原題は「BOSS LEVEL」であり、最初からレトロビデオゲーム画面のような演出になっており、実際にアーケードゲームが出てくるシーンもある。
いわゆるループもので、あまりにも出だしから激しい戦闘に巻き込まれるため、最初は主人公がどうしてこうなったのか思い出す時間すら与えられない。最初はアクションものでギャグなのかなという印象しかない。ここでチープな映画だと見限ってしまうと少し勿体無い。
実は一応ちゃんとしたSFであり、主人公の元奥さんは大変優秀な科学者である。
やっと一ヶ月前(ループに入る前なので「昨日」になる)の記憶を反芻する機会を得た主人公。
デルタフォースの任務に没頭し、妻子をほったらかしにしたため離婚され、軽薄に気の赴くまま、女をとっかえひっかえ抱いていた主人公。だが元妻は、主人公の以前の気概を見込んで、ある重大な任務を課していたのだ。
主人公がアホで軽薄すぎるので、気づくのに恐ろしく時間がかかっているが、それが逆にリアルだし、我々にとっても理解しやすい内容になっていた。
主人公がループを出なければ、世界が崩壊する。この辺はちょっと矛盾を感じた。主人公が何度も世界の終わりを見るという現象は、果たしてループでもありなのだろうか。
それはともかく、この体力や戦闘能力がずば抜けている以外どこか軽薄でポンコツな主人公が、実によくいる「うだつの上がらない」「パッとしない」「いい加減な」男であり、感情移入しやすいと同時に、こういう人に限って息子は溺愛してたりするので、実に息子とのやりとりが微笑ましく、共感しやすい。息子も男の子なので、厳しくて真面目な母親よりは本音を男に漏らす。だが息子は母を笑顔にする方法を考えていて、その辺も健気で胸を打たれる。
本当は主人公も妻と子供の元に戻りたいと思っている。それを知ってか、妻はこの重大な任務を彼に任せたのだ。つまりこれは試練だ。壮大な、試練を乗り越えることで、男はまた妻子と一緒になれる。「世界を救う任務」=「再婚」という実に地に足のついた内容になっており、なかなか唸らせる脚本である。構成がとても上手い。
何度も死ぬシーンは正直グロいし、首を何度も斬られ、「銃より痛い」なんて言っている。かなりのタフガイでもある。彼、実は痛みを毎回ちゃんと感じているのである。発信機が歯に埋め込まれていると察してなんと自ら歯を抜くくらいだ。12モンキーズのブルースウイリスかよ。
だけどこいつ、口調も態度も軽薄だがループを抜け出す方法はちゃんと模索しており、ループを利用してミシェル・ヨーに剣術を習ったりする。ループを繰り返すと記憶が残っているため、初対面のミシェルに次のレベルの剣術を習うなどしてレベルアップしていくのだ。
(それにしてもカフェでグダってたらミシェル・ヨーが普通に入ってくる展開は、笑った)
ループものを見ていて思う。
人は諦めなければ必ずレベルアップできるのだ。要はやるかどうかだ。
こんな胸熱な内容でありながら、主人公が最後まで軽薄なのがとてもいい。アメリカ人らしい性格だ。
そこにあるのは普遍的な愛であり、大袈裟に演出や強調されたものでもない。
最後の任務に挑むときの彼のセリフなんて、「What the hell」である。彼の口癖だ。
人生なんてこのくらい簡単な気持ちで、天命に挑むべきなのかもしれない。