2023年9月16日土曜日

ブレア・ウイッチ・プロジェクト

久々に見てみました。この映画は20年近く前に妹が借りてきたのを観て以来です。あの時代は、12モンキーズなど、暗くて私の心をひきつける作品が多く、20代だったのもあって大変影響を受けたことを覚えています。

やはり20年経っても非常に面白いですね。私の洋画ホラー1位の座は揺るぎませんでした!その理由を、羊たちの沈黙の時と同じように羅列してみたいと思います。

 

ヘザー役の女優の演技がとてもいい

特にラストの叫び声なんて、夢に出そうです。

ラストシーンは壁に手形とかついてるのが、あまりにも衝撃的すぎて、ビジュアルと悲鳴をよく覚えていました。

また、女性監督として名を上げたいと思っている学生ヘザーの傲慢な態度から、終盤にかけての懺悔のシーン、恐怖でマイクの名を呼び続けるシーンなど、すべての演技がピタリとはまっていて心揺さぶられます。

 

テンポがいい

80分の小さい低予算の作品だからというのもあるが、ダラダラ喧嘩してそうでそうでもない。いつの間にか次のシーンに変わっており、徐々に魔女の影響のようなものが強くなっていくのが面白い。

この映画のエピソードをノートに書き出してみるとわかると思いますが、実はかなりのスピードで展開しています。なのでいつのまにか大変なことになっているという引き込まれ方がいい。

 

映像がいい

昔のカメラを使っているのか、テープのようなものが見えていました。映像も荒いです。ホームビデオに近い。(一応彼らは映画を作る勉強を大学でしています)

またどう考えても下手くそな構図や、寄りすぎな映像もあるのですが、「ちゃんと見えない」あの怖さは素晴らしいですね。肝心な時に見えず、逆に一生懸命探してしまうので、引き込まれます。

最後は特にいいです。ただ、廃墟を恐怖でテンションを上げながらカメラを振り回して撮影してるのですが、夜の廃墟自体が怖いというのもありますが、ついついエビデンスを一生懸命探してしまいます。

おそらく手形と文字以外は無いです。ですが、文字も一瞬なので何が書いてあるかわかりません。ルーン文字のような読めない感じのものだったと推察します。 

この不鮮明な感じは綺麗なデジタル映像だと再現しにくいので、最近ではわざとノイズを乗せてる自主制作映画を見かけますね。

 

恐怖がただひたすら右肩上がり

最高のクライマックスで終わってしまうのが、一部から批判される理由だと思うんだけど、そこに至るまでのいくつかの恐怖シーンが結構印象が強くていいですね。

個人的に無茶苦茶怖かったのがテントを外からツンツンされるシーンです。ツンツンしてるのか、殴っているのか、よくわからないのですが外部から攻撃されているようなのです。テントという脆弱なツールの弱点をよく突いています。

基本的にこの映画は低予算のためか、攻撃者の声は聞こえるものの姿は結局見えません。

それが逆に怖いという、まさに低予算を逆手にとった良作だと思います。

また私はグロいのが嫌いなので、ジョシュの服の一部に人間の体の一部が包まれていたシーンは、ちょうどよい怖さでした。あれがジョシュかどうかも判別はつかないのですが、服がね…。そしてその前に散々、ジョシュが苦しんでいるような叫び声が聞こえているのもいい演出です。はっきりはさせないが、思い込みでほぼ確実だと思わせるロジック。

そして、途中でマイクとジョシュが笑いだすシーンがありますが、あれも、魔女に振り回された結果なんだと思います。実体のない恐怖にさらされ続けて頭がおかしくなってくるのも、恐怖です。

 

そして、やっぱり、「本当かもしれない」あの感じ。

モキュメンタリーに「実体」が映ってしまうととたんにCGのリアリティ評価になってしまいますがこの作品は最後まで「実体」を映していないので、評価のしようがなく、逆にそれが嫌われる理由にもなりましたが、上品で上手いなと思いました。

もしこれが全部、魔女ではなく地元の人間が仕組んだことでも、理屈が通ってしまうからです。だからこそ、「本当っぽい」感じが出てきます。

そういう意味では、 「都市伝説」好きにはたまらないですし、本来都市伝説ってのはデマを楽しむものですが、これもそうなんだと思うんです。でも本当に魔女か、そういうことをする人間が住んでいたら、怖くて面白いなと。

