私は今月公開の「NOPE」を真剣に前から楽しみにしておりまして、
「ゲット・アウト」もなかなか面白かったので、「Us」を観てみました。
毎回シンプルながら含みのあるタイトルで、ジョーダン・ピールは頭のいい人なんだろうなあと思わせますね。
Usの方が、ミステリー要素は強めに感じました。
結構感想で書かれている方が多いですが、なんとなく「怪しい」と最初に気づく人は多いのですが、まさか本当にそうなるとは…というエンディング。
ヒントは色々あるのですが、大きいところでいうと最初にヒロインのクローンがすごい怖い声でしゃべる内容が、すっごく、衝撃的で面白いじゃないですか。そっちのトークにもってかれるんですけど、その後、他のクローンが全然しゃべれないどころか、知能が低くて、うあーーくらいしか言えないのが「あれ?」となります。(このシーン自体は怖いし盛り上がるので、ダブルの意味で重要。さすが監督)
彼女は「私は特別だった」と言いますが、特別だと気づかれた、と言っていたので、それもなぜ?と思う。たまたま特別に出来上がった遺伝子変異だったのか?と思っていたら…。
この映画は2周目で「そういうことだったんか!」って色々わかるので、時間を十分にとって観るといいと思います。
ジョーダン・ピールは黒人ですが、いたるところでブラック・ユーモアを感じますよね。なんともいえない、ギリギリな感じの人種ジョーク。日本人は第三者視点で苦笑といった感じです。また、いつも女性がピリピリと危険に感づいて、男性がダラダラリラックスしている構図……。男性のそういうところにあこがれますけど、あれだとやられますよね…。
バトルはそんなに面白くないんだけど、Usの場合、「オールド」とか、「ドントブリーズ」みたいに同じ場所をぐるぐるしないので、動きがあって結構面白いです。
雰囲気は「オールド」とちょっと似ているのですが、たぶんジョーダン・ピールは怖い映画をつくれるのに性格が活発で明るいのかもしれないですね、結構動きのある話だったりしますよね。ゲット・アウトも、最後は逃亡劇で逃げ回りますし、黒人特有の明るいノリの会話が印象的でした。今回も、殺されるって時にアレクサみたいなのがヒップホップ流してくれるの、あれは完全に黒人ジョークですよねw
ただ、クローン問題に関しては、最初ヒロインのドッペルゲンガーが話してくれた扱いのひどさが一番怖かったですねー。最初、奴隷問題をモチーフにしたのかな?と思いました。そして、「お前たちは誰だ?」に対して、「アメリカ人だ。」と答えるのがすごく詩的というか、象徴的だなと。
黒人だけが虐げられてるわけでもないとわかったので、人種差別だけでなく、階級や支配に対する大きな皮肉の物語なんだと思う。
あと、ずっと気になっていたのが、クローンたちが本当に悪いわけじゃないというところ。彼らは復讐と自由を求めて襲ってはきますけど、ヒロインの息子が鬼の仮面をかぶっていて、クローンは白いスケキヨみたいな仮面なのが気になります。なぜ味方の仮面を鬼(西洋なので悪魔かな)にしたのだろう? 上位階層に対する、皮肉なのかもしれない。
私は持つものと持たざるものの話は結構好きで、最強なのは「第9地区」だと思っている。あの主人公は宇宙人をバカにして虐げることをなんとも思っていなかったから、罰が当たったのだと考えることもできるんだが、そこで止まってはいけない。「あなたたちもそんなことをしていないか?」と内省するためにある映画なのだ。
「あなたは誰かを蹴落として上に上がったことはない?」
「あなたは誰かをいじめて、満足感を得たことはない?」
「冗談半分で外国人を貶めた発言をしていない?」(日本人めっちゃ多いですよね)
「財力や学歴を振りかざして、他人をおとしめるマウントをしてはいない?」
それは時としてどうしても必要になるのかもしれない。だけど、落とされた方の気持ちと、復讐の怖さは考えておかないとね。
私は、力関係は今後はイーブンでないと、憎しみは止まらなくなると思うわ。だから、今でも憎んでいる人はいるけど、どっかで手を組む必要が出てくるかもしれない。その時に利用できないと、困っちゃうからね。だからおおっぴらに復讐はしないでおいたのよ。
世の中、特に日本の田舎なんかに行くと凝り固まった思想の檻から逃げられないかわいそうな人たちがいる。そういう人たちと特別仲良くなる必要はないし、わざわざ差別する必要もないと思う。例えば海に入る時、海の生き物を絶対触らない、というのと同じ。
でも何が嫌って、この映画、一番の悪はクローンを生み出した政府なんだよね。もうウサギの扱いが嫌でねぇ。色々ひどいなと思った。
ジュラシックワールドみたいに、恐竜が力で勝っちゃうのもありだよな。
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