2023年4月30日日曜日

パリタクシー 観てきました

日本の俗物的な景色に飽きて、パリが見たいなあと思って観に行きました(明解な動機)。

パリは、今まで私が旅行で訪れた中で一番洗練された都市で、一番驚いた街です。

「こんなのが現実に存在すると思わなかった」というのが正直な感想でした。

バンコクにも驚きましたが、バンコクがやっているのは豊洲ららぽーとやグアムのショッピングモールのいいとこどりです。それでもめちゃくちゃ綺麗でしたけどね。あと、そもそもタイ人は性格が良いのと、温暖な気候や美味しいご飯も相まって、最高な国ではありました。が、パリには勝てないですね。

パリの美しさというのは、伝統を真剣に守り通しているからこその美しさなんですよね…屋根裏部屋があこがれの場所になるのはパリくらいのもんでしょう。

なので、この映画を観て「いやこんな綺麗じゃないでしょ?」と思った方、騙されたと思って一度行ってみるといいと思います。遠いし、めっちゃ高いけど。私は親のはからいでアパルトマンに泊まれたんですけど、狭いのに快適なんですよねぇ。オシャレなの。

この映画、予告編では、もっとほのぼのとした話かと思ったんですが、そうでもなかったです。なにしろこのおばあちゃん、「パリ解放」の1944年に運命の男性と出会っているという年齢。早々に妊娠してしまうのですが、そこから人生は狂ったジェットコースターのように彼女を振り回します。

なのに、92歳で彼女は美しい微笑みでタクシードライバーと我々を魅了します。

もっと人生語ってくれないかなあ、なんて思っている時に日が暮れてしまって、彼女とは一度お別れをするのですが…。

この後の展開で結構号泣なんですよね。なんていうのか、美しい終わり方だと思いました。

最初、このストーリーが始まった時はタクシードライバーのシャルルもやる気がないし、なんでこんなに寄り道するんだ、とか思うんですけど(正直車のシーンが多くてだるい)、

ところどころで、歴史を感じるモニュメントなどを見て涙ぐむご婦人を見ていると色々あったんだなとは思ってましたが。

彼女の人生は失敗だったかもしれないし、シャルルがつらそうに生きているのを見て、きっと同情し何かバトンタッチできないかと思ったのでしょう。偶然の出会いから、ここまで広げられるのはフランス人らしい展開だなと思いました。

フランス人って、怖いのかなと思ってましたがそうでもないです。

すごく軽やかで明るい。彼ら多分わかっているんだと思うんです。散々、世界大戦で虐められて、でも基本的に人類はみんな友達なんだと。だけど、怒るべき時はしっかり怒らなければならないと。

おばあちゃんの過去で怒りのあまり恐ろしいことをするシーンがあるのですが、私は痛快だなと感じました。しかし彼女の人生はそれでさらに窮地に追い込まれてしまいます。本当に、彼女もつらいことだらけだったんですよね。その、フランス人の「怒るべき時は徹底的に怒る」この激しさがすごくいいと思っています。

彼女の人生はもしかしたらフランスという国の歴史と同じなのかもしれません。

人生はつらいし、次から次へと不幸なことに見舞われるけど、でも、今日のご飯は美味しいし、ジェラートも美味しかったでしょう?そして、もしかしたら、今日あなたが拾ったお客さんが、幸運を招いてくれるかもしれない。親切にしたらね。

 

というライトなメッセージなのかもしれないけど、すごくストーリーテリングが上手で、きちんとしみてくるのがよかったです。

また、邦題は非常に残念です。このタイトルは、おそらくフランスにあこがれを抱く日本人のためにつけたものだと思われます。それ自体は成功していると思います。今日なんて、GWだからか超満員でしたよ。一日、一回しか上映しないのに。だけど思ったより内容がいいから、クチコミで広まってる可能性もありますね。

原題は「Une belle course」、これはフランス語がわからなくてもなんとなくわかりますね!「美しい旅路」ということですが、この旅は人生のことを言っているのだと思います。タイトル最後あたりできちんと回収されるので、理解できていると面白くなるかも。

