これはずっと観ようと思っていて観れていなかったんだけれども、
貧困をテーマにしているんだろうなと、なんとなく、前に見た万引き家族と似たような、雰囲気を感じ取っていた。
ただ、もっと大胆なストーリー展開で、ガンガン話が進むので緊張感が途中から凄かった。このままではきっと誰かが死ぬだろうとしか思えなかった。そして嫌な予感は的中した。というか、クライマックスまで伏線をガンガン張ってきて、事件が起こらないほうがおかしいくらいだった。
筋書はめちゃくちゃ荒くて、カオスで、一体どうやって収束させるつもりなんだ、と思っていたけれど、荒いなりに収束していた。しかも、かなり悲しいやり方で。
どこかで読んだような、教訓めいた、昔の童話や道徳の教科書みたいな話である。
楽して稼ぐと必ず失敗する。
しかも、この映画は、ド派手に、大きな代償を払って。
ただ、それだけの、道徳の話とも思えなかった。
「レ・ミゼラブル」というフランスの名作小説で、主人公のジャン・バルジャンはパンが欲しいばかりに教会の銀食器を盗む。
フランスには強いキリスト教の信仰があり、ジャン・バルジャンは神父様に許される。そういう宗教だからだ。昔は、そうやって貧困な人間を許すような文化があった。それが宗教であり、人の心の救いであり、逃げ場であり、だからこそ、キリスト教は強く信仰され、今でもフランスの教会を観光で訪れても、信者は入り口をくぐってマリア像を見るなりかけよってひざまずくのである。
しかし、現代にはそんな信仰があるのだろうか?
半地下の家族は貧困にあえぐ家族だが、それにも勝る貧困ももう一組存在し、そして、富裕層とのコントラストは映画が進むにつれてさらに激しくなっていく。
大雨が降れば、半地下は半水没。避難せざるをえない。日本でも、低い場所に住んでいると水難の被害を受けやすいのは近年ごく当たり前のことになっている。
富裕層は、雨を天候としかとらえておらず、翌日綺麗に晴れると着飾ってパーティーを開く。そして半水没したキム一家をパーティーに誘うという、いかにもおぞましいことをやってのける。
いつか誰かがブチぎれるのは、観ているほうもなんとなくわかってきていて、彼らのストレスはMAXである。観ているほうも、いつまでこんなおぞましい貧困差が続くのだろう、とストレスに感じながら観ることになる。
しかし、やはり、真面目に働かないと、結局は同じことなのだ。
ただし、そこには教訓以上のやるせなさがあった。真面目に働こうとも、生まれの問題もある。日本は特に、何の因果かろくな宗教が根付かなかった。日本の宗教は、なぜかお布施を要求するものが大半で、勧誘が来たら逃げる始末である。だから、どこにも救いがない。
この映画は、そんな「救いのない世界」を鮮やかに描き出し、観客に盛大なカタルシスを呼び起こし、
格差社会は仕方のないことだけど、見過ごすわけにもいかない。
でもズルをして、暴れまわったところで逃げられるものでもない。
それだけを声高に述べているように感じた。
私はこの映画を好きとも思わないし、何度も観たいとも思わないけれど、社会問題のたたきつけ方が豪快で、先が読めそうで読めない荒唐無稽な感じは、面白いなと思った。
すごく簡単に言うと……
ブラックなドリフって感じしません?
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