2023年12月30日土曜日

2023年私的映画ランキング

去年から恒例にすることにした年間映画ランキング始めたいと思います!では!

cocoはイーロンマスクのせいでサイト閉鎖だそうです。残念ですなあ…

なんかネット見てると結構意見が割れているような気がしますが、それも面白いと思いつつ、エブエブもう忘れたとは言わせたくない件w

 

1位:「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

これを観ないで2023年の映画を語ってはならない。というくらいの良作であり、怪作であり、文字通りバケモノ級に賞をとっていました。そしてたくさんの人を泣かせ、カオスの渦に巻き込んだと思います。

主人公がアジア人の中年のおばちゃんで、アカデミー賞主演女優賞なんだから私らとしては絶賛するほかない。ストーリーも子供がいなくても、女として共感できる。

 

2位:「バービー」

いまだに毎日これのサントラや関連曲を聴いていますが、ツイッターの男VS女戦争を楽しく具現化したらこんな感じでしょうか。男女の間の「暗黙の了解」を叩き斬る時代のリーサルウエポンであり、これを観た世界各国の視聴者のリアクションが大変興味深い指標となりそうです。ジェンダー学習度のバロメーター映画。

そんな感じなのにグレタガーウィグは結婚しやがりましたよ?

 

3位:「インディ・ジョーンズと運命のダイアル」

なんといっても、北欧の至宝ミケルセンがナチスの軍服をおもむろに着用するシーンなど、驚きの楽しい展開が多い。この作品もふろしきを広げたあと畳むのが非常に上手かったです。

しいていえばヒロインが微妙ではありましたが、最後の活躍は肝でしたよね。彼女がいたから、丸くおさまった。

それからインディーを継げる役者がいないというのは、ハリソンフォード役者冥利に尽きるのでは…。あの皮肉屋が珍しく「This series mean a lot to me」なんて素直に感激しながら言ってましたのでね。

 

4位:「キラーズ・オブザ・フラワームーン」

これはディカプリオ史上最高の演技!アカデミー賞狙っているに違いありません。

恐ろしく長い映画ではありますが、犯人がわかっているのにまったく目を離せない、丁寧なストーリーテリングと心理描写。人間が人間を食い殺す恐ろしい展開とそれが人の心理に与える影響をよく描写していると思います。こんなことは現代ではありえないと思うものの、メタファーとして、間接的に会社命令で他人の人生を死においやっている会社員って絶対いるんだろうなと感じる内容。考えさせられました。

スコセッシにしては多少救いのある内容とも感じました。

 

5位:「ミッション・インポッシブル デッド・レコニング」

レベッカファーガソンがかっこよかったし、テンポが非常に良く、わかりやすい、カーチェイスはギャグだし、秒刻みでよく構成を練ってあるんじゃないかなと思いました。感動の超大作ではないんですが、シリーズ中最高傑作の予感を感じました。

 

6位:「MEGAN」

AIものをあえての「人形」にしたのもいいし、それが美少女なのも最高。さらに演技は子役にやらせて、静止シーンは本物の人形を使っているというアナログな映画メイキングが功を奏したと思う。

ミーガンダンスはバイラルになり、多くの人が真似して動画をアップしたが、あのダンス自体には実は意味がない。なのに、あえての演出として入れることで大人気になったのだから、蛇足は案外重要とつくづく実感した作品。

また、AIのほうが人間より育児がうまく子供の心をつかめるという皮肉なストーリーも最高だ。AIの愛が暴走して、障害となる人間を殺してしまうのもホラー映画だからできることであり、いい組み合わせになっている。 


7位:「パリタクシー」

クチコミで火がついたマイナーなフランス映画だが、私の両親も観に行って泣ける!と絶賛。フランス人らしいセンスが随所にちりばめられており、脚本の完成度が非常に高い。

配信されたらぜひ観てほしい。生きようと思える良い映画である。

 

8位:「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

初回観たときはどう捉えていいのか悩んだが、あとで人気に火がついた時に、あくまでも私のような社会人層向けなのだとはっきり悟った。だから主人公がサラリーマンなのだろう。でも鬼太郎の父がかっこいいので圧倒的に「若めの女性」が多いと思う(私は若くないけど、独身のためw)。

順位を下げたのは日本映画だからか女子供を犠牲にするストーリーがなんとも容赦がなく、倫理感に疑問を感じたためであるが、それ以外であればテンポも非常に良く、ただの連続殺人事件ではなく鬼太郎の父をからめたことでちゃんと妖怪ファンタジーに仕上がっており、とにかく父のバトルが奇想天外で格好良い。

あとターゲット年齢層を高くするならもうちょっと絵柄は考えたほうがいいのかなとは感じた。 だけど、ゲゲ郎はデフォルメの顔がとぼけてて可愛いってのもあるから難しいだろうなあ。

 

9位:「君たちはどう生きるか」  

ジブリ映画としてはやはり既存のものに比べるとどうしてもレベルは低くなると思うが、主人公のキャラクターがとてもよかったのと、やはり絵の描きこみや単純な画力はクオリティがかなり高いと思うし、日本のアニメ映画では今これがトップレベルだと思う。

話は意味不明で説明が不足しているが、私は当初「世界の創造と崩壊」の話だと思っていて、主人公は神になるかどうかを試されているのだと思っていた。

だがあとから出てきた解説で、その「世界の創造」というのは単純にジブリの宮崎駿さんが映画をつくっていくことを示していたとわかり、少しつまらなくなった。

どうせなら本当に天地創造の能力を持たせても面白かったんじゃないかなと。この現実に結びつけちゃう感じすごくスコセッシっぽくてちょっと失望する。

 

10位:「アルマゲドン・タイム」

映画監督の少年時代の自伝として、「フェイブルマンズ」のライバルとも言える作品。

主人公は同じくユダヤ人差別を受けがちだし「普通の生徒」としてふるまうことが苦手である。それを父や祖父が全力でかばってくれていて、その「危うさ」に非常にリアリティがあった。

フェイブルマンズも悪くないのだが、本当の意味で「人生は綱渡りなんだ」という危機感を語っているのが本作品。アンソニーホプキンスが語ってくれると深みがある。クリエイターの人生は色々あると思うけど、このくらいの危機感があったほうが私はしっくりくるなと思う。

 

それでは今年も大変お世話になりました。

これからやっと買ったプレイステーション5を開封しますので、来年は少しはゲームの話ができるかもしれませんw


2023年12月17日日曜日

ゴジラ-1.0

この映画は観るつもりなかったんですが、会社でも大流行していて特に男性陣には大変高評価だったので、終わる前にと大画面で観てきました。

この映画は大音量じゃないとほとんど意味ないんじゃないかなと思いました・・特に音響!!!音響で50%くらい迫力もってってますよね…。

シナリオは個人的にはあまりひねりがなくてまあまあ普通かな?!と思ったのですがどうなんでしょう。血のつながらない家族3人という設定はもうちょっとなんかあったらなとは思いました。

よかったのは主役のふたりですかね。ビジュアルがやっぱり良い!神木くんは長時間観てても飽きないしイケメンだなあと思いました。濃すぎる顔が苦手なのだ…。

あと浜辺美波さんも引き続き好きなので。でも緑川ルリ子にはぜったい勝てないなと思いました。あのキャラは最強だったな。

ただこの映画がアメリカでも大ヒットするならその理由ってやっぱり「ゴジラ」そのものの表現だと思うんですよ。単純にギミック的なところがカッコいいんですよね。

だけど個人的には、、、

 

もう2、3技ないとちょっと飽きるっすwwww

 

あと設定がひでぇなと思ったのは、あの太平洋戦争を生き延びた銀座をボッコボコに壊しちゃうのはいかがなもんかと、、、昭和20年、復興中なのに。

ただ、ゴジラが、破壊者以外の何物でもないのであれば、同じことであればやっぱりシン・ゴジラのほうが好きでした。

シンゴジラがよかったのは、形態が変化していくとか、色んな街を歩いていくとか、攻撃の種類が変わるとか、そういうとこなんだよなあ。クリーチャーの描写。異形の物を創造力豊かに描けるかっていうところ。 

一番最初のシーンで、ほぼジュラシックパークだったのは、ジュラシック好きとしては問題ないんだけど、でもゴジラは恐竜じゃねぇし、って思っちゃう。

そういえば、途中までシナリオに疑問があったんだけど、最後特攻隊を賛美「しない」方向で締めたのは本当に素晴らしかったと思います。あれで特攻しなきゃしにきれないとか言われちゃうと、逆に感動しないんだよな。 

ちょっと不満げに書いてしまいましたが、CG,VFXは他でも言われている通り、素晴らしかったです。日本もこのくらいできるんだなという希望がもてました。

2023年12月10日日曜日

ゲゲゲの謎 2回目の入村

沼る人続出らしいじゃないですか。まさか同じ好みの人がそんなにいるなんて?(勝手な解釈)いい世の中になったもんだ?(推測)

残念ながら特典はもらえなかったものの、1回目がただ圧倒されて終わったので冷静に2回目を観ようと、、(1回目の特典は水木だったので、パパがマジで欲しい)

でもあそこ(村)マジ怖いっすからなぁ…しかも、グロい。初回、終盤生きた心地がしなかったのは、感情移入しすぎていたからなのか。(血が多すぎるんだよね……)

2回目は、かなり冷静に見れました。あと、原作の1話目を読んでいったのですっごい納得がいくエンディングでした。綺麗にハラオチしました。初回は「?????」ってなってたので。

それから、水木先生の「総員玉砕せよ!」を最近なんとなく興味があって読んだあとだったので、「あっ先生おるw」とか、「まったく同じセリフとシーンだ!」とちょっと感動しました。コアな水木オタク向けだったのか…。

総員玉砕せよ!という漫画は、水木先生の戦争体験をもとに描かれた漫画なんだけど、いややっぱりあの鬼太郎を生み出すだけあって淡々としてて、毎日毎日「食べ物が足りない」と言いながら上官にビシバシやられる日記みたいになってるんだけど、この「弱者が搾取される様」ってずーっと鬼太郎に受け継がれてますよね。この映画にも、がっつり。

 

-----------ちょっとネタバレするでござる -----------

 

2回目思ったのは、

水木はこの経験ですごく精神的に成長していて、最終的にラスボスから会社をくれてやろうって言われた時、あんなに、のしあがることを軸にして来たのに、ばっさり断るのが痛快なんですよね。「あんたつまんねぇなあ!!」は名台詞だと思います。ゲゲ郎に情けをかけてもらったことや、嫁の話を聞かされて、「出世より大事なものがあるのかも」と思い始めていたのかもしれませんよね。

実はゲゲ郎も精神的に成長していると思っていて、 おそらく奥さんにも言われていたとおり泣き虫で、へたれで心の狭い幽霊族だったんだろうけど、奥さんに出会ってからまず人間も悪いもんじゃないと信じ始めるのが第一歩(そもそも奥さんを信じるところから大変そうだけど)。そして今回自分に子供がいることを知って、さらに大きく成長し、水木が助けてくれたことで人間はやっぱり信頼できることを知ったのだと思います。

あとつくづく、なんで小学生低学年で鬼太郎にハマってたのか、分析すればするほどこの世界観は私にはしっくりくるのだと、この映画を観ても思ったんですよね。よくいじめられていたので、鬼太郎の父が石を投げられるシーンがわざわざあるっていうのは、やはりこのシリーズはマジョリティの強欲な人間から搾取されたり迫害を受ける弱い側の人間を応援する作品なのだと思います。

私は幼い頃は本当に鬼太郎が好みのタイプだったし(笑)、そういう人にゲゲ郎さん見せると更に好みなわけですよね。父は拡張版だし、大人の姿をしているので、大人向けなんだと思うんです。

しかも、私はヘタレで泣き虫でピュアな人大好物なので、なんか奥さんほとんどしゃべってないけど「相変わらず泣き虫ねぇ……」がグサグサ来ましたwそうよwそこに惹かれるわよね。わかるわよ!死ぬほどわかるよ。

 

そして自分の軸が5、6歳からブレてないのに驚愕しかない。

ゲゲ郎さんがいうとおり私にも運命の人はいますか?いや俺にはちょっとそういうのはないかな…なんつって。

あと個人的に父以外で好きなシーンは沙代ちゃんが大爆発して全部破壊するシーンです。あれは一回目もスカッとした。毎回「やっちまえー!」と思う。終わり方が嫌だけど。

 

2023年12月3日日曜日

映画「ナポレオン」を観て

リドリー・スコットだし多少なりともの期待をして観に行ったんだが

今年最大の駄作じゃないだろうか?ゴールデンラスベリー賞すぎないか?これ……

いやはやとにかくつまらん。まあ、結末は世界史専攻の人はみんな知っているだろう。ジャンヌ・ダルクもそうだがフランスの英雄はなぜか悲劇的な末路だったり、いまいちパッとしないが、ちょっと今回はdisりすぎじゃないか?

わかるよ、リドリー・スコットは英国人だからな。

そりゃフランスの英雄なんて好きじゃないだろう。

だが、映画じゃないか。もうちょっと、英雄みたいなシーンもあってもいいんじゃないだろかーと思ったが正直、持ち上げられていたのは一瞬くらいだったよね。

ナポレオンは戦争の神みたいなところがあったと思う。

なので、戦争のシーンに期待していた。

戦争自体はよく描けていると思うが、「最後の決闘裁判」に比べると緊張感が半分以下。ナポレオンが大活躍という感じもないし、いけてるメインキャラ戦士がいるわけでもない。

そして話の1/3くらいが、嫁のジョゼフィーヌとの話なんだが、最初はちょっと面白いなと思ったのだがなんとも、中途半端であった。

 

戴冠式などのビジュアル自体は確かに素晴らしいのだが、これだけの予算をかけて、大物俳優のホアキン・フェニックスを使ってこれなのか。なんだか大変がっかりした。特に観ている間ずっと、「え、このまま進むの?」という失望感がぬぐえなかった。

あとエンディングもなかなか酷かった。

どうせならコメディ映画にすればいいのに。

2023年11月24日金曜日

翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛を込めて〜

 私はこのシリーズは1からどハマりしたので2ももちろんすぐに見にいった。

このシリーズは、人と一緒に見た方が良い。それぞれ笑う箇所が少しずつ異なるからだ。

ネタバレを避けて思わず笑ってしまったところは

  • やはり、埼玉にあるタワー
  • 「知らんけど」
  • とび太
  • 奈良に入ったら鹿だらけw

あたりだろうか。

他にもあったかもしれないが、前作のように無意味にマントを翻すような無意味系ギャグがあまり面白くなかった。多分関西のノリが独特すぎるのかもしれない。チャーリーとチョコレート工場のパロディ、正直あんまりおもんないんですよね。なぜならあれは原作もそんなに面白くないからw w551蓬莱のタイツおばちゃんの方がおもろかったかもw

京都人の本音がわからない、はもはやギャグというより、恐怖でしかない。ちなみに私が京都人と喋る時は喧嘩になりそうになるのですが、関西人ってぶつかりそうになると上手くかわしますよね。あのテクニックは好きですw w

大阪人が日本を支配するというのも別に悪ないと思っているので私は滋賀解放戦線が「別に日本が全部大阪になってもええんちゃう?」でちょっと納得してしまった。しかし滋賀のオスカルは許せないようだった。

キャラクタ〜としては藤原紀香さんの神戸市長がやっぱり素晴らしい。神奈川県とためを張れるのはやはり神戸しかあるまいと、はっきり思える。美しいし可愛い。

この映画の残念なところは、「大阪の人が何をやってもなんか半分はギャグにしか聞こえへん」ところである。これはちょっと残念だ。大阪人は口ではでかいことを言うのだが、実をいうとあまりでかいことをしておらず、あんまり怖くもない。

これが京都人が京都がやっぱり首都どすなぁなんて本気で言い始めたらそっちの方がはるかに怖いw

あとハイヒールモモコさんの謎の儀式もちょいと謎のままだった。

ただ、粉物の粉をやばい粉として扱うあたりの発想は素晴らしい。アレは所詮ただの粉なんだけどなw

そしてごめん!私は明石焼きの方が上品で好きやねん、堪忍してや。静岡出身やけんな。(九州弁…???)


それから皆が映画.comで言うてるけど、翔んで埼玉第三弾は九州が舞台に違いないったい。楽しみやんな。

九州は各地でラーメン戦争しとるし、観光地戦争もしとる。温泉戦争は大分が勝つやろ。あそこは地獄やけん。巨人が出るけんね。最後の戦いは、地獄か阿蘇山火口でやるとよか。

長崎は切支丹の国。鹿児島には常にカッカしてる火山がおるし黒豚がうまい。宮崎はハワイか何かと勘違いしとる。熊本は水害を受けやすいが阿蘇山を保有しており、あれが爆発したら結構やばい。大分も福岡も大怪我や。

え?佐賀も悪くないよ。平たくて運転しやすいし、有田と伊万里を持ってるし、嬉野温泉と武雄温泉も持ってる。なのに何が最下位やん?!!

佐賀の人はみんな穏やかとよ!!!

