日本の俗物的な景色に飽きて、パリが見たいなあと思って観に行きました(明解な動機)。
パリは、今まで私が旅行で訪れた中で一番洗練された都市で、一番驚いた街です。
「こんなのが現実に存在すると思わなかった」というのが正直な感想でした。
バンコクにも驚きましたが、バンコクがやっているのは豊洲ららぽーとやグアムのショッピングモールのいいとこどりです。それでもめちゃくちゃ綺麗でしたけどね。あと、そもそもタイ人は性格が良いのと、温暖な気候や美味しいご飯も相まって、最高な国ではありました。が、パリには勝てないですね。
パリの美しさというのは、伝統を真剣に守り通しているからこその美しさなんですよね…屋根裏部屋があこがれの場所になるのはパリくらいのもんでしょう。
なので、この映画を観て「いやこんな綺麗じゃないでしょ?」と思った方、騙されたと思って一度行ってみるといいと思います。遠いし、めっちゃ高いけど。私は親のはからいでアパルトマンに泊まれたんですけど、狭いのに快適なんですよねぇ。オシャレなの。
この映画、予告編では、もっとほのぼのとした話かと思ったんですが、そうでもなかったです。なにしろこのおばあちゃん、「パリ解放」の1944年に運命の男性と出会っているという年齢。早々に妊娠してしまうのですが、そこから人生は狂ったジェットコースターのように彼女を振り回します。
なのに、92歳で彼女は美しい微笑みでタクシードライバーと我々を魅了します。
もっと人生語ってくれないかなあ、なんて思っている時に日が暮れてしまって、彼女とは一度お別れをするのですが…。
この後の展開で結構号泣なんですよね。なんていうのか、美しい終わり方だと思いました。
最初、このストーリーが始まった時はタクシードライバーのシャルルもやる気がないし、なんでこんなに寄り道するんだ、とか思うんですけど(正直車のシーンが多くてだるい)、
ところどころで、歴史を感じるモニュメントなどを見て涙ぐむご婦人を見ていると色々あったんだなとは思ってましたが。
彼女の人生は失敗だったかもしれないし、シャルルがつらそうに生きているのを見て、きっと同情し何かバトンタッチできないかと思ったのでしょう。偶然の出会いから、ここまで広げられるのはフランス人らしい展開だなと思いました。
フランス人って、怖いのかなと思ってましたがそうでもないです。
すごく軽やかで明るい。彼ら多分わかっているんだと思うんです。散々、世界大戦で虐められて、でも基本的に人類はみんな友達なんだと。だけど、怒るべき時はしっかり怒らなければならないと。
おばあちゃんの過去で怒りのあまり恐ろしいことをするシーンがあるのですが、私は痛快だなと感じました。しかし彼女の人生はそれでさらに窮地に追い込まれてしまいます。本当に、彼女もつらいことだらけだったんですよね。その、フランス人の「怒るべき時は徹底的に怒る」この激しさがすごくいいと思っています。
彼女の人生はもしかしたらフランスという国の歴史と同じなのかもしれません。
人生はつらいし、次から次へと不幸なことに見舞われるけど、でも、今日のご飯は美味しいし、ジェラートも美味しかったでしょう?そして、もしかしたら、今日あなたが拾ったお客さんが、幸運を招いてくれるかもしれない。親切にしたらね。
というライトなメッセージなのかもしれないけど、すごくストーリーテリングが上手で、きちんとしみてくるのがよかったです。
また、邦題は非常に残念です。このタイトルは、おそらくフランスにあこがれを抱く日本人のためにつけたものだと思われます。それ自体は成功していると思います。今日なんて、GWだからか超満員でしたよ。一日、一回しか上映しないのに。だけど思ったより内容がいいから、クチコミで広まってる可能性もありますね。
原題は「Une belle course」、これはフランス語がわからなくてもなんとなくわかりますね!「美しい旅路」ということですが、この旅は人生のことを言っているのだと思います。タイトル最後あたりできちんと回収されるので、理解できていると面白くなるかも。
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