イニシエーションとは
直訳すれば通過儀礼。アランは、前作で「DEPARTURE」(出発)を書き、見事にアリスを救い出したが、その続きを書かなければ自分が脱出できなかった。そこで「RETURN」(帰還)を書き始めたが、全く浮上できなかった。何度書いても失敗するので、次第にアランは諦めようと思い始めていた。何を書いても人が傷ついてしまう。もう書くのをやめようと。
アランはリターンは一旦やめて、「イニシエーション」を書いたらどうだろうかと考えた。出発と帰還の間に一つ小説を挟もうというのである。それが通過儀礼であった。 通過儀礼がないから、脱出できないのだと考えたのだ。リターンの完成は見送りとなった。
その隙にスクラッチがリターンを完成させてしまった。が、ひどい作品だった。
アランウェイクは「あきらめてはいけない」物語である。
私は、ゼインは闇の底で出ることをあきらめたのだとばかり思っていた。だが、とんでもなかった。ゼインは、おそらく話をつなぎ合わせると、
まず、アランウェイクを創造。
アランがキャラクターとして自立してくると、アランを闇の世界に引き込み、共に作品を作って闇の世界を脱出しようという流れに。
これがイニシエーション、2周目のルーム665での話だ。これは重要なので後述する。
時系列が入れ替わるのでストーリーの難易度を上げている
サーガは時系列はおかしくなっていない。現実だからだろう。過去は闇の力で改変されていたが。
問題は闇の世界だ。
ゼインは、作品の制作順番がかなりおかしい。アメリカに来る前、フィンランドで作ったはずの映画がなぜ今作ったことになっているのか?
スクラッチとアランはループの中で鬼ごっこをしていて、時間は関係なく、アランもスクラッチも神出鬼没である。現れるタイミングすらわからない。かなり自由だ。これが原因でイニシエーションをわかりづらくしている。闇の存在の形態のスクラッチは、アランに憑依したくて執拗に追いかけてくる。アランが弱る隙を狙っているのだ。
闇の存在がアランに憑依したがる理由:
西洋の悪魔は単体で行動ができない。よくエクソシストの映画にあるように、「人間に憑依しなければ言葉すら喋れない」のである。しかもアランには現実改変の強い能力がある。※でも原稿が書き上がったのでケイシーにも憑依した。
電話の主は、2周目まではゼインだった。ゼインはアランを助け、アランと脱出したいと思っているようだ。ゼイン曰く、以前はスクラッチとも脱出する作戦を立てたのだが、ゼインは約束通り「白夜の夜」を作り上げたが、スクラッチは「リターン」を書いたあと、一人で逃げてしまったらしい。脱出したんだ、と言っていたが、時系列が狂っているため、その時点でのアランにとっては、まだ脱出していなかった。これは重要なので後述する。
また、イニシーションのわかりづらさに、アランがしょっちゅうプロットを書き換える、プロットがエコーで断片的に出てきて文字化されていない(リターンは文字化されているので後で読める)などの理由がある。なのでエコーを全部集めている自信のない私はリサーチを行わなければならなかった。しかもこのエコーの内容が詩的で小難しい。
プロットが断片的なのは、アランが散々リターンを書いた際に残した断片的なアイデアだからだろう。アランは、螺旋を描きながら進んでいるので、少しは覚えているのだが大半を忘れてしまっている。
イニシエーション ドラフト1(1〜3)
1周目。必ず周回はTVトークショーで始まるのだが、なんとこの時点でミスタードアに完成した「イニシエーション」を見せられ、アランは非常に困惑する。
これはドアによる予言であり、助言だった。イニシエーションを書け、ということである。またアーティーが、現実のローズ経由で天使のランプを贈ってくれる。これはゼインの所有物であり、シンシアから奪ったものだ。皮肉なことにそれでシンシアは闇に囚われてしまったが。
この回だけは2回TVトークショーがあり、2回目はサム・レイクがアレックス・ケイシーの役者として出てくる。アレックスケイシーシリーズでベストセラー作家になったアランは、当然の流れでイニシエーションに再度ケイシーを登場させる。まあつまりこれがイントロダクション、予告編といったところか。わかりづらいけど。しかも、アランは「サドンストップ」でケイシーを殺して、前作でシリーズを終わらせているのだ。
2章は地下鉄を、ケイシーを主人公とした物語を書きながら進むが、いなくなったFBI捜査官とはナイチンゲールのことだったらしい。現実と全く同じように死体で横たわるナイチンゲールまでたどり着く。キーアイテムは心臓で、触ろうとすると、サーガとの会話ができる。
ちなみにこの心臓だが、なんか行方がメチャクチャで、冷蔵庫にワープしたり、境界域を開けるために捧げて消えたりしている。結局今どこにあるのかよくわからないw
