2026年2月13日金曜日

アマプラで面白かった映画(16)ギルティ

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デンマークの映画で、全編デンマーク語で展開するので吹き替えを激しくお勧めする。原語は原語でまた緊迫感ありそうなのだが、字幕をずっと追い続けるのがしんどい。

なにしろ、主人公が部屋から出ないのだ。最後建物から出るかと思ったが部屋からしか出なかった(笑)

「つまらない可能性」は確かに、考えられた。だがちゃんとセリフを聞いていると、まるでラジオドラマのようにグイグイ引き込まれる。

主人公は緊急通報司令室のオペレーターで、以前は現場に立つ男であった。

次から次へと通報電話を取っていく中、とある女性から自身が誘拐されているらしい通報が入るのだが・・・

あまり内容を言ってしまうとつまらなくなるのだが、ただの誘拐事件ではなかったとだけは言っておく。驚きの展開を見せるが、全ては電話越し。誘拐犯と思われる夫とも会話するし、家に置き去りにされているという子供との会話もある。電話だけで全てはわからないし、現場を見ても、どうしてそうなったのかはすぐには警察官もわからない。子供も、親のどちらが悪いのかはわからないし、基本的には母親の味方になりがちなのだが…

電話でも、実際に捜査をしても、誰が本当のことを言っているのかは、すぐにはわからないのだ。

「交渉人」という素晴らしい映画がある。ケビンスペイシーを尊敬するきっかけになった映画だ(彼は軽犯罪をいくつか犯しているようだが、役者としては非常に優秀だと思う)。この「交渉人」は、電話特有の心理操作を利用して、犯人を誘導するという面白いテクニックを使っていた。今回もまさに、電話ならではの誘導や心理操作のテクニックが必要だった。最後の最後まで、主人公は電話の相手を説得できるよう試みる。それが成功するかどうかが気になって、最後までたった一つの吐息、雑音すら、聞き逃すことはできない。

そして、人間のコミュニケーションには限界がある。言葉など、あまり頼りにならないことも再認識する。それでも私たちは、言葉でしか分かり合えないことがほとんどだ。だから、もっと言葉を大事にしようと思った。

また、一切部屋から出ず、音声だけで物語を進めるという、低予算の一見映像的につまらない映画でここまで面白くさせるというその演出テクニックや構成、アイデアなどは本当に素晴らしいので、賞賛を贈りたい。

ちなみに個人的には、ずっと見ていなければいけない主人公が飽きのこないイケメンだったのと、時々痛いくらいの沈黙で緊張感を持たせてくれる演技が素晴らしかったと思うし、脚本は大いに賞賛されるべきと思う。

2026年2月11日水曜日

鬼滅の刃を最後まで読んで思ったこと(ネタバレあり、批判あり)

世の中にネタバレが溢れすぎていていつも食らうので、ついに鬼滅を最後まで読むことにした。

で、読んだ感想や思ったことをまとめて書こうと思います。

私はアンチではないが、正直鬼滅がなんでそんなに人気なのかわからないというところもあるんだけど、他の人気作品よりは話がわかりやすいので、追っかけてきた。時々アニメがやってることすら気づかなかったため、(遊郭編が苦手すぎて)無一郎にハマるのがだいぶ遅くなってしまったが…。

全部書いたあと読んでみたら、かなりの怪文書になっていたので、あんまし深く考えないで鬼滅のファンやってたい人は読まない方が良いかもしれませんw


キャラクターについての感想・考察

まずは推しの無一郎

無一郎が死ぬことは各所で激しくネタバレされていた。なんならGoogleのサジェストに入ってくる始末w

無一郎が可愛いなと思ったのは、天国に行って開口一番お兄ちゃんに「褒めてくれないの?頑張ったのに」と言ったことである。無一郎が戦う理由は、兄を殺した鬼への復讐である。その復讐を一応遂げられたということで、褒めて欲しかったのだろう(だが有一郎の気持ちを考えると、そこまでやって欲しくなかったというのが本音である)。

兄の仇を打って堂々と天国に来るのが無一郎の悲願であったに違いない。

私はそれだけでいいと思っていた。そもそも記憶喪失の時の無一郎はやたら「死」という言葉を口にしていた。これは彼がうっすら家族が全員死んだことを理解しており、自分も本当は向こう側に行きたかったからではないかと思っている。

怒りと憎しみだけで戦い続け、勝利しても後には何も残らず、彼を迎える家族は現世にはおらず、新しい家族を作るしか彼には安らぐ方法はなかったと思うが、それにしても若すぎるので難しかったかもしれない。

