これから観る人も多いと思うので、ネタバレしない程度に感想を書きたい。
一番言いたいのは、主人公の眞人がとにかく可愛いということだ。
始まって数分で大変気に入ってしまった。
こともあろうに、疎開先では「ぼっちゃん」「ぼっちゃま」と呼ばれている。
眞人の父親は戦争の軍需産業で儲けており、自宅はお屋敷になっている。誰の目から見ても豪邸だ。
なので眞人がぼっちゃまと呼ばれるのにはなんら違和感はない。
ところで、なぜ舞台を戦時中にしたのか?!と違和感を持ち調べたところ、つまりあの眞人は宮崎駿監督本人なのではないか?という推測が浮かび上がり
さらに調べたところ、以下が一致。
・宮崎駿監督は裕福な家の子供だった
・父が軍需産業をしていた
しかも、母親がでてくるがネットに載っている写真そっくりである。髪型をわざとかくらい似せていた。つまりあれは宮崎駿監督なのだ。
私が眞人で気に入ったところはその端正な顔立ちやまっすぐな視線以外にもある。今の時代ではあまり見ることのできない、硬派な気品や品性である。良い意味でプライドが高いところがよかった。なのに、自分がミスるとすぐに謝るあたりは、しつけがされているし、素直である。ひとりになれば母を思って泣くところなど本当にかわいらしい。
また、危険を感じると自ら様々な道具をかき集めて武器を作り始めるところもよかった。
宮崎吾朗監督が、自分の作品に自分を登場させているのだとしたら、アレン王子ということになるが、私はアレン王子も大好きではあった。
しかし、眞人には勝てないだろう。眞人はびっくりするほど自ら戦う意志が強い。不愛想だがとにかく気が強い。宮崎駿監督らしいキャラだと思っていたらほぼ本人だったわけだ。
アレン王子は自分の在り方に疑問を持ち、生き方は模索している最中で、その弱々しい感じに共感したが、眞人はどちらかというと生まれつき戦う王子様である。
さて、私はもうひとつ有名な作品の主人公を思い出した。宮崎駿監督の弟子とも言える、庵野秀明監督が生み出した碇シンジである。
私はなぜか昔から碇シンジが嫌いであった。理由は色々あるけど、男性の醜い面を赤裸々に描きすぎていて、好きになれなかった。作品の傾向としても、都合よく美女3人が出てきてからんでくるのも好きではなかった。
しかしあれが庵野監督本人だとしたら…。
私が果たして宮崎駿監督のことが本当に好きかどうかは疑問がある。
今までの映画を観ていると、もののけ姫あたりからとにかくぐちゃぐちゃな敵や気持ち悪い生き物が大量に出てくるようになった。監督が病んでいるのか、もともともそういう志向だったのか…。なので本人の精神のありかたに少し疑問を持っていた。
庵野監督はシン・エヴァンゲリオンでようやく「ハッピーエンド」というのを作れたんじゃないかなと感じた。自分の中のわだかまりに決着をつけたんじゃないかなと思った。
今回の宮崎駿監督もそんな感じがしたのだ。
宮崎駿監督の母親がずっと病気だったのは、実は鈴木敏夫プロデューサーのポッドキャストで初めて知った。彼は話がうまくて、するすると内容が入ってくるんだけど、母親が病気の最中料理をしていたから鈴木さんにもふるまってくれたのだそうだ。
個人的には、ナウシカの時から「ナウシカは監督の理想の女性なんじゃないかなー」と思っていたり、その後も女性が活発に活躍するアニメーションを観ては、おそらく彼の理想なんだろうなと思っていた。そして今回の眞人の母親ももれなくそのタイプである。
監督は、今回の作品で眞人に母親に対するわだかまりを解決させていると思う。つまり、彼自身が永遠にあこがれてやまない母親に対する思いをやっと昇華できたのではないかと。
今回は、監督の自伝の側面からの感想というか解釈を書いたが、物語本体に対する考察も書きたいと思っている。が、完全なるネタバレになるので、別のところに書いて後日公開できればしようと思う。
作品全体の感想としては、相変わらず清潔感のある行動力と思い切りのよい主人公、テンポよく進むキレのあるストーリー、謎が謎を呼ぶミステリーのような展開、90%がメタファーではないかと言えるような奥が深いたとえ話ファンタジーだったのではないかと思う。個人的な思いを昇華させる作品にしてはボリュームも表現も盛りだくさんだ。
味で言えば虹色だけど、美味しかった。
ところで先日お高いワインというのを試飲したのだけど、口に含んでから飲み込んだあとまで、大体8種類くらいの味がした。つまり「いいものは複雑さを内包している」ということだと思う。
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