2022年12月4日日曜日

ザ・メニュー THE MENU

息抜きには映画はやはり最適ですね。特にエネルギーが不足している時にはいいです。

 

私は前職で資産家の上司にフルコースのディナーをご馳走になることが何度かありました。

基本的にはその食事のお値段に見合った、綺麗な格好をして、マナーも合わせるべきだと思っていますし、シェフの食べ方の指示があれば、それに従うべきだと思っています。

はじめて博多の寿司屋で食事した時に、とても上品な寿司だと思ったので「上品ですね」とコメントしたら「お客様が上品だからですよ」と返されて嬉しかったことがあります。

しかし「ザ・メニュー」のレストランのシェフ(レイフ・ファインズ)はどうやら極端な凝り性で、お客様への要望レベルが高い。高いけれど、どうやらもはや食事ではないらしいことが、じわじわとわかってきます。

この作品は、単なるホラー映画ととることもできますが(売り文句のブラックユーモアですが、私は一秒も笑えなかったので、コメディ要素は期待ゼロのほうがいいです)、

私は、どちらかというと、プロの職人の精神的な病魔を感じました。

これは、ものをつくる人たち

エンジニア、デザイナー、PMで情報設計したり指示を出す人たち、アニメーター、漫画家、イラストレーター、映画監督、CGデザイナー、そんな人たちが観たら途中で色々思うことがあって胸が詰まることでしょう。

シェフが途中で言う

「あなたは11回もこのレストランに訪れた。その度に我々は料理の説明をした。ひとつでも覚えていますか」

というセリフは結構刺さりましたね。私も上手に説明ができないです。だって、コース料理って8品くらい出てくるじゃないですか。

本作のレストランでは「スマホで写真を撮るな」と言っているのに、ニコラス・ホルトがこっそり写真を撮っています(しかもバレバレ)。でもね、私も許可を得て撮っているのですが、覚えてないですよ。すっごい、難しいんです。どこ産の肉だとか、どこそこの野菜だとか。福岡だと「糸島産」がステータスみたいなのですが。

でも、ですよ。

これはひとつの、シェフのエゴでもあるのです。

客のエゴは、「有名な予約のとれないレストランでディナーした!」というステータス。

シェフ側のエゴは、「一品ずつ丹精に心を込めて制作した、貴重で芸術的な食事」。

これって、難しい問題ですよね。

特に日本人はね、本物の大富豪ってあんまりいないですから。

ショッピングモールを散策していたら、マクドナルドに長蛇の列で、ちょっと驚いたことがあります。

別にマクドナルドが悪いとかではないんですよ。

たまの外食がマクドナルドだったら、つまらないとは思いますが。

私が食事をつくる時は、味と栄養を考えます。健康的で外食より節約になるような、合理的な献立を考えます。しかも効率重視で一品、もしくは2品まで。しかし、味音痴ではないので、調味料に少しお金をかけます。テーブル食塩はNG、こしょうはGABAN、塩麹は自家製、サラダ油は一切使わず、ごま油かオリーブオイルを使います。最近は中華料理のレトルト調味料をやめました。あまりにも変な色がついているので。

ですが調理に手を抜きたいので、冬はもっぱら電気圧力鍋に調理してもらっています。
なので、食事に対するエゴはそれほどありません。

ですが、だからこそ、たまにいく高級レストランではシェフに敬意を示さなければ、と使命感さえ感じます。というか、どのレベルのお店でも飲食店では敬意を示すようにしています。いつも自分がつくっているのも楽じゃないのを知っているので。


つまりあれなんですよ。職人に対する敬意とかの話なんですよね。

だけど、ジュリアンは行き過ぎてしまった。個人的に思うのは、

どうしてもクライアントが嫌なら、その仕事を休職するか、辞めるしかない

ということです。これはデザイナーをやっていても、何度も思ったことです。デザイナーの人数は減り、若手もなりたがる人が少ない(フリーで自宅でチート的にやりたい人以外)ので、求人だけはたくさん出ていますが、相変わらずクライアントは「安くいいものを速く」ばかり言ってきます。これはデザインに対する一種の冒涜であり、それは本作のシェフにも通ずるものがあります。

この問題はおそらく一生涯クリエイティブ職につきまとうことでしょう。そしてなかなか、越えられない壁でもあります。ですが、たまに救世主のような人が現れ、「低賃金重労働」を救ってくれることがあります。まあ、なかなかその輪に入るのも難しいんですけどね。


さてこの映画の面白いところは、終盤でアニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴットが機転を利かせて、プロ魂を揺さぶるようなことを言い出します。これはかっこよかったですね。マーゴットはあまりレストラン自体に興味がないのですが、ニコラス・ホルト演じるタイラーのパートナーとして連れてこられます。欧米ではパートナーを連れてくることがルールだったりするからなのですが、マーゴットには「エゴ」がないため、おかしなルールなどを見てはストレートに批判します。かっこよかったです。こういう女性でいなければならないと思いました。

世間をお騒がせのあのイーロン・マスクが言った言葉で結構刺さったのが、「規則ではなく良識に従え(Use common sense)」

これね~。結構重要なんですよね~。

 

しかし、「ザ・バットマン」でブルースの候補に残ったのがパティンソン君とニコラス・ホルトだったそうなのですが

ニコラス・ホルトは高身長だし、顔もかわいいんだけど

なんていうか、パティンソン君の持つ重た~いダークオーラやシリアスな繊細さ、にじむ狂気や世間への恨みみたいなものが、ニコラスには感じられないんですよね。

ニコラス君はやっぱりこういう明るい能天気な役が来るんですかねぇ。というか、明るいけど被害者になりがちな感じがする…。

ゾンビ役もなんだかんだ暗いというよりは、ただピュアなだけだった気が。 ピュアさで言えば、マッドマックスは最強にピュアでしたね。

パティンソン君も純粋!ってよく言われるから似ているけど、パティンソン君のほうが暗いことをひきずりそうなイメージありますw

 

そうそう一個だけ思い出しました。「男の過ち」というメニューが出てくるのですが、これだけはちょっと笑っちゃいましたね。あのジュリアンも過ちをおかすんだなと……。

しかもその後女子会みたいになって、あそこだけはちょっと面白かったです。

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