2019年12月23日月曜日

「オリジン」やっと読み終わった~

魔のトルコ旅行直前に買ったので、かれこれ半年以上この本を持ち歩いていたことになる。

かつて、「鋼の錬金術師」でモチーフになった非常に興味深いテーマ。

「人間は科学的に創造できないのか?」
「生命はどのようにして最初生まれたのか」

「そして人はどこへ行くのか?」

について、延々と追求している。

正直言って、冗長な内容であり、前半はかなりダレる。

科学者の残したデータにアクセスするためのパスワードを推測するのにかなりの時間をかけている。

科学者の秘密基地にたどりつくまでに私がダレてしまった。

しかもキャップスロックかけちゃったり、「&」マークをアルファベットに直したりとひっかけが多すぎ。

やっとこさ、開錠したデータも、これまた長い。何しろカーシュってのはスティーブジョブズの5倍くらいは前置きして喋り続ける。
変態の領域に入っていると私は思う。正直このキャラ、好きになれない。

この天才コンピューターサイエンティストが生み出したAI、ウインストンも一筋縄ではいかない。
頭がいい故に、冷徹な判断を下すことも多く、やはり人とは違うのだなと感じる。


パルマリアン・カトリックが敵ともいえるのだが、途中からどうも本当の敵は違うところにいるらしいとうすうす感じ始める。
いつものように、黒幕はまったく予想しない人物だ。

だが、今回も、私は最後の最後らへんで、気づいてしまった。

だって、他にいない。もう本のページ数が残っていなかったのだ。
ひとり消え、ふたり消えた。これ以上彼らが疑われるような行動を見せるとも思えない。

じゃあ、こいつしかいないじゃないか。

そういえば、実行可能なのはこいつだけだ。

しかも理由は、明確にわかるように、伏線が貼られている。

そういう意味ではあっけなかった。

そういう意味では、あまり面白くないというか、「それじゃあ、よくある映画と同じじゃないか…」と思ってしまったのだ。

天使と悪魔のように、黒幕がはっきりしていて大どんでん返しという面白い筋書は、無くなってしまったようだ。

テーマとしての「命のはじまり」


テーマとして、「命はどうやって始まったか」を科学的に証明する過程はおもしろかった。今回の話は、それだけで終わってもいいくらいだ。

「人類がどこへ行くか?」の結論は正直まったく面白くないので、あまり期待しないほうがよい。

しかも、カーシュが冒頭でその話を宗教のトップクラスに話すのだが…

そのオチも、いかがなものかと思えるような結果となった。

一体何人が、この科学的発表のために犠牲になったのか…
そう考えると、恐ろしい話であった。

要は冒頭でさんざん盛って、最後はあっけない結末、といった感じである。

題材が、あまり新しくなかった。

前回は確か、人間は人口が増えすぎたから、殺してもいいみたいな話だった。
今回は、人類の起源と、その行く先。

つまるところ、人間もいつかは絶滅するであろう。
しかし、それはあくまでも、想像の範囲内の話で、
カーシュがどんな科学的な根拠を述べようが、
「人間助かるよ」という結論を出せばそう聴こえるし、
「助からないよ」という結論に導くのも簡単なのだ。

しかし、ダンブラウンは、さんざん引っ掻き回しておきながら、
最終的に
「愛は無限にあふれるエネルギーだ!」
謎の美しい締めをしている。

しかし、それが中途半端なのだ。

極端なテーマを突き詰めていけば、やはりカーシュはろくでもない人間だった、としか私には言えない。

結局のところ、彼の研究で何人かの人間が死んでいるのだから。

個人的に、ダンブラウンは、宗教をテーマにきちんと話を書いたほうがうまい。
今回、無理にAIなどに挑んだために、話がターミネーターになりかけている。
それ自体はある意味、面白いのだが…
実は、前半は完全にパルマリアンチャーチを敵にまわした話で、
そこまでは、天使と悪魔と同じような展開をしているのだ。

「愛が科学に勝つ」的なまとめ方でもよかったかもしれないが、
宗教と科学の融合としては、微妙な結果となったかなという、
残念な、結末だった。
ただ、最後のどんでん返しは、途中から予測がつくものの、それなりに面白い。

ダンブラウンさんも年なのか、聖書からよい話をひっぱりだして「愛」を肯定したり、
かと思うと、「宗教には犠牲がつきものだ」をもっともらしく言ってきたりと、
読み手を翻弄している感もある。

しかし、愛は大事だ。
愛が無限であることも、あれが宇宙であることも、本当である。

むろん、愛というのは延々と生み出すのは実は大変なことなのだ。

だから、おっさんずラブでも言っているけど、
「好きになる」ことは素晴らしい体験なのだ。

我々も、自分の好きを否定しないで生きよう。

(とわたしも美しく、締めてみた)

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