2022年1月30日日曜日

「ゴーン・ガール」という映画

デヴィッド・フィンチャーの2014年の映画です。

サムネイルがものすごい地味で、なんにも心惹かれていなかったけど、ホラーテイストなのかなと思い説明を読んだら、デヴィッド・フィンチャーということで、観てみました。評価もかなり高いようです。

確かに、めちゃくちゃ面白かった。

この映画の一番評価されるべき点は、脚本ですね。ストーリーそのものが非常に面白く、先が読めないけれど先がとても楽しみになってしまいます。

ギリギリ、エンディングまで主人公は抗い続けるので、まだやるか?まだ覆せるか?!と思ってしまいます。

以降は、ネタバレになってしまうので、これから観る予定の方は読まないでください。

一度でも観ていれば、人の感想も気になる映画ではありますよね。

 

 

エイミーの真の目的はどこにあったのか?を考えていく。

ストーリーの構成が面白いのは、冒頭でエイミーが姿を消し、旦那のニックがきつねにつままれたような解せぬ顔をして探し始めるところから始まり、中盤でエイミーの真相が早々に明らかになる、というところです。前半は淡々としているようでかなりスピーディーに展開します。そしてたくさんのヒントや、過去の夫婦のエピソードが語られます。 

エイミーは何がしたかったのか?これを考えると色々と主体的に映画をとらえることができると思います。


エイミーの不満

エイミーは不満があって姿を消すわけですが、その一つ目は、

1)旦那が浮気をしているのが確定し、侮辱された

というまっとうな不満です。だれもが同情するでしょう。と同時に、

2)幼い頃から親の希望通りに良い子を演じてきた抑圧

という不満を持っています。 

これが爆発したわけですね。まずはすべての「良い子を演じる抑圧」から解放されます。旦那に対しても、よい妻を演じてきたということが語られます。

しかしそれだけではおさまらないので、旦那に罰をくらわせたい。死刑に追い込もうと、あらゆる罠をしかけて逃亡するのでした。

この2点が、彼女の目的です。名誉の回復と、自由。

目的遂行のために、彼女は綿密な計画を立て、映画的演出もあって、大きなカレンダーに遂行する事柄を付箋で貼っていっています。

 

ではエイミーは善なのか?

前半はエイミーに同情するようなエピソードが多く盛り込まれますが、後半エイミー視点から物事が語られると、エイミーも結構なエゴイストであることが判明します。 

要は、これどっちもどっちだよね?という話になってきます。ドントブリーズみたいな、どっちも罪人じゃないのか?という。そして、罪人どうしの白熱した知能戦に我々は釘付けになるのですね。

だから、あまり主観的に観ないほうがいい映画ですね。突き放して、高見の見物を決め込むのがよいでしょう。ハウスオブグッチとも結構似ているところがあります。

また、エイミーが良い人だとどうしても思えないセリフがひとつあって、それは利用した女友達を「馬鹿な女」とはっきり言っていたことです。これではフェミニストとも言えないので、やはり、エイミーは善人としては描かれていないですね。

 

エイミーの恋愛観

エイミーは過去に2人の男を捨てていますが、2人目に関しては理由はおそらく名誉を傷つけられたから。いったん付き合い始めると、支配しきらないと納得できないようで、逃げられると思うと全力で復讐が始まるようです。

これは後述する育った環境による影響もありますが、彼女の元の性質もあるのかもしれません。

では、1人目の「今でも手紙をくれるしつこい元カレ」はどうしてダメだったのか?

おそらくですが、似たものどうしで気は合うものの、「どちらが支配するか」のパワーバランスが取れないのだと感じました。もったいないですね。

 

エイミーがあのようなサイコパスに育った理由は? 

エイミーはハーバード大卒のライターで、セリフからもかなり頭がいいことが推察されますが、両親の過度な理想論を押し付けられて育ったため、かなりこじれて歪んだ性格に育ちました。

つまり、あの事件の元をたどると、親が悪いという結論に行きついてしまいます。ここにも大きな教訓があると思います。

 

ニックはどうすればよかったのか

浮気は良くなかったと思いますが、彼のエイミーを口説く過程を見ていると、エイミーみたいな複雑でこじれた女性をずいぶん簡単に口説こうとするんだな、と軽率さを感じました。女性の恐ろしさをわかっていない。

これは、男性が見て「女は基本的に怖いものだ」という認識を得てほしい作品ですねw

つまり、高学歴で色々こじらせてそうな女に手を出す前にはよく考えろ、ということです。

私はたぶんエイミーに共通するところは多々あると思います。スペックが高くそこそこのルックスを持っているため、男性が寄ってくるものの、最初から本性みたいなのが見えているので、誰も本気で口説こうとはしてこないです(笑)

エイミーとニックの相性が良いかどうかに関しては、後半に関して言えば、めっちゃ相性悪いのでは…と思いました。多分元カレのほうがまだ相性が良いんですよね…

 

女性の人生の本質にも迫る作品

女性の人生は男性によっていとも簡単に壊されてしまいます。その逆も然りですが、女性は妊娠するかしないかで大きく人生やキャリアが変わってしまうんですね。

エイミーが結婚できないと周りに指摘されてどんなに屈辱でも、そのまま耐えたほうが幸せだったのかもしれません。

また、旦那をひきとめるために妊娠したいというのは完全にNGで、女性が犯しがちな罪のひとつですが、それも、「女性だからこそ」選びがちな選択肢。

つまり、我々は性に振り回された選択をするべきではないのです。「男がいなかったら」のifを常に考えたほうがいい。多分そっちのほうが理性的な結論が得られるので。

 

結婚の本質とはなんなのか

エイミーは結局私たちは理想的な夫婦を演じ続けなければならない、と旦那を脅して説得し、妊娠までこぎつけます。今後は理想的な両親を演じなければならない。

さてこれはバッドエンドなのでしょうか?

私は見終わった後、これは皮肉ってはいるものの、大半の夫婦や家族がこんなもんじゃないかな?というドライな感想を抱きました。

私の母親はバブル世代なので、適齢期にしつこく迫ってきた男と結婚するのが普通だったのかもしれません。

しかし、あまりお互いのことを知らないままマニュアル通りの結婚をし、マニュアル通りに子供をつくって育ててきて、50代くらいになると喧嘩をするようになりました。そして離婚したいと言うようになりました。

しかし、娘たちに散々嫌な夫婦像を見せておいて、結局離婚しませんでした。

しかも、60くらいでまた同じ騒動を繰り返しています。

もうずっと芝居を続けているんだな~と思います。

周りは芝居だともう気づいているし、今さらなんとも思っていませんが、私は時々実家に帰るとテレビドラマの中に入れてもらってるような気分になります。


この映画を観て、「こんな夫婦は絶対嫌だ!」と思うのであれば、それを避けて通るありとあらゆる努力をしなければならない。

また、結婚自体に絶望するのであれば、結婚をしなくても生きられるくらいの経済力を身につけなければならない。

 

エイミーは、男性が創り出した悪魔なのかもしれません。

 

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