2023年4月29日土曜日

タリーと私の秘密の時間

シャーリーズ・セロンが高く評価された映画のうちの一つ(アカデミー賞は犯罪者の映画)と聞いてなんとなく見てみたのですが、とても見やすい映画でした。

読みやすい小説を読んでいるかのごとく、ストーリーがするすると頭に入って来ます。なんて頭のいい脚本なんだ…。(そういう映画ありますよね)

ですがこれ、起承転結の「転」でとんでもないどんでん返しがあり、私はとあるホラー(ミステリー?)映画を思い出しました。

なので私の中ではホラー映画に分類されると感じています。

シャーリーズ・セロンは太って役作りをしていますが、(それも評価された)太っているのに顔が美人なのでやっぱ天性のものなんだなあ、美人なんだなあと思いました。

 

主人公は3人目の子供を産んで、病的に育児に追われ(この辺は映像の見せ方も非常に上手いです)、旦那はその間なぜか、ベッドでビデオゲームをしています。ヘッドホンをして、いわゆる据え置き型のシューティングゲーム。

ここで主人公があまり文句を言わないのが逆に怖い。

すると突然、ベビーシッターが現れます。この人が、夜中限定のバイトで育児をめんどうみてくれて、時には掃除をし、時にはカップケーキをつくってくれたりする。このカップケーキが、アメリカのクオリティとしては商品レベルのハイクオリティ。

そのシッターがいることで、主人公はめきめきと調子が良くなっていくのですが、ある日「辞める」と言われ…。

さて、その理由は?そのシッターはいったい何者なのか?気になって目が離せません。

そのすぐ次のエピソードがどんでん返しで、そういうことか!と真実がわかるのですが…。

 

育児問題映画というカテゴリだとはっきり言えますが、問題は奥さんである主人公がほとんど文句を言わないところなんですよね。でやっと最後に、ひどい事故で旦那が気が付く。

いやそりゃーないっしょ。

あれ、私は死んだなって思ったし、普通は死ぬと思う。

しかしその事故でなにもかもが正常に戻るんだけど、それはないっしょ、って思った。

私が脚本書いたら、旦那がひとりで子供3人に囲まれて絶望しながら葬式してるシーンで締めますよw


音楽もライトだし、一応全員救われたよね?っていうエンディングでしたが、それが逆にホラー感マシマシでした。

ある意味笑ってしまう。 


育児ノイローゼによる、精神分裂はあると思いますし、私も自分の中に複数の人格や外部の人格(由来が外部)を飼っていて、「その人の面倒を見ることにして自分のケアをする」とか「その人に励まされて元気になったことにする」「別の人格に問いかけてその子の言うことを聞く」などということを繰り返していますが、それは、「自覚があるから」異常ではないと思っています。

でもまあ、突然歩きながらニヤニヤし始めるので、すれ違う人がすごい顔で見てる時は、ありますね。

2023年4月8日土曜日

ノック 終末の訪問者 観てきました

面白くないわけではないのですが、あまり強烈な面白さは感じませんでした。

理由はおそらく以下。

・訪問者の要求が理不尽・無茶苦茶すぎる。

中盤でエリックが「本当かも」と思い始めるが、正直その根拠が薄い。それに訪問者たちがやっている謎の儀式の理由がよくわからないので、ただただ残酷な連中という印象しかない。

彼らを味方と認識させるためのエピソードも甘いし、もうちょっと強めの根拠が欲しかった。

・ストーリーに枝葉や他の可能性が少なくて広がりがあまりない

確かに逃げ出そうとしたり、味方側が強力な武器を手に入れる「転」はあるものの、エピソードの積み上げとしては弱いかなと感じた。「話が進んでる感」が少なめかな…。ちょっとだるい。

過去のエピソードとつなげるところも、薄いですよね。ちょっと面白くなったかなと思ったらそうでもないみたいな。

・感情移入がしにくい

主人公のゲイカップルの表現もそんなに感情移入できないレベル、訪問者が語る自分の置かれたシチュエーションもいまいち伝わってこない。子供はうるさいだけだし、いったいどこに感情移入したらいいんだ。 

これなら「オールド」のほうがいいですね。

・オチが弱い、意外性がない

結局それなの?っていうオチ。もやって後味が悪く、この気持ちを抱えたまま、エリックが見たという素敵な未来を生きられるものだろうかと。

その辺もメッセージが不透明でした。

・宗教を、「神」をテーマにしているとして、それはこの表現・結末でいいのか?