なお、この時壁にあるダークポエムにはすでに「第三の目」という言葉が含まれている。
これはあくまで私の考察だが、1と3はアランが直接書いたものではないんじゃないだろうか。直接本筋には関係ないし、ミスタードアはアランの小説に影響されないと言い張っているからだ。(おそらくドアはサーガを助けるためにアランを助けている)
というか、イニシエーション自体が小説とは言い難いので、本当に、闇の世界を脱出するためのツールとして使われているだけなのかもしれない。ライターとしてそれでいいのかわからないが。
問題は3章め。ここはいつも時系列が狂う。アランは撃たれて死んでいる自分を見つける。これは最後に持ってくるはずの展開だ。展開はメチャクチャだが、ここで強制的に現実に戻る。そしてループしてリセットされる。(厳密にいうとアランが死んでいる終わりの場合は、戻る)
イニシエーション ドラフト2(4〜6)
2周目。TVトークショーに戻るが、今回はミュージカルだ。これに意味があるか考えてみたものの特にないと感じた。ドアが勝手に起こしたのだろうか。アランが「こう来るとはね」と言っていたのでアラン原作ではなさそうな気がする。毎回ドアで始まるので、ドアが導入を考えているのかもしれない。
イニシエーション5章では、アランはゼインに電話で呼び出され、ルーム665で一緒に作品を作って脱出しようという感じのことを言われるが、どうもこの芸術家、私もがっかりしたのだが、詩人トムって感じでもないし、前作の潜水服がかっこいいイケボのゼインとだいぶ違ってただのド変人と化していた。いや、こっちが本性なのだろう。
ちなみにここでかかる音楽はスクラッチがアメリカンナイトメアで使う音楽と同じらしいので、ゼインはスクラッチ化している可能性が大いにある。笑顔が悪魔的だ。音楽の歌詞は「俺はサイコ」と繰り返し言っている。しかも、部屋番号665は悪魔の番号666のお隣さん。単純に解釈するとゼインは悪魔の一歩手前ということになる。また、オールドゴッズの楽屋に「665 Neighbor of the Beast」とあるが、直訳すれば野獣のお隣さん。
ここでゼインとアランが制作しているものに注意するべきである。
ここでアランはリターンを書いている。ゼインは映画を作ると言ったので、おそらく「白夜の夜」を制作した。これは、後述する「スクラッチに騙された」の内容と全く同じなのだ。ではこのシーンのアランはスクラッチなのだろうか?それとものちのゼインが嘘をついたのか。
個人的にはここで「書いている」アランはスクラッチになっていた可能性があると思う。酔っ払って書いたからかもしれない。あとでシラフで自分の駄作を見て書き換えるところなんて、リアルにありそうだw
ちなみに時系列がめちゃくちゃなので、ここで書いたわけでもないらしい。つまり、「過去に書いた」のではないか?
正しい時系列の考察は:
1)脱出するための「リターン」を書き始めたが、上手くいかず、中断してさらに中断したことも忘れた
2)ゼインにそそのかされて、酒に酔いながらひどいリターンを仕上げた(ゼインは外に出たい)
3)あとでシラフでそれを執筆部屋で見つけたアランは、「闇の力でブライトフォールズを支配する」その内容に驚愕して大急ぎで修正し始める(消去することは不可能)
ではないだろうか。アランに何か飲ませたら、スクラッチの力を引き出せたりするんだろうか、、ここは謎だ。白夜の夜では謎の酒を飲ませるシーンがあった。
だが、私は酔っ払ってる時に描いた絵がすごく良かったり、某日本のアーティスト(C&A)はクスリをやってあの素晴らしい音楽を創り上げたというんだから、あながち酒は悪いもんではない。アランにはよくなかったのかもしれない。
というか、ここまで書いていて思ったんだが、スクラッチってのは単純に「悪い自我が暴走している自分」のことを言ってる概念なのではないかと思い始めた。闇の雲は、単純にその概念がビジュアルとして見えているだけなのかもしれない。
アランがキレ散らかす頃(それどころじゃないんで)、なんとダーリング博士とジェシーフェイデンがテレビを使って彼らを探知してしまう。だが、ゼイン的には見つかりたくないらしい。(つまりゼインはAWEで、見つかったら捕まって研究対象としてオールデストハウスに収納される。その場合アランもなのか?)アランは次の殺害現場へ向かうように言われる。
闇の世界では、「殺害現場」が一番強い力を持つらしい。殺害現場を突き止めると(書くと)パーラメントタワーが現れる。そしてアランはそこへ行けば現実に帰れると信じているのだが……
この章の最後で殺害現場に辿り着くと女性がバスタブに沈められているが、シンシアにそっくりである。つまりここで現実とリンクしている。キーアイテムはレコード。
