アカデミー賞受賞作品ということで、一応観とくか、くらいの気持ちで観たのですがなんかじわじわくる作品で、初見だと「なに?!」ってなるので2回目流すように見て、自己流の解釈を持つようになりました。
この映画は観る人によっていろいろと解釈が変わるのではないかと思います。共感のポイントなどがどこに来るか。
様々な要素が入っており、人によって感想が異なることでしょう。そういう点ではすごい作品だと思います。複雑に織りなすそれぞれの登場人物の心理描写が、一枚の織物のように仕上がってくる繊細さ。
映像も美しいですが、私は音楽のほうを高く評価したいと思います。
ストリングスなのですがこの作品の持つ微妙で繊細な心理描写を盛り上げています。メロディもなく、ただ不穏感がすごい。なんでこんなに不安になる音楽にするのか?と思っていましたが、だんだんと、ラストに向けてローズが荒れていくのを見ると、やはり合っているなと思いました。
そして、静かに事件は起きる。
(以降少しネタバレします)
これ皆さんはどう捉えたんでしょう。私、最初は偶然起きた事故だと思っていたんですけど……
2回目見たらなんとなく確信してしまいました。おそらくピーターはわかっていてこの事件を起こしたのでしょう。偶然に見せかけて。
2回目で、最初のナレーションがピーターであることを再認識する。
そしてピーターがどういう人格かは、それぞれのエピソードを積み上げていけばわかりますよね。
ピーターは一見優しい繊細な少年に見えますが、とらえたうさぎをかわいがるのかと思ったら、病理解剖の練習に使ってしまいます。ここでも驚きますが、次にとらえたウサギがけがをしていたので、フィルが楽にしてやれ、というと平気な顔して首折っちゃいますよね。ここでもちょっとこいつやばいなと思います。
極めつけが、「父は僕のことを優しくない、強すぎると言った」という言葉。2回目見るとそうかもしれない!!と確信が強くなります。
ピーターが母を愛しているのは本当だと思います。
それらをつなぎあわせると、偶然に見せかけた事故を起こす動機にもつながります。母親の障害をとりのぞいたんですよね。
なので、感動のストーリーとかではなくて、ミステリーなんじゃないかなと思いました。
フィルに同情するかは難しいところです。よいキャラクターですが、女性や弱い者をいじめるのはやはりよろしくありません。幸せな人たちの邪魔ばかりして、よほど孤独にさいなまれていたのでしょう。その点では確かにかわいそうなのですが……。
これをジェンダー問題として、ホモソーシャル問題として捉えると現代の男性のもつ苦しみを痛いほど味わうこともできます。彼が弟夫婦の関係に嫉妬し、ローズにつらくあたる理由も。
まあそういう観点からも、いろんな角度で味わえる作品だと思います。好きとは言わないし、サスペンスならもっと面白いわかりやすい映画がたくさんありますが、この「じわじわくる感じ」は秀逸だなあと思った作品でした。
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