次回「翔んで埼玉〜火の国合戦〜」これは熱い戦いになりそうやんな。実際割と熱い地域やねんし、

宮崎行った時、その辺にバナナなっててマジで驚いたのを忘れないw wもう秋だったw wいや宮崎はマイペースジャングルでよかよ。奄美もジャングルだけど。

私のもと上司に言わせると九州の面白いところは、「すべての県民が自分の県が一番だと思っている」ところで、そういう天然内弁慶なところがギャグにできているといいなと思います。

ちなみに福岡県は確かに超絶便利ではありますが、旅行が楽しいのは鹿児島県かなと思ってます。海が綺麗な場所が多いし、何しろ屋久島と奄美大島持っているのは大きい。

次点は長崎県。たくさんの美しい島や景観を持っている。唯一の難点は、坂が多すぎるところ。神奈川より多いと思う。

2023年11月20日月曜日

名作!「テルマ&ルイーズ」をやっと見れた

かねてから映画ファンの間で良いと噂されていた「テルマ&ルイーズ」がアマプラにやってきたのでなんとなく観たのだけど、とんでもない良作だったのでぜひ紹介したい。

ノリ的にはグレタ・ガーウィグが喜びそうな、女性向けの作品であり、ことごとくアホな男性が次から次へと登場する。

あらすじとしては、テルマとルイーズという仲の良い中年女二人組みが旅行に行こうとオープンカーで楽しく出発する。途中立ち寄った店で羽目を外したテルマがレイプされそうになったところでルイーズが男を射殺してしまい、逃亡劇が始まる。

最初から爽やかでコミカルな、少しお下品な南部アメリカンコメディなのだが

監督がリドリー・スコットだけあって、世知辛い、ほろ苦い現実が明るい彼女たちの逃亡劇に苦味を加えていて、絶妙である。もはやポエムだ。オープンカーでかっとばしながら男どもに制裁を加えていく姿は実に痛快だ。だが彼女らの爽やかで豪快な逃亡劇は、なんとも言えないエンディングを迎えるのだが、それですら、肯定したくなる。脚本賞が与えられた理由はよくわかる。

ちなみに全編英語で観たのでうまく翻訳はできてないと思いますが、ご容赦ください。

続々と登場する身勝手な男性キャラ解説:

ハーラン:

レイプ未遂シーンでテルマはビンタされても何も言わないが、ビンタをし返すと「俺を殴るな!」とものすごい剣幕でヒートアップし、急いでペニスを挿入しようとする。ちなみにテルマがビンタされた回数は3回。男は1回である。

ハーランはウエイトレスに注意を受けているので、ナンパは日常茶飯事のようだ。

いわゆる俗語でいう「ヤリチン」タイプの男である。

ジミー:

ルイーズの彼氏。「私を愛してる?」の質問に、少し間を置いてから「YEAH」でルイーズが「今の気にしないで」のやり取りは本当に笑える。

しかしこの後、ジミーが追いかけてくるのだ。「愛してはいないが、執着はしている」のである。しかもこの執着がものすごい。かなりの粘着質で、「他に男がいるんだろ!」と勝手に怒り出すが、ルイーズは気が強いのでさっさと去ろうとする。するとおとなしくなる。ジミーはかなりまだ、飼い慣らされている方だが、「ルイーズが他人に取られること」を異様に嫌がっている。

支配欲の強いタイプで、支配することに異様な執着を見せるタイプの男だ。ルイーズは彼を愛しているが、そのような理由で結婚はできないと言い放つ。

だが多くの男は支配欲で結婚を決意するし、そのような恋愛テクニックは公然と出回っている。男性の習性だからである。

ダリル:

テルマの旦那。ルイーズが「ぶた」と呼んでいる。このぶた云々はJDの質問から導き出されるのだが、JDは後述するが頭の回転が速いので、テルマから結婚した年齢や子供がいない理由まですらすらと引き出してしまう。

ダリルは頭の働かないポンコツおじさんで、もはやテルマを愛しているのかも疑問なのだが周りからしたら馬鹿すぎて扱いやすい。だが、旦那としては全く頼りにならず、テルマが逃亡した理由も皆目検討がつかないことだろう。愛想を尽かされているとも言えるが、テルマは一応彼を頼ってはいる。それすらも彼は気づいていない。

自己中お子様タイプの男性。

JD:

若き頃のブラッドピット。まだ売れる前である。この映画で惜しみなくピッチピチの上半身裸を見せて、多くの女性を虜にしたのだろう。この後彼はバカ売れするw

よかったなと思うのはこのJDがクズなところだ。ブラピはやっぱり悪役が似合う。

彼は泥棒で生計を立てており、巧みなトークでストレスが溜まっているテルマを口説き落とす。しかし彼は逃亡資金を盗むのが目的だった。

こいつが面白いのはテルマの旦那さんに会った時の一連の言動である。JDはまあまあ頭がよく悪知恵が働くため、「あんたの奥さんよかったよ」と腰を振る動作をする。ひどい侮辱なのだが、旦那がマジギレするのがどうしても笑えてしまう。

バカVSちょっと頭のいいバカ…。

タイプとしては、「ワルイ男」。

タンクローリードライバー:

彼は冒頭から彼女らをつけねらっている、40代くらいの変態おじさん。「そろそろやらせてくれよ」と言わんばかりに「真面目になったか?」みたいな妙な誘い方をするが、舌をべろべろして見せたり、イチモツがどうのと叫んできたりする。

テルマとルイーズはさすがに呆れて彼の車を止めさせ、散々侮辱したことを謝れと謝罪を要求する。だが最後まで彼は謝らないので制裁を受けることに。

究極のセクハラおじさんタイプである。この手の男はもう救いようがない。虫以下である。

刑事「ハル」:

唯一、彼女らを真剣に気にかけている刑事。ルイーズがレイプ被害者だった過去も調べてあるもようだ。彼女らには何か理由があって逃亡しているのだと、チャンスをくれてやりたいと真剣に思っている。

唯一の、「まともな男」である。

その他気になること:

「Girls」 発言

ことあるごとに、特に刑事さんが彼女らを「Girls(女の子)」と呼ぶのが気になった。

当時1991年、まだまだ女性蔑視が強かった頃だからなのだろうが…

可愛がってくれているのはわかる。だが既婚者と、とっくに成人してバリバリ働いている中年女を、「ガールズ」はいかがなものだろうか。これは日本人にも突き刺さる違和感である。

1991年は「羊たちの沈黙」がリリースされた年だが、前にも書いたようにクラリスは数々のセクハラを映画内で受けている。それとも通ずるものがある。

1992年のアカデミー賞はとんでもない猛者ぞろいで、「羊たちの沈黙」「ターミネーター2」と本作品は争う羽目になり、脚本賞しか獲れなかったのだが、敵が悪すぎるww

驚愕のエンディング:

エンディングは驚愕で素晴らしい。多分アメリカではスタンディングオベーションなのに違いない。

全然ハッピーではないと思う。けどそこにいたるあの高揚感と、最後の伝説的なワンカットと、そこから流れる爽快な音楽で、「これこそ真の解放だ!」と締めくくっている。

そう、この映画のテーマは「女性解放」である。数々の、気持ち悪い男たちからの解放なのだ。このテーマが、なんと30年経った今でもとても新鮮に感じる。というか、ほとんど変わっていないのではないだろうか。

エンディングにいたる直前のテルマのセリフがとにかく素晴らしいのだ。あれは伝説的な脚本だと思う。

「Let's keep on going」(このまま続けて最後まで行こうという感じの意味)

と彼女が、言う時、そこにある感情はなんと表現していいのかわからない。テルマは笑ってはいなかった。でも楽しいとずっと言っていた。夫から離れて自由に生きることが、こんなに素晴らしかったのかと、彼女は満喫した結果、「最後までやりぬこう」と言うのだ。

彼女は「女性解放」の爽快感で完全にラリっていた。いまさら止められない。最後までいこう。いけるところまでいこう。

 

もし進撃の巨人にもっと印象的なセリフや納得のいくシーンがあったなら、そこには、

「最後まで行かなきゃならない」「やり遂げなければならない」というセリフがあったのかもしれない。

 

ところで、本作に別のエンディングは考えられなかったのだろうか?

少し考えてみたのだが、無駄だった。テルマはモテるし、最初から色んな男に口説かれまくってるし、失敗しまくってる。ルイーズには粘着質の男がいる。今更、捕まって、刑務所から出所したところでろくな人生は待ってないだろう。

エレンが死をもって解放されたように、彼女らもまた、華々しく散っていくのだろう。だが温度差がすごい。

テルマとルイーズは、「最高の気分で」笑顔で散ったと思う。そこがポエムなのだ。ロックだ。美しいフィクションが、美しいまま、最高の状態で終わっていく。

 

これ以上、映画に何を求めていいのかわからない。



2023年11月18日土曜日

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

 私が幼少期最初にハマった二次元男子が鬼太郎だった。彼は最初の推しであり、今でもこういうタイプの男子が好きだと思う。

その鬼太郎のパパの話をやるってんでちょっと見てきた。

どうやら、鬼太郎のパパやママの話は以前からあったらしいが、今回の主役の一人はなんと目玉親父になる前の鬼太郎のパパ。しかもやはり、名前がないw w

鬼太郎のパパは、ずーっと妻を探しているのだが、飄々とした身なりの割に体格がよく、表情はともかくイケメンの類だと思われた。が、実際の主役は水木であり、水木は比較的イケメン扱いである。

話の内容はとても子供には見せられないような、近親相姦や児童虐待など、かなりエグい内容である。無論直接的な表現は避けられていたが。

鬼太郎パパはとてもいい人で、そういったことに怒りも見せつつ、すごいバトルを繰り広げる優秀な幽霊族だった。(どうも彼の一族は強いらしい)

鬼太郎も確かに強いなって印象はあったけど、パパがでっかい妖怪とか掴んで投げ飛ばすのには驚いてしまった。顔がアレなので余計驚く。というかシュールである。

でもやっぱり鬼太郎パパが一番可愛いのは自分の妻を自慢する一連のシーンである。こんなの子供が見ても意味不明かもしれない。

幽霊族の生き残りで孤独だった鬼太郎パパは、膝を抱えて一人で暮らすど隠キャだったが、どういうきっかけか知らんがママと出逢う。それからのパパの人生は薔薇色だった。人間と同じように楽しく遊んでいるシーンがある。シュールだったが可愛かった。

この映画はそんなシュールでかわいい鬼太郎のパパにハマれないとちょっと面白くはないと思う。

私は鬼太郎のパパかなりお気に入りでした。


なおストーリーは大日本帝国が太平洋戦争で負けて経済復興を目指しているあたりの歴史を理解していないとなんじゃそらって感じなのと、「血液銀行」の意味がわかってないとちょっと???な話になっている。

血液銀行というのはかつて日本に存在した、有償で人の血を買う銀行のことです。ただ、あまりにも古すぎるので私も調べるまで知らんかったし、いったいどこの年齢層に向けてるのかわからなかったけど、鬼太郎自体が古い歴史を持つ作品なので、これはこれでありだと思うし、若い子が興味持ってくれてもいいと思う。

昭和30年代っていうと今の80代が若かった頃、って感じになるが。

2023年11月11日土曜日

「進撃の巨人」アニメ最終回にモヤっと来た件をまとめる

進撃の巨人アニメ The Final Seasonが始まった時、私はとても嬉しかった。

まるで軍隊もののような展開。ぶっ壊れてる主人公。ミカサは悲恋で終わる気がしていたが、男なんかに頼らず生きていって欲しいと思っていた。彼女が独立するいいきっかけだったと思っていた。髪の毛をショートにしたのもその決意あってのことだと思っていた。

大体序盤でエレミカをプッシュしていたファンのことも理解しかねていた。エレンのあの性格でうまく行くはずがなかった。エレンがミカサの気持ちからひたすら目を背けてきた理由がFinal Seasonだったはずなのだ。

甘っちょろい恋愛ものからは卒業だ。

そう思って喜んでいたのに、あのエンディングだった。

私のリアクションは全てアルミンと同じだった。

アルミンには始終共感を抱いた。なにしろ「アニが好き」まで同じだった。アニのようにクールで怖くて、強いのに美しい女でいたい。アルミンに追っかけられるような女でいたいと思っていた。

なのでエンディング間際のぬるさはアルミンと同様に驚愕した。

「エレン。君は本当にそれでいいのか?!!」

「自由を求めて戦った結果がこの不自由さなのか?!!」

エレンが自由を求める姿が好きだった。エレンは何にも縛られず、ユミルと世界を巨人から解放する。それだけでよかった。

なのにユミルと来たら。


諫山先生の考え方、思考回路をなぞるしかなかった。

申し訳ないが、私は九州男児に大変な偏見を抱いている。

4年福岡で暮らして、彼らに染み付いている洗脳のような男尊女卑カルチャーを嫌というほど知らされた。男性陣は女性にひどく執着しているがプライドは高く、なかなか自分から口説くことはしない。もし付き合って別れたら、ストーカーと化す。最悪は博多駅前で刺殺するくらい、彼らはドロドロしていた。女性に振られると絶望で気が狂ってしまうようで、付き合おうと思えなかった。彼らは毎日のように自分のプライドを守るために周りをdisっていた。

これを進撃の巨人に当てはめてみよう。

つまり、こうだ。諫山先生の(九州男児としての)願望は、自分好みの女性に執拗に想いを寄せられ、最終的には殺される。これが彼の願望なのではないか。

大変歪んだ願望だが、そうとしか思えなかった。

エレンは、ミカサに殺されるまで暴れ続ける、そういうシナリオだ。

だが、エレンは「自分は馬鹿だから」と言っていたが、もし彼が馬鹿じゃなかったらどうなっていたんだろうか。

世の中を戦争に巻き込み、たくさんの犠牲者を出して文字通りフラットにする-それは地理的にも、精神的にもだ-それがエレンの願いだったらしい。

だが、アルミンの頭脳を持っていたらもうちょっとスムーズに、犠牲者を最小限にしてミカサを殺人に向かわせることはできたのではないだろうか?


進撃の巨人は自由を求める物語だと思っていた。

我々は生まれながらにして自由に生きる権利を持っている。その着眼点が素晴らしいと思っていた。

だが実は逆だったのだ。エレンは殺されるまで自由にはなれない。

ユミルはなぜか男性に執着し続けた。これも九州男児の願望ではないだろうか。残念ながら女性はもっと合理的で、九州の女性は離婚を切り出すのが割と早く、シングルマザーが元気に生きている地域だ。

ミカサもずっとエレンに執着し、エレンのために戦い、生きていた。

誰も自由になれない物語だった。

絶望的だ。

もちろん最後には自由にはなったが、代償が大きすぎる。

だが、どうだろう。自由になったミカサは泣いていた。これは裏を返すと、「不自由が楽しかった」ということになる。彼女は不自由を喜んでいたのだ。ユミルもおそらく不自由を理解しながら執着し続けてしまったのだろう。


もちろん100%の自由はきっと存在しない。結局人間は、そこのバランスをとりながら生きていく生き物なのだろう。ただ、好きな男性のために不自由を取ったり、世界を変えてしまう女性という発想がどうにも気持ち悪かった。それを描いたのが九州男児であることにも気持ち悪さを感じた。


そしてエレンの在り方にはかなり疑問を持った。

エレンがすごい好きだから、とかではない。私は性格判断は全てエレンが出てしまう人間なので、何かを犠牲にしながら目標に突っ走る癖はあると思う。だけど、自分の欲しいものまで犠牲にしていいんだろうか。

人は自分の欲しいものを手にいれるために生きるんじゃないんだろうか。

かなり色々モヤモヤしてしまったが、とにかくエレンの在り方が一番モヤっとしてしまった。


総じていうと、スケールの大きな「世直し」物語に見せかけて、一人の色恋沙汰に巻き込まれて多数の死亡者を出すという恐ろしく個人的な、腐敗政治みたいなものを見たなあという感想である。

日本にはそういう物語が多いように思う。昔ゲームで、「ステラデウス」というとてもビジュアルが綺麗なRPGがあったんだけど、内容は国の偉い人が個人的な恋愛沙汰で国を滅ぼすみたいな話で、えらい意気消沈した記憶がある。


2023年11月4日土曜日

アラビアンナイト 3000年の願い

この映画は観たいと思ったものの、あまりにも上映館が少なくてギブアップしたもの。

主人公(ティルダ・スウィントン)は物語を愛して研究している学者で、子供の頃は友人と遊ぶより理想の男子を自分で創り出して遊ぶような子。全く自分と同じでちょっと驚いた。

一度は結婚するものの、おそらく流産か不妊が原因で別れ、全く未練もない。

そんな彼女がイスタンブールのグランドバザール(私もここでトルコランプを買った)で手に入れたトルコの装飾瓶。特に特徴もないこの瓶の蓋を開けようとすると

イドリス・エルバが出てくる。

すごい大きさだ。

画面に入りきらないので最初はかなり笑った。

一通り、ルームサービスを対応して戻ってくると

イドリス・エルバが本来のサイズに戻っていたw

そしてよくある「3つの願いを叶えよう」が始まる。

が、主人公は全然信じてない上に、願いがないとまで言うものだから、イドリスエルバかなり困る。

ここからはイドリス・エルバのジン3000年の歴史が語られるが、実は結構、はっきりと分かれていて、

自分が閉じ込められた理由

とある野心溢れる女性のグルタン

グルタンが理由で閉じ込められたあと見つかるまでの話

貧困ながらものすごく頭のいい女性ゼフィール

の概ね4章である。

この話には少し共通点があり、ジョージミラーらしさに溢れている。

グルタンが原因で閉じ込められたあと、その国(シリアだと思われる)に、二人の王子が生まれていた。その片方は男子を子供に持たないと国が存続しないため、ただ繁殖するためだけの部屋に閉じ込められる。

その王子はとにかく太った女が好きだった。この太った、というのが異常な太さだった。マッドマックス怒りのデスロードにいた「乳母」たちとそっくりだった。同じ女優さんかもしれない。彼女らは太りすぎていて全裸でも淫部を隠す必要がなかった。

そして、この物語に絡む女性たちは何かと性行為や出産などに囚われ人生を狂わされるが、それもマッドマックスの囚われの女性たちを思い出す。

繁殖のためだけのハーレムなんかも全く同じだ。

グルタンが妊娠したとき、わざわざ白い服を着て風呂に飛び込み、大きくなった乳房や腹を見せびらかすのも非常にマッドマックスを連想させる。

これはジョージミラーの性的嗜好なのかわからないが、妊娠については比較的認識が正しいと思った。リドリースコットの性行為を連想させる怪物よりは、である。

最初にジンが愛した「シバの女王」が、「女が最も欲しいものを答えよ」というなぞなぞを出すのだが、回答は映画の中で示されていない。

おそらくそれは「自由に生きる」ではないかと、私は感じた。

自由に生きている主人公は、ギリギリまで願いがないのだ。


私の願いはなんだろうか。

真の自由とは、馬鹿馬鹿しい会議などをなるべく短く終わらせることかもしれない。ご存知の通り生産性のない日本人は時間稼ぎで会議を長引かせ、時給を稼ぐやつだっている。そういうくだらないことをやめられたらいいなと思うのが一つ。

もう一つのパターンは、生まれる時代を10〜15年ほど遅らせることだ。学生のときやりたいことがあんなにあったのに、ソフトウェアが手に入らずコンピューターの処理が遅すぎて作れなかったものがある。真のクリエイターならそんなもの関係ないと言われそうだが、意欲はあのとき腐るほどあったのだから、勿体無いことだと思う。

もう一つのパターンは、日本人としてではなく、できればアメリカ人かフランス人として生まれたかった、という根本をひっくり返す願いである。単純に日本が世界的に見てもダメな国という印象が拭えないからだ。もし最初からフランスに生まれていたら、おそらく自我は全く違う方に開花していただろう。日本人はマウントはして来るけど、他人のマウントは許せないことが多い。理由はよくわからないのだが、私はよく足を引っ張られたり潰しにかかられたりするが、年配の人たちに引っ張り上げられてなんとか舞台に立っている感じだ。なぜか同僚や後輩にやっかみを受けやすい。上司には気に入られやすい。

ちなみにやっかみを受けている時に堂々と振る舞っていても、彼らは簡単に一度感じた嫉妬は捨てないので、結局私が退職するまでは嫌味を言い続けたり足を引っ張り続ける。

この負の連鎖が果たして日本という閉鎖的な国でしか起きないことなのかはわからない。でも私は、もっと能力がグローバル目線で評価される舞台に立っていたい、と思うことがよくある。

グローバル目線で見たら私は下の方だが、世界水準で下された評価であるなら納得がいくからだ。

また、おそらく嫉妬で絡んでくる人間はもっともっと底辺の方になるかもしれないが、それがグローバル基準であれば彼らも文句は言わないだろう。日本の狭い社会の狭い会社の狭い部署の中で相手を潰そうとしているだけということに、気づいてくれればいいなと思う。


この映画の感想なんだが、基本的には女性の生き方にフォーカスしている内容だと思う。

主人公は最後まで、幻想の中で、物語の中で生き続けるだろうが、それは悪くないということなんだと思う。

そしてそのテーマはまるで私を表しているようだったので、共感はしやすかった。

人によっては、全く共感はできないかもしれない。特に家族を養っている人などは皆目理解不能かもしれない。

2023年10月29日日曜日

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

戦争の帰還兵であるアーネスト(ディカプリオ)は、叔父のビル(ウイリアム・ヘイル 演:ロバートデニーロ)のところに仕事を探して尋ねてくる。独身のアーネストは、 石油が噴き出したことで大金持ちになっていたアメリカ先住民のオーセージ族の嫁を娶ることを勧められる。

序盤は少々頑固で非常に賢いオーセージ族の「モリー」を口説き落とすところまで。

アーネストはふらふらとした性格で軸を持たないため、叔父のいう通りに動いてしまう。叔父は、オーセージ族の金を狙っていたので、殺人計画を次から次へと実行するのだが、それをアーネストにやらせるようになる。これが中盤。

終盤は国の捜査が入ることで、罪が暴かれ、どう裁かれるかを丁寧に描いている。

3時間26分 という、私も多分初体験の長さだが、意外と集中力が途切れることがなかった。

原作はこちら(ぜひ読んでみたい)

原作では特にアーネストが主人公にはなっていないようだ。ここに、本作の真意がある。

この映画では、アーネストの意志の弱さと愚かさ、強欲さをメインに描写し、そこからどう彼が変化していくかをストーリーの軸に据えているのである。

もしただのサスペンスであれば、捜査から始めて刑事ドラマみたいにしても十分面白かったかもしれないが、ずぶずぶと犯罪、しかも殺人に手を染めていく主人公を追っていくほうが、確かに面白い。また、

このテーマは、現代人に強い批判を投げかけているのである。

確かにお金は大事かもしれん。

だけど、人の命に代えられるものだろうか?