昔キリスト教の聖書で羊を生贄にするシーンが気に入らないと言っている女性がいたのだが、それに近いものを感じた。

私の中では、キリスト教をはじめとした古くからの宗教は、人間を堕落から救い、良心を植え付け、治安のよいコミュニティを維持するための道徳の教科書みたいなものである。イスラム教は同信者の女性は圧倒的保護のもとに置かれている。そうでなければ、元来血の気が多い中東地域のイスラム教徒はレイプし放題になってしまう。

宗教を否定するなと言っているわけではないのだが、なぜ世界を救うのに犠牲が必要なのかが理解できなかった。

また、犠牲が必要な場合、多くのホラー映画は悪魔のいけにえの儀式に、祭壇に供物をささげよ…ってなるじゃないですか。

それを逆手にとって「善良な宗教でも犠牲が必要」としたのかもしれませんが、それもどうなの??と思いました。

そして、キリスト教を否定するのかと思いきや、美しい愛をもって犠牲をささげる覚悟をするシーン。いや、美しくなくない? 犠牲そんなに大事なの??


まあ日本人はどっちでもええか。ってなるのかなあ。

 

シャラマン監督は映画をつくる力はあるなあと思うんですが、他のホラー映画やサスペンスと比べるといまいち不可解というか、最初の1/3以降の面白さ(問題提起以降)がほぼない、というか、見届けるだけで、小さな進展はあっても面白い展開はなかったなと思いました。 

NOPEやRRRや、エブエブみたいなすさまじく個性的でおかしなことをやろう!という情熱は、感じませんでした。かというと、すっごい怖いというほどでもない気がする。怖さだとNOPEの、でっかいものが襲ってきて勝てそうにない感じとかのほうがやっぱりうまかったと思います。あとGジャンって吠える?んだよね。サウンドがよかった。

あとジョーダン・ピール監督って有無をいわさない力量と熱量で強引に突っ走るあの感じが好きですね。アトラクションみたいな感じで。

 

2023年4月2日日曜日

「コンペティション」観てきました

かわいいバンデラスが観たかっただけなんですけど、そういう意味ではかわいいバンデラスは堪能できました!特に前半はいちいちリアクションが細かくてカワイイ。

そして後半になるにつれ、ストレス倍増したバンデラスの演じる「フェリックス」がだんだん悪い奴になってくるのが、これまた、バンデラスの得意技でよかったですねぇ。悪い顔するんだなこれが。

映画「アンチャーテッド」は微妙だったが、あの悪役のバンデラスの、スペイン語がすごくセクシーでよかった。

この映画のキャラクターは3人だが、どいつもこいつも曲者。

ペネロペ・クルス演じる映画監督「ローラ」は奔放な感性で賞を勝ち取る気鋭の新星。

アントニオバンデラス演じる「フェリックス」はいわゆるトムクルーズのような、キラキラでキザな二枚目俳優。

オスカル・マルティネス演じる「イヴァン」は気難しく、芸術家気質な俳優で、生徒に演技論を説いたりするキャリアを丁寧に積み上げた感じの真面目な俳優だ。

この3人がぶつからないはずはなかった。

ただ、どいつが一番悪いかとかそういうのは正直なんとも言えない。どいつもこいつも問題ありだし、ちょっと空気読めよって思うこともある。

ローラが実は一番しっかりしてるんだけど(そりゃそうだ)、無駄に俳優を怒らせたり、そもそも取り返しのつかないことをしたりする点でどうかと思った。

フェリックスは仕返しをしちゃうし、怒りに任せてやばいこともうっかりやっちゃうタイプ。

イヴァンは普段は大人ぶってるけど、裏ではボロクソに文句言ってたりするから、脇が甘い。

中盤までは純粋なギャグもあって面白かったんだけど、終盤にかけては恐ろしい展開もあって、ちょっとホラー感のあるブラックユーモア映画だった。

印象に残ったのはローラのセリフ「芸術家で子供がいないのはアドバンテージよ。子供なんかいたら自由に創作できないし、保身に走ってしまうわ」っていうのはちょっと引っかかったけど自分からすると、擁護されている感じもした。

