2021年10月25日月曜日

アランウェイク リマスター 考察(2)ネタバレ注意

アランウェイクのストーリーは示唆的で、全貌が明かされていない印象があるので、ネットでも考察が乱立している状態だ。いくつか読んだけどあまりの長さに疲弊する(笑)

私のはどのくらいの長さになるだろうか・・・・

正直、ゲーム内で語られていることだけをなぞっても、この作品は面白くない。この作品の面白さは、「語られていない部分を妄想する」ところにある。

では私も、コールドロンレイクの力を借りて妄想に浸ってみよう。

 

この作品の「テーマ」は結局なんなのだろうか?大筋から振り返る

大筋は、前半:アランはスランプからのいらだちを癒すために、妻のアリスとブライトフォールズを訪れる。

しかしちょっとした喧嘩で離れたすきに、アリスがさらわれる。アランは溺れたと思われるアリスを追ってコールドロンレイクに飛び込む。そこで突然、一週間の時間と記憶が飛び、アランはひとり、事故った車の中で目覚める。

「アリスは誘拐した」との電話を受け、誘拐犯を追い詰めたアランだったが、どうもそれも虚言だったらしい。またひと悶着あって水に飛び込んだアランは意識を失い目覚めたのはハートマンの診療所だった。

ハートマンにはアランが妄想の中で生きているだけと告げられるが、バリーはその前のアランのことをしっかり覚えている。決してアランの妄想ではないことが、だんだんと明確になる。

後半:ハートマンや誘拐犯などの邪魔な存在が消え、闇の存在はバーバラが主体であること、それに対抗するのは「トーマス・ゼイン」という過去にいた詩人(作家)であることがわかってくる。この辺からはファンタジーすぎて中にはついていけないというプレーヤーもいる。

アランは、ゲーム内に散らばっていた原稿の最後を書かなければならない。それがラストステージ、ラストバトルだといってもいい。

そして邪魔をするのは闇のバーバラさんである。

 

闇の存在は何がしたいのか?

闇の存在は、トーマスこと「トム」が解放してしまったことになっている。彼はバーバラが亡くなったとき、彼女をよみがえらせるためにそのような内容を書いて、コールドロンレイクの魔力により、蘇生に成功したが、蘇った彼女はもはや彼女ではなかった。

蘇生したのは闇であった。

トムは自分のクリエイティビティを悪用してしまったようなものだ。そして同じことになりそうなアランを言葉で助けてくれる。おそらくトムは現世には帰ってこれないのだろう。

ちなみに「コールドロン」というのは英語でcauldron、ハロウィンのアメリカではよく見かける、魔女が何かをぐつぐつ煮ているあの釜のことを言う。

最近ではめったにお見掛けしなくなったが、魔女といえばコールドロンとセットで描かれ、おそらくディズニーだと白雪姫くらいかな?出てくるのは。

参考リンク:この画像で魔女が毒リンゴをつけてる?釜のことを言う。

https://sp-magazine.disney.co.jp/p/24104?ex_cmp=ln_24104

つまり、この湖には魔力があるという暗示だろう。この世界の場合、作家の妄想が実現してしまうのだ。

バーバラ(闇)はトムが正気に戻って封印してしまった闇を、アランを使って復活させようとしていた。コールドロンレイクにおびきよせ、アリスをさらってアリスを助けるために物語を書かせる。うまく操って、この世を闇のものにしようとしていた。つまり、トムと同じことをさせようとした。

 

闇とはなにか?

闇に囚われた作家が、闇を生み出すのではないか?と私は感じた。

闇というのは決して「暗い場所」のことではない。

トムで言えば「バーバラの喪失」が闇だった。

アランで言うと、まずは「スランプで書けないこと」

それに加わったのが「唯一の救いのはずのアリスの喪失」

焦燥感によって、アランの妄想と創造力は暴走する。

周りの人間が闇にとらわれ、次々とおかしな言動をし、自分に襲い掛かってくる。ウイルスのようだ。ゾンビものよりクリーンだが、狂気は感じる。

周りの人間は果たして、闇に囚われるようなことがあったのか、思い返すと、どの人も何かしら闇を抱えていた。ラスティは、不倫をしたがっていた。誘拐犯は自分が嘘をついていることを、闇に詫びているシーンがある。ナイチンゲールは被害妄想が激しすぎる。

例えば、ラジオのDJをしているパットは正常でクリーンだ。周りを冷静に観察しラジオでコメントしている。サラも、あれだけ戦っているがクリーンで、最後まで影響されなかった。バリーは多分単純すぎて闇がつけいる隙がない(笑)