叔父は、先住民の身体を示して「こいつは幾らだ」とドルで価値を示す。

自分たちに遺産が流れ込むように、じわじわと妻の親族を殺していくふたりであったが、その度に妻のモリーは悲しみ、泣き叫ぶ。そのたびにアーネストは自分が恐ろしいことをしていると気づいていく。

モリーは夫が気づいて自分の道を正してくれることをずっと期待し、待ち続けていた。私からするとはよ離婚せよって感じである。しかし彼女は最後の最後まで待ち続けていた。自分が殺される可能性が非常に高い緊張と不安の中でである。

この状況は、殺人でなくても、現代にも通じるところが大変たくさんある。

まず男性の持つ「権力者に頭が上がらない」悪い癖と、優柔不断で軸のない人間が非常に増えていること。女性のほうが芯があり、まさに「バービー」状態であること。

上司の言う通りに卑怯なモラルの無い仕事をしてしまっていないだろうか。その背後で泣いている人間はいないだろうか。子供が犠牲になっていないか。

そして一番大事なこと。

自分を汚していないか?本当に罪を冒したかったのか?刑事が彼に問いかける。

「こんなはずじゃなかった、と思っていないか?」

素晴らしい映画だ。そしてスコセッシにしては救いのある内容ではないだろうか。

語り口調はゆっくりだが、何しろ殺人の数がものすごい。叔父にとって邪魔な人間はありとあらゆる方法で誰かに殺されてしまう。そのなかにアーネストがいるのが驚きだった。

それからこの「叔父」の性格が凄かった。

彼は「フリーメイソン」だと語る。そしてフリーメイソンの一員として、アーネストが失敗するとお尻ぺんぺんの刑を行うのだが、これが無茶苦茶痛そうである。

もしやフリーメイソンを批判しているのだろうか?

私はその辺も気になった。フリーメイソンとは結局どういう連中なのだろうか。確かにお金を稼ぐのは上手そうだが、本当にこんなにモラルのない連中なのだろうか。そして結局国家には勝てないのか?

単純な批判なのかもしれないが、アメリカの都市伝説も気になるところが結構あるなと思った。

ちなみにKKKの表現はタランティーノのほうが面白かったですが、笑っていいのか悩む内容ではありましたね…。

ディカプリオの演技について

ディカプリオの演技については映画.comで特集が組まれるくらいだが、確かにすごい。彼のアップだけのカット、彼だけを映しているカットが何回も出てくるが、隙のない演技力で、セリフより表情が細かく、目が離せない。

私が気に入っているのは最後に嫁に嘘がバレて「もうダメだ、失った」という顔である。また、意志が弱すぎてどもる時の芝居がナチュラルすぎて驚いた。どもる芝居は下手な役者が多いので。

特に後半になるにつれてどんどん追い詰められるディカプリオの演技は素晴らしい。これは確かにアカデミー賞とれるかもしれないし、円熟した役者の完成形を見た。

内容的にも、「人種差別」「アメリカ歴史の汚点」「現代にも通じる人間が犯しがちな意志の無さからくる罪」「拝金主義からくるモラルの問題」「女性の強さ」など、色々な方向から評価できる映画だと思う。

 

 

2023年10月23日月曜日

ザ・クリエイター/創造者 観てきました

これはなかなかいい映画でした、

この手のよくあるSF映画って、「特に新しいものがないテンプレ映画」に転ぶことが多いのですが、本作は、テンプレもなぞりつつ、結構ひねりを入れてくるのでよかったです。

また、脚本が後半スピードアップしすぎなものの、テンポよく構成されています。

よかったところ

米国VSアジアという形になっている

ギャレスエドワーズは英国人ですが、アメリカを実に批判的に捉えており、
「合理的で冷たく、お金持ちだが手段を選ばず、戦争の口実で嘘もつく国」 として描いています。米軍はゲームととてもよく似た描写だったので、この映画をゲーム化したらとてもいいなと思いました。

コールオブデューティーを思い出したのですが、日本人の私がプレイすると時々とても違和感を抱くのです。やっぱり、米軍は怖いなって半分くらいは思っていました。特に、「空の上から爆弾を落とす」というのはゲーム内でも行われますが、いちいち当たる度に他の兵士が「ドカーン」「やったぜ」みたいなことを言うのが怖いなと思ったのですwちなみにそれは広島や長崎に原爆を落としたときもそうだったらしく…。

ただ、英国が善かというとそうではないので、決して英国を擁護した内容でもありません。

アジアはめっちゃ擁護されていましたw超・アジアびいきだと思いました。

 

ダイバーシティのバランスに違和感がない

主人公を黒人にしたこと、守る対象がアジア人のルックスであること、敵が白人の女性であることなど、ダイバーシティのバランスは悪くないと思いました。無理がないというか。

 

愛の描写に違和感がなく、すんなり腹オチする

私が陳腐だと感じる映画は男女関係の描写がど下手くそというか、性欲が愛だと思っている監督はやっぱり腑に落ちないですね。死ぬまでセックスしまくるのなら別ですが…(笑)

男女に関しては、役者の演技力にもよりますが、脚本のセリフもとても大事です。「愛している」という言葉がどのくらい重みのある脚本なのか。その点では脚本が上手かったのではないかなと感じました。

子供との愛については、これはよく映画にあるパターンだとは思いましたが、本作の場合、「自分と愛する人を繋ぐ大切な存在」がアルフィーなわけなので、当然それは愛するに決まっていると思いました。でもこれは、アルフィーの性格にもよるもので、彼女は、そしてあの世界のAIは、人間を攻撃するようには作られていません。

つまりアルフィーとそれに準ずるAIたちは、「人間を愛するように」つくられているのだと思います。それに触れることで、アルフィーをもの扱いしていた主人公も次第に愛するようになります。

この辺はとても描写が自然で、美しいと思いました。 

SF映画ではAIを否定する表現が多く、冒頭でAIが核を爆発させたというニュースが流れるので最初は同じかと思っていました。ですがこの映画の本質はAIとの愛のある共存という内容になっています。それが恐怖SF映画と大きく一線を画すので、良いことだと思います。恐怖SF映画はとても作りやすいし、スリリングなので売れるのですが、本作はあえて逆を行くのでチャレンジを感じました。 

 

みんな男性は自分の嫁が大事

これもテーマのひとつだと思いますが、男性は自分の妻が大事。

これが違和感なく、誰も彼も死ぬ瀬戸際になると嫁の話をし始めるので個人的には好感を持ちました。実質愛というのはこの程度の地に足のついた表現が腹オチしやすいと思います。エブエブもそんな感じですよね。

 

伏線の貼り方と回収も上手

話が単純に面白く、これはあとで生きるのかなと思うことや、冒頭でいきなり主人公が「俺は潜入捜査中だ」とバラしてくる展開とか、色々面白いです。回想シーンはどこから回想なのかややわかりにくいのが難点でしょうか。

結末のあの伏線回収は素晴らしかったです。

 

「アルフィー」がとてもいいキャラクター

アルフィーは子供の外見をしていますが、性別もわからず、髪の毛も生えていません。

名前もなかったので相談の上適当に決めていました。(このシーンはちょっとおもろいです)

英語で「She」と言っていることで、やっとどうやら女性扱いであることがわかりますw字幕はきちんと見てないですが多分女の子とは書かれていなかったと思います。

彼女は最初あまり感情がありませんが、徐々に主人公に懐くようになり、役者さんも芝居をするようになりますが上手でした。

あと個人的には彼女のもつ能力と、それを発揮する時に手を合わせて、仏教のようなポーズをとるのがとてもエキゾチックで神がかっていて好きでした。監督が仏教の世界が好きなんだろうなと思いました。仏陀の幼い頃、一休さんみたいな、そういう人物を連想するキャラクターです。

 

アジアの描写

日本語間違えまくってるのが気になりましたがちょっとかわいかったです。監督w

「募集中」→「指名手配」

「ステイバック」→「立ち入り禁止」?

「危険な場所に注意」→「危険物管理区域」??

といったように「なんか違くね」みたいな表現が多かったです。特に募集中はしょっちゅう出てくるので日本人は確実に苦笑だったと思われます。 アルバイトかよ。看板も変でしたがなぜか龍角散ダイレクトはそのまま表示されていましたw

 

ロケ地としては、やはり一番聖なる場所がチベットに設定されているのは個人的に非常によかったです、やっぱりチベットには特別感がありますね。

高い山と、独特の色彩を持つチベット民族の服飾文化、寺院のデザインなど、聖地だなあと感じますね。

 

強いて欠点を挙げるならば

結末です。

私に言わせれば、あまり本質的な解決にはなっていません。

主人公は使命を全うしましたが、このあとは、アルフィーと彼女を取り巻く人間たちの課題となると思います。 


SF映画としては、攻殻機動隊を観たことのある人だと意味がわかりやすいと思いますが、まあ観てなくても大体はわかるかな。という感じでした。

 

2023年10月18日水曜日

バンデラスがネコになる!「長靴を履いた猫と9つの命」

猫には9つの命があるという―この言い伝えは、「ザ・バットマン」でもあまりにも有名である。

文字通り、9つの命があったプス、気づいたら1個しか命が残っていなかった。突然恐れをなしたプスは、引退を考えるが…?

命とはなにか、人生とは何かを考えさせられるテーマの中、プスの愛くるしさがたまらない。そしてなによりも

 

バンデラスがはまり役すぎてびっくりする。

これバンデラスの話なのでは…?(笑)

 

こともあろうにこの映画のインタビュー中、バンデラスときたら

「俺は300歳まで生きたい!!!」

サルマ「こいつならやるわよ。」

息もぴったりだ。

サルマハエックはなんと、元カノ役。それもハマりすぎではないだろうか。 

この映画では冒頭でバンデラスが歌を歌ってくれるのだが、それも上手すぎてびっくりする。バンデラスといえばセクシーラテンイケオジだが、声もセクシーイケボである。というか声が良いから今でも色んな映画に出れるのでは?とも思う。レイピアも上手なので、多芸な俳優だと言えよう。

アンチャーテッドのバンデラススペイン語は、アメリカ人の適当なスパニッシュに比べたら味が何倍も違う。

また、特筆すべきはフローレンス・ピューの声優参加だが、彼女は次はジブリ映画「君たちはどう生きるか」でキリコを演じるらしい。ぴったりすぎて二の句が継げない。それからフローレンスもやっぱり、声がいい。

ジブリ映画「君たちはどう生きるか」英語吹き替えで心配なのはパティンソン君のアオサギなんだけどね。

本人はおそらく「変な役ゲット!!ヒャッハー!」だと思うけど。そういう人だから。



2023年10月15日日曜日

★ステイサ無双2023★俺だって、ヘンリーカヴィルみたいにスパイをやりたい、ステイサム映画「オペレーションフォーチュン」

メグザモンスター2が出た時、Xは沸いた。次はオペレーション・フォーチュンだ。「俺をおかわりしろ。」とステイサムに命令されたら、抗えるファンはいるだろうか。

なにしろ今年はステイサムイヤー、「ステイサ無双」という言葉まで飛び出した。世界一かっこいいハゲアクションスターは 56歳だがまだまだ油がノリノリだ。

引きのアクションはあまり無いものの、今回はアクション多めで私が昔から評価しているアクションのコレオグラフィーが美しかった。流れるように敵を倒すのだが攻撃を繰り出してから止めるまでの動きに無駄がなく、美しい。

今回はMI6のエージェント役なので、普段映画で封印しているイギリス訛りを存分に発揮しており、生のステイサムに近い喋りが聴けるぞ。

まあ正直話は面白くなかった。筋書がまるでミッションが不可能なあの映画の短縮版である。ひねりがあるとしたら裏切り者がひとり出たんだけどこいつの扱いがよくわからなかった。残念ながら、トム・クルーズ映画のほうがはるかに脚本がわかりやすかった。最初MIは難しいからと思っていたけど、途中からほとんど字幕見てないくらい、あれはセリフがわかりやすかったのだ。

面白いところはヒュー・グラントの扱いだろうか。

昔のヒュー・グラントと言えば、サンドラブロックやジュリアロバーツに甘えるダメなイケメンと言う感じであったが。

今回は鼻持ちならない大富豪。あまりの大富豪っぷりに笑わざるをえない。バンデラス枠に入ってきたな。

あとキャッシュトラックの時も言ったけど、
「ジョシュ・ハートネットがかわいい」

彼はいつもなんかかわいい役だな。あんまり、悪いことができない子なんだろう…。

 

ガイ・リッチーはなんとなく見てきたけど、

やっぱり「コードネームUNCLE」がよかったな。ヘンリー・カヴィルのイケメンっぷりが一番くっきり生かされているのはこの映画だ。

そしてストーリーのオリジナリティもコードネームUNCLEのほうが上。どうせならあれの続編を見たかった。

もしかしたらどれかヒットしたら続編つくってくれるのかもしれない。

オペレーションフォーチュンというタイトルは本当に素晴らしいし、今回はキャッシュトラックなんていう超ダサ邦題にしなかったことは本当に正しいと思う。

ロケ地は素晴らしいし、ものすごいお金かかってると思うけど、これ回収できるのかね……。

 

 

2023年10月11日水曜日

名作「シザーハンズ」

シザーハンズがアマプラにやってきた!

おそらく20年ぶりくらいに観ただろうか。

不思議なほど色あせない良作であった。

同じ感動が味わえるというのはさらに感動が増す。

おそらくティム・バートンの最高傑作だろう。エドワードが、ティム・バートン本人ではないかと思うようなメイクをしている。実際モデルだったのではと言われている。

この美しい物語の主人公に抜擢されたジョニー・デップは、この作品で一躍日本でも有名になった。私もこの作品で好きになったし、実をいうとこれ以上ジョニーがいけてる作品は無いんじゃないかと思っている。似たようなメイクの作品があるにも関わらずだ。この時が、この役が、一番ピュアで美しかったのだ。

脚本の構成も隙がなく、美しく整っている。間髪入れずに進むストーリー、そしてあまりにも雑多で下世話なご近所やマスコミの喧騒の中、エドワードのピュアさはいっそう輝き、ヒロインのキムの大きな瞳がひときわ煌めくのである。

私はエイリアンシリーズですっかりウィノナ・ライダーの大ファンになってしまったし、今観てもやはり存在感がすごいなと感じる。

純粋で可哀そうな、陰キャの男の子の話というのはいまいちエンタメ性がないので、この作品が大ヒットしたというのは素晴らしいことだと思うし、今後も陰キャ男子の映画が増えればいいなと思う。

 

Wikipediaを読んでいたら、トム・クルーズに主役を打診したところ、「ハッピーエンドがいい」と言われ交渉が決裂したそうだが、いい話だ。

トムクルーズに演じさせていたら、こんなに好きにはなれないだろう。そもそも、トムは陽キャの帝王みたいな人であるww

それにあれをハッピーエンドにしてしまうと、物語の重みが一気になくなってしまう。世間のエゴとそれに抗う若者たちの純粋さのコントラストが失われてしまう。

 

ジョニー・デップが陰キャかどうかは怪しいところだけど、彼の生き方を見ていると必ずしもハッピーとはいいがたい。

あと、エドワードは寡黙だが実はきちんと喋ることができるというのもいい。

時々発する言葉の重みが段違いである。それにこのころはジョニーの声もかわいい。まれに発する声がかわいいなんてかなり美味しい設定だ。 


この映画で取り上げられている「人の嫉妬」「エゴ」「野次馬根性」「しつこいマスコミ」などの問題はSNSやスマホがどれだけ流行ってもまったく変わっていないところが、この作品の本質を強固なものにしている。

はさみというツールが変わらないのも、見越していたのかわからないが、すごい思いつきではないだろうか。今でも美容師ははさみとシェーバーで人の髪を切る。義手という選択肢はあったものの、はさみを無くしたら特別ではないと言われてしまい、散々利用された挙句「マイノリティはバケモノ」として追放され、なんともいえずもどかしい気分になるが、そこが人間社会の本質をとらえているといってもいいのかもしれない。

2023年10月8日日曜日

グレタ・ガーウィグの映画を分析してみた

 「バービー」に衝撃を受け、彼女の映画をあらためていくつか観て、思ったことをまとめたいと思う。

彼女の映画はびっくりするほど、毎回同じようなテーマで進むうえ、主人公の性格がかなり似ている。

ざっくりまとめるとこんな感じ。

・彼氏より女友だちが好き

・レズビアンじゃないけれど、男性とのセックスを否定する(良くない、という表現が多い) 

・男性を完全に見下している。(笑)

・ティモシー・シャラメを悪人にしている。

・主人公の女性が男性を選ぶとことごとく失敗する。(若草物語だけは売上に忖度したとか言われている)

・母親との関係を重視(父はあまり重視されない)

