2023年3月12日日曜日

Everything Everywhere All at Once 通称「エブエブ」観てきました

アカデミー賞を総なめにしようとしている恐るべきモンスター映画「エブエブ」。どんなもんやと観に行きましたがまんまとやられました。涙なしでは観られない、壮大でありながら、実に普遍的な日常の愛の物語でした。

「愛」をテーマにした映画はそれこそ挙げるのもアホらしいくらいに多数存在します。

このテーマで描くこと自体は全然いいんですけど、もう使い込まれて擦り切れてしまった、愛の物語をどう別の視点から料理するか、だと思うんですよね。

その点では100点満点を超えていると思いますね。マルチバースだし、別の宇宙にまで果てしなく物語を広げるのに、すごい勢いで小さくまとめるその手腕。広げた風呂敷を、あっけないほどにあっさりと、収束させるあの脚本力はすごいものがあるなと思いました。

別にSFにする必要もなかったと思うんですが、やっぱり面白いですよね。特に冒頭はマトリックスの1作目を思わせる面白さがあります。マトリックスでは平凡な会社員プログラマーが。エブエブでは平凡以下の主婦が。「世界を救ってくれ。本気を出してくれ」と懇願されるわけです。まずそこで最初の1/3の展開は楽しめますね。どういう法則でその世界が動いているのか。エブエブの場合はコメディ要素がかなり強いのですが、登場人物的には真剣そのものです。 

クリストファー・ノーランとかリドリー・スコットには絶対描けない奇妙奇天烈すぎるその世界観。あまりにも真面目な人だと耐えられないと思います(日本には多そう!)。

ジョーダン・ピールのノリとか、ゴールデンカムイの不真面目な部分とか斜め上の展開が理解できる人なら大丈夫だと思います!が、史上稀に見るカオス具合ではありました。

あと観客が女性だとさらにのめりこめるのではないでしょうか。

私もすごく共感するところがあって。

例えばあの時、バカな彼氏と結婚なんかしていたらどうなっていただろう。その後婚活パーティーでマッチングした人とちゃんと付き合おうと努力していれば?福岡移住がもっと早かったら?福岡ではなく、外国に移住していたら?それとも沖縄に引っ越していたら?どうなっていただろう。

女性には男性より少し多めの選択肢が用意されています。大きいのは「出産と育児」です。これによりキャリアが分断される人は結構多いと思います。実際妊婦の欠員補充で2回入社したことがありますが、復帰しても実質週の半分くらいしか働けないし、安定してきたと思ったら2人目を妊娠で、また産休。たまに仕事なめくさってる主婦もいて独身の私は結構イライラしました。

主人公のエヴリンが、「結婚しなかった自分」が別の宇宙でそれはそれは輝いているのを見て、「私はあなたなしであんなに輝いているのよと、旦那に見せたい」と懇願するのですが、そのセリフのリアル感よ。 

旦那にしてみれば、立つ瀬がありません。

ただ、今女性の生き方は多様性が叫ばれています。

結婚しなかったほうがよかった、というのは多くの既婚女性が一度は陥る感覚だと思うんですよ。

でも本当にそうでしょうか?

映画を観れば、答えは出ると思います。

私はその後の展開でかなり泣かせていただきました。

結婚したほうがよかったのか、しないほうがよかったのか、実はどちらも、正解ではないと思っています。

例えば、私は彼氏を振り切って別れてしまいましたが、うまくいかないのが100%わかりきっていたのです。だから絶対に間違っていないと言い切れます。

でもエヴリンはどうでしょう?彼女は自らその男性の手をとった。子供が産まれたときも喜んでいたし、今だってとても気にかけている。彼女が「輝いている」と思った別の宇宙の自分が「良い」とは限らない。その場の主人公の彼女は、正しい選択をしたのだと思います。

よく婚活をしている女性が陥る幻想、「結婚をすれば幸せになれる」という思いこみも違うんですよね。

自分が結婚したいと思う人がいたからした、でいいんですよ。

結婚したいと思う相手がいないなら、昔みたいに無理やりよくわかんない男性の支配下に置かれる必要はないと思いますね。

念のため言っておきますが、この映画は結婚の話ではありません。それがエヴリンの選択に強い影響をもたらしているだけです。

一番大きい問題は娘。娘は難しいですよね~、それに子供が親に逆襲するのってとても怖いところあると思うんですよ。

父親も問題ですし、税務署にいるおばさんも問題だし、娘の取り巻きも問題だし、別宇宙の人も同じ顔の人が存在する。けど、彼らにはそれぞれの幸せがある。

 

キャラクターとしては「ウェイモンド」が大きなキーパーソンじゃないかなと思いましたし、気に入りました。役者のキー・ホイ・クァンは、インディ・ジョーンズ魔宮の伝説で目立ってた、あの小さな中国人の男の子で、当時は「なんてうるさい少年だよw」って思ってたんですけど、、

驚くべきことに、彼の声があまり変わっていませんでした、、www

ですが!今回は、ウェイモンドは色んな宇宙に存在するので、それぞれバージョンが異なります。私は最初に指示を出してくる通称アルファ版の彼が結構好きでした。まあ、でもあれは、優秀だけど単なるミッションインポッシブルと言えば言え…。

やっぱりオリジナルが一番いいね、と最後は思えるのがこの映画の凄いところだと思いますね!

あと、ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンは本物のアクションスターで、ジャッキーやジェットリーと仕事してた人たちなので、ものすごいアクションがカッコいいですね。ちょっとむちゃくちゃなシーンが多かったですが、動きはやっぱり綺麗でした。

なのでSF設定を利用した無茶苦茶なアクション映画って感じだと思うんですが、私はやっぱり、これほどまで上手に「愛」を説明できる映画ってあんまりないと思うので、そこを一番評価したいです。 

また、アメリカ受けした要素は、やはりアメリカンドリーム。「不可能だと思い込まない」こと、「絶望を覆していくこと」というもうひとつの夢のあるテーマじゃないですかね。

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