だからこそ、「幸せになるために生まれてきた」「幸せだった」というセリフは少し頓珍漢な気がしていて、いまだに飲み込めずにいる。不自然な気がするのだ。

兄が死んだ後、親方様に拾われて、充足した生活を送り(正直かなりリッチな生活)、友人もできて幸せだったから、苦しいことばかりじゃなかったよ、兄さんが心配することはなかったんだよ、と兄を安心させるためのセリフだったらいいと思うのだが…

また、戦闘中の「失血で死ぬ前に役に立たなければ!!」と言う感じの独白も気になった。

無一郎は他人のために動くことで無限の力を出せると言われている。それは素晴らしいことなのだが、自分の死を無駄にしないために無理矢理でも動くんだと言う強い意志は、まるで太平洋戦争の特攻隊のようだなと感じてしまった。

米軍では命を大事にする戦い方が主流で、先日「ウォーフェア」を見た時もそれをひしひしと感じた(大怪我を負っている兵士2人を搬送するために、外部からも兵士8人くらいが集結するのである)。日米どちらが正しいかはここでは議論したくないが、自ら命を他人のために使うと言う考え方は令和にはちょっと合わないかなと感じてしまった。そもそもだが、人間が一人死ぬと、兵士を補充しなければならないが、柱の場合もそうだが、人員にはそもそも限界があるのだ。舞台が大正だからいいじゃないか、で逃げたくないのは、読者は令和の人間だし、役に立ってから死にたいという考え方になってほしくないと思うから。

無一郎はひたむきだし純粋なキャラクターなのだが、炭治郎にも通ずるリアリティに欠ける異様な自己犠牲的正義がある。無一郎に関して残念なのは死んだことよりも、その思考回路の不自然さである。見方を変えると、ちょっとぶりっこさせすぎたと言う感じがした。ただ、兄にすごい執着を持っているのが、無一郎の唯一人間らしい一面だと思うので、最後までそれがあったのはよかった(彼は両親より兄の方に強く引っ張られていると思う)。

死んだことは残念だと思うが、家族と死に別れたトラウマの払拭はかなり時間がかかるのではないかと思った次第。極論を言うと死んで幸せだったとも言える。


不死川実弥と、やたら虐待される母親たち

彼は生き残ったが、彼もまた、家族をすべて失ってしまった。しかも目の前で、最後の家族を。

実にしんどかったのが、あの世で「母さんを背負って地獄を歩くよ」と言った後である。なんとDV旦那が母を連れて行ってしまうのである。

私は思わず考え込んでしまった。この作品は一体何が言いたいのだろう。

鬼滅は終盤は特に「母親」が酷い目に遭うシーンがやたら挿入されている。

童磨の母は旦那の浮気に怒り狂った。縁壱の母も子供の処遇でブチギレている。伊之助の母親も旦那の暴力に怒り、家を飛び出し、童磨のところへ行ってしまう。そもそも実弥の母が最初のDV犠牲者だった。そして死んだ後もDVを受けるようだ。

この4名の母親のいざこざの原因はすべて夫の暴力やそれに近い子供の処遇などである。

これについてはどうも作者が母親に起きる酷いことは大体夫が原因だと批判しているような、そんな感触を受けた。

そんな恐ろしいものを見てしまった実弥は今後どう生きていくのだろう。多分女性に優しい男に育っていくんだと思う。その兆しが、禰󠄀豆子の頭を撫でるシーンに込められているんだと思う。いつもは怖い性格の実弥だが、父の二の舞には絶対なりたくないだろう。

それにしても実弥のエピソードは後味が悪くてザワザワした。少年誌とは思えなかった。


無惨

ずっと鬼舞辻無惨の目的目標がよくわからなかったが、珠世さんが言うには彼は死を極端に恐れている。また変わることも恐れている。おそらく日本国家の腐敗した状況を示すものではないかなと感じた。(高市政権で変わりつつあるものの、、この漫画が執筆されていた時期を考えると、である)

最終決戦で逃げ出すシーンがあることからも、彼は正々堂々と戦うタイプではない。剣士でもないので、黒死牟や猗窩座のようなナイスファイトを見ることもできない。

彼はやたら優秀な鬼を作ることに執念を燃やしていたようだが、最後に炭治郎を鬼化させようとしたことから、なんとなく真意が見えた気がした。

炭治郎を鬼化させるのは蛇足にならないかなと思っていたのだが、実際は必要なエピソードだった。炭治郎が鬼になって、人間に戻ろうとした時に、無惨が文字通り足を引っ張ろうと必死だった。

「私を一人にしないでくれ」

に全ての真意が込められていると思う。

無惨はああ見えてやはり寂しかったのではないかと思う。永遠に生きてくれる仲間が欲しかったのではないか?

