2023年1月4日水曜日

HIGH LIFE

クレール・ドニ監督、ロバート・パティンソン主演の2018年の映画です。突如としてアマプラに現れたため、さっそく観てみました。

全体的にアート色が強く、パティンソン君が好きそうな世界だなあと思いましたが、アーティスティックなフランス人らしい画作りと、SFな内容が微妙にかみ合わず、特にセットや衣装が安っぽく、設定も甘い感じが気になりました。

ただ、表現したいものは伝わってきたような気はしています。

ストーリーは、宇宙における人間の繁殖能力の実験であり、パティンソン君を含め乗組員は犯罪者であり、実験体として扱われます。ひとりだけ、女性の博士が乗っていて指揮をとっていますが、この人がなかなかの曲者。

どうしようもない犯罪者たちの中で、ひとりだけ実験に精子を提供せず、無欲を貫く修道士のようなモンテ(パティンソン君)を好きになってしまいます。

まあ、なんというか、パティンソン君にはよく似合う役どころでした。

いつもあの冷めた目で状況を俯瞰しており、悪い奴は相変わらず無言で突っ込んでって殴ってますが、普段は寡黙で無茶苦茶冷めた態度で周りを批判しているだけ。

彼が、女博士に「色気を隠そうとしないのか」と言うシーンがあるのですがちょっと刺さりました。

博士は無欲を装い、自分では子供が産めないらしいのですが、欲は残っているのです。

なんか全体的にそういう感じの話で、途中で「ブラックホールのペンローズ過程の実験」をやると言い出すのですが、なんか、説明が不足していて、普通に失敗します。というか失敗するだろwと思いましたが…。

おそらくシナリオ的には、ブラックホールが何かしらこの絶望的な状況を変えてくれるだろうという筋書なのだと思いますが、インターステラーにも言えるけど人間ごときがブラックホールに干渉したら普通に死ぬだけだと思います……。 なんかもうワンクッションないとダメですよね…。

なので、どちらかというと閉鎖空間における男女の精神や欲の話と、生殖について考えるような、そんな感じのふわっとしたお話。

いきなり最初からパティンソン君が赤子をあやしてるシーンから始まるので、すごくデスストランディングっぽかったです。

でも、デスストって、SFが好きな小島監督の作品だから、ファンタジーとSFが見事に合体してて緻密な設定がそこにあるじゃないですか。

 

もし、ああいう風にならなくても、ふわっとしているならふわっとしているだけ、あいまいさをポエム化しきれていたら、いいなと思うのですが、

どうにも起承転結やテーマなどがあいまいなまま終わってしまうので、もったいないなあと思いました。 


パティンソン君の美しさを撮ることに関しては命を懸けているなと感じました。髪の毛を剃っているので、顔がよく見えました。天使のようにも、死神のようにも見える、不思議な存在でした。そして相変わらず芝居が生々しいというか。純度が高いですよね。よく海外ではgenuineと言われていますが、pureよりもっと科学的に純度の高い、なにものにも染まらない個性を感じます。


そして個人的にとてもよかったのがスタッフロールで流れる歌です。歌自体も良いですが、歌っているのがパティンソン君で、これがまた独特なんですけど、つぶやくように歌っているのに、音程がピシっと合っていてさすが音楽好き!普通に上手い。というか、音程が合っていて声質がしっかりしているので、ボソボソ歌っているのにちゃんと雰囲気が出てて音楽になっている。ブルースの声にすごい近いから、ぼっちゃんが歌ってるみたいでよかったです!

 

本当は音楽で活躍したかったらしいのですが、才能自体はあると思います。ただまあ、大衆受けはしないですかね。やっぱ芸術家気質なのかも。 


最近思うのですけど、「意味不明なもの」にぶち当たった時、

「なんやこれ、意味わからん!だからつまらない」という人と、

「これはなんだ!もっと知りたいぞ!おもしろい!!」という人に分かれると思うんです。

私は後者の人間でありたい。

前者の人間とはどんなに話をしても、どこかでぶったぎられて、それ以上世界が広がらず、そこで宇宙が終わってしまう。そんなつまらない人間にはなりたくないなと思いました。

 

新年早々w

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