2020年3月10日火曜日

蛇にピアス 小説のほうが断然面白い

GYAOで映画が無料配信されているが
本が前から気になってたのでキンドルで買った。
完読するまで3時間ほど。先が気になってスマホを置くのも憚られるので読むのに苦労はしない。

これ、祖父が読んだというんだが…
意味わかったんだろうかw

簡単に言うと、表向きは身体改造の話だ。
映画も、まだ全部見てないけど、最初は歯列矯正、bracesの広告が映る。
次に筋肉もりもりの人。やはり、身体改造。
そして、次にやっと、主人公が声をかけられるのが、「スプリットタン」のアマである。

この珍しい舌ピアスの発展形が、読者の心をひきつけ、「どうやってやるのー?」と興味を引き、ぐいぐいのめりこんでいく。

自分はやらない。絶対やらない。でも好奇心に人は素直だ。主人公の若い女の子、ルイが、ためらいなく「やる!」と言い出すところから、物語は勢いづいて流れ出す。

次は裏側に流れる物語だ。それは三角関係。ルイはスプリットタンにあこがれるあまり、アマと同棲を始める。本人は付き合ってる自覚がない。「うざい」とか「調子狂う」とクールなあしらいをするが、アマは外見はピアスだらけなのに、なぜかルイにはまってしまう。夜にルイに甘える様は、完全にかわいらしい弟キャラで、まさに私の好み。情けない声で「どこにいったの」と電話してくるわ、他の男と会うときワンピース着るなとか、本気で心配したり、アルコール中毒に陥るルイを一生懸命止めて泣くし、そんじょそこらの男よりずいぶん優しく愛らしいキャラに成長していく。

それもこれも、ルイへの愛に目覚めたからである。彼は、男として完成しつつあった。愛情あふれる、「良い男」に覚醒したのである。

なのに、ルイは満たされない。

私に言わせれば、ルイはなにか違うものを常にもとめていた、彼女には、真の愛はまだ早かったのである。アマは自分の中で、豊かな愛情を芽生えさせ、それでルイを守り、豊かな家庭を築く寸前であった。しかし、ルイは他の男にも手を出していた。

いったいルイは何ものなのだろうか?

コンパニオンのバイトをそつなくこなし、人間関係もうまくこなし、どうやら美人でモテるようである。アマも、パーティーに来る会社役員も、バイト先の上司も、そしてドSなシバさんも、彼女のことを好いている。

なのに、ルイは別のものを見ているのだ。

しかし、これは女の本質を突いているとも私は感じた。
私も自分に夢中になる男を見ては首をかしげていた。理由がよくわからないのである。でも私は、ルイみたいに、ドМではない。どちらかというと、Mr. &Mrs.スミスといった感じだ。男が暴力をふるうものなら、私も全力で戦うだろう。やられっぱなしなんか女がすたると思っている。

私は、アマみたいな優しい男性が来てくれれば、次第に戦う意欲をなくし、彼のつくった巣に安心して座り込み、時折彼をつれて冒険に出るかもしれない。

しかしルイはドМ。冒険では彼女は済まされなかった。

彼女は「自分とはなにか」を探していたのではないかと思う。


ここからはネタバレです。




私はおそらく、シバがアマを殺したのは間違いないと思っている。シバは、アマの女を見てこいつはMだと確信した。シバはドS。相性はぴったりだと、シバは思っている。すぐに夢中になってしまう。ルイが、二股かけてることなんか、気にもとめない。彼はドSだ。
なんども伏線が出てくるが、シバには人を殺すことなんか造作もなかった。

問題は、ルイがものすごい怒り、悲しんだことである。食事がのどをまったく通らない。一体、そこまでアマに依存していたのに、なぜシバは殺してしまったのだろうか?
たしかに、それでルイは手に入ったかもしれない。実際シバと一緒にいるという独白もある。だが、私の解釈は、それはうわべだけだ。

ルイはもう、シバと倒錯したセックスを楽しむことはないだろう。その最中に、アマは殺された可能性がある。ひどい悲しみによって、アマを愛していたことが、ルイにはわかってしまった。でなければ、愛のあかしを飲み込んだりなどしないだろう。

シバも、それがわかっていてそれでもほしかったのかもしれない。
シバはもしかしたら、自分に対してもドSなのかもしれない。

そういう人いるよね。かっこつけているから、好きな女の前でも甘えられず、とかく厳しい道を選んでしまう人。


ルイは遊んでいた。何か、自分を見つけるまでは、このまま色々試すしかなかったのだろう。ルイはアマを失うことで、初めて自分のしていることの愚かさに気づいてしまった。そして、どれだけ自分が相手に甘えていたかも。

とんでもないものを失ってしまったことに気づいたルイは、入れ墨に目をいれて、改めて命を得る。

それは、アマにも、シバにも依存しない自分の人生である。

彼女はおそらく、これから働くだろう。
アマは、ずっと働いていた。完全にルイのためだろう。だって、ルイは家賃もアマにお世話になっていたのだ。

私の知り合いに、にたような関係性の男女がいる。男が女に依存している関係性だ。アマのように、精神は依存していても、彼女のために毎日真面目に働く男性であれば、まだ納得がいくが、私の知っている関係性では、男のほうが働く女に依存している。

結果どうなると思う?

完全に男がルイになる。彼は、ころしてくれというのである。ルイと同じだ。


働くことが素晴らしいとは言わないが、実際は、仕事を通して女を守ることで、大きな充実感とアイデンティティを得られることは事実である。

私の知り合いのカップルの男は、二度と自立することはできない気がしてる。死ぬまで相手に依存する関係。もうほとんどしんでいるに近いだろう。

ルイは失うことでひどい傷を負ったけど、おかげで依存を断ち切ったのである。自分に目を向け、自分と向き合った。自分を自分で大切にすることになった。
もう、死にたいなどと言っている暇はなくなるだろう。


私にとっては、アマとルイは理想的な関係だったし、アマは理想的な男だったし、映画のアマとルイがじゃれるシーンは本当にかわいらしい。髪を染めなおすシーンなんか、デレデレしたアマが可愛らしくて、愛おしくて、別れがくるだなんて、予想すらできない。

ルイも私も、アマを殺したやつのことを想像したら気分が悪くなってしまう。そのくらいアマはひどい目にあったのである。
依存がなぜダメなのか?二股かけるとどのくらいひどいことになるのか?正しい甘えとダメな甘えとは?サディストにあこがれる女性の末路とは?

深読みすれば相当な教訓がそこにはある。しかしまったく教訓めいていないから不思議だ。でもきっと教訓の話なんだろうなと思う。

ピアスや、入れ墨や、アルコールや、たばこ、セックスの描写はあるものの、薬物は一切出てこないところが、近年の小説だなあと感心した。

※映画について

ちなみに吉高ちゃんの身体は綺麗だし、アマとじゃれるところは本当に本当にめちゃくちゃかわいらしいけど、

個人的には彼女にはギャルは似合わないし、あまりいい映画だとは思わない。
小説から入ることをお勧めします。

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