最近、クロエ・ジャオがポッドキャストで「死が怖い」と本気で言っていたので、実際そういう人はいるんだと思う。永遠に生きたいけれどそんなことをしている人は無惨の他にはなかなかいない。強いて言えば、それは珠世だったが、珠世は何千年経とうと無惨を好きになることはないだろう。

ここが鬼滅の面白いところなのだ。

永遠の命を手に入れたところで、相手がいない。無惨は一言も寂しいなんて言わないけれど、本当は寂しかったんだろうなと思った。

なお珠世のことが好きとも一言も言っていない。

好きとは一言も言っていないが、縁壱の時代から連れて歩いている。お気に入りに決まっている。本当は嫁にしたいだろう。だって美人だし、鬼なのだから永遠に一緒に生きてくれる。好きにさえ、なってくれれば。

少年誌だしあまりちゃんとは教えてくれないだろうけど、実は

無惨は珠世のことが好きで、無理矢理未亡人にして自分のものにしようとした
連れて歩いていたら、縁壱に邪魔されて半殺しにされた
そのインシデントで、珠世は自由に。愈史郎を味方につけて(愈史郎のことは好きなようなので)、実質無惨は失恋したことになる。

この時から無惨はずっと珠世の代わりを探して、あらゆる人間を鬼にスカウトしてきた。だがなかなかうまくいかない。老若男女、さまざまな鬼がいたが、より強い人間が強い鬼になる。だから最後に炭治郎をスカウトしたのだろう。

つまり鬼滅は、無惨っていう死を恐れる男の傍若無人な「伴侶探し」を止める物語だったのだ。実に滑稽なのだが、珠世のことが好きと言う事実を伏せればまあ少年誌むけに描くことはできるんだなと思った次第。


珠世と愈史郎

作者が鬼滅が始まる前から作っていたキャラクターだけあって、一番の功労者である。アクションはほとんどできないのに素晴らしい活躍をし、プラトニックな恋愛であり、女性にとっては理想的な愛の姿がそこにあった。

少年誌の主人公は炭治郎のようなどこにでもいる少年でなければならないし、できるだけアクションをし、できるだけひたむきにトレーニングをする男子でなければならない。だから珠代を主人公にするわけにはいかなかったと思う。

だが実質鬼滅の主人公は珠世と愈史郎だと思っています、、、

もし女性向けの漫画にしたら、そこにはバトルはないけれども、素晴らしい恋愛ものになったかもしれません。


2026年2月7日土曜日

HELP 復讐島

予告編ではいかにもコメディ風で、パワハラ上司に復讐を!と言う雰囲気丸出しだったが…

実際見たあとの気分は少し複雑ではあった。

ブラッドリーに問題はかなりあるが、リンダにも問題がある。

この映画は平たく言って、サム・ライミ風、フェミニズム映画なのかもしれない。


リンダはバツイチであり、かつてDV旦那を亡くしている。彼女が手を離したので、旦那は死んでしまった。リンダは限界に来ていた。喧嘩した時の彼の暴力は凄まじく、彼女が口にできないようなことをされたと言う。

それでもリンダは辛抱強く、彼が変わるのを待ち続けた。それでもある日、限界が来てしまったのだ。 

そして今回のブラッドリーである。


ブラッドリーは前社長が亡くなったため、急遽交代で就任した若い新社長である。リンダよりおそらく年下であろう。イケメンだし若々しく、はつらつとして島で脱いでいた時もとても綺麗な肉体をしていた。だが、彼は自称モンスター。彼の家庭も問題があり、おそらく帝王学みたいなものを叩き込まれているため、下々の社員、特に女性社員に対しては蔑む力が強く、彼と同じような若くてピチピチの男性とノリノリで仕事をするのが好きなタイプだ。正直ホモソーシャルの類を感じた。


リンダはこの男と無人島に置き去りにされた時も、骨折して動けない彼の面倒を見た。また今回も、優しくしてしまった。「変わってくれるだろう」と信じて。元旦那との悲しい記憶を塗り替えるため、そう、まだ「男」という生き物に望みをかけていたのである。

だがブラッドリーはなかなか変われない。

そもそも相手が悪い。自称モンスターだし、おそらく代々経営者みたいな家系なのだろう。経営者はサディストやサイコパスが多いと聞く。多くの社員の生活を預かっているので、普通の神経だとやられてしまう。恨みも買いやすい。

リンダは強引にこのサイコパスを手懐けるため、わざとギリギリまで放置したり、包丁を見せびらかして片時も手を離さなかったりと用意周到である。ブラッドリーは何度か屈したようなそぶりを見せるし、元々頭の回転が良い男だ、用意した嘘のような謝罪や敬意の言葉も並べ立てるし、なんなら体まで売ろうとしてくる。