DLCでアランが「俺はクリーンだ」というシーンがある。しかしカメラマンのアリスが言う。「主人公を殺しちゃう話を書く作家がクリーンなんて言えるかしら」

冒頭では自分の生み出した悪役に追われるアラン。

作家は、悪役を書かねばならない。悪を生み出さねばならない。つまりアランにも、闇の側面がある。それはDLCだと特にはっきりと描かれている。

 

作家のあるべき姿

アランは最終的に、アリスも自分もすべてを救う物語を書くことで、この悪夢のような状況を脱すると決意する。この辺はもうファンタジーだけど、作者が何を言いたいのかわかるような気がする。

アランは「少しも間違ってはいけない。納得のいく話を書かなければ……」と焦燥感と決意をあらわにする。誘拐犯なんかは、2日で原稿を仕上げろという。アランは一週間!と粘る。なんかもうこれ、現実の作家みたいなものじゃないか。

もしかしたら、このゲームは、「作家やクリエイターの苦悩、葛藤」をテーマにしているのではないか?

適当なものを書いたら、アリスは死ぬ。俺は闇にとらわれたまま。世界は闇に攻撃され続ける。

完璧なものを創造し、闇と置き換えるのが、アランというクリエイターの仕事だ。

なのに現実の我々はどうだろう?

2年前だか、いきなりスケジュールが送られてきて、WEBサイトのデザインを3日で仕上げるように書かれていた。

狂気である。

そもそもの依頼者が目の前にいたのでみんなで会議をしたらあっという間に折れてくれた。

なんだかくだらない話だな、と毎回思う。

締め切りや納期なんかは、ただの数字だ。そこは冷静に、クオリティの話をするべきだ。黙ってすっぽかすわけにもいかないからね。それに守銭奴なディレクターだと、納期は短縮してなんぼだと思ってる人もいる。

最初に事故った時、アランの車の後ろに回るとハートマンの著書がある。そこには「クリエイターのジレンマ」とあった。

ハートマンはクリエイターの治療を得意としている精神科医で、彼の診療所には妙な言動をするクリエイターが色々いる。

皮肉なことにずっとなにかわめいているゲームクリエイターなんかがいた。あれは痛烈な風刺である。

問題は、ハートマンがゲームを「くだらない」と発言したり、有名なバンドのメンバーだったおじいちゃんたちをバカにしたりするところだ。ハートマンは割とあっさりいなくなるのだが、なぜ彼が出てくるのか、考えていた。

ハートマンは「クリエイターを尊敬しない一般人」である。

私が美大に行きたいとか漫画家になりたいとか言って、デザイナーに就職してもバカにし続けた、自分の父親みたいなもんだと思う。

しかし、ハートマンがさらにまずいのは、そんなクリエイターでも金を生み出すことは知っていて、原稿を書かせたり、絵を描かせて金に換えようとしていたのだ。

彼がラスボスでも話的には問題なかったかもしれない。でも、ハートマンは「現実でのラスボス」であり、この話は現実だけで完結するほど甘くなかった。ここで、前半が終了し、アランの真の敵は闇そのものであることがはっきりする。

その点でも、クリエイティブの勝利と言えよう。そこまで羽根を伸ばすからこそ、アランウェイクは魅力的なのだ。

 

最終的な戦いは、自分のクリエイティビティとの戦いである

最後の原稿を書く旅の途中、焦燥感に囚われる中、闇(バーバラ)はなんどもアランを妨害してくる。

その道中で印象的なのが、「言葉が現実になる世界」だ。空中に浮かぶ文字を照らすと文字に書かれたものがそこに現れるのである。

これこそが、アランやトムの持つ能力を表しているのではないだろうか。

創造する力というのは素晴らしいものだ。神に等しい。文字という記号だけで世界を創れるのだから、こんなにクリエイティブなことはない。

だが、それの乱用の危険性を、本作は示している。心の闇に囚われれば、DLCのように自分の分身が自分を攻撃してきたりする。 

強い精神を保って、バランスのとれた、完成度の高い、納得のいく物語を書かなければ、闇に追われ続ける、クリエイターの教訓的なお話なのではないかと、私は思う。

それはとてもつらい道のりだ。

だが、クリエイティブな仕事を生業に選んでしまった時点で、我々は自分自身と戦い続けなければならない。そんな、悲惨な話でもあるのかもしれない。

 

・完成度の低いものを作ることは罪だ。

・頭のおかしい編集者がついたと思ったら、なんとかして逃げろ。

・創作物の価値を金銭的にしか見ない人間にも気をつけろ。

・身内に不幸が起こっても、ネガティブな感情に囚われるな。

・自分のクリエイティビティで奇跡を起こそうなどと、傲慢なことを考えるな。

等、様々なメッセージを感じ取ることができるが、一番大事なのは一番目かな。

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