パーム・スプリングスというのはカリフォルニア内地で有名なリゾート地だ。カリフォルニアにしては珍しく、一応温泉地である。日本のように男女分かれて裸で温泉三昧ではなく、あくまでも温水プールではあるが。私が子供の時に連れて行かれたのだが、ビーチとかではないのであんまりおもしろい記憶がない。が、大人たちに言わせるとなかなか極上の金持ち向けのリゾートらしい。 ワイナリーとか、ゴルフ場のイメージがある。私はハワイのほうが断然好きだけど、カリフォルニア内部からのアクセスは確かに速いし車で行ける。
この映画が上映していた時、あまりにもリア充なキービジュアルのせいで敬遠していた。最近公開されたリア充が次から次へとサメに喰われる映画と似たような感じかなと思っていた。
ストレス発散にと観始めた映画であったが、最初は確かにふざけた怠惰なラブコメという感じがした、というか、最初から勃起不全だの、浮気だのとどうやら煮詰まった連中であることはわかった。
この映画のテーマは「モラトリアム」である。
高度経済成長期が終わった日本は団塊世代の子供たちが就職できない就職氷河期に陥り、金持ちな親のもとで育ち実家で無職でくすぶる「ニート」「フリーター」が流行った。私の世代である。
この氷河期がうっかり就職もせずに過ごすと老後えらいことになるわけだ。今の40代で、犯罪を犯すやつなんかが、結構それに当てはまるのかもしれない。しかし我々の世代は単純に日本経済の犠牲になっただけなので、苦虫をかみつぶしながら、今日も自分より下の世代を育成しつつ、こき使われる。50代~はバブルがまだ続いているかのようなふるまいをし、ハラスメントし放題だと思っているのだから完全に板挟みだ。
この映画の主人公は完全にモラトリアム化しており、ループする日常に大満足してしまっている。何度か自殺を考えたものの、死ねないのであきらめてしまい、偶然女性が同じループに入ってきたので彼女を愛し、ずっと年をとらずにループを生きることに満足してしまったのだ。
このモラトリアムは、氷河期世代には刺さるものがある。
さて一発奮起して実家を出て就職するか?それとも親の寿命がくるまでしゃぶりつくすのか?
我々には永遠の命などない。いつかは老いて、介護が必要になるかもしれない。親が亡くなったあと、自分が喰らいつくした分、資産は残っていないかもしれない。その時自殺しようにも、かなり億劫にはなるかもしれないw
さてこの映画の面白いところは、モラトリアムに完全に浸っている男性のかたわらで、女性がループを利用して脱出方法を勉強し始めるところにある。
あまり男性を批判したくはないけれど、これはあるあるかもしれない。
女性はなぜか現実を直視する傾向にある。
私が実家を出た理由は、親と一緒にいると発狂しそうだったから。ほうっておけばニュースにある刺しちゃった事件を起こすかもしれないと思った。運よく、正社員にも一度なって、その後派遣で美味しい仕事にもありつけるようになった。採用する側はまだバブルをひきずっているので、若い女性としての私を採用したのかもしれないが、そんなものは利用してナンボだ。(実際女性というのはこういう時男性を利用して就職するのはありだとは思う)
だが、男性はなぜか安心すると動かなくなる人が多い。
例えば、派遣の仕事自体はよかったのだがとにかく時給が低かったため、再度正社員の転職先を決めた私は、当時社内で付き合っていた男性に事後報告したのだがひどく狼狽された。彼はひとつのモラトリアムに浸っていた。
今のぬるい職場が最高で、彼女が時給が低いと言って転職しようとしているのが信じられないらしい。ぬるま湯にいきなり氷水をぶっかけられたような気分だったのだろう。
映画の主人公も同じくであった。彼は今の幸せが壊れるのが信じられないという風であった。女性は「臆病者」と罵る。
結末はご自身の目で確認してほしい。
モラトリアムの罪とはなんだろうか?
例えば。
上の社内恋愛は放っておいたら、私はいつまでも時給が上がらず、万年派遣社員だ。正社員登用が無いのは知っていた。しかも実はそのあと、正社員も給与が低い会社だと知った。
よく同棲したまま、結婚できないカップルがいる。これは放っておくと、女性に飽きられて捨てられる結末が多い。女性には出産のリミットがあるからだ。婚活で売れ残るのは実は男性が多いともいう。女性のようにメイクなどで着飾らないので、老いると目にみえて醜くなってしまう。
実家暮らしニートは上記の通り、資産の食いつくし、経済のますますの冷え込み、犯罪などにつながるし、本人が五体満足でも無能ということになるし、年をとってからの就職は非常に厳しくなる。体が健康でもメンタルを病むだろう。
ループのぬるま湯につかることの罪とはなんだろうか?おそらく、女性は発狂する予感があったと思う。私なら発狂する。一見楽そうではあるが、毎日周りは同じことを繰り返す、そして死なない人生。なにか楽しいことがあるだろうか?もってせいぜい数か月だろう。
非常に深い主題である。人生の時間が有限であることの意味を非常にカジュアルに、ギャグをまじえて語る。軽快で、一見不真面目なノリなのに、説得力がある。最後までお笑いのノリも忘れていないし、さわやかで押しつけがましくない。
とてつもない良作ではあるが、あまりにもノリが軽すぎてアカデミー賞とかはとれないと思う。だけどこういう軽いノリの映画は未来永劫残って欲しいジャンルだ。
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