実は婚活を一応していた時マッチングした人を捨てまくった理由(おい)は、「束縛されたら嫌だなあ」という本音からだった。男に付け狙われるようになってからようやくそれが確信に変わった。私は子供に24時間体制で付き合うあの「育児」ってやつに耐えられるとは思えなかった。

私は自分が芸術家気質だとは思ってなかったんだけど、最近父親に避けられている感じ(笑)がするのでちょっとそっちにようやく傾いたなって思っている。というかですね、お前は芸術なんか向いてねぇよって言われたから押し殺しすぎたんだよね。私は芸術に接してないと死ぬと思いますw

 

2023年3月28日火曜日

ELLEという映画

この映画は、ベネデッタと同じ監督なのですが、ベネデッタを観た後「この監督かなり独特だなあ」と思ってこちらの映画もGYAOで配信してたので観て見ました。

独特というのは、ロボコップでは一切そういう表現はないので、氷の微笑あたりからだと思うのですが…(氷の微笑はほとんど覚えていませんw)

ベネデッタ観たとき、「女性の描き方が凄いな」と思ったんですけど、何が凄いって、罪レベルの2面性ですね。

確かに女性は強い生き物ですし、嘘や芝居をすることに慣れています。そうでなければ生きていけないからです。世の中は男性中心に出来ていますが、女性に出産などのハンデがある以上どうしても仕方がないことだから。

しかし、ベネデッタは同性すら裏切り、しかも最高の信頼はそこには存在しない「キリスト」であったため、私は「信仰が強い(=推し活最高レベル)」と感じました。

 

「ELLE」の主人公ミシェルはさらにその上を行きます。

推定49歳、離婚済、企業の社長、会社の男性社員とセフレ関係、父は犯罪者で投獄中、母は若い愛人と遊び、整形(ボトックス)して無理をしている。息子は麻薬売人から卒業してハンバーガー屋で働いているが、その彼女の子供はどうみても肌の色がふたりと違っていたw

カオスです!!

しかも今作のテーマはレイプで、冒頭からミシェルがレイプされています(汗)。

この映画は若い女性より、私のように40代くらいか、30代ですでに男性に失望している方などが向いているかも。

主人公は熟女なので、レイプされてもそれほど驚かないどころか、始終冷めた反応。父が犯罪者のため、彼女は生き残りとして時々いやがらせを受けていました。なので何に対しても冷めていて皮肉をいうクセがついています。

しかしなあ、最大の問題点は、レイプ犯の正体なのですよ。

この映画にはたくさんの人間が登場し、みな複雑に絡み合っています。

クリスマスパーティーにはミシェルの母親とその恋人、お向かいのご夫妻、息子カップル、会社のセフレおじさんとその嫁、元夫とそのガールフレンド、など、無茶苦茶な組み合わせがやってきます。ちょっとメンタル強くないとやってられないですね。 

この中にレイプ犯がいるのです……。

ミシェルは映画の中盤で、再び現れたレイプ犯のマスクをついにはがします。正体は意外な人物。

そして、問題は、そのレイプ犯の目的をつとめることでした。もし彼女の身体を気に入っているのなら、熟女ミシェルとしては恋人にできないか、と思ったようで(多分かなり気に入っている)何度かけしかけますが、

最後らへんでも言われていることですが、この男性、「レイプでないと興奮しない」「レイプでないとセックスできない」らしいのです。

 

この物語は決してレイプ犯を改心させようだとか、そういう愛の物語ではありません。だからなおのこと、 バーホーベン監督の意図が気になりました。

多分、バーホーベン監督って、女性には3枚くらい上手でいて欲しいんじゃないかなと思いました。

正直ミシェルみたいに生きたいとは思わないのですが、相手が改心しないとわかった時のクールすぎる対応は、かっこよくて現実的だと思いました。

終わり方のちょっと空しいけれどかっこいい感じはベネデッタと似ていました。

そして案外、現実の犯罪ってこんな感じじゃないかな?ってちょっと思いました。自分ひとりで解決するのは本来危険ですが、警察が信頼できないという考え方はわからなくもないです。

