとキャラクターも漫画みたいな、個性がある。

あと後述しますが、坂元監督のセンスなんでしょうけど時々すごいマニアックなネタが突っ込まれます。毎回それでなんかちょっとドン引きしながら、すごいなって感心します。


今回の映画

まず宮崎で女子旅楽しんでる二人。ビーチで水着でも、短パンにTシャツでビキニじゃないとろがまず配慮されてるし、そういうお色気要素皆無で健康的に行く感あって良い。これは女子ファンが増える理由ではないだろか。

宮崎という舞台

私は一度宮崎に遊びにいったことがある。

青島神社、鵜戸神宮、モアイ像なんかも見た。「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」っていうすごいホテルがあるのだが、そこがロケ地に使われていた。あそこは映画見てもわかるけど、エントランスホールがとってもゴージャスで、私たちはレストランを探しに行ったんだけど満席で、結局見物だけして帰ることになったwそれにしても凄まじい豪華さで、映画でもよく映えている。そのシーンではちさととまひろが「フォーマルな服」を着るという、スパイ映画によくある展開なんだけど、そのフォーマル加減がまた謎で面白かった。まひろのネクタイかわいい。

そしてなぜか青いカラコンw

最後の一大バトルでまるで南国のジャングルみたいなところで戦うみたいなのあるけど、私たちも野生のバナナ見つけて大変驚いたので、あれはガチである。

また、九州特有の人間関係も感じた。

七瀬が綺麗な九州弁を喋るけど、役者さん宮崎の人だからね。で、聞いてるだけだと「九州弁あったかいなあ」なんて思うじゃない。でも映画の終盤でわかるよね。メンツを潰されると豹変する。4年しか福岡にいなかったけど、わかるなあ、あの怖さ。


アクションは本当に素晴らしい!!

邦画でこれだけキレッキレのアクションが見れる映画はあんまりないはずなので、アクション映画がみたい人には本当に強くお勧めしたい。

あとすごいのが、まひろ役の伊澤さんも、池松くんも自分でアクションやる人なんですよ。だから緊張感が凄まじかった。しかも池松くん強いんだよなあ・・無敵キャラみたいになってた。仮面ライダーが弱いとは思わないけど、変身する必要性ゼロだったからね。今回。


池松壮亮氏の冬村がキーパーソン。

私はシン・仮面ライダーでしか彼を見ていないのだが、今回の方が迫力があったような気がする。別に仮面ライダーが悪いとかじゃなくてさ。キャラがちゃんと立ってる気がしたんだよね。仮面ライダーは、キャラとして合ってたんだけど、多分緑川ルリ子があまりにも魅力的すぎたり、敵の女性陣もみんな華やかでなんか男性陣が後ろに追いやられてたような気がする。

私としてはこの映画に興味を持っていただきたいというのがあるので、池松くんのキャラを紹介すると、「冬村かえで」という名のフリーの殺し屋で、殺しを始めた理由はちょっとしたことだった。

一度殺してしまえば、真面目な彼は、「もっと上手くできるはず」なんて思い始めて、銃の研究をしたり、サンドバッグで訓練を始めてのめり込んでいく。

そう、真面目なキャラなんだよ。なんかね、結構いるよね。日本の漫画やアニメによくいるタイプ。真面目で努力家で優秀なのに、全然他人と上手くいかないが故に、悪人を極めてしまう。

