2021年1月17日日曜日

チャッピー

第9地区のニール・ブロムカンプ監督の作品です。第9地区は本当に好きな映画で、私の中ではトップ3位に入るのですが(笑)、エリジウムはいまいちで、チャッピーも残念ながらいまいちという結果になりました。

以降、残念ながらニール・ブロムカンプ監督は大きな映画はつくっていないようですね。

ただ、第9地区の独特のテンションの高さは今回も健在で、冒頭ではそのテンションの高さ、ヨハネスブルクのリアルな治安の悪さなど、ワクワクするようなものがありました。

今回は、おそらく、問題なのは、監督がチャッピーを愛しすぎたのではないかということです。チャッピーの教育や心理描写などにかなり時間を割いているような気がします。

多分プロットはもっと短く、第9地区くらいわかりやすく、まっすぐ結末に向かうものでもよかったと思いますが、登場人物の派閥が多すぎて、誰がどっち向いてんだ、って頭の中が混乱します。

まずはチャッピーを作ったお兄さん、ディオン。メタルギアのオタコンを彷彿とさせる、メガネの天才エンジニア。

敵対勢力が細かい。

まず同オフィスにいるヒュージャックマン扮する「ムーア」さん。自分が作ってるムーアっていうかっこいいメタルギアみたいなメカを推したいため、ディオンと敵対する。予算削れって上司に言われてるのに、ディオンが感情を持つAIなんかつくってるからさらに怒。

そしてチャッピーを自分たちの犯罪行為に利用したいギャングたち。こちらも勢力が2つに分かれてしまっており、チャッピーをだまして犯罪に手をそめたところで、別の勢力に狙われて強奪されそうになる。

ギャングは自由で、しょっちゅう意見が分裂するので結構めんどくさい。

唯一、ここは面白いかもなあと思ったのは、ギャングたちが少しずつ、心変わりしていくところですかね。

最初は、チャッピー以外の人間たちはどれだけ「悪」なのかと、思わされることがあるんだけど(チャッピーは純粋な警察官AIのため、周りの人間の嘘に対して激怒する)

ギャングたちも、人の子。

ギャングの女性が、一番最初にチャッピーに母性を抱き、かわいがり、母のように、教育をしたり庇うことで、絶大な信頼を得る。

その恋人らしき男性は、ギリギリまでなかなかヤンキー癖が治らないが、チャッピーに責められてやっと、改心し始める。

ディオンも、チャッピーの部品を間に合わせの消耗品で作ったことを黙っていたけれど、最後にはチャッピーを救う。

第9地区のいいところは、主人公がものすごく浅はかな差別をし続けた結果、自分が差別される側にまわり、後悔や悲しみに暮れるが、結果的には宇宙人たちのために戦うところだと思います。

ニール・ブロムカンプ監督は、人間をあくどいものとして描くことが多いものの、エンディングに向かうにつれて、完全な悪とは言い切れない、人の中に隠された真の「善」みたいなものを描くのが上手いと思う。それは、パンドラの箱の中に残された小さな希望のようで、いつも、ほほえましい気分にさせてくれる。

宇宙人や、チャッピーは、それの媒介である、「善」の存在であるにすぎない。


あと、ロボットのデザインが綺麗じゃないところはすごくよかったです。ムーアは悪いやつみたいに出てくるけど、デザインや動きはめっちゃかっこよくて、すごくメタルギアを彷彿とさせました。

でも、同じようなロボットものなら、まるで抽象画のように画面が綺麗な「オートマタ」のほうが好きですね。

あれは、なんかぼーっと観たいのでエンドレスで適当に流していたい映画ですね。雰囲気が良い。

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