6章目でまたアランの自宅「パーラメントタワー」が出現するのだが、だんだんと、アリスのビデオの内容が進み、展示会の内容が明らかになっていく。そして執筆部屋に飛ばされると、アランは完成した「リターン」を見つける。内容は闇の存在がブライトフォールズを支配するというひどいものだったので、アランはそれを書き換えることにした。つまりあの原稿に足された走り書きはアランのものだったのだ。
この時、アランは「これはスクラッチが書いたもの」と決めつけているが、実際は自分で書いたものじゃないかと私は思っている。
時系列的には、このアランが最初に来なければならない。
そして、1周目で見た通り、アランは眉間を撃ち抜かれて死ぬ。またループ(振り出し)へ。
イニシエーション ドラフト3(7〜9)
3周目。最初のTVトークショーはもうショーではなく、ドアに文句を言われるだけだ。
もう一度ゼインに会いにいくと決めるアラン。リターンはスクラッチが書いたものじゃないか!嘘つき!とゼインを責め、最終的にはゼインを撃ち殺すが、実はそれもフィクションだった。この時ゼインに「白夜の夜」が上映されている映画館に行け、そこに殺害現場があると言われ向かうアラン。スクラッチに騙されたというゼインは、出会ったらスクラッチをためらわず殺せと助言する。
殺害現場では二人の警官が殺されていた。つまりこれがマリガン&ソーントンである。キーアイテムは現実に突然現れた、あのヘラジカの頭蓋骨である。
ちなみにグランドマスターだが、ゼインが演じているらしい。しかもスクラッチという役名でだ……
9章、外に出ると自分から電話があり(この電話をいつかけたのか、プレーヤーにはわからなかった)、アリスの写真をシューボックスに入れる(これはサーガに渡すためだ)。そしてパーラメントタワーに行くと、アリスが自殺したと思われるビデオを発見、怒り狂って執筆部屋に乗り込み原稿を書く自分の姿のスクラッチを撃ち殺したかと思いきや、それは先ほどの書き換え中の自分(6章め)であった。1周目(3章め)で見た自分は、この撃たれたアランである。多分これはスクラッチの罠みたいなものなのだろう。
ここでアランは絶望し、スクラッチに憑依され、倒れ、原稿と共に湖の岸に打ち上げられる。時間が戻ってしまったのだ。
ちなみにゲームの一番最後でも同じく眉間を撃ち抜かれて死ぬが、この解釈を誤まるとゲーム自体が全て振り出しに戻り、「最後の草稿」となるのだ。2周ゲームをクリアすれば、無事、アランは死なずに済む。それにしても、何度撃ち抜かれているんだ、アラン。ループしたあと「ものすごい気分が悪い」と言っていて、なんか同情した。
この全体像から分かる通り、ゲーム内で少なくとも3回はイニシエーションを書いている。だが、ゲーム内でも言われている通り、書き続けなければアランは脱出はできないのである。だから仕方ないのかもしれない。
もしこの話が、「スランプ」を表現したものであれば、恐ろしい話である。
自分が創造したキャラクターが意志を持って勝手に動き回ることがあるだろうか?
これは私はYESと答えられる。
アメリカで暇だったとき、私はキャラクターを作り出し自由自在に物語を描いた。このキャラクターは自分の理想や自分の一部を反映したものである。だから、ゼインとアランがそっくりなのはそういうことなのではないか。
そして、作り出したキャラクターは創造者が慣れてくると勝手にセリフを喋り出す。条件を与えれば自由に行動を始める。天然のプログラムのようなものだ。
アラン・ウェイクとはそういう事象を表した作品なのかもしれない。
ちなみにイニシエーションでサム・レイクを前に、アランが「自分のキャラクターにも意志があるので、安易に映画化したくない」と優しいことを言っていた。こないだ自殺した漫画家さんを思い出す。
かつて漫画家が「キャラクターが勝手に行動ししゃべってくれる」と言って、その発言を受けて驚いている人もいたが、実際ストーリークリエイターのほとんどはこれを経験しているはずだ。
ちなみに私の場合二次創作でも、キャラクターをきちんと読み込んでいれば私の問いにさまざまな形で答えてくれる。最近では年齢も自由自在に変更できる。10歳の坊っちゃんを連れて歩いているはずだったのに、気づいたら30歳になっていたり、場合によっては10代にも戻れる。そう、想像力の前に時間など無意味なのである。そしてゼインのように、自分の作った、愛したキャラクターは自分のイマジナリーフレンドとして助けてくれる。
これを他人への尋問に使えるサーガもある意味、クリエイターの素質がある。
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