今回の映画では特に、相手を殺そうとしている時の役者の目に注目してほしい。

ちさとは元々血の気が多いので、ちょっと薬が回っているような、病んだ目つきになる。

まひろは獰猛な肉食動物のような目つきに。

だが、冬村は違う。スポーツ選手の目をしている。とても純粋で綺麗なままだ。彼にとって、殺しはスポーツなのである。極めなければいけないのだ。

そしてこの映画のいいところは、本人は自分がなぜ悪い道に行ったのかわかっているのに、誰も彼を説教しないところだ。

最後まで、彼に誰も本気で、興味を持っていない。そこがリアルでいい。


「仕事とは何か」

ちさととまひろは殺しを「仕事」と捉えている。

休暇中の仕事の依頼はわかっていても渋々出かけるし、早く終わらせて焼肉行こう、なんて言ってる、普通のOLと大差ない。「パワハラ」なんて言葉も普通に使う。

だが、冬村は違った。

彼は殺しに仕事以上の生きがいを感じている。報酬は受け取っていると思うが、「仕事」にのめり込みすぎて、雇う側から見たら非常に便利な男だし、モチベーションすら維持してあげればもっと働いてくれるだろうと思われている。

しかし、厳しいことを言うけれど、モチベーションなんてのは実体が不安定だし、雇い主がいればフリーでもやはり関係が生じる。

人間と働く以上、どこかで意識のズレが生じる。彼はそれで大変な目に遭ってしまう。この映画では、仕事に対する意識の描写が的確に行われている。冬村は、他人と働かなければならないのに連携を自分勝手な理由で壊してしまったのだ。

ちさととまひろがモチベーション低いと思う人もいると思うが、結局は仕事は結果で測られるし、人と働くのであれば人間関係も重要だ。

これについてとても考えさせられたのが、終盤で冬村が言う「どの殺しが一番楽しかった?」という質問。(台詞うろ覚えだけど)まひろは自分が殺したやつのことなんて覚えていない。だって仕事だから。

私もそうなんですよ。すごいドライなところがあるの。アメリカに影響されてるってのもあるけど。だから職務経歴を語れと言われると一瞬すごく嫌な気分になる。だから面接ではいつも、すごい仕事をしたんだと熱く語る演技をすることになる。実際したんだろうし、楽しいと思うことももちろんあるけど、でも結局みんな生活のためにやっていたんだと、私は理解しているから。

これはまひろも私も女性だから、ってのもある。男性には夢が必要。だから冬村は実に純粋な男なのだ。

だけど、純粋さと言うのは時に非常に凶暴になる。


キャラが良い

前述したけれどベビわるシリーズはキャラクターも非常に面白い。

今回冬村以外で見どころはやっぱり、「入鹿みなみ」。前田敦子さんが演じているんだけど、私はたまたま「クロユリ団地」や「町田くんの世界」が好きで、その時前田さんの演技力の高さに驚いた記憶がある。今回も期待を裏切らなかった。

アニメキャラっぽいツンツンした毒舌お局系女性で、やたら「私の方が7年先輩」と姉貴風を吹かしてくるんだけど、まあ、ありがちなツンデレを、後ほどかましてくる。

私は女性のツンデレは「はあ」って思う方なんだけどこれハマる人いそうだな……

男性のツンデレは状況によりけりだけどめっちゃかわいいと思うことは結構あります。

あとその時のデレの長台詞の内容がめちゃくちゃ面白くて笑いを堪えていたんだけど、その後打ち上げの飲み会でもさらにやばいネタをぶっ込んでくるのでぜひ楽しんで欲しいんですよね。

ただ、ネタがディープすぎて(アニメネタとアニラジネタなんだけど)流石にアニメ見る人間でもちょっと引くし、内容タイトルしか知らんし、引くほどディープなのが笑えるww(そしてそれを知っている坂元監督がちょっと怖い)

アニラジネタあるっちゃあるけど相手が知ってる前提でないと普通ぶち込まないだろwって思ったww


おまけ:田坂

田坂なあ、あいつ、ゴールデンカムイでいうとこの白石みたいな立ち位置だと思うんですよ。鬼滅の村田みたいな。(村田はまともなファンが多そうだからあんまり言わないでおくw)

田坂は仕事ちゃんとやってるけどなんか、なんかイラッと来るんですよね。真面目にやってるんだけどね。

あ〜また白石かよ〜みたいな(白石は時々マジでやばいが)

ちさとが名前忘れてる感じがすごく良かったです・・・

つか自分が名前覚えてるのがまたちょっと腹立つんだよな・・・


あとエンディング!!