無人島でサイコパスと二人きり。女性が圧倒的に有利な状況の中、さまざまな可能性が考えられ、サム・ライミはほぼ全てを映画上に再現した。息を吐く間もないほど、そのさまざまな可能性が展開され、最後の方になかなかなどんでん返しがある。

リンダがブラッドリーを追い詰め、いかに今まで自分のサバイバルスキルをフル活用して二人を助けてきたか、ブラッドリーに言わせながら、涙を滲ませて振り返るシーンが切なかった。

今回も頑張った。男を愛で変えられると思っていた。だけど、今回も、男運が悪かった。こいつも、変わらない。

もう、期待などできない。


その一瞬の絶望は通過儀礼となり、女性は大きく飛躍する。誰かが変わるなど、期待してはいけない。男に愛されるなど期待してはいけない。自由に生きなさい。


サム・ライミが60代で出した結論だ。

無論、最近じゃあ無人島で恋愛ものってほんと少なくなりましたからね。一昔前なら間違いなく恋愛ものになっていたでしょう。このくらいが時代に合っているのかもしれません。

それにしても、過去に男を捨てて、アウトドア(サバイバル)が趣味、仕事に生きる中年女となるともう自分と被るところがありすぎて笑ってしまいます。

2026年2月1日日曜日

アマプラで面白かった映画(15)コンティニュー

 https://eiga.com/movie/94887/

原題は「BOSS LEVEL」であり、最初からレトロビデオゲーム画面のような演出になっており、実際にアーケードゲームが出てくるシーンもある。

いわゆるループもので、あまりにも出だしから激しい戦闘に巻き込まれるため、最初は主人公がどうしてこうなったのか思い出す時間すら与えられない。最初はアクションものでギャグなのかなという印象しかない。ここでチープな映画だと見限ってしまうと少し勿体無い。

実は一応ちゃんとしたSFであり、主人公の元奥さんは大変優秀な科学者である。

やっと一ヶ月前(ループに入る前なので「昨日」になる)の記憶を反芻する機会を得た主人公。

デルタフォースの任務に没頭し、妻子をほったらかしにしたため離婚され、軽薄に気の赴くまま、女をとっかえひっかえ抱いていた主人公。だが元妻は、主人公の以前の気概を見込んで、ある重大な任務を課していたのだ。

主人公がアホで軽薄すぎるので、気づくのに恐ろしく時間がかかっているが、それが逆にリアルだし、我々にとっても理解しやすい内容になっていた。

主人公がループを出なければ、世界が崩壊する。この辺はちょっと矛盾を感じた。主人公が何度も世界の終わりを見るという現象は、果たしてループでもありなのだろうか。

それはともかく、この体力や戦闘能力がずば抜けている以外どこか軽薄でポンコツな主人公が、実によくいる「うだつの上がらない」「パッとしない」「いい加減な」男であり、感情移入しやすいと同時に、こういう人に限って息子は溺愛してたりするので、実に息子とのやりとりが微笑ましく、共感しやすい。息子も男の子なので、厳しくて真面目な母親よりは本音を男に漏らす。だが息子は母を笑顔にする方法を考えていて、その辺も健気で胸を打たれる。

本当は主人公も妻と子供の元に戻りたいと思っている。それを知ってか、妻はこの重大な任務を彼に任せたのだ。つまりこれは試練だ。壮大な、試練を乗り越えることで、男はまた妻子と一緒になれる。「世界を救う任務」=「再婚」という実に地に足のついた内容になっており、なかなか唸らせる脚本である。構成がとても上手い。

何度も死ぬシーンは正直グロいし、首を何度も斬られ、「銃より痛い」なんて言っている。かなりのタフガイでもある。彼、実は痛みを毎回ちゃんと感じているのである。発信機が歯に埋め込まれていると察してなんと自ら歯を抜くくらいだ。12モンキーズのブルースウイリスかよ。

だけどこいつ、口調も態度も軽薄だがループを抜け出す方法はちゃんと模索しており、ループを利用してミシェル・ヨーに剣術を習ったりする。ループを繰り返すと記憶が残っているため、初対面のミシェルに次のレベルの剣術を習うなどしてレベルアップしていくのだ。
(それにしてもカフェでグダってたらミシェル・ヨーが普通に入ってくる展開は、笑った)

ループものを見ていて思う。

人は諦めなければ必ずレベルアップできるのだ。要はやるかどうかだ。

こんな胸熱な内容でありながら、主人公が最後まで軽薄なのがとてもいい。アメリカ人らしい性格だ。

そこにあるのは普遍的な愛であり、大袈裟に演出や強調されたものでもない。
最後の任務に挑むときの彼のセリフなんて、「What the hell」である。彼の口癖だ。


人生なんてこのくらい簡単な気持ちで、天命に挑むべきなのかもしれない。