・主人公の女性がひとりで生きることを強要される(もちろん本人の行動の結果だが)

グレタ・ガーウィグのいいところは、今までディズニープリンセスのほとんどが「Happily Ever After」だったのと対局にいるところだ。

つまり「結婚=しあわせ」を完全否定するスタイルを貫いている。若草物語だけが少し忖度しているが、プロポーズを断るシーンからもわかるように、彼女らは結婚に重きをおいていない。

最初若草物語のティモシー・シャラメがあまりにもひどかったため、すっかり嫌いになってしまったものの、「レディ・バード」を見て、「わざとだったのか」と確信した。彼女は世界有数のイケメンにことごとくクズ野郎を演じさせ、そしてなぜか大人気にしてしまう。

「バービー」は間違いなく今までの作品の集大成である。ビジュアルが華やかでテーマがわかりやすいため世界で大ヒット、特にアメリカではかなり肯定的に受け入れられている。だがあれは必ずしも幸せの物語ではなく、今まで挙げたような、「女の苦しみ」を詰め込んだ映画なのだ。

ざっくり各作品を分析してみた。

フランシス・ハ

中途半端な女性を軽やかに描いた話。ややギャグ寄り。男性は性欲解消のために付き合うが文句いいまくって、女友だちに愛を告白し、一緒のベッドに入る仲。

演じているのがグレタ本人なのでむしろこっちが自伝に見えなくもないが、内容は本人の人生の内容ではない。

ちょっとドンくさくて失敗する女性像が描かれる。バービーと同じく、「何者かになる必要はない」テーマがメインに語られる。

 

レディ・バード

18歳を節目に大人になっていく女性の物語だが、設定がグレタ本人とほぼ同じため、自伝的映画とされている。

男性と結構遊んでいるが、正直うまくいっていない。

母親との関係が主な内容だが、アメリカらしく、愛されていることはよく伝わってくる。なので、愛情表現があまりなかった自分の経験と重ねることはできなかった。気持ちは、わかる。

若干、キリスト教を肯定するような表現があるが、あっさりしているので悪くない。おそらく、散々反抗した挙句、自分が神(母)に守られていることを実感し、気持ちを改めた、程度の話であると思われる。

この映画でも「何者かになりたい」娘に対し、「金(功績)が幸福なのではない」旨が母から語られる。 

数々の賞を受けているが、ちょっと小奇麗にしすぎな感じもしないでもないので私はあんまり好きではない。

「母」の存在は他の映画にも出てくるのだが、唯一問題が起きやすいのがこの映画だ。だけど、私が母と経験した確執に比べたら出力30%くらいのほのぼのとした問題である。 アメリカ人は直接的に気持ちをぶつけあうので、見た目は派手だが、内部に渦巻く憎悪は私に比べたら10%もないと思う。


ストーリー・オブ・マイ・ライフ

最初に観たのがこれ。姉妹が楽しいのはわかるがちょっとうるさすぎるだろと思っていたが、グレタ監督の作品をいくつか観たら納得いった。彼女は同性とキャッキャするのが好きなのだ。

また、ティモシーシャラメはなんとかならんのかくらいうざかったがレディ・バードを見たら納得いった。バービーもそうだけど、クズ男性を演じてくれるイケメンを、グレタ監督は熱望しているのだ(笑)

ジョーが小説家なんて目指すがために結婚もできず孤独になっていく姿は、自分と重なるし共感できるところが多いにある。恋愛は本当にうざい。他の作品を観てからだとそれがくっきりとわかる内容だ。

 

バービー

今までの集大成である。

バービーで強烈なのは「低知能のバカで純粋な男たち」の描き方だ。あまりにもリアルで背筋が凍った。だが、グレタ監督がいつも小馬鹿にしている男たちを、真剣に、本気で、映像化してしまった問題作がこちらである。なおメイキングでグレタ監督は何度も爆笑しているww

レディ・バードを観ても思ったけど、グレタ監督は相当な問題児(問題女子)である。

日本で男性をバカにすると、まるで当然かのように、「男性の立場はどうなる」と人権みたいに尊厳を要求してくる上、バカにされ続けると逆上して対象を殺害し、頭部切断の上、自首するとかわけのわからない猟奇的事件が起きてしまう。だから私はこの映画を観たときにとても怖いなと思ったのだ。

「ケン」は武器を持たないため、せいぜいビーチバレーボールを投げたり、なんか適当にパンチ繰り出しているだけだったが、現実には肉切り包丁が存在する。

もしグレタ監督にリアリティがないとしたら、男性の凶暴さが描かれていないところである。

とはいえ、私でも、暴力映画をつくってくれと言われたら間違いなく女性を主人公にし、男どもを抹殺するだろうし、もしグレタ監督がそっち方面に目覚めたら同じことになってしまうだろう。リュックベッソンがやってるから需要ない気がするんだけどね。

グレタ監督は「バービー」で暴力のかわりに、女性が男性を本気でとっちめるなら「馬鹿で短絡的な男性特有の思考回路」を利用して勝手に滅亡するように仕向けたらいい、といっているのだが

それがものすごくリアリティがあって、私は怖いなあ、と思いつつ、グレタ監督にあこがれるのであった。

絶対男嫌いだろ、と思う表現も多いのだが、彼女は男性に救いのある内容ももちろん描いている。

レディ・バードでは同性愛者の男性をなぐさめ、バービーでは女性に認められないと自分の存在意義を見失ってしまうケンをなぐさめる。

しかし、これもグレタ監督のひとつの罠であり、彼女は世界の支配者に値する人間かもしれない。だが、彼女は正しい。もし、女性が世界を支配してうまくいくと仮定するならば、そのトップにはグレタ・ガーウィグ監督がいるかもしれない。

 

 

 

 

 

2023年9月16日土曜日

ブレア・ウイッチ・プロジェクト

久々に見てみました。この映画は20年近く前に妹が借りてきたのを観て以来です。あの時代は、12モンキーズなど、暗くて私の心をひきつける作品が多く、20代だったのもあって大変影響を受けたことを覚えています。

やはり20年経っても非常に面白いですね。私の洋画ホラー1位の座は揺るぎませんでした!その理由を、羊たちの沈黙の時と同じように羅列してみたいと思います。

 

ヘザー役の女優の演技がとてもいい

特にラストの叫び声なんて、夢に出そうです。

ラストシーンは壁に手形とかついてるのが、あまりにも衝撃的すぎて、ビジュアルと悲鳴をよく覚えていました。

また、女性監督として名を上げたいと思っている学生ヘザーの傲慢な態度から、終盤にかけての懺悔のシーン、恐怖でマイクの名を呼び続けるシーンなど、すべての演技がピタリとはまっていて心揺さぶられます。

 

テンポがいい

80分の小さい低予算の作品だからというのもあるが、ダラダラ喧嘩してそうでそうでもない。いつの間にか次のシーンに変わっており、徐々に魔女の影響のようなものが強くなっていくのが面白い。

この映画のエピソードをノートに書き出してみるとわかると思いますが、実はかなりのスピードで展開しています。なのでいつのまにか大変なことになっているという引き込まれ方がいい。

 

映像がいい

昔のカメラを使っているのか、テープのようなものが見えていました。映像も荒いです。ホームビデオに近い。(一応彼らは映画を作る勉強を大学でしています)

またどう考えても下手くそな構図や、寄りすぎな映像もあるのですが、「ちゃんと見えない」あの怖さは素晴らしいですね。肝心な時に見えず、逆に一生懸命探してしまうので、引き込まれます。

最後は特にいいです。ただ、廃墟を恐怖でテンションを上げながらカメラを振り回して撮影してるのですが、夜の廃墟自体が怖いというのもありますが、ついついエビデンスを一生懸命探してしまいます。

おそらく手形と文字以外は無いです。ですが、文字も一瞬なので何が書いてあるかわかりません。ルーン文字のような読めない感じのものだったと推察します。 

この不鮮明な感じは綺麗なデジタル映像だと再現しにくいので、最近ではわざとノイズを乗せてる自主制作映画を見かけますね。

 

恐怖がただひたすら右肩上がり

最高のクライマックスで終わってしまうのが、一部から批判される理由だと思うんだけど、そこに至るまでのいくつかの恐怖シーンが結構印象が強くていいですね。

個人的に無茶苦茶怖かったのがテントを外からツンツンされるシーンです。ツンツンしてるのか、殴っているのか、よくわからないのですが外部から攻撃されているようなのです。テントという脆弱なツールの弱点をよく突いています。

基本的にこの映画は低予算のためか、攻撃者の声は聞こえるものの姿は結局見えません。

それが逆に怖いという、まさに低予算を逆手にとった良作だと思います。

また私はグロいのが嫌いなので、ジョシュの服の一部に人間の体の一部が包まれていたシーンは、ちょうどよい怖さでした。あれがジョシュかどうかも判別はつかないのですが、服がね…。そしてその前に散々、ジョシュが苦しんでいるような叫び声が聞こえているのもいい演出です。はっきりはさせないが、思い込みでほぼ確実だと思わせるロジック。

そして、途中でマイクとジョシュが笑いだすシーンがありますが、あれも、魔女に振り回された結果なんだと思います。実体のない恐怖にさらされ続けて頭がおかしくなってくるのも、恐怖です。

 

そして、やっぱり、「本当かもしれない」あの感じ。

モキュメンタリーに「実体」が映ってしまうととたんにCGのリアリティ評価になってしまいますがこの作品は最後まで「実体」を映していないので、評価のしようがなく、逆にそれが嫌われる理由にもなりましたが、上品で上手いなと思いました。

もしこれが全部、魔女ではなく地元の人間が仕組んだことでも、理屈が通ってしまうからです。だからこそ、「本当っぽい」感じが出てきます。

そういう意味では、 「都市伝説」好きにはたまらないですし、本来都市伝説ってのはデマを楽しむものですが、これもそうなんだと思うんです。でも本当に魔女か、そういうことをする人間が住んでいたら、怖くて面白いなと。

 

私はバイオハザードヴィレッジは怖すぎてプレイできませんでしたが(体験版でも)、ブレアウイッチの最後のシーンとかなり似ている映像が出てきますよね!あれもめっちゃ怖かったです。

制作陣はきっと参考にされていると思います。FPS一人称視点のゲームでしたし、周りがよく見えず、音だけが聴こえるあの感じもよく似ています。

音だけが怖い演出については「アランウェイク」は天才レベルで、ちょっとやりすぎなくらい音で攻めてきます。行っていない上の階からやたら話し声や足音が聴こえたり。

ブレアウイッチのゲームがあるそうなんですが無茶苦茶怖いらしいです。

でも、バイオハザードは映画にするとあんまり怖くないと言われていて、本来は、ゲームのほうが怖いのに、映画がかなり怖いのはいいことだと思います。

2023年9月4日月曜日

HAPPY DEATH DAY

実は先日「恋はデジャ・ヴ」を観たばかりなのだが、教訓めいた内容とやたらひっぱる長さにちょっと閉口していたところに、この映画のヒロインの顔芸が面白いと聞いて再生してみた。同じくループものである。

だが、恋はデジャ・ヴが普通に寝ると翌朝同じ日が繰り返されるのと違って、本作は前日に必ず殺され、はっと目を覚ますと同じ日を繰り返すというもの。

ミステリーになっていて、仮面をかぶって自分を殺しにきた人間が誰なのか、ずっと謎を解き明かすのに必死で、なかなか面白かった。クチコミの通り、ヒロインのリアクションが実に大袈裟でアメリカンテイスト。

ついに突き止めた!と思ったら、とある理由でヒロインがループをやり直すため自殺までする。なかなか、一回でうまくいかない感じが盛り上がる。

そしてクライマックスのどんでん返しも、私も全然気づかなくて驚いた。ミステリーとしてはかなり上出来ではないだろうか。

全体的に表現が安っぽいのと、ヒロインが性格に難ありのビッチで、恋はデジャヴと同じで途中からいい人になろうとしてるんだけど、元ネタをすでに観ているとあんまり感動もしないというか…。全体的に二流感はあるが、初見だと楽しめると思う。気楽な気持ちで観れるホラー映画って少ない気もするので。

 

ちなみにラストシーンでヒロインたちが「恋はデジャ・ヴ」の話をしているので完全に元ネタだとバラしているw 

あと壁に「ゼイリブ」のポスターが貼ってある…w

2023年9月3日日曜日

アステロイド・シティ / ウェス・アンダーソンの世界

恥ずかしながらウェス・アンダーソンを知らなかったのですが、この映画のチラシを見かけてから絶対観ようと思っていました。

映画観終わってすぐパンフ買いました。ビジュアルがとにかく素晴らしかったので、何かしら手元においておきたいという気持ちからです。(バービーも、ウェス・アンダーソンを参考にしているので、ビジュアルがよくてパンフ買いました)

ウェス・アンダーソンのその「ビジュアルのよさ」というのはどういうものなのか、デザイナー目線でお伝えします。

 1:やはり色彩が良い

インスタグラムのフィルター(ナッシュビル)のようなカラーリングですが、ある程度いじっているとは思いますが、明らかに計算された色使いでつくってるなと思いました。

その色とは、背景・マットペインティング・小道具・大道具・衣装・髪の色・肌の色・照明にいたるまで、細かいこだわりがあると感じます。 

簡単にいうとレトロカラーです。1955をあらわしているからとも言えますが、完璧すぎて驚きます。

ちょっと度肝抜かれたのは「グリーンのバスタブ」です。どうしたらそういう発想になるのか。そしてバスタブやっぱり塗ったんですかね…。

あと人間の肌はあえて彩度をがっつり上げて色飽和を起こすように補正されていますが、レトロ感がよくて効果的でした。

積まれた中古車もなんとなく色が綺麗ですし、家族の持ってきたトランクの色も計算されているし、トム・ハンクスの衣装の上がクリーム色で下が水色のパンツはすっごいかわいいのにおっさんになぜかしっくりきていてとにかく凄いなって思いました。

2:フォントが良い

まずタイトルとスタッフロールのフォントはすべて統一されており、かわいらしいフォントです。

また、小道具や看板が大量に出てきますが、すべて計算しつくされていると感じました。しかも、看板で状況を説明しまくっている映画なのですが、状況が変わると上から赤いシートを貼って文字が書き直してあるのですがそこも綺麗にフォントでデザインされています。そしてタイポグラフィーにこだわりのある方はご存知だと思いますが

「字間」が完璧なんですよね。

どういう感じかというと、「あえて詰めない」「少し空ける」なのですが、1文字分あけるとちょっと開けすぎなので50~80%くらいで留めてるのが「かわいらしい」「レトロ」なんですよ。あとあのフォントの選定センスは異常ですね。現実には存在しないくらい、計算しつくされています。画面全部がデザインされている。

自動販売機のセンスが良すぎるので、こういうの日本にあってもいいと思うけど、おそらく人間が生きているうちは設置されないでしょうね。

ウェス・アンダーソンこそ映画グッズを大量に出しても売れると思いますね。

3:構図が凄い

これは多くの方も同じ意見だと思います。こだわりが強すぎて、つまらないシーンでも画面の隅々までディテールが楽しめました。

例えば、人物を正方形の窓から撮影しているシーンが結構あるのですが、白い壁の真ん中の人物に集中させておきながら、その壁の先の背景までが完璧にレイアウトされています。簡単に言うと、「絶対ものが被らないように配置されている」のです!!もし被っている場合は、完璧なレイアウトで綺麗にものが並んでいます。

ぐちゃぐちゃになったのは少年が飛び降りた時に空き缶が飛び散った時くらいなのですが、この少年が上から下まで白を着ているんだけど、なぜか白いニットとかなんですよね!異常なこだわりを感じました!

一点透視が好きなのか、いちいち一点透視になるところまでカメラを移動させて、シーンを撮影、わざわざ移動してまた一点透視で別のシーンを映す…。演劇がモチーフだからというのはわかりますがピタッと中心に合わせるので、絶対俳優の位置を変えることはできないと思うんですよ。消失点に向かって背景が左右対称ですからね。こいつはたまげました。

一か所、「上下」に撮影しているシーンがあり、これも完全に中心を合わせた三点透視でした…。

また、絵画的な構図が多く、人物はあまり動かないものの、「手前に中心人物」「横にサブの人物」を配置していることが多く、不自然な位置にいるのですが絵としては完璧なんですよね。動くイラストを見ているような感じです。

非現実感を出すには効果的だし、中心に絶対に合わせるという構図ならある意味迷いがないので楽そうではあるのかなと思いました。(カメラの技術を知らんのでぴったり合わせるのがどれだけ大変かはわかりませんがw)

あとスクリーンの左右ギリギリに人物配置して会話させるの、結構好きですね。おもしろい。

真ん中を柱でぶった切るのも面白いなと思いました。

4:アナログへのこだわり

全体的にアナログなのがかわいらしい作品なのですが、宇宙人のアナログ感がすごくて、かわいくてしょうがなかったです。ストップモーションアニメーションなのですが、コマ撮りらしいぎこちなさがたまらないですね。

説明するともったいないので、ぜひ見ていただきたいです。

また、パンフに書いてあったのですがこれ全部フィルム撮影だそうで。

いや、わかる。同じ極彩色の世界でも、バービーは生々しい写真感があったけど、アステロイドシティは徹底的にレトロ感にこだわっていますからね。色あせた、優しい色づかいや少し不鮮明な輪郭(とはいえピントはばっちりなんだが)はフィルムの味なのかもしれないなあ。

 

ビジュアルばかり褒めてしまいましたが本当にビジュアルへのこだわりはハンパないです。普段デザインをしている人間からしたら「すごいうまいデザイナーが突然現れた!」みたいな世界ですよ。

「こだわってつくれ!」「完璧主義になれ!」と尻を叩かれるような完成度の高さです。

その反面、話はあんまりおもしろいとは言えないのですが、なんかいちいち小ネタが笑えるので楽しかったです。きっと面白い監督なんだろうなと思いました。宇宙人の登場シーンはみんなやっぱりちょっと笑っちゃいますよね。 

テーマは演劇やクリエイティブの話だと思っていて、ちょっとドライブ・マイ・カーを思い出しました。

あまりにも完成度の高いオシャレ映画なので、ずーっとカフェとかで流しておくのによさそう。家で流しっぱなしにしたいような映画。

 

2023年8月27日日曜日

炭酸系サメ映画「MEGザ・モンスターズ2」

メグことメガドロンとは、360万年前に絶滅したはずのでかいサメのことである。

私はサメが出る映画を観た後海で泳げるくらいサメのことが怖くないのだが(海の中にはもっと身近で怖い生き物がいるので)