エンディング良いよね。1を思い出すアイテムもあり、結局それよな。って思う。

すごいシンプルだけどすごいよくまとめてるよね〜。素晴らしい。


2024年9月17日火曜日

「エイリアン:ロムルス」超おもしろかったのですが?!

エイリアン:ロムルス批判してる人ってなんなの?!知的生命体ぶってんの?カッコつけてんの?普通に面白いじゃん!エイリアンのファンってめんどくさい人多いな!

↑という結論の記事になります。


確かに今までの「エイリアン」シリーズの焼き直しだしほとんど変わってない上に、イアン・ホルムがもう亡くなっているのにも関わらずCGでの出演。ただ、今回はウェイランド・ユタニ社がブラック企業らしい描写が冒頭にあり、そこでの底辺の社員の働きぶりや、生活の苦しさのようなものが窺える。

今までは宇宙船の中の話が多かったため、ちょっと新しいなと思ったし、会社に冷遇されているというのは今の時代だと感じる人も結構いるのでは無いかなと思った。

そしてもう一つ私が比較的新しいかなと思ったのが、ウェイランド社は人間の脆弱性を重く受け止め、強い人間を作るためマウスとエイリアンの遺伝子を掛け合わせた研究を行っており、注射すると遺伝子が取り込める薬品まで作っていたこと。

しかし生物兵器よりはマシなんじゃ無いかと。

個人的には「プロメテウス」の説明不足部分が気になっていて、今回の映画公開にあたって色々噂が飛び交っていたんだけど、エンジニアが人間を作り出した張本人たちで、イエス・キリストという完璧な人間を後から送り込んだところ殺されたことに怒っている、というのが本当のアイデアだったら非常に面白いと思うんですよね。(ダン・ブラウンが飛びつきそうだな)

エンジニアが作り出した人間が非常に脆弱で、呼吸できる気体の酸素濃度や、気温などの環境にかなり制限があることを、エンジニアが「失敗したな」と思っているんだったら、ウェイランドの研究は愚かではないと思うんですよ。


「人間の愚かさは感情で物事を判断すること」

この指摘は実は間違ってはいないと思う。実際非常に感情的な人が多いと感じるし、ちょっとしたことでキレ散らかす人がいる。

私としてはそれを逆手にとるのが一番いいなと思っていて、今まで、結構いじめられても放置したりしてたんだけど、最近は「怒る時はわざと怒れ」と思っている。それが意思表示になり、コミュニケーションになるからだ。

私は怒りの限りゴネて喚くやつとか超ガキだしそんなエネルギー残ってないよって思ってたけど、わざとやるのは有効だと思う。前の職場とか本当にすごくて、怒るとzoom会議なのに10分間他者を差し置いて喚き続けるやつとか普通にいた。大体30〜40代の男性で、中には日本有数の大学を出ている高学歴男性もいた。彼らはただキレやすい人たちなので、戦略にはなっていないけど。

私が今までフィクションで一番感情を排した決断ができるなと思った人物は「ゴールデンカムイ」のウイルクである。彼は人間でありながら、土壇場で非常に残酷な決断ができる人物で、仲間を殺したあと自分の顔の皮膚を剥いでいるんだけど、どんなに感情的な人間が嫌いでも私はそこまでできる自信がない。

エイリアンシリーズでは、アンドロイドが毎回のように感情に左右される人間を否定してくるのだけど、一応、本筋としては「いうても人間には良心がある」でいつも締め括られる。けど、この残酷な正論が私はいつも好きだ。これがなければ「エイリアン」ではない。


アンドロイドの「アンディ」がキーキャラ

アンディはディスクを追加されるとウェイランドの使者みたいになって残酷な決断が可能になるんだけど、それが、今までいじめられてたアンディではなくて万能感あって私はかっこいいなって思うわけ。だけど、先ほどの話に繋がっちゃうんだよね。