特に性犯罪系は、警察の事情聴取でセカンドレイプされがち。 

(まあ基本的には一回はレイプされたことを警察に話すべきだと思います)


あと、レクター博士が言っていたことを思い出しました。犯罪の動機は「切望」。一番近くて、しょっちゅう見かける対象を獲物にする。

まさにその通りでしたね。 

映画の構成はなかなか巧みだったと思います。


2023年3月26日日曜日

シン・仮面ライダー観てきました

この映画は公開された週末に賛否両論の不可思議な感想が散見され、「いったいどういう映画なんだ……」とまったく見当がつかないまま観に行きました。

予告編を見た感想では、「シン・ウルトラマンよりはマシだろうな」と思ってたのですがほんとそういう感じでした。

シン・ウルトラマンのセクハラシーンが気にならない人は別の感想を抱く可能性は高いと思います。

やはりヒロインがセクハラ的な目線で撮られるというのは、昭和のおっさんの下卑た視点であり、令和的にはちょっと女性視聴者の怒りを買うと思いますし、作品全体の品性が下がると思いますね。

その点では本作は素晴らしかったと思います。

ヒロイン「ルリ子」は美しいけれど、キツすぎない。外見は超可愛くて、お姫様扱いですが、めったに笑わずテキパキした「デキる女」でありながら、時折見せる「デレ」が完璧な塩梅。

個人的に庵野作品のヒロインの中で一番ツボりました。一番いいと思います。

綾波はちょっと狙いすぎかなと思ってたし、アスカも強烈すぎるところがあるので…。

また、作品全体に漂う男女関係の清潔さもよかったなと思います。

こないだターミネーター観てて思ったんですがジェームズキャメロンに代表される当時のハリウッド映画って、世界の危機が迫ってるときにラブシーンとか入れてくるんですよね、「今ターミネーターが襲ってくれば面白いよな」とか思っちゃいますねw

主人公もよい。

主人公はちょっと(´・ω・`)なキャラクターで、「人をいとも簡単に殺す能力を持たされた」ことに始終戸惑いを見せ、戦わず解決する方法はないのか、と苦悩しています。またルリ子に言わせると「コミュ障」。

最近コミュ障ヒーローが流行っているのか…??

とはいえ、喜々として人を殴り殺していたら、とてもじゃないけど平和を目指したヒーローとは言えません。

主人公の、池松さん、結構棒読みというか朴訥すぎる喋り方だったんだけど、あれはキャラに合わせた演出なんだろうか。でもわざとでなくてもあの本郷だったらあってるんですよねwペラペラしゃべれる一文字みたいなキャラだったらヒロインと恋愛関係になってしまってたかもしれません。しかしこの映画のいいところはストイックなイメージだと思います。

池松さんは芝居自体はめちゃくちゃ上手いので、セリフだけ棒にしたのかなってちょっと思いました。

他の役者さんも配役がすごくよかったです。

一番よかったのは森山未來くんですかね。彼は、昔からお気に入りの役者さんで、特に今回は清潔感や高潔感が出ていてとても美しかったです。私のイメージする森山くんのいいところが存分に生かされていたのが嬉しかった。

本郷奏多くんも昔からお気に入りなのですが、アルミンやった時あれもう悪役辞めるんかいな。ってちょっとがっかりしたのですが今回悪役に返り咲いておめでたい!悪役のほうが絶対いいとこ引き出せるタイプの役者だと思います!

あと松坂桃李くんはすぐに声でわかりました。彼がいい声で本当によかったです。

斎藤工さんと竹野内豊さんは素顔で出てくるのですぐにわかりますが、こんな脇役に使うのは贅沢かなと思いつつ、ふたりとも黒いスーツに身をつつみイケメンっぷりを発揮!