ジェイソン・ステイサムが再度メグに挑むというなら別である。

今回のステイサムはすごいぞ。

なんと、銛を投擲してメグをやっつけるのだ。これはネタバレっぽく聴こえるが、なんか知らんけどメグが増えるのだ。何匹いるのかわからない。

メグが繁殖すると知った時のステイサムの勘弁してくれフェイスはなかなかステイサムだった。

かつて日本人が銛を投擲して集団でクジラを狩ったように。

ステイサムは容赦なく、本気でサメに投擲で勝とうとする。

リゾート「FUN ISLAND」の楽しそうな一般人に犠牲を出さないために、本人がおとりとなるのだ。

しかも、どうでもいいような変な生き物(コモドドラゴンみたいなやつ)とか、巨大なタコとか、よくわからんものまで出てくる。基本的に食物連鎖の頂点にいるのはメグなので、メグがくれば食欲があるかどうかは別として食ってくれる。

後半はリア充に恨みでもあるのかと思わせる映画になっているが、前半はうってかわって素敵な深海映画であった。

減圧症を経験している私からするとその危険度はハンパないが…(水深7000mというのは、人が存在できる深さではない)(ダイビングライセンス取得直後は15mまでしか人間は潜ることを許されていない。そのくらい水圧というのは危険なのだ)

そこでもなんと、ステイサムは特殊な訓練により数秒間だけスキンダイビングを行う(もちろん、映画のストーリー上でですよ)。まあ普通なら不可能だし、10秒くらいで目的に到達したあと、ステイサム(ジョナス)が気を失うくらいの水圧ではあるようだ。

それから海慣れしてる私から見ても、やたら何かを触ろうとしたり、きょろきょろしてビビったりしてると危険というのは同意だ。 

全体的にはステイサム鑑賞映画となっており、アクションは減ったもののまだまだ綺麗で的確なアクション、元飛び込み選手として綺麗な飛び込みや素晴らしいフォームの水泳はみどころがある。クロールってあのくらい腕を上げるもんなんだなと・・(海は平気だが泳ぐのが遅いので)

がやはり、一番の見どころはひとりでメグ3匹を殺しに行くシーンである。最後の最後はものすごい覚悟の目をしていてかっこいいぞ。

他の役者がどうしても引き立て役にしか見えないのだが

個人的には、DJがとても好きで、

ムチムチに太っているのにものすごい綺麗な回し蹴りを2回決めた上に、銃の扱いもお手の物で、ギャグも上手い。

彼がもっと出世することを祈っている。

 

全体的にさわやかなギャグパニック映画になっているのは、ステイサムの性格にもよるものなのだろうか。いくら生還したとはいえ、甚大な人的被害が起きたあとのビーチで乾杯はちょっとシュールすぎて笑ってしまった。

ほぼ常に海の中にいるので、涼しい気分になりたい人にもおすすめ。今年は特に暑いからね。

 

2023年8月16日水曜日

アダルトチルドレンの視点から観る映画「バービー」

スタッフロールで流れるビリー・アイリッシュの「What was I made for?」が心に沁みすぎる今日この頃。

すごい映画だった。

思い出すと涙が止まらない。

もしかして。もしかしたら。この映画は。

グレタ・ガーウィグが、更年期に突入してもなお道に迷い続ける、哀れな女の子である私にプレゼントしてくれたメッセージではないのか。


女性の身体の異常という成長

この映画で、バービーは開始早々身体に異常を自覚する。そして、現実の世界へイヤイヤ出発する。(予告編にもある通り、バービーは本当はハイヒールの世界にいたいのだ)

これは40代の私に生じた異変「ひざの痛み」でもあり、11歳の少女だった私に生じた異変、「月経の始まり」でもあるのだ。

女性は生涯、女性であるだけで多数の障害に悩まされる。健康な証拠でも、やはり障害と呼びたくなるほど体調の異変に振り回される。そして鈍感で粗野で頭がお花畑の男性陣には理解されがたい。

11歳で月経が始まり、一番美しい頃はひたすら男性陣にねらわれ取り合いされ続け、どの男がいいやつかなんて判断もつかないほどだった。20代の女性に10代後半から60代の男性が群がるのだから当然である。新宿ALTA前を歩くと、10mで10人くらいに声をかけられる。キャッチセールスが大半だが、彼らは「若い子」にしか声をかけない。

40代で落ち着いたかと思えば、バツイチの男性や残り物みたいな男性に執拗にねらわれ続けた。そして、そこからも逃げたあと更年期障害が始まる。更年期障害が終わった後は、骨粗鬆症との戦い。老いとの本格的な戦いが始まる。そして資金も必要になる。私は独身なのでまず自宅を確保しなければならないかもしれない。

女性としてやっと終われる、と思いたいが、災害時の避難所で60代の女性が性犯罪に遭う時代である。性的に狙われる対象は相対的になっていて、他にいないのであれば70代でも襲われる可能性があるのだ。

私たちはそうやって、バービーには無い、女性が遭遇する厳しい現実に鞭打たれて生きてきた。だから、この映画は泣けるのだ。特にその戦争が終わりつつある更年期の女性は、まだまだそれでも生きなければならないという苦悩を抱えつつ、この映画に救われながらまたも尻を叩かれている気分になる。


「ルース」と言う母親

バービーは、自分の創造主である「ルース」と言う女性に出会う。つまりこの女性が、バービーの母親だ。

バービーには母親がいなかった。強いて言えば「変なバービー」が彼女の行くべき道を示してくれたが、母親ではない。

私はこのルースの存在が羨ましかった。

自分のアイデンティティが危機に陥った時、背中をそっと押してくれる人が母親であって欲しい。この映画では、ルースがその役割を見事に果たしている。

私の母は、月経が始まった時も、それとほぼ同時に世界に絶望を感じて塞ぎ込んでいた時も、何一つ助けてくれなかった。

月経を賛美しろと言うのではない。多くの人は間違えているが、月経には良いも悪いも無いのである。

月経がきた女性に必要なのは、先輩からの励ましである。これから、50歳くらいまで毎月このえげつない月経というのが来る。生理用品の準備を怠るな。生理中なのがバレることよりも、服を汚す方が恐ろしい。そして、異変が生じた時は病院に迷わず行けと、言って欲しかったが、母はそういうことは基本的に言ってくれず、穢らわしいものを見るように、かつ怯えながら生理用品を渡してきた。彼女は、自分が育てた娘が女になるのが恐ろしかったようだ。3人もいるのに、である。私は生理のことは全て本やインターネットなどで学んできた。あの時、学習雑誌が買い与えられていなかったら、私は月経のことを知らないまま血を流していたかもしれない。

もしかしたら、彼女の初潮の時も恐ろしいことがあったのかもしれないが、人生の先輩はそれを正さなければならないのでは無いのか?

これは、彼女の未熟さから来るものであり、恐ろしいことに彼女はまだバービーのままなのである。

アダルトチルドレンが一番泣くのは、「親からの愛情は一生得ることはない」と悟る時である。そう、一生その時は来ない。自分の方が大人になってしまったからだ。だから、たくさん泣いて、自分を自分で愛さなければならない。そして自分は愛されなかったのに他人を愛さなければならない。死ぬ前に和解しろだなんて、映画のようなことはできない。彼らはそもそも自分が悪いとは思っていないからだ。


人形遊びからの卒業

この映画は奇しくも、バービーがテーマでありながら、人形であり続けることが困難な展開をしている。つまり、人形遊びからの卒業。夢の世界からイヤイヤ叩き起こされるのがプロットである。

私は妹が2人いたので、ずいぶん長い間人形遊びをしていた。もともと現実が嫌いだし、人間が怖いと思っていたので、内向的な人形遊びで空想の「パーフェクト」な世界を「リカちゃん」で構築していた。(皮肉にもアメリカにいたのだが、バービーを買わずにリカちゃんをしつこく使用していた)

ここで面白いのが、妹が先に人形遊びから卒業してしまったのだ。

彼女は、私が作ったパーフェクトなリカちゃんワールドを物理的に破壊して強引に遊びを終わらせるのだ。

私は、妹に付き合ってるつもりだったが、彼女は先に自立してしまった。

ここで、グレタ・ガーウィグについての興味深いツイートを紹介したい。



私も11歳で突然病み始めたので、非常に興味が沸くとともに、グレタ・ガーウィグ監督は自分と似たような女性なのではないか?と思い始めた。

病むには色々な原因がある。月経もその一つに違いない。

月経が来ることで強引に大人にされる我々は、男性からしたら「妊娠可能な女性」として見られるようになり、着飾ったり化粧をするようになる。男性のためではなく、「よりまともな男性を得るために」淑女としてきちんとすることを求められるのだ。

グレタ・ガーウィグ監督は、バービーの強烈なスタイルの良さ(リカちゃん人形の2倍はグラマラスかもしれない)や最初から与えられているキャリアを批判しているのだろう。

あんなものを理想像として置かれたらたまらない。私も子供の時バービーはいらんと思っていた。あまりにもかけ離れているからだ。もちろん夢を見るのは勝手だが、それは女性にとってとてつもなく重荷になることがある。

例えば、恐ろしいことに、私が12歳くらいの時林間学校でダンスパーティーが行われた。アメリカの林間学校である。

全員参加だ。

男性が誘う側になる時は本当に恐ろしかった。男子が一人ずつお気に入りの女の子を無料で選んでいくダンスパーティー。

ルックスで選んでいるに違いなかった。私は、最後から2番目だった。おぞましい、と思った。最後に残ったのは黒人の女の子。完全なる人種差別が行われていた。しかしその前に、美醜で選ばれているに違いなかった。

ディズニーのアニメ映画のように、美しい王子様が踊ってくれませんか?なんて言ってくるのは既に遠い夢。おとぎ話は12歳で無惨にも破壊されてしまった。

つまり、思春期は男性の目を気にしたり、魅力的でなければならないというプレッシャーが突然襲いかかってくるのである。胸も大きくなってくるが、胸の大きい子はそれだけで苦しむ。胸が小さい子は大きい子が理想だと思っているので同じく苦しんでしまうのだ。


つまり、グレタ・ガーウィグが言いたいのはそこなのだ。

美しい?美しくない?胸が小さい?メガネかけてる? キャリアがある、ない?

そんなことはどうでもいいと。

もっと自分を大切にしてくれと。

そんなの、誰も言ってくれなかった。

私はこれからも男性の好奇の目に晒されるだろう。中には皮肉にも、私の英語力やキャリアに恋する変態的な男性もいるのだ。かと思うと、ビキニでビーチを歩けば立ち止まってずっと眺めていたり、ノースリーブから出る私の腕をジロジロと見る人もいる。きっと気持ちいいんだろうな。

でもそんなこと気にしなくていい。あなたはあなたのままでいい。

そう、ルースに言われるたびに、アダルトチルドレンの私は泣くのだろう。

2023年8月14日月曜日

問題作「Barbie」を紐解く

この映画はCMやビジュアルを観てから大変期待していましたが、思っていたよりはシビアな内容だったと思います。

まず日本人男性で40代以上だとこれはきついかもしれません。一緒に見に行くのは避けたほうが無難でしょう。日本人男性にはこの映画は刺激が強すぎると思います。

かつて「プロミシングヤングウーマン」を見た時もそう思ったのですが、あれは明らかに怪しいからダメな人は避けると思うんです。でもバービーは難しいんじゃないかなとちょっと思ったので。

以下、ざっくりを感想をまじえながらどの辺がヤバかったかまとめようと思います。

個人的にはとても勇気づけられる映画ではありましたが、絶賛しようとは思いませんでした。

 

バービーは、なんにでもなれる。女の子は、なんにでもなれる。というのが、バービーのコンセプトでした。

バービーはそれを信じて疑いませんが、身体に異変が生じたため、原因を探りに「リアルワールド」(カリフォルニアのどっか、ロスの近く)に旅に出ます。

冒頭の世界説明の時点で、ケンが思ったよりかなり不安そうにしているのが印象的です。彼は、本気でバービーを愛している(ということになっている)のですが、バービーは友人としてしか見ていません。

ですが正直うざキャラになっているケンは、印象自体があまりよくありません。また、かなりの依存症であることも示唆されます。

このタイプの男性は、病気に近いですが、現実世界には腐るほどいます。


バービーは現実世界で女性のステレオタイプとして扱われ、セクハラされまくります。この辺ですでに気分の悪い方もいらっしゃることでしょうw

バービーが女の子に「バービーはファシストよ」とすごい悪口を言われ、嘆き悲しんでいるところに、ケンは別行動で「バービーのおまけではない、男性が中心の世界」を見て感動します。 

悪夢の始まりです。

ケンは一足先にバービーランドに帰り、なんとバービーランドを男性優位の世界に洗脳してしまいます。

ここの描写も極端ですが、印象的だったのは、今までキャリアウーマンだったバービーが「頭使わなくてよくなったから楽だわ!」と言っているシーン。このセリフ、実は私たち女性にも突き刺さります。

男性優位の社会では、重い責任や面倒な仕事は男に任せておけば楽ができます。30年前くらいまではそうだったかもしれません。この怠惰な発想が、女性の自立を妨げてきたのです。

しかし、いくらケンが頭悪くてセンスがないからといって、この世界はどうしたことでしょうか。男性は偉そうにしているだけで、ごりごり働いているわけでもなさそうです。工事のシーンだけがあり、そこでは「KEN AT WORK」というギャグな看板が立っています。工事しかできんのかい!

他のケンは女にビールを持ってこさせるか、それっぽくサンドバッグ殴ったりしているだけです。

リアルワールドを一通り体験して目が覚めかけているバービーは洗脳されず、ケンから世界を取り戻すために一計を案じ、ケンたちを騙して同士討ちを誘発します。

(この作戦会議のシーンでリアルワールドの女性が数分間ぶちまける「女の苦悩」は首がもげそうなくらいうなずきました)

この辺のシーンは「プロミシングヤングウーマン」と同じで、目を覆わんばかりの「男のバカさ」が描かれております。これ、さらに気分が悪くなること、うけあい。

特に笑ったのは、「ゴッドファーザー」のよさを男性に語らせれば夢中になって隙ができる、という作戦。ひどいですねww

私が女性だからかわかりませんが、ゴッドファーザー観たとき、全然頭に入ってこなくて、唯一覚えているのが、女性がブチギれて家じゅうの食器を割るシーン。

男性向けの映画なのかもしれないですね。

 

私は、ちょうど先週体調を崩しており、「真の男女平等はお互いに助け合うことだ」という結論に至っていました。ひとりで生きていくのは苦しいかもしれない。だけど、依存関係は正しい関係ではない。ましてや、お互いの性欲を満たすためのパートナーというのも違う。

ケンはどうしても手に入れることのできないバービーを前に泣き崩れますが、彼に必要なのは自立だったのでした…。


私は、この映画は多くの真実を突いていると思います。

まず、バービーランドでは、女性が自立していますが、男性は脇役として飾りのようにおかれていました。バービーは政治に学問に大活躍しているのに、男性が表彰されるシーンがありませんでした。この時点で、この世界は不平等ということになります。

不平等ではかならず軋轢が起こり、反乱が起きます。

ですが、哀れな男たちは、「女性に認められたい」という承認欲求で生きているため、女性を殴ったり殺すことができないのです。

我々女性が権力を握れば握るほど、男性側にもストレスがかかる。

「どうしたら平等になれるのか?」それは、お互いに依存しない生き方を見つけ出すこと。

男性の自立は、女性と平等な土俵で戦い同じくらいの成績を出すことなのかもしれません。

またもう一つのテーマがあります。それはバービー自身のテーマです。

マーゴットロビーのバービーは「ステレオタイプ」のため、特技がありません。 キャリアもありません。絶望して泣くバービーは、下手すると笑っているときより全然かわいいのですが。

「でも、それでもいいんだ」というのがメッセージです。

もちろん、可愛ければなんとかなる、みたいな話ではありません。

別に、「大統領」「弁護士」「看護婦」などの大層な職業につかなくても、落ち込まないで!ということなんだと思います。

「普通のバービー」で、いい。

そして、恋をしたりケンと結婚をしなくてもいい。

でも、ケンが自立してしっかりしたら、対等な話ができるようになるかもしれません。

ライアン・ゴズリングの役どころは大変だったと思います。ケンは元来悪いキャラクターではないのです。そんな「もとはイイ子」でも、抑圧され自分の使命を間違えると悪党になってしまい、似合わない毛皮のコートを羽織って、無駄にサングラスを二個もしています。

甘えん坊な自立できてない男性なら「女性が相手にしないのが悪い」というかもしれませんが、優秀な遺伝子を選ばなければいけない我々としては、子供に子供をつくらせるわけにはいかないのです。

かっこつけているよりは、素直に自分の問題点を語ってくれたほうが我々も寄り添える。映画はまさにそういうことを言っているように感じました。

ですが、正直映画自体が男性の問題まではしっかり解決していないので、男性が不満を持つか、メッセージを受け止められるかで、感想が変わって来そうですね。 

マーゴット・ロビーが面白いなと思ったのは、

彼女、泣いている時のほうがかわいくて美しいんですよね。

すごく不思議でした。

冒頭のハッピーなマーゴットもいいのですが、どうしても笑顔が張り付いているような印象を受けました。

途中から、なんども涙を流すバービーが、口調も変わり、だんだん大人になっていくのが、とてもよかったです。 


決してハッピーな映画ではないし、結婚に夢を見る女性には絶望を抱かせ、依存している女性は夢の世界からたたき起こされ、独身女は「もっとしっかりしろ!」と叩かれているような、厳しい内容だと思います。

と同時に、現実だからこそ、みんな苦しいから完璧でなくても、落ち込むなと励まされているようにも思えます。

2023年8月11日金曜日

歴代ブルース・ウェインを比較する

本日アマプラでバットマンVSスーパーマンが見られるようになったので、一通り実写は見たことになるので、まとめたいと思う。

私が子供の頃は、キートン版が大流行しており、またジョーカーがとにかく人気だった。

しかし、マイケルキートンは実はあんまり好きではない。顔立ちがキツく感じるのである。

彼の出演した2作品はティム・バートンの実力が遺憾無く発揮されており、世界観やビジュアルは本当に素晴らしかったのだが。

3作品目に差し掛かって、私は感動した。

正直、あまりイケメンとは思わなかったが、見れば見るほど惹きつけられるブルース・ウェインであった。

ヴァル・キルマーというのは不思議な役者である。

3作目は、リドラーとトゥーフェイスがタッグを組んで悪さをやらかす回なのだが、

なんとリドラーはウェインエンタープライズの研究員である。社員なのだ。

冒頭で社内視察を行うブルースのところに、自己中なエドワードが直談判にやってくる。マインドコントロール装置を会社から発売しないかと。ここのブルースが素晴らしいのだ。

最初はとても礼儀正しく、温かい笑顔で社員と握手を交わすが、一旦秘書に預けるようにいう。婉曲に断ろうとしているのだが、エドワードが気が短いため、即答を要求すると、ブルースは声をそれほど荒げるでもなく、「答えはノーだ」ときっぱり告げる。

この一連のシーンが素晴らしかった。ヴァル・キルマーこそ、理想のブルース・ウェインであるように感じた。

ヴァル・キルマーは声も素晴らしい。皮肉なことに彼は声を病気で失ってしまったが、おそらく歴代ブルースの中で一番声のイメージが合っている。上品で、暗い響きのある綺麗な声だ。

