この映画は、同性愛映画なので少し敬遠していたんだが、ティモシー・シャラメがブレイクしたきっかけになった映画と言うので、軽い気持ちで観始めた。
最初に目を奪われたのは、夏の北イタリアの美しさである。
華やかで、パステルカラーで、どこを切り取っても絵になる美しい街。
そこで主人公のエリオは、アメリカから一夏だけやってきたオリヴァーに恋をする。
一夏の恋。
エリオは17歳で童貞を捨てたばかり。相手の女の子もいるのに、オリヴァーに惹かれていく。激しい恋のあと、やはり成就しない恋であったことを知らされるエンディング、と至ってよくある内容になっているのだが・・・
描写がとても美しいのだ。
ティモシー・シャラメの美しさはきっと永遠には続かないだろう。エドワード・ファーロングや、昔のディカプリオと同じ。今だけの美しさである。
そしてオリヴァー役のアーミー・ハマーもとても美しい男性だ。
特にバレーボールをしている彼の長身のしなやかさが素晴らしかった。
とにかく何もかもが美しい世界なのである。
同性愛ものなのに、露骨なエロシーンがなかったので、とにかく美しさを重視したのだと思う。
そしておそらく失恋したと泣くエリオの前に父が現れ、とても優しい言葉を投げかけてくれる。少し長いシーンだが、そのセリフの全てが素晴らしく、40代の私でも涙なしに聴くことのできないセリフであった。第一私の親はあんなに優しくないし、理解もない。イタリアだからなのだろうか。両親とも、同性愛に理解があり、素晴らしいことだと息子を慈しむ。
恋愛をした方が良いとは言わないし、しないほうが良いとも思わない。
だけどもし、恋をして、それが失恋であっても、そのことを忘れなくてもいい。その時の悲しい感情に蓋をしなくてもいい。感情は衰えていく。私ももう恋の仕方を忘れていると思う。でも恋自体が必要なのではない。見返りを求めず何かを真剣に愛する力があるか、それが大事だ。この力は、文章でも、映像でも、絵でも、なかなか表現が難しい上、スキルとして習得できるものでもない。
だからこそ人はそれを映画にするのだと思う。
私はこの映画を作った人はなかなかの天才だと思った。愛とか、恋とか、一瞬で過ぎるようなものを、綺麗に、丁寧に、その時の状態そのままで、保存して宝箱に入れて、いつでも取り出して眺めて泣くような、そんなすごい作品である。
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