 

私はバイオハザードヴィレッジは怖すぎてプレイできませんでしたが(体験版でも)、ブレアウイッチの最後のシーンとかなり似ている映像が出てきますよね!あれもめっちゃ怖かったです。

制作陣はきっと参考にされていると思います。FPS一人称視点のゲームでしたし、周りがよく見えず、音だけが聴こえるあの感じもよく似ています。

音だけが怖い演出については「アランウェイク」は天才レベルで、ちょっとやりすぎなくらい音で攻めてきます。行っていない上の階からやたら話し声や足音が聴こえたり。

ブレアウイッチのゲームがあるそうなんですが無茶苦茶怖いらしいです。

でも、バイオハザードは映画にするとあんまり怖くないと言われていて、本来は、ゲームのほうが怖いのに、映画がかなり怖いのはいいことだと思います。

2023年9月4日月曜日

HAPPY DEATH DAY

実は先日「恋はデジャ・ヴ」を観たばかりなのだが、教訓めいた内容とやたらひっぱる長さにちょっと閉口していたところに、この映画のヒロインの顔芸が面白いと聞いて再生してみた。同じくループものである。

だが、恋はデジャ・ヴが普通に寝ると翌朝同じ日が繰り返されるのと違って、本作は前日に必ず殺され、はっと目を覚ますと同じ日を繰り返すというもの。

ミステリーになっていて、仮面をかぶって自分を殺しにきた人間が誰なのか、ずっと謎を解き明かすのに必死で、なかなか面白かった。クチコミの通り、ヒロインのリアクションが実に大袈裟でアメリカンテイスト。

ついに突き止めた!と思ったら、とある理由でヒロインがループをやり直すため自殺までする。なかなか、一回でうまくいかない感じが盛り上がる。

そしてクライマックスのどんでん返しも、私も全然気づかなくて驚いた。ミステリーとしてはかなり上出来ではないだろうか。

全体的に表現が安っぽいのと、ヒロインが性格に難ありのビッチで、恋はデジャヴと同じで途中からいい人になろうとしてるんだけど、元ネタをすでに観ているとあんまり感動もしないというか…。全体的に二流感はあるが、初見だと楽しめると思う。気楽な気持ちで観れるホラー映画って少ない気もするので。

 

ちなみにラストシーンでヒロインたちが「恋はデジャ・ヴ」の話をしているので完全に元ネタだとバラしているw 

あと壁に「ゼイリブ」のポスターが貼ってある…w

2023年9月3日日曜日

アステロイド・シティ / ウェス・アンダーソンの世界

恥ずかしながらウェス・アンダーソンを知らなかったのですが、この映画のチラシを見かけてから絶対観ようと思っていました。

映画観終わってすぐパンフ買いました。ビジュアルがとにかく素晴らしかったので、何かしら手元においておきたいという気持ちからです。(バービーも、ウェス・アンダーソンを参考にしているので、ビジュアルがよくてパンフ買いました)

ウェス・アンダーソンのその「ビジュアルのよさ」というのはどういうものなのか、デザイナー目線でお伝えします。

 1:やはり色彩が良い

インスタグラムのフィルター(ナッシュビル)のようなカラーリングですが、ある程度いじっているとは思いますが、明らかに計算された色使いでつくってるなと思いました。

その色とは、背景・マットペインティング・小道具・大道具・衣装・髪の色・肌の色・照明にいたるまで、細かいこだわりがあると感じます。 

簡単にいうとレトロカラーです。1955をあらわしているからとも言えますが、完璧すぎて驚きます。

ちょっと度肝抜かれたのは「グリーンのバスタブ」です。どうしたらそういう発想になるのか。そしてバスタブやっぱり塗ったんですかね…。

あと人間の肌はあえて彩度をがっつり上げて色飽和を起こすように補正されていますが、レトロ感がよくて効果的でした。

積まれた中古車もなんとなく色が綺麗ですし、家族の持ってきたトランクの色も計算されているし、トム・ハンクスの衣装の上がクリーム色で下が水色のパンツはすっごいかわいいのにおっさんになぜかしっくりきていてとにかく凄いなって思いました。