また、この映画はアクション映画に見せかけて、ブルースが過去のトラウマに苛まれており、きちんと自分の過去を思い出せないという可哀想な設定がついている。その設定が不安定で繊細なブルースを作り出しており、実に味わい深い。ヴァル・キルマーが演じるとなんとも危うげな雰囲気が出るのである。リアリティがあった。

また、相棒である「ロビン」が加担するのだが彼にまつわる一連のシーンも素晴らしい。まずロビン自体がすごいイケメンなのもいい。ロビンを自宅に引き留めたいブルースのそっけない勧誘の仕方もかっこいいし、ロビンが孤児になった原因はバットマンだと思い込んでいて、ブルースの胸をドカドカ叩きながら泣くところもいい。あの時のブルースの慰め方も素晴らしかった。

しかし一番良かったのは、ロビンが一緒に戦いたいと言った時のブルースの断り方だ。劇中で一番真摯であり、一番ちゃんと怒っていた。

このブルースは感情表現が少なめなのにも関わらず、抑え込んだ感情が滲み出るのを見落としたくなくて、一生懸命に見入ってしまう。ブルースは恋愛も繊細で、初めての恋だと言い切っているが、それによって騒ぐでもなく、静かに思いを成就させていく。

こういうヒューマンドラマの描き方が結構良かったのに、なんとなくチグハグになってしまうのがバットマンという素材の悲しいところである。

その次の作品は、バットマンスーツに絶望を覚えたキルマーが降板してしまい、ジョージ・クルーニーにお鉢が回ってきた。

さてこの回が最悪だと言われているが私もそう思う。

単純にブルースらしくないブルースなのである。何一つブルースらしさが感じられない。

ジョージ・クルーニーは大好きな役者だが、全く向いてないと思った。

悲壮感が全く感じられないのである。金持ち感はあるしイケメンだが、コミュ障でも陰キャでもない。

またヴィランにポイズンアイビーが入ったことで、色恋沙汰が発生して余計品格を下げてしまった。

Mr.フリーズは完全に脳筋だし、バカすぎて感情移入できない。

そもそもだがジョージ・クルーニーが髪の毛を綺麗に刈ってしまってるのもかなりおかしかった。

ブルース・ウェインは前髪長めが正解。あれが、危機に陥るとばらけてくるのがセクシ〜なのである。

さてこのあとはクリスチャン・ベール3部作。作品として完成度が高いし、今の若い人、同世代はみんなこっち派かもしれない。でも私はクリスチャン・ベール版はあまり好きではない。

(余談ではあるが、妹が激ハマりしていたので血は争えないと思うが、私はやはり繊細ちゃんブルースが好きである)

ノーラン版ではブルースの悲壮感は出しているが、ブルースの内面には迫っていないと感じるのである。

外見は素晴らしいし、バットマンになっていく過程もよく説明されているが、私は感情移入できなかった。

その次はベン・アフレック。

冒頭からしっかり社長をやっており、社員を助けるシーンが出てくる。どちらかというとブルースの話なのかもしれない。が、このブルースにはいくつか問題があり、それはよく世間でも言われていることだ。

彼は完全にやさぐれ切っているようなところがあり、結婚もせず、悪い奴らを拷問するし、銃も撃つ。多分何人か殺しているかもしれない。会社の運用はしっかりやっているようなのだが、なんとも荒廃感漂う哀れなブルースである。(しかし普通に考えたらこうなるかもしれない)

一番きついなと思ったのは、スーパーマンに吐くセリフである。これがこのブルースの全てを表していると思った。

「お前の両親は、お前は目的を持って生まれてきた、と教えただろう。だが俺の両親は違った。

路上でいきなり人が死ぬ、ということを教えてくれた」

セリフこそ淡々としているが、激しい怒りが秘められているのを感じる。

またこのバージョンのバットマンは私に言わせればもはやターミネーターや殺戮マシーンの類であり、美しさや妖しさ、ミステリーなどどこにもなく、全く惹かれるものがなかった。


荒れ切ったバットマンが作り出されたあと、まるでそれにリセットをかけるようにして生まれたのが、我らがパティンソン版バットマンである。

マット・リーヴスの表現はどこまでも地に足がついており、改造車はあるものの空飛ぶ飛行機などブルースは所持していない。普段の移動は普通のバイクである。スーツは防弾だがそれ以外の特殊な加工はなく、空を滑空するウイングもお手製の危険な代物である。

そして何よりブルースが脆弱で不安を煽るような存在であった。

これは、ゴッサムシティそのものを表しているのかもしれない。

私たちの住む日本という国も、なんだかこれに近いような気がしてならない。

マット・リーヴスは、お金持ちでもどうしようもない現実的なブルースを描くことで、世界の危機感を示している。ブルースは疲弊しているが、焦っている。ヒーローになろうとすら思っていないが、とにかく過去のトラウマを克服するためには、悪党をぶん殴りたかった。悪党が、怖くなって街を徘徊できないようにしたかっただけなのだ。

ブルースは哀れな精神病の青年で、その目と精神は10歳から成長していない。

だが、今までで一番惹きつけられたのがこのブルースであったことは間違いない。


映画にはヒロインが何人も出てくるが、みなブルースに惹かれる理由はその繊細さや危うさである。「何を隠しているのか」が気になって、毎回ブルースを質問攻めすることになる。そして毎回ブルースは困ってしまう。キートン版でも緊張して自分の正体を話せない。キルマーはもっと大変だ。トラウマを引き出すものを見ると会話が止まってしまうくらい深刻である。キルマー版は女性がブルースのトラウマを助けるような展開で、ほっこりして終われる。パティンソン版は、セリーナに興味を持たれると恥ずかしそうに俯くのだが、全身で愛されたがっているのがかわいい。寂しがり屋のブルースである。

妹は脳筋なので、クリスチャンベールのスーツ姿萌え!!しか言っていないのだが、私は女性ファンを増やすならやはりブルースのもつ危うさは描いた方がいいと思っている。それだとヒーローとしてはあまりにも不安なのでは?と思われるかもしれないが、トラウマを抱え苦悩しながら戦うブルースの姿に、おそらく多くの男性も勇気づけられているのではないかと、私は推察している。








2023年7月23日日曜日

MISSION:IMPOSSIBLE DEAD RECKONING PART1

私はTVシリーズを英語で観てた「オリジナルのファン」なのでタイトルはできれば英語で書きたいし英語で発音したいほう。

スパイ大作戦から受けた影響は計り知れないので、オリジナルは本当にリスペクトしている。

トム・クルーズはシリーズ一作目で私が大好きなジム・フェルプスを殺してしまったため、非常に心証を悪くしたのだが

今回は面白かった。

面白いが、トムがナルシスト&フェミニスト(&女好き)でそこがいいような、悪いような。

要は、イーサンってキャラクターは、一種の人たらしであり、

自分のルックスに異様な自信があるため(まあトム・クルーズの顔ならわかるが)、女性に初めて接触しなければならない時は、意味ありげに間をとって「君に興味があるぜ」という目線を送る。トム・クルーズが昔からやりがちな手であるw

しかし、彼は生粋のフェミニストであるため、女性の素性を知らなくとも、極悪犯罪者でも助けてしまう。しかも命をかけて。

それに感動した女性たちに助けられてる、みたいな話であるw

なのでトム・クルーズは嫌いになれないし、むしろ年とってもあれだけ映画づくりに命がけなのは、非常に評価したいところ。若い時だけモテればいいやと、散々女遊びして適当に来た役だけこなして、少しずつ引退していくタイプとは貢献度が違う。

歳を重ねることにより評価が高くなる役者ってのはたまにいて、ブラピなんかもそうである。彼は実はほとんど変わってないんだけど、「歳をとってもすごい筋肉」とかでやはり評価が上がる。映画作りの方も結構やってるし。

話も結構面白かった。

冒頭の潜水艦事故の見せ方も非常にうまくてひきがあり、

砂漠のシーンでは、レベッカ・ファーガソンのリアル女スナイパーが格好良すぎてしびれ散らかす。

次に空港でめんどくさい爆弾を見つけたときも、頭が混乱しかけるがそれをうまく利用した脚本。

私が気に入っているのはローマでのカーチェイスの一部。カーチェイス自体は実は嫌いな部類に入るのだが(うるさいし、誰か絶対轢かれてるし)、

今回は、ヒロイン(新登場)がポンコツドライバーのため、わけあってトムが運転を教えることになる。

「もしも自動車教習所の教官がトム・クルーズだったら……?」

相当テンションがあがる。

トムじゃなくてステイサムがいいとか、リーアムが本命とか、別にパティンソン君でもいい(教えるの下手そう)とか思うけど、(ハリソン・フォードは断りそうw)

トム・クルーズが教官っていうのは頼もしい。映像を見ているだけでも、相当腕があるのがわかるし、彼は飛行機操縦もそうだけど、冷静で的確なのだ。絶対女性を怒鳴りつけないし、超ポンコツドライバーにも優しいし、ぶつけて事故ると命を心配してくれる。

ザ・いいひと なのだ。

パーティーシーンは隣の人が寝ていたくらいには静かなのだが、実は水面下で大きなせめぎ合いが行われているシーンだ。ポーカーが静かなのと同じだ。

レベッカ・ファーガソンが剣で戦うシーンがかっこいい。近年本当に私のお気に入りの女優さんだ。

最後はオリエント急行が舞台となる。これは終わるまでずーっと苦しい。ずっとずっと手に汗握って疲れるシーンである。

 

偽名かもしれないが、「グレース」

このポンコツドライバーが、成長する物語なのかもしれない。

関係ないけど、「ガブリエル」結構好き。

列車のシーンはアンチャーテッド2とよく似ているし、アンチャーテッドにもガブリエルって出てくるので、案外ゲーム好きな脚本家だったりして?

 

とある強大な力を持つアイテムを取り合いし、だが、「使い方がまだわからず」なのは、筋書がかなりインディージョーンズと似ている。

インディーは太古のオーパーツがネタなので、ネタの違いかな。歴史ものも大好きだし、特にキリスト教がからむと萌えるんだけど

今回は、AIが絡んできます。まるで時事ネタじゃねーかって感じですが、これはありうる話だなあって思いました。

2で話が大きく広がるといいなあと思っています。


デッドレコニングとは:(ネットでしらべた)

推測航法(すいそくこうほう)とは航行した経路や進んだ距離、起点、偏流などから、過去や現在の位置を推定し、その位置情報をもとにして行う航法のこと。自律航法(じりつこうほう)や、デッドレコニング(英語: Dead Reckoning)とも呼ばれる。

つまり衛星のGPSが使えない時とかに使われたりする方法のようです。

 

2023年7月15日土曜日

君たちはどう生きるか

これから観る人も多いと思うので、ネタバレしない程度に感想を書きたい。

 

一番言いたいのは、主人公の眞人がとにかく可愛いということだ。

始まって数分で大変気に入ってしまった。

こともあろうに、疎開先では「ぼっちゃん」「ぼっちゃま」と呼ばれている。

眞人の父親は戦争の軍需産業で儲けており、自宅はお屋敷になっている。誰の目から見ても豪邸だ。

なので眞人がぼっちゃまと呼ばれるのにはなんら違和感はない。

ところで、なぜ舞台を戦時中にしたのか?!と違和感を持ち調べたところ、つまりあの眞人は宮崎駿監督本人なのではないか?という推測が浮かび上がり

さらに調べたところ、以下が一致。

・宮崎駿監督は裕福な家の子供だった
・父が軍需産業をしていた

しかも、母親がでてくるがネットに載っている写真そっくりである。髪型をわざとかくらい似せていた。つまりあれは宮崎駿監督なのだ。

私が眞人で気に入ったところはその端正な顔立ちやまっすぐな視線以外にもある。今の時代ではあまり見ることのできない、硬派な気品や品性である。良い意味でプライドが高いところがよかった。なのに、自分がミスるとすぐに謝るあたりは、しつけがされているし、素直である。ひとりになれば母を思って泣くところなど本当にかわいらしい。

また、危険を感じると自ら様々な道具をかき集めて武器を作り始めるところもよかった。

宮崎吾朗監督が、自分の作品に自分を登場させているのだとしたら、アレン王子ということになるが、私はアレン王子も大好きではあった。

しかし、眞人には勝てないだろう。眞人はびっくりするほど自ら戦う意志が強い。不愛想だがとにかく気が強い。宮崎駿監督らしいキャラだと思っていたらほぼ本人だったわけだ。

アレン王子は自分の在り方に疑問を持ち、生き方は模索している最中で、その弱々しい感じに共感したが、眞人はどちらかというと生まれつき戦う王子様である。

 

さて、私はもうひとつ有名な作品の主人公を思い出した。宮崎駿監督の弟子とも言える、庵野秀明監督が生み出した碇シンジである。

私はなぜか昔から碇シンジが嫌いであった。理由は色々あるけど、男性の醜い面を赤裸々に描きすぎていて、好きになれなかった。作品の傾向としても、都合よく美女3人が出てきてからんでくるのも好きではなかった。

しかしあれが庵野監督本人だとしたら…。

 

私が果たして宮崎駿監督のことが本当に好きかどうかは疑問がある。

今までの映画を観ていると、もののけ姫あたりからとにかくぐちゃぐちゃな敵や気持ち悪い生き物が大量に出てくるようになった。監督が病んでいるのか、もともともそういう志向だったのか…。なので本人の精神のありかたに少し疑問を持っていた。 

庵野監督はシン・エヴァンゲリオンでようやく「ハッピーエンド」というのを作れたんじゃないかなと感じた。自分の中のわだかまりに決着をつけたんじゃないかなと思った。

今回の宮崎駿監督もそんな感じがしたのだ。

 

宮崎駿監督の母親がずっと病気だったのは、実は鈴木敏夫プロデューサーのポッドキャストで初めて知った。彼は話がうまくて、するすると内容が入ってくるんだけど、母親が病気の最中料理をしていたから鈴木さんにもふるまってくれたのだそうだ。

個人的には、ナウシカの時から「ナウシカは監督の理想の女性なんじゃないかなー」と思っていたり、その後も女性が活発に活躍するアニメーションを観ては、おそらく彼の理想なんだろうなと思っていた。そして今回の眞人の母親ももれなくそのタイプである。

監督は、今回の作品で眞人に母親に対するわだかまりを解決させていると思う。つまり、彼自身が永遠にあこがれてやまない母親に対する思いをやっと昇華できたのではないかと。


今回は、監督の自伝の側面からの感想というか解釈を書いたが、物語本体に対する考察も書きたいと思っている。が、完全なるネタバレになるので、別のところに書いて後日公開できればしようと思う。

作品全体の感想としては、相変わらず清潔感のある行動力と思い切りのよい主人公、テンポよく進むキレのあるストーリー、謎が謎を呼ぶミステリーのような展開、90%がメタファーではないかと言えるような奥が深いたとえ話ファンタジーだったのではないかと思う。個人的な思いを昇華させる作品にしてはボリュームも表現も盛りだくさんだ。

味で言えば虹色だけど、美味しかった。



ところで先日お高いワインというのを試飲したのだけど、口に含んでから飲み込んだあとまで、大体8種類くらいの味がした。つまり「いいものは複雑さを内包している」ということだと思う。

2023年7月11日火曜日

エスター ファースト・キル

最初の「エスター」映画の感想はこちら。

https://pecharat.blogspot.com/2021/10/blog-post_29.html


アマプラに来るの早すぎでしょ!と思いつつ観てみた。

結構面白いと思う!

初回「エスター」ではとんでもないどんでん返しに多くの人が度肝を抜かれたことだろう。そりゃないわーって思った。

今回は、その設定をベースに活かしつつの展開。多くの視聴者にとって、事前にネタバレしている状態である。

だがしかし!

エスターの思惑とは別に、「別のどんでん返し」が今回も待ち構えていた。

 

エスターの欲望は、「父親の役割を果たす成人男性と恋仲になること」である。

この設定自体がタブーすぎるので、中には性的嗜好にどハマりするやばい視聴者もいることだろう。しかし面白いのは、世の中の性犯罪者は男性が多いのに比べて、エスターシリーズは女性が仕掛けていく物語である。

さて、エスターの母親役となる女性は、別の罪を隠し持っていた。これが今回のどんでん返しである。ボケーっと自宅で見ていた私は思わず「今回もやりやがった…」と心踊らせた。

女性VS女性の醜く、狡猾な争い。

そこに加わる、正直どうしようもないアホの息子(兄)。

そして、何にも知らない鈍感すぎる父親の男性。

一つのブラックコメディがここには展開している。

どっちもどっち、誰もが罪を抱え持つ家族。

一体誰が生き残るのか?!!