つまり合理性=善と言えるのか?というテーマ。

いや、これは前述の通りずっと付きまとう話だと思ってる。

時には残酷な決断を下さなければならない時もあるだろう。だけど長い人生を見ていくと、まあバランスかなと思う。残酷かどうかは主観だから。

優しければ脆弱なのか?残酷であれば強いのか?これは一生つきまとうと思ってる。

ちなみに残酷な時のアンディはずーーっとすごい悲しそうな顔してるんですよね。見どころだと思います。


それにしてもメタファーが強烈

今回の「妊娠・出産」のメタファーも強烈だった。

サナギと化しているエイリアンを攻撃すると女性器そっくりの口が開き、例の強酸性の液体を飛ばしながら中に棘とか仕込んでくる。確実にやられるとしか思えん。。

こんなの見て喜んでる人なんかいないだろ。。

前からずっと思ってんだけどやっぱりリドリースコットは人間のreproduce過程が嫌いか、なんか歪んだ信仰とか持ってるんじゃないだろうか。それか人間が嫌いなのかもしれんが。

冒頭でメンバーが一人妊娠していることがわかり超絶嫌な予感しかしなかったしプロメテウス見てる人は「オワタ」って思うだろうけど、まあ正解です。おもしろかったですよ(笑顔)


エイリアンがCGではなくてアニマトロニクス使用なのも良かった

ただ、もしかしたら予算的な問題かもしれないけどそんなにたくさん出てこなかったかな(尺の話ですが)。

前から言ってるけどCGはかなり頑張らないとどうしても違和感が残る。実写との融合がかなり難しいんだ、、私は、長年写真のレタッチをやっているから下手な合成がすぐにわかってしまうし、AIは皮膚をなめらかにしすぎ。どんなにメイクしても、加工しなければ普通は毛穴らしきものが写って、それがリアリティになる。

そこにきてアニマトロニクスやパペットは合成ではないので、ちゃんと作られていれば綺麗に現場の絵に融合できる。そもそも照明を考えなくていいのが楽なはず。CGの照明ってなんか非現実的なんですよね。まあ当たり前なんだろうけど。

あと最後の「アレ」は役者が中に入ってるそうです。


主人公は魅力的で「次のリプリー」になれるかもしれない

とはいえ、シガニー・ウィーバーは特殊だったよな。かっこいいし。4とか本当に最高。個人的には4がラストであるにも関わらず、「完璧なリプリー」だったと思う。色気も母性愛も最強だった。

今回の主人公は個人的にはラスアスのエリーそっくりだった。薄汚い環境に汚い格好でいるのもピッタリである。銃撃戦もできるし。

終盤で下着姿みたいになってるのは1のオマージュだろうか。


全体のテンポは非常に早くて構成力あると思った

ちょっと早すぎるか?!と思ったけど、私は遅いとしんどい人なので全然いいと思った。

とはいえ冒頭の、静かな宇宙を少しの間見せてくれるのはリドリースコットの作品だなあと感心します。意外と、あの、宇宙をぼーっと見てる瞬間が好きなんですよね。

 

2024年9月8日日曜日

箱男

私は安部公房の「赤い繭」が大好きで、あれが教科書に載っていること自体ご褒美だとしか思えなかった。

あんなの、勉強じゃない。国語、現代文は大好きで点数もよかったけど「赤い繭」は特に格別だった。森鴎外の「舞姫」がマイナス100点で「赤い繭」は200点といったところか。どこが満点なのかわからねーな。

「赤い繭」の最後で男は繭になるが、箱男はその名の通り男が箱に入っている。繭に「帰っていく俺はいない」が、箱男は実は箱に入っているだけで、脱ぐこともできる。

ではなぜ男は箱に入るのだろうか。

原作の小説の完読は間に合わず、途中までしか読んで無いのだが、とある男性は箱に入るとはどういうことなのだ、と「試しに」箱を被ってみる。成人男性が入れる箱なので、かなり大きい。洗濯機が納品時に入れられていた箱である。