2:フォントが良い

まずタイトルとスタッフロールのフォントはすべて統一されており、かわいらしいフォントです。

また、小道具や看板が大量に出てきますが、すべて計算しつくされていると感じました。しかも、看板で状況を説明しまくっている映画なのですが、状況が変わると上から赤いシートを貼って文字が書き直してあるのですがそこも綺麗にフォントでデザインされています。そしてタイポグラフィーにこだわりのある方はご存知だと思いますが

「字間」が完璧なんですよね。

どういう感じかというと、「あえて詰めない」「少し空ける」なのですが、1文字分あけるとちょっと開けすぎなので50~80%くらいで留めてるのが「かわいらしい」「レトロ」なんですよ。あとあのフォントの選定センスは異常ですね。現実には存在しないくらい、計算しつくされています。画面全部がデザインされている。

自動販売機のセンスが良すぎるので、こういうの日本にあってもいいと思うけど、おそらく人間が生きているうちは設置されないでしょうね。

ウェス・アンダーソンこそ映画グッズを大量に出しても売れると思いますね。

3:構図が凄い

これは多くの方も同じ意見だと思います。こだわりが強すぎて、つまらないシーンでも画面の隅々までディテールが楽しめました。

例えば、人物を正方形の窓から撮影しているシーンが結構あるのですが、白い壁の真ん中の人物に集中させておきながら、その壁の先の背景までが完璧にレイアウトされています。簡単に言うと、「絶対ものが被らないように配置されている」のです!!もし被っている場合は、完璧なレイアウトで綺麗にものが並んでいます。

ぐちゃぐちゃになったのは少年が飛び降りた時に空き缶が飛び散った時くらいなのですが、この少年が上から下まで白を着ているんだけど、なぜか白いニットとかなんですよね!異常なこだわりを感じました!

一点透視が好きなのか、いちいち一点透視になるところまでカメラを移動させて、シーンを撮影、わざわざ移動してまた一点透視で別のシーンを映す…。演劇がモチーフだからというのはわかりますがピタッと中心に合わせるので、絶対俳優の位置を変えることはできないと思うんですよ。消失点に向かって背景が左右対称ですからね。こいつはたまげました。

一か所、「上下」に撮影しているシーンがあり、これも完全に中心を合わせた三点透視でした…。

また、絵画的な構図が多く、人物はあまり動かないものの、「手前に中心人物」「横にサブの人物」を配置していることが多く、不自然な位置にいるのですが絵としては完璧なんですよね。動くイラストを見ているような感じです。

非現実感を出すには効果的だし、中心に絶対に合わせるという構図ならある意味迷いがないので楽そうではあるのかなと思いました。(カメラの技術を知らんのでぴったり合わせるのがどれだけ大変かはわかりませんがw)

あとスクリーンの左右ギリギリに人物配置して会話させるの、結構好きですね。おもしろい。

真ん中を柱でぶった切るのも面白いなと思いました。

4:アナログへのこだわり

全体的にアナログなのがかわいらしい作品なのですが、宇宙人のアナログ感がすごくて、かわいくてしょうがなかったです。ストップモーションアニメーションなのですが、コマ撮りらしいぎこちなさがたまらないですね。

説明するともったいないので、ぜひ見ていただきたいです。

また、パンフに書いてあったのですがこれ全部フィルム撮影だそうで。

いや、わかる。同じ極彩色の世界でも、バービーは生々しい写真感があったけど、アステロイドシティは徹底的にレトロ感にこだわっていますからね。色あせた、優しい色づかいや少し不鮮明な輪郭(とはいえピントはばっちりなんだが)はフィルムの味なのかもしれないなあ。

 

ビジュアルばかり褒めてしまいましたが本当にビジュアルへのこだわりはハンパないです。普段デザインをしている人間からしたら「すごいうまいデザイナーが突然現れた!」みたいな世界ですよ。

「こだわってつくれ!」「完璧主義になれ!」と尻を叩かれるような完成度の高さです。

その反面、話はあんまりおもしろいとは言えないのですが、なんかいちいち小ネタが笑えるので楽しかったです。きっと面白い監督なんだろうなと思いました。宇宙人の登場シーンはみんなやっぱりちょっと笑っちゃいますよね。 

テーマは演劇やクリエイティブの話だと思っていて、ちょっとドライブ・マイ・カーを思い出しました。

あまりにも完成度の高いオシャレ映画なので、ずーっとカフェとかで流しておくのによさそう。家で流しっぱなしにしたいような映画。