前回はエスターが一体どう生きるべきだったのかと保護者視点から頭を悩ませたが、そんなものも吹っ飛んでいった。

エスターは犯罪者でもなんでもない。エスターという、生き物なんだと思う。

彼女が欲望を満たしたエンディングなんかも見たいなと思った。


ところで、

「羊たちの沈黙」の続編である「ハンニバル」は、原作では別のエンディングがあるのだという。ウイキペディアで読んでしまった。

なんと、レクター博士の欲望を完全に満たすエンディングなのだという。

ジョディ・フォスターがそれを拒否し、次の代役も拒否したため、映画はあのようになった。

私は思った。もしかしたら、トマスハリスは、レクターそのものだったのではないかと。著者が、そういうエンディングを望んでいたのではないかと。


思わないか。それがタブーだったとしても、

悲しきヴィランの欲望が一瞬でも満たされるエンディングがあってもいいんじゃないだろうか。


個人的に、「ロードオブザリング」3部作の、ゴラムの終わり方が非常に好きだった。正しい終わり方だと思った。

最後の、ゴラムのあの幸せそうな笑顔が忘れられない。

とても純粋な魂のヴィランであった。

彼に、一瞬でも、あの笑顔を与えた作者は非常に優秀だ。視聴者がヴィランに「気の毒だ」と思っていた気持ちを、あの一瞬で全て満足させたのである。


その点から見ると、エスターシリーズは二流ホラーだと言わざるを得ない。私はやはり、人のエモーションに着目していたいと思う。

とはいえ、非常にテンポがよく、楽しめるホラーなので、とりあえずホラー映画を観たい方にはぜひ。

前作に比べるとすこし残虐表現が減っているかも。

2023年7月3日月曜日

聖なる鹿殺し

この映画はタイトルが気になってはいたんだが、今の今まで見ていなかった。なにしろタイトルが意味不明すぎるのである。

しかも中身も意味不明だった。

ジャンルは心理的ホラー。ちょっとアランウェイクなどの世界観と似ているかも。

 

とある条件が「マーティン」から提示され、それを果たさないと主人公以外の家族は全員死ぬのだという。

まずこれが「???」であり、A24だしヘレディタリーみたいに、とある法則に従って呪いがかけられているのかなと思っていた。

しかもマーティンは、その彼がつくったであろう「呪い」の内容をペラペラとしゃべってしまうのだが、これは、顔色ひとつ変えず彼が語る、「挑戦状」なのだ。

マーティンは、主人公をとにかく苦しめたいらしい。

ほかの人の考察を読むと、呪いが始まる前は主人公に父親になってほしくて、しつこくつきまとっていた、ということになっている。だが、主人公にはすでに妻とふたりの子供がいるのだ。そう簡単に離婚することもできない。

 

しかしこの映画の謎なところは、「どうやって呪っているのか」とか「そもそも呪いなのか」がまったく語られないところである。まるでNOPEと同じだ。NOPEも、結局あの生命体がそもそもどこから来たかすら語られない。

しかしだからこそ、たったひとつのディテールすら見逃したくなくて見入ってしまうし、後から色々気になって、巻き戻して何度も観察したくなる。

特に、「妻」が呪われないのが気になった。なぜなのだろうか。 

ひとつ、考察があるとすれば、この映画で悪いのは主人公であることは間違いない。しかも、彼はそんな挑戦をされておきながら、マーティンに土下座するどころか、捕まえて殴ったりする。そんなことをしても、他の3人が死ぬだけだ、と言っているのに。

「イニシュリン島の精霊」を見たときも思ったが、コリン・ファレルは最近こんな、「男の悪いところ」むきだしの役ばっかりである。しかもそこでも、バリー・コーガンと共演していた。(アイルランドの話だからってのもあるけど)

そこで、妻はどうしてるかというと、なんと旦那をきちんと疑って、自ら捜査をし始めて真実に行きつき、きちんと旦那を責めている。それが理由で生かされているのかな?とちょっと思った。

 

私の考察はまず

1.おそらくエンディング後も何か起きて結局、娘はマーティンになびき、主人公もマーティン側に屈服せざるを得なくなるだろう。妻はマーティンが「あんたの旦那浮気してるよ」と言っても一切驚かなかったし怒らなかった。彼女は、常に計算高く、「旦那が信頼できないなら逃げよう」と思っているに違いない。

それを見越して、マーティンは異常な執着心で主人公を巻き込もうとしていて、それはまだ続いているのでは。不幸にしたいのではなく、「手に入れたい」のでは?

2.どのみち主人公が屈して土下座して、許してくれ、俺の命をとってくれ、とでも言えば、許してもらえたのではないだろうか?

マーティンがどのような力を持っているかは、一切描かれていないが、何かしらの力で彼はあの家族の運命を握ってしまったのだ。もしかしたら呪術を勉強して実行したら、うまくいってしまったのかもしれない。(カリスマがあるとかではなさそうだったので)

主人公が突然、「これは呪いだ」と言わんばかりにいかにも呪術に使いそうなアイテムを部屋で探し始めるシーンがあるが、あのシーンだけが、「マーティンは呪術を使ってる」ことを示唆している。

 

さてこれを読んでいる方が、どのくらい霊力や呪いを信じているかはさておき。

私はインディージョーンズで大喜びしちゃうタイプなので都市伝説や心霊スポット、いわくつきの場所やアイテムには何か起きてもおかしくないと信じているほうだ。

タイには「徳を積む」という仏教の教えが浸透しており、それのせいで人が生きやすく生活しているといっても過言ではない。

フランスの古い教会に行くととんでもない安心感を抱くこともあった。

因果応報も必ずあると思っている。

私は本当は、神様の力を借りずに生きるべきだと思っていたが、あまりにも不運が続いたので、ついに京都のとある神様の元を訪ねた。

なんなら私の命をとってもいいので、とにかく縁を切りたい人がいる、と念を込めてお祈りしたのである。(いうまでもないが近所の神社にもお願いはしたが効果がなかった)

なお、京都にはほかにも「強い効果がある」と言われているアイテムや神社がある。そこの神社のお守りであれば、郵送してもらっても効果があると言われている。

 

さて、その後私は効果が出る瞬間を目撃してしまったのだ。誰を苦しめるかなど、私が決めることではなかった。私は、縁を切りたいと言っただけであとは神に采配をお願いしたのだ。

まあ、大したことではないけど、縁はしっかり切れました。

というのは、実はそこの神社でお願いするととんでもないことが起きる人もいるというので、覚悟の上だったのですが、命に別状はありませんでした。ちょっとメンタル壊されかけただけですw

 

私は神に生かされた、と大変感謝し、お礼参りも行きました。

最近思うのですが、人生は時々整理して「捨てるものを捨てる」ほうが、運が開けるのではないかと思っています。婚活していた時は、縁結びの神様にお参りもしてましたが、何も起きませんでした(笑)


2023年7月2日日曜日

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル、今年の映画の首位を争う結果に!(個人の首位です)

俺たちのハリソンもついに80歳を越えようとしている今日この頃。

実はそれほど期待していなかった「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」でしたが、ガンガン引き込まれ、息つく間もなく怒涛のクライマックスへ突入。とてつもない熱量とスピードを感じました。「またあのジェットコースター乗りたい!」という感覚。懐かしの、アンチャーテッドをプレイしているような、中毒性のあるスリルがそこにあったと思います。

あの中毒症状を引き起こす冒険活劇エンターテインメントが帰ってきた!!

そう思いました。


この映画の唯一の欠点を先に挙げておきます。私は、このシリーズのありえないSF設定とかは全然楽しいのでいいんですが、

ダイビングにおける急浮上は非常に危険です。減圧症はかからない人も確かにいますが、かかった身としては慎重な浮上を強くお勧めします(イントラかダイコンの指示通りにすることと、うっかり浮上しないために、息をちゃんと吐くこと)。また、映画でダイブ前に怖くてお酒を飲んでますが、あれはタブーですww絶対に真似しないでください。

減圧症の危険性はどのくらいかというと、マイクロバブルが脳内血管に残ってしまったり、脊髄を圧迫した場合は生命の危険があります。

そんなこと言ったらバイクから飛行機に乗ったらもっと死ぬやろとか、列車の上で障害物に当たって落ちたのになんで生きてんだとかツッコミどころ満載なので、あんまり意味がないかもですが、念のためw 

ダイバー役のバンデラスはやはりかわいかったです。はしゃいでました。

個人的にはネタバレするなとハリソンが動画で言っているので詳細は伝えられませんが、とにかくダイアルが引き起こす奇跡の力が無茶苦茶すぎて面白いです。ここはかなりドキドキするので見入らざるを得ない。

映像としても見ごたえがあります。

また、そこからの、インディーの、散々伏線張った結果の最後の夢が、もう切なくてね。

ハリソン・フォードの演技力たるや!!!いつもエンタメ系の映画が多くてアカデミー賞には縁がないものの、芝居の力はものすごいものがあった。普通に感動していい話だなって思ったし、冒頭からここまでインディーは考古学に切ない憧れをもって臨んでいたのだと思うと、胸が痛みました。

インディジョーンズシリーズの好きなところはそこなんですよね。

必ずヒューマン・ドラマが絡んでくる。

特に最後の聖戦は、ヘンリーがインディーを失ったと思った時の「私は心の準備が出来てなかった。あの子にはなんにも教えていないのに…」のくだりとかぐっときます。

あの映画ってずっと冒頭から「わかりあえなかった父と息子」が衝突してる話で、お互いをわかりあって、そして、クライマックスで「父」を意識してその手を取るところまで、実に見事に書かれた脚本だと思います。

また、今回はヒロインのヘレナが「お金しか信じない」と言って実に現代人らしく考古学の夢を無視しますが、最後にお金より大事なものを見つける、という話にもなっています。この変化もぐっときますね。全員が救われて終わる、いい話だったと思います。


私が初めて見たインディーは「最後の聖戦」で、その時はアメリカにおり10代前半でした。あの頃やはり大ヒットを飛ばしており、コカ・コーラがコーラを聖杯に見立てたパロディCMをやっていたのを非常によく覚えています。

あれから34年、私はインディーのことを忘れることはなかったし、インディーのおかげで「アンチャーテッド」というゲームも出来たんだと思うし、考古学がヒットしたから「スプリガン」もできたと思うんですよね。インディーのおかげでナチスのことも知ったし、戦争に興味をもち、コールオブデューティーをプレイするきっかけにもなった。

そういう意味では非常に私の人生に活力をくれたシリーズだったと思います。

 

あとやっぱりハリソン・フォードは、大好きです。特にインディーは、ちょっと内気な感じがするのがいい。暴力はふるうけれど、ほんとはやりたくないんだ感があっていいなと。あと純粋すぎて考古学の遺物に執着しすぎな変人なところもいいですね。

 

 


2023年6月26日月曜日

探偵マーロウ

ついに俺たちのリーアム兄さんも70歳を越えた。

そして今作が彼の出演100作目の映画だという。

今年実はリーアムは三回目なのだが、どうにもいまいちぱっとしない映画が多かったが今回は良い。観た後爽快感があり、明日も気楽に頑張ろうと思えた。

映画はいたって普通のミステリーで、ものすごいどんでん返しがあるという風でもなかった。

ただ、1939年あたりのアメリカの表現が徹底していて、役者が実に自然に溶け込んでいて画としては見ごたえがあるし、美しい。

特に主役のリーアムはハマり役で、ずっと見ていても飽きない。

よくネットで「一緒にいて安心できる人が最高の相手」という恋愛のアドバイスがあるんだけど、リーアムはその点では100点満点である。この混迷した時代に、精神崩壊をギリギリの瀬戸際で食い止めながら、リーアムを見ていると、まるでそんな混沌など存在しないかのような安心感と包容力を感じる。

それではなぜリーアムが良いのかと考えてみた。自己分析では、

まずは特筆すべきその声。

しわがれており、今までも年齢より老いた声を出すような人だと思っていたが、その割に字幕を観ていなくてもはっきりと聞き取れる。彼にはおそらくテクニックがあり(いわゆるparticular set of skills...)役者をやり続ける間は、発声練習をしているに違いない。

全身からあふれ出す善人オーラ。

リーアムは人の良さで知られている。違法アップロード映画についてめくじらを立てるというよりは、「違法だよ~」といつものペースで注意したり。格闘しかけてくるアンソニー・ホプキンスにニヤニヤしながら相手をする動画なんかも上がっているw

その善人オーラがいちいちどのシーンでも発揮されており、字幕を観ているのが本当にもったいないのだ。

表情の芝居がわかりやすく、魅力的でかわいい。

彼はもともと表情をつくるのが非常に上手い。一番うまいのは「悲壮感」の顔。これはリーアムがやると無茶苦茶ハマるので、シンドラーのリストはリーアムで本当によかったと思う。

その次に有名なのが怒るリーアムである。これはなんかしらんけどギャップが凄いので96時間でハマった人がたくさんいる。

それから、女性に対する優しい顔。一番いいのはお子さんに対する優しいリーアムフェイスである。これは誰もが癒される。そして、女性に困ったことをされた時の戸惑いを見せる表情などもかわいらしい。

私は「クールリーアム」も好きである。時折見せる「飽きれて見捨てるような」顔。まあとにかくどんな状況も顔で表現できてしまう人なのだ。

話の筋はそれほどおもろくはないので省略するけど、リーアムの作品には暴力がつきまとう。なぜか、窮地に陥るとやたら殴ったりけったりするのである。なので血の気の多さは健在である。この強さと優しさと誠実さの奇妙なバランスこそがリーアム・ニーソンの味ではないだろうか。

あとはやっぱり、衣装だ。

マーロウは基本的にずうっと背広で、何種類かを使い分けているが、ダンディズムがすごい。また、帽子もよく似合う。調査する時は必ずタバコを持ち歩き、相手に勧めることでアイスブレイクしている。トレンチコートも相変わらず似合う。一生着てて欲しい。

まあちょっと、リーアム以外に褒められる部分があまりないんだけども、「リーアムファンだから観に行ったけどよかった!」と素直に言える作品である。

リーアムファンじゃないとちょっぴりきついかもしれない。意外と話が長いのである。

 

2023年6月11日日曜日

リトル・マーメイド、観たよ

あれこれ言われてたけど、「綺麗な海の映像」に惹かれてドルビーシネマにやってきたよ。

横浜のほうが博多より大きくない??

調べたけどよくわからんかった。同じか?

席が近すぎたのかなあ。

アースラ巨大化するとものすごいうるさいんよw座席が振動するわ(音で)。

ところで今回実写化して一番よかったのはトリトンのお父ちゃんだったんだけど

ハビエル・バルデムだったんだね~。

この人、初めて見たのが「食べて祈って恋をして」。

フィリポ、すごく良い人なんだよな。で、この人、泣くのがすごい上手なんだよね。濃い顔なんだけど繊細な感情表現をする人。それが見事なまでのはまり役だった。

もともとイケメンだからかもしれんがドルビーシネマのドアップで一番美しかったのはトリトンのお父さんだったと思う。

そして、アニメ版より「父と娘」のやり取りがきちんと描かれていることに好感を持ちました。というかそれがメインじゃない?

あとよかったのが執事ね!あれはよかったね。やっぱり昔っから王子を見ている執事は王子本人より真の気持ちがわかっているんだなあ。

つまり、あれは、アリエルの父と

エリックにとっての義父である執事と、義母である女王様と、

それら保護者と保護される「子供たち」と、それの自立と、親離れの話なんだよね。

だから最後にすべての保護者と和解して、子供ふたりが自立していく様がとても美しいのですよ。それは、アニメよりきちんと丁寧に描かれていて、それがよかったです。

 

親御さんが泣く話だと思うんだけど、なかなか親と和解できる人間が少ない日本人のひとりとしては別の意味で泣けますね。理想の世界っていうか。

 

みんなが批判している件についてはこう思う。

確かにアリエルには華がない。素朴すぎるっていうのかな。ただ、もしかしたら歌声や生命力みたいなものを大事にしたのかも。

ただ、美しさでいうとやっぱり黒人ならゾーイ・クラヴィッツレベルは見たかったかな。ルッキズムが~って言われそうだけどディズニーだし。

多様性という意味では、エリックは今回英国人だが孤児なので、あんまし関係ないと思っている。つまり逆に言えばエリックは孤立してもおかしくない状況にあったなか、自分の肌の色に関係なく南米の世界になじんでいたのだ。(多分南米?だと思う)

エリックは人種や種族に関係なくしゃべれもしないアリエルと仲良くなれるので、実に良い子である。

また、アリエルの姉妹全員肌の色が違うのはおかしくない?という指摘は、よくセリフを聞いていればわかる。彼女らは、「七つの海」それぞれの守護者ということになっている。

なので明らかにエジプト海(紅海?)っぽい子もいれば、明らかにアジアの海っぽい子もいる。北の海っぽい子もいる。

アリエルは明らかに南米、カリブ海などの担当だろう。そう考えると辻褄があう。

つまり、エリックが部外者だったのだが、彼は実にうまく地域に溶け込んでいるのだ。

南米を支配しにきたのでは、という考察も見たのだが、彼の義母は肌が黒い。地元の女王である。エリックは実は王家の人間ではなく、王子であることに困惑している。

今回は、エリック王子が親の束縛を振り切るのと、アリエルが自分の種族を抜けることで、父から離れるという話になっているのだ。

 

あとね、「チケット・トゥ・パラダイス」でもまざまざと感じたんだけど、結婚は駆け落ちではなく、周りの人すべてに祝福されるものでなくてはならないのよね。そういうの私はとても涙が出ちゃう。

だって、結構うまくいかない結婚見てきたから。

結婚するのがいいとも思わないし、結婚しないのが悪いとも言わない。「祝福されて結婚してそれを維持する」のがものすごい大変だからこそ、親のような目でこの理想の奇跡を観ていたいのです。

できればみんな仲良く生きられればいいなと、エブエブの時のように思います。 周りのすべてに感謝できるかが、大事なのです。

 

 

ちなみに「リトル・マーメイド」アニメ版はアメリカにいるときにリアタイで観た映画なのですが

あの時期は、本当につらくて、アメリカ生活はトラウマで、そのトラウマのシンボルがこのアニメといってもいいくらいなのですが

30年くらいたって、実写化され、繊細な表現が加わったことにより

気のせいレベルですが、トラウマがだいぶ払拭された気がするのです。少し救われたのかもしれない。過去の記憶を美化して救うというか。

当時は若い女の子があの無茶苦茶な詐欺師に引っかかるシナリオが恐ろしかったし、あんなに戦わんといかんのかみたいな記憶があったのですが

アメリカもだいぶ多様性も含めて優しくなったんだよ、みたいなメッセージすら感じました。トリトンのセリフが少し増えているのと、表情が多めに映されているのがその証拠だと思います。

2023年6月10日土曜日

M3GAN、最高!

M3GANは前々からとても楽しみにしていました。

これはおもしろいやつでしょー!!

予告編自体が面白いからな。

実際期待を裏切らない面白さです。もうちょっと長くてもよかった!例えば、冒頭のジェマの「別のプロトタイプを急いでつくらなきゃいけない」くだりを端折って、最初からミーガンの開発にいっちゃってもよかったのでは。

「ブルース」っていうロボットの伏線がすごくよかったと思います。ジェマが学生時代かなんかにつくった商品化しなかったロボット。しかも、ミーガンの作り方はブルースの延長上で頭の構成は同じなのです。 

しかし、ミーガンは圧倒的にビジュアルとキャラがいいですよね。

美少女、頭が良い、普段は寡黙だが観察力が優れていて、なんでも情報をキャッチしてしまう。人形だからと油断していると、実は彼女すごい腕力。

なんでそんな腕力、備えさせたんだよ…wロボットってブルースみたいにでかく作らないと、普通は「細ければ弱い」ってならない?

表情がとても細やかな調整がされていて、意外と表情豊かで好きだったりします。

個人的にはミーガンの性格が好きなんですよね。

女性キャラならではの腹黒さがすごくいい!