竹野内豊さんはなんであんなにスタイルがいいんだ……。びっくりしちゃったよ。

斎藤工さんに関してはやっぱりウルトラマンのほうがいいですww


テーマは「幸福とはなにか」みたいなところだと思うんですが、ヒーローは悲しみや苦しみを忘れてはいけないんだというストイックな脚本がとてもよかったです。

ただ、なんというのか、終盤になると少し緊張の糸がきれたような、冗長な感覚が少しありました。

個人的には終わり方はあんまり好きではありません。が、作品の特に前半から中盤までの描き方はエヴァンゲリオンっぽい庵野節をすごく感じましたし普通に面白かったです。

原作はYouTubeで2話までしか見てなくて、仮面ライダーに「されてしまった」理由は知っていたので少し助けにはなりましたが

庵野さん作品特有の「長くて難解な説明セリフ」が多いので、一回だとちょっと理解できなかったかもしれません。 (全部一回で理解できれば、予習は必要ないかも)

ただ、それがないと脳筋ヒーローものになりかねないので、設定自体は面白かったです。もし続編があるならAIをもっとからめて欲しいなと思いましたが、一文字の性格があんまり好きではありませんでしたwやっぱりストイックなヒーローが好きですね~。

2023年3月23日木曜日

「羊たちの沈黙」がやっぱりすごい件

GYAO!が3月末で閉鎖する。この動画サービスはひそかにオタクたちの間で人気だったと思う。ちょっとレアな映画を流してくれたり、無料でアニメを周期的に流してくれることもあった。特にマスターキートンのアニメを時々流してくれるのがとても嬉しかった。

最後の大盤振る舞いで、有名な映画をいくつか流してくれているのだが、その中に他の配信ではなかなか観れない「羊たちの沈黙」があったので、ものすごく久しぶりに観てみた。

やはり40代の私にも刺さる。それに初めて観た時からだいぶ知識が増えているので、どれだけレベルの高い作品なのかが手に取るようにわかった。アカデミー賞がどうとかいうレベルを超えている。単純に完成度が高く、展開が面白く、品格が高い。この映画が大成功した要因を自分なりに分析してみた。

配役が完璧で、俳優が優秀だった

まずはどうしても役者に注目してしまう。

アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターを絡ませたのが大正解だった。実はこのふたり、目がとても似ている。目が大きく青グレーで色素が薄く、なんとなく親子に見えなくもないのだ。 

ジョディ・フォスターが大成功だったのは、なんとも頭のよさそうな、クールで生意気な雰囲気がぴったりだったのだ。彼女なら、若くてもなんとかやってくれるんじゃないかと期待してしまう。そして彼女がチラ見せする恐怖が外見とギャップがあり、絶妙なのだ。

アンソニー・ホプキンスは、実はこの後の作品も、似たような感じの役を演じるので(もともとメソッド法を否定しているタイプ)たまたまぴったりだったとも言えるのだが、彼は裁判所にまで赴いてリサーチを行ったという。

英国訛りの格調高い英語がこの役にはぴったりであった。

 

主人公のキャラクター設定が共感しやすく魅力的

クラリスは実はFBIはまだ見習いであり、研修中のシーンから始まる。研修生の割には優秀であることも示唆される。またジョディ・フォスターのたたずまいがそもそもクールで知的で自信があるけれど奢らない雰囲気を醸し出しており、優秀だけど生意気すぎない良いキャラをつくっている。

研修生であり、獄中の犯罪者にセクハラされるなど、若い女性でも感情移入しやすい内容になっている。というか、正直この時代はまだセクハラに寛容だったのか、彼女は各所で口説かれまくるのだが、そのたびにクールに受け流しており、その姿が女性陣には「あこがれ」として映る。

そして重要なのがレクター博士との関係性だ。これについては後述する。 


レクター博士のキャラクターが斬新 

カニバリズムの犯罪者で、元精神科医でなぜか人を食べる。当時は異色の存在だったと思う。また、今でこそ鬼滅の刃や東京喰種などの漫画に人を食べる表現が出てくるが、それでもレクター博士のレベルのキャラクターはなかなか出てこなかった。彼は素の状態で興奮もせずに人を殺し、人肉を食すのである。