そして文章内で彼は葛藤する。なぜか気分がいい。この気分がいいというのはなんだろうか。

例えば私で言えば、トルコのカッパドキアの「洞窟ホテル」なんかは最高だった。人類は古来より、「洞窟で寝る」ことで外敵から身を守っていたのでは無いだろうか。家屋よりはるかに安心できる感情が遺伝子に伝わっているのだ。

あと「寝袋」もいい。袋の中に格納されている安心感がある。頭が出ているのもいい。もしかしたら、赤い繭ってのはミノムシみたいな安心感を示唆しているのかもしれない。

だがこのストーリーは、「箱男は一つの町に一人しか、いてはいけない」という法則があるらしい。理由は不明である。私はやはりメタルギアソリッドを思い出してしまう。

スネークは一人でいい。一人しか、許されていない。と言う謎の法則である。

アメリカ大統領は一人しかいてはいけないと言うそういう感じの法則なのだろうか。

つまりクライマックスはこうだ。箱を被った男が箱を被ったまま、「箱男というアイデンティティ」を争って戦うのである。腕は出してもいいらしい。実に滑稽だが彼らは真剣である。片方は銃を持ち出す。箱を被っているので当たっているのかもわからないw

箱男を変態だと思う人もいるだろう。実際彼らのうちの一人は本物の変態プレイを好んでいる。

あと途中だけど原作でも彼(誰だかもはやわからんが)は、箱をかぶることで現実を覗き見できるのが楽しいようなことを言っていた。

そういえば映画ではひたすら女性の脚ばっかり見ていた。やはり変態である。変態なのだが、どうも様子がおかしい。彼らはまっすぐ生きることができない。なので女性ともまっすぐ関わるような感じではなかった。そして何よりヒロインが一人しか登場しないのだがこの「葉子」は、誰のことも別に特別好きではなく、ただ、変態プレイに付き合っているだけ。彼女は多分「暇つぶし」をしているだけだ。ファブルの「洋子」と大差ない。

そこには女性の敗北も勝利もなく、男性が幻想を見て終わっているような感覚があった。これは現実でもよく起きることである。男性は激しい夢を見て、女性を取り合うが、女性はその誰とも特別な関係を持たず、ただいなくなるだけである。そして男の夢は次のターゲットを探す。だから美女アイドルやグラビアが売れるのでは無いだろうか。


一つだけ言えるのは、赤い繭もそうだったけど作品に出てくる男性がひどく内向的な傾向にあると言うことである。他者と関わるのが苦手で、人間として生きることができなくなり、繭と化してしまう男。真っ当に生きられず、箱を被って生活する男。全部は読んで無いのだけれど、今のところ安部公房の作品はそれに解決を見出さず、ただ退廃的に、自分の殻に閉じこもって終わる作品が多い。


「メタフィクション」

原作は今佳境にあり、誰が「ノート」を書いているかわからない状況になっている。途中から筆記具自体が異なってきているのだ。しかし物語はあくまでもノートに書かれたことになっている。

さて映画内ではアランウェイクと同じセリフが出て来て、「このノートに書かれた通りに話が進む」なんて言い出す。しかも筆跡をコピーしてノートに書き足していく。誰かの話に書き足すなんて、アランウェイクだし、もしかしたらサムレイクがこちらに影響を受けているのだろうか。にしても、メタフィクションで落とすのはオチとしては少し陳腐な感じもする。


難解じゃね?!と思った人には

いや箱男は単純に、「箱に入った男性がすごくシュールで笑える」だけでも面白いと思いますよ。あんまり深く考えなくても、普通に笑えます。想像以上に走るし、想像以上に戦いますよw私としてはどうやって走ってるのかいまいちわからず、苦笑しております。