彼はワインのつまみに人の臓物を食べる。続編では綺麗に調理して盛り付けて食べているシーンもある。

ちなみに私はまだ恐ろしくて見ていないが、彼がこうなったのには理由があり、それも映画化されている。幼い頃に人を食べさせられてしまったのだ。

レクター博士にとって「他人のトラウマ」はご褒美であり、栄養である。その理由は、自分が人を食べさせられたトラウマから来るものではないかと思う。

私も、自分と同じくらい傷ついている人はいないかとついつい探してしまうし、好きになるキャラクターは大体ひどく傷ついた人間ばかり。レクター博士の気持ちはわかる気がする。

彼は恐ろしく知性が高く、芸術を愛し、ジョークやなぞなぞが大好きで、そして言葉遣いが(基本的には)綺麗で上品である。

残虐なのには変わりがないが、それまで多かった「悪い奴はただやみくもに人を殺したり暴力を働く」イメージを覆した。知性が高くこだわりの強い悪役ほど、敵にまわして怖いものはない。 


主人公ふたりの関係性が斬新

レクター博士は、純粋で勇敢で頭のいい人間はすぐに見抜き味方とみなす。クラリスの外見は前述した通り、美しい上に頭の良さがうかがえる。レクター博士は最初こそ「安っぽい格好」「田舎から出てきたんだな」とあっというまに彼女を考察して言い当てるが、動じない彼女を気に入り、ウインクを飛ばしている(笑)。

レクター博士はおそらく最初からクラリスが好きだと思うが、問題はクラリスの心境である。女性というのはいつも言っているが複雑で賢く、本音をすぐに見せないし、罠にかかりそうでかからない。女性が罠にひっかかるときは「あえて」である。

クラリスは自分のトラウマは真剣に話すが、裏ではレクター博士の情報を聞き出すことを忘れてはいない。

クラリスがレクター博士を信頼しながらも、恋愛関係にはならないところに、作品の深みがあると思う。

レクター博士はクラリスに下品なセクハラをした男を始末する(笑)。これがレクター博士の愛情の示し方だ。この辺も女性視聴者は共感し、レクター博士に好意を抱くだろう。そして面白いのは、クラリスがそれをわかっているところだ。

「彼は私を追ってはこない。「それが無礼だ」と知っているから」

 

テンポがよくて目が離せない 

映像の編集や構成が上手い。次から次へと巧みに物語が展開し、かと思うと突然止まったりする。特にボールペンの時はしつこいくらいボールペンを映していて、映像だけでこれが重要なのだとわかるようになっている。そういう緩急がとても上手いと思う。


ミスリードによる凝った脚本

レクター博士が入れ替わっている時と、あと終盤の「犯人を突き止めた」と思った時のミスリードの表現が非常に上手い。よく見ると、レクター博士が入れ替わっているのに気づいてしまう人は多いと思うが、初見だとわかりづらいかもしれない。

見事なエンディング 

絶体絶命かと思われた終盤からのエンディングは見事で、緊張感を持たせたり限界まで引き延ばしたりするテクニックは優秀だなあと思った。最後の最後でタイトルを回収するところも見事である。

 

また、この映画がもたらした影響は大きかったのか、様々な映画で似たようなテクニックや演出を見ることができる。

この映画によりFBI捜査官が流行したのか、私は数年後に「FBI心理捜査官」というベストセラーの本を読んだ記憶がある。

 

この映画は「人の心理」についてもよく洞察がされている。トラウマに着目している点からも、我々人間がただ貧困などが原因で犯罪を犯すような単純な生き物ではないこともよく表現されていた。特に「目の前にあるものを切望する」はよく会社のハラスメントで見かける光景であり、納得のいく考察であった。

本来であれば犯罪者本人を掘り下げるところを、あえてレクター博士という難解な人物にスポットを当てることによって、大変深みを増す作品となった。確かにはらわたを切り裂いて飾るとか、警官を襲って好きなだけ殴るとか、そういうシーンもあるが、残酷なシーンは綺麗に編集して一番グロいところはあまり見せていないし、品格を感じる。

知的好奇心を刺激されるレクター博士のセリフに皆が翻弄される知的スリラーであり、終盤はホラー映画としても楽しめる。

 

また、ザ・バットマンは明らかに影響されている感があって、獄中にいる賢い犯罪者に意見を求めにいく「カットされたシーン」なんかはとても似ているなあと思った。