そしてセリフ。ちょっとアンソニー・ホプキンスを思い出すような、上品で知的なひねりのあるセリフで相手を追い詰めます。

そして「あなた悪いことしたでしょ!」って聞かれると、丁寧にはぐらかす。

そういえば、プロメテウスのデイヴィッドもそんな感じでしたよね。 

しかしですね、ミーガンは悪いことするやつらを攻撃するので、スカッとしちゃうんですよね。すべては、ケイディを守るためなのです。

実際、ケイディが泣き始めた時の対応が、完全なる母親のようで、理想的すぎて私もその場を見ていた投資家(?)と共に泣きました。

世の中には理想的な母親などいなくて、AIがその代わりを果たす日が来るのかもしれません。

主人公のジェムは子供がいないので読んであげる本すら持っていないのに、ミーガンは声音を完璧に変えておもしろおかしく絵本を読んでくれます。数学も教えてくれる。しつけもしてくれる。

最後にミーガンが「子育て丸投げするからよ!」みたいなこと言っててマジで笑いました。 

そう、この映画のいいところってブラックユーモアなんですけど、結構苦笑しながら「いいぞ!やったれ!」ってちょっと思っちゃうところがいい。

オチはそういう意味ではちょっと残念。

ミーガンがイイ子に再調整されるとかでもよかったのでは…。(そして2で再覚醒)

あと、もっともっとミーガンに「ヤンデレ」してほしかったです。ケイディあなたのためなのよ。って。

 

でもそれだとちょっと予定調和すぎるし、スピルバーグ(AI)寄りになっちゃうかね。


割とどうでもいい「ミーガンダンス」が大人気なのわかります。でもあそこが最高なんですよ。ちょっと「シャイニング」を思い出すあの感じ。あとちょっとエイリアンやターミネーターを思い出すシーンも。

結構、本筋に関係ない面白いディテールって流行るんですよね。私は、芸術のそういうところがいいな~っていつも思ってます。ゲームとか漫画とかも、「小ネタ」がめっちゃ流行るじゃないですか。あれいいですよね。

 


2023年6月1日木曜日

アルマゲドン・タイム 観てきました

水曜有休が取れたのでこの映画、結構やってなくて、日比谷まで超久しぶりに行ってみた。

ジェームズ・グレイ監督本人の少年期の自伝みたいな内容で、フェイブルマンズとジャンル的には似ているのだが、、 

前にも書いた通り、フェイブルマンズ一家は私に言わせれば結構お金持ちな家庭。

主人公の少年は、映画が撮りたいと思ったら割とすんなりカメラが手に入るような経済力。ちょっとその辺が信じられなくて、感情移入しづらかった。

でも、今回のアルマゲドン・タイムは違う。

「絵を描くのが好き」な主人公のポール。

陰キャではないかもしれないが、なぜか反抗的な態度に出がちで、先生からは怒られてばかり。

彼の理解者は寛大なおじいちゃん。アンソニー・ホプキンスが演じているんだが、やはり存在感がすごい。

こんなじいちゃんいたら、ハグどころじゃない。毎日、悩み相談しにいってしまいそうだ。ポールが唯一子供らしく無邪気な声を出すのはおじいちゃんの前だけである。

ことあるごとに問題を起こし、父には殴られ、母には「もう庇ってあげないわよ」と言われ、自らの枠をはみ出そうとして、教師の指示に従えないポールは、徐々に追い詰められていく。

そして唯一できた友人ともなぜか犯罪をしてしまう。

ポールはおじいちゃんのいうことしか聞けないので、アンソニー・ホプキンスが丁寧に説明をする。ポールはユダヤ系で(この辺はフェイブルマンズと同じだ)、苗字が違っていたら名前だけで差別されると。だからとりあえず大学までは出ろと。

ポールは上流階級の学校(なんと、トランプの祖先がいるwのですごくわかりやすい)に転校させられても、疑問を抱き続ける。最後らへんなんてもうパーティーなのに途中で出て行ってしまう。そしてポールはようやく、じいちゃんの言ってたことの意味をかみしめるのだった…。

時代は差別だらけだし、学校にはトランプの祖先がいるしで、中流階級ならではの切羽詰まったシチュエーションはとてもリアルだった。テンポもいいし、次から次へと問題を起こしてしまうポールがどうなるのかとても気になる。ポールは、結局じいちゃん含め周りにものすごい助けられている。それに気づくのには時間がかかる。彼はとにかく、早く「芸術の道」へ行きたいのだ。

フェイブルマンズと比べると圧倒的にポールの方が私に近かった。

中流階級ってのは大学に行けるくらいの学費はあるんだが、甘えて失敗ばかりしているとどうしても落ちぶれていく。私もそれはまざまざと感じている。じいちゃんの世代のユダヤ人が一生懸命貯めた財産なのである。

最後、家族のだんらんにも参加せず絵を描こうとするポールには自分が強く重なった。私のおじいちゃんもとてもいいひとだけど、やはりこのホプキンスじいちゃんには負ける。私が女性だから、

「戦い続けろ」
「嫌なことを言われたら言い返せ!」

などとは言ってくれないのだ。

なのに私は、男性と同じ道を必死で歩く宿命にある。


今年の正月早々、アンソニー・ホプキンスのインスタグラムアカウントに、強いメッセージがアップされていた。それは少々長めのメッセージだが、要約すると、

「絶対に誰かに貶められるな」

という内容である。

私も幼少期の頃周りに絵を描く自由を阻害され、非常に怒って泣いていたことが何回もあり、そのたびに先生に叱られた。「なぜ泣くのか」と。

もうあの時から、私の戦いも始まっていたのだ。

 

2023年5月22日月曜日

意外と面白い「天才画家ダリ 愛と激情の青春」

パティンソン君が出ている映画としてウォッチリストに入れてたんですけど突然アマプラに公開されていました。定期的にチェックして正解ですね。

邦題ではダリがクローズアップされてますが、友人のフェデリコが主人公なんだそうです。確かに、途中でダリが突然パリに行くっていって抜けちゃうのでそうかも。

この映画何が面白いって、やっぱロバート・パティンソンですねww

特にファンは、面白くてたまらないでしょう。

内気で陰キャでド変人で、レースがいっぱいついたものすごい変な服を着て、髪の毛はおかっぱみたいにして現れる挙動不審な学生のダリ。

なのに最初から「僕は天才です」と言っている自己愛っぷりです。

パティンソン君はトワイライトの冒頭から気持ち悪さがありましたが

これが彼のウリなんだな!と確信しました。

クラスで微妙に目立つド変人で、何か質問しても変な返事しか返ってこず、しかも声が小さくて聞き取れないww

しかし、付き合っているうちに、シャイでわかりづらい彼の愛くるしさに気づき、いじらしい愛情や、繊細で優しい魂に気づいていく…。

女性は大体ハマるw

しかし今回のこの映画では男性がじわじわとダリに惹かれていく。

そして、明確には描かれていないが、レースを着用して髪の毛も長めにしているダリは、どうやら当初はトランスジェンダーだったようです。しかし最終的には男性としてふるまっているので明確ではありません。ただ、「リリーのすべて」のように鏡の前でペニスを股の間に挟み込んで女のふりをしているシーンがあります。なんと、エディ・レッドメインの友人であるパティンソン君はすでにそれを行っていたのか…。

どっちもかわいいですけどね!私はどっちも好きです!(おい)

エディ・レッドメインのほうは身体が折れそうで怖いけど、パティンソン君は身体が大きいけどメンタル弱いから…(笑)

フェデリコに惹かれつつも、からだを許すことができないダリは繊細で美しく、黒髪なので「ブルースぼっちゃんが20歳くらいの時こんな感じかなあ」とか妄想しました。特に毛布にくるまってるパティンソン君とかかわいかった。

 

問題は後半で、パリでぶいぶい言わせて大人気画家になったダリは、変なちょび髭生やして帰ってくるのですが、以前の繊細なかわいらしさが完全に抜けてしまっています。

垢ぬけているといえば垢ぬけているのですが。

そっからは、映画の評論にあるようにパティンソン君の演技はオーバーだ、と言われても仕方ないのですが、でも考えてもみてくださいよ。ダリが普通なわけないし、ダリが、あのふざけたひげを真剣にやってるわけないですよね。ダリ自身が、演技している、セルフプロデュースしているに決まっています。だからわざとらしくていいんじゃないでしょうか?それに1本の映画であそこまで演技に幅があるのはパティンソン君のポテンシャルが高いということだと思います。(ただ、ダリ自身はちょっとお笑い芸人っぽさはあります)

この映画はなにを言いたいのか?!

典型的なラブロマンス映画だと思います。ただ、エロシーンは少ないです。それに、最初のキスシーンはとても美しく演出されていて、とてもゲイの映画とは思えないほどです。しかも前半のロバート・パティンソンは本当にむちゃくちゃ美しくて、男性でも女性でもどっちでもいい!という感じでした。お相手の俳優さんもかなりのイケメンでした。

なので、どっちかというと女性向けかなあ。

当時のスペインでは(スペインはもともとカトリックというのもあって)同性愛は毛嫌いされていたので、ダリはフェデリコを愛していたのに、セックスまでには至れなかった。そのジレンマを、女性の嫁を得ることで、社会的にカモフラージュしてからわざわざフェデリコに会いに帰ったのだと思うと、、

同性愛ものとしてはかなり正しいというか深みがあるなあと思います。

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2023年5月15日月曜日

TAR、観てきました

ケイト・ブランシェットが最後までミシェル・ヨーとアカデミー賞を争ったと言われる話題の作品「TAR」いったいどんな作品なんだと観て参りました。

率直な感想としては「不可解なシーンが多い」という映画でした。が、話の大筋は誰にでもわかるようになっており、そこがいいなと思いました。つまり「話はわかったけどあのシーンはどういう意味?」と後から深堀することができる。

イイじゃないですか。

私もまだ見てきたばっかりで考察もあまり読んでいないのですが、

アカデミー賞候補に挙がる作品というのは深堀りができるものが多いと感じます。

前日にリーアム出演の映画「MEMORY」を見ていたのですが、正直深堀りのしようがなくて、わかりやすいんだけど、心にあまり残らないんですよね。 

本作、リディア・ターというレズビアンの優秀な指揮者が没落していく様を描くのですが

さすがケイト・ブランシェット、悪役がはまるというか…。

え?彼女は悪くない?いや、やっぱり悪いんじゃないですかね?女性の教え子に手を出して、まるくおさめられなかったわけですから…。

他の芸能人の不祥事もそうなんですけど、多分付き合っている時は「恋人」なんだと思うんですよ。別れ際に綺麗に別れられなかったから、もめるんですよね。

でも、ケイト・ブランシェット自体は格好良くて、「ナイトメア・アリー」よりこっちのほうが好きでした。私もよくやる格好を映画で観ながら、「やっぱりケイトはスタイルがいいなあ~」と思って。目指すはアレですよwパンツスーツ。シャツをラフに着こなす。

夜中に音が気になって目が覚めるシーン、私も実は結構やります。特に運動不足でよく眠れない時に冷蔵庫の音が気になって、目が覚めて、音源をウロウロ探したことがありますね…。そういえばアナログ時計の「カチカチ」が気になってある日ついにアナログの時計を処分し、デジタル一個にしてしまいました。

監督は音楽が好きなんでしょうかね?音楽好きにまつわるトラブルやちょっとした神経症みたいなもの、音楽一家として育てられた私たち姉妹は経験していて、妹なんかはすごく共感するんじゃないかなって思いました。

ただ、こういう神経症みたいなのって芸術系の仕事をしている人は一度は経験するんじゃないかなと思います。 この神経症なのか、よくわからないシーンは結構ホラー色が強くて、ホラー映画にしてもいいんじゃないかなあと思いました。

ただ、音楽よりの話をするのかと思ったら、後半はどんどんとスキャンダルで落ちぶれていき、次から次へと人が離れていくのは悲しいと同時に、それまでの彼女の少々傲慢なやり方が仇になったんだなと、

会社とかもそうなんですけど、「自分はうまくいっている!」と思っていても、案外周りからはすでに嫌われてたりするもんなんですよね。私も気をつけようと思いました。

話自体はシンプルなんですけど多分トッド・フィールド監督の能力というのは、磨き上げられたセンスの良い演出ではないかなと思いました。独特だし謎も多いなと感じます。


謎すぎるシーン:

クリスタが残していったのか?何度も登場する「図形」。出る度に怖い。ホラーのよう。クリスタと何があったのかは大体想像つくんですが、もうちょっと説明してほしいなってとこありますよね。それを、巧妙に隠すのが脚本としては面白いんだけどやっぱ気になりました。

深夜に勝手に動いていたメトロノームはマジで怖いです。結局誰がやったの?

天才チェリストの自宅。本当に住んでいるのか?

そもそもこのチェリスト、一体何者だったのか(クリスタから差し向けられたのかと思ったw)。

深夜に見る悪夢で体に火がついてるやつ。やっぱ、心象風景は不可解です。

 

好きなシーン

私が好きなシーンはやっぱり、実家?に帰ってきて恩師のビデオを観るシーンですね。 

しかもそれが、私が愛してやまない世界で指折りの作曲家・指揮者、レナード・バーンスタインです。

私が、ウエストサイドストーリーが最高のミュージカルだというのはバーンスタインの音楽が狂気をはらんでいるのにきちんと世界を表現していて、唯一無二と感じるから。あれを超える音楽は基本聴いたことがありません。それがあの少し狂気じみているターの恩師なのですから納得がいくし、彼の言葉でターと一緒に感動できるのは素晴らしい体験でした。

個人的にはバッハの平均律が最初のほうに出てくるのもよかったなと思います。(あれは簡単で誰でも弾けるのに美しいので本当に良い音楽です)

バーンスタインのビデオメッセージが全てなんじゃないかなって思いました。

音楽の本質。

ああいう、くだけたことを言えるから、バーンスタインの音楽は今2023年に聴いてもすごい曲なんですよね。

 

ターは才能あるし頭もいいんだけれど、ちょっと進め方がうまくなかったのかなと思うところは劇中にもあったのですが、ああいうのは茶飯事だと思うんですよね。世界最高峰のオーケストラなんてとこにいると、色々大変よねって話でもあると思います。

ですがやっぱり、身近でお世話になっている人はパートナーでも大事にしないといけないですね。毎日顔を合わせているからって甘えっきりはダメってことですね。

 

2023年5月7日日曜日

CITADEL(シタデル)おすすめです!!

旅行中、長距離移動で暇になる時間があることがわかっているときは、旅行前に動画をダウンロードしておいたりするのですが、今回は、アマプラでおすすめされていたこの「シタデル」がスパイものだと知ってダウンロードしておきました。

そして長距離移動が始まってイヤホンして見始めたのですが……

あまりにも面白いので、物理的に前のめりになって夢中で観ましたw 

ベタなスパイものが大好きな人には強くおすすめしますw

雰囲気としては、メタルギアソリッドやコールオブデューティーとよく似ており、ゲーム好きな人がつくったような感覚がありました。007のようなベタな秘密道具も出てくるのですが、個人的には大胆不敵なミッションが多いようにも感じました。

つまりはスパイアクションドラマ。割とうるさめです。

私はエピソード3の雪山ミッションがとても好きなのですが、主人公は明らかにメタルギアソリッドの真似と思われるようなスニーキングスーツを着ています。しかし、何をやらかしたのか主人公はまっすぐ出口からダッシュで出てきますw

これはゲームだったらかなりクライマックスのシーンじゃないですかね。

コールオブデューティー MW2でスノーモービルで逃げるお気に入りのミッションがあるのですが、それともかなり似ています。あれは、スノーモービルの操作間違えて木にぶつかり続けたり、動かなくなったらゲームオーバーなので。

そして、こともあろうにそこに出てくるヒロインが髪の毛をふたつにわけて編み込みしています。レイア姫そっくり。

周りの部下は全部白いヘルメットで完全にストームトルーパーです。オマージュなのか、これはw

主人公はマーベル「エターナルズ」でセンターにいるお兄さんなので、色々な映画のいいとこどりとも言えます。

が、わりにストーリーが面白くて次が気になっちゃうので今のところ大成功じゃないですかね。金曜がすごく楽しみです!

次のエピソードではもしかしたら嫁の素性が明らかに・・??!


問題点があるとすれば、「シタデル」は脇が甘いような気もします。ブリーフケース盗み出したら、もちろん発信機はついてるでしょー。それはスパイ映画複数見てる人なら絶対知ってるパターンだよww

しかしプロットとして、敵対組織が「金持ちが自分の都合で運用するスパイ組織:マンティコア」っていうのがいいじゃないですか。強欲な金持ちを敵にまわすって痛快ですよね。対する「シタデル」は、平和維持のためのスパイ組織。 (特別映像でCGのケネディがこれは必要なことだ!みたいなことを言っているので、国際政治的に認められているようだ)

普通敵国の情報を取りにいったりすると思うんですけど、今回はスパイVSスパイなのがいいんじゃないですかね。(そういえばCIAとKGBが手を組む映画あったなw)

それなりに拷問がきつい印象なのですが、血はあまり見たくないなと思ったら肝心のところはカットしてくれてましたww

良心的です。

 

2023年4月30日日曜日

パリタクシー 観てきました

日本の俗物的な景色に飽きて、パリが見たいなあと思って観に行きました(明解な動機)。

パリは、今まで私が旅行で訪れた中で一番洗練された都市で、一番驚いた街です。

「こんなのが現実に存在すると思わなかった」というのが正直な感想でした。

バンコクにも驚きましたが、バンコクがやっているのは豊洲ららぽーとやグアムのショッピングモールのいいとこどりです。それでもめちゃくちゃ綺麗でしたけどね。あと、そもそもタイ人は性格が良いのと、温暖な気候や美味しいご飯も相まって、最高な国ではありました。が、パリには勝てないですね。

パリの美しさというのは、伝統を真剣に守り通しているからこその美しさなんですよね…屋根裏部屋があこがれの場所になるのはパリくらいのもんでしょう。

なので、この映画を観て「いやこんな綺麗じゃないでしょ?」と思った方、騙されたと思って一度行ってみるといいと思います。遠いし、めっちゃ高いけど。私は親のはからいでアパルトマンに泊まれたんですけど、狭いのに快適なんですよねぇ。オシャレなの。

この映画、予告編では、もっとほのぼのとした話かと思ったんですが、そうでもなかったです。なにしろこのおばあちゃん、「パリ解放」の1944年に運命の男性と出会っているという年齢。早々に妊娠してしまうのですが、そこから人生は狂ったジェットコースターのように彼女を振り回します。

なのに、92歳で彼女は美しい微笑みでタクシードライバーと我々を魅了します。

もっと人生語ってくれないかなあ、なんて思っている時に日が暮れてしまって、彼女とは一度お別れをするのですが…。

この後の展開で結構号泣なんですよね。なんていうのか、美しい終わり方だと思いました。

最初、このストーリーが始まった時はタクシードライバーのシャルルもやる気がないし、なんでこんなに寄り道するんだ、とか思うんですけど(正直車のシーンが多くてだるい)、

ところどころで、歴史を感じるモニュメントなどを見て涙ぐむご婦人を見ていると色々あったんだなとは思ってましたが。

彼女の人生は失敗だったかもしれないし、シャルルがつらそうに生きているのを見て、きっと同情し何かバトンタッチできないかと思ったのでしょう。偶然の出会いから、ここまで広げられるのはフランス人らしい展開だなと思いました。

フランス人って、怖いのかなと思ってましたがそうでもないです。

すごく軽やかで明るい。彼ら多分わかっているんだと思うんです。散々、世界大戦で虐められて、でも基本的に人類はみんな友達なんだと。だけど、怒るべき時はしっかり怒らなければならないと。

おばあちゃんの過去で怒りのあまり恐ろしいことをするシーンがあるのですが、私は痛快だなと感じました。しかし彼女の人生はそれでさらに窮地に追い込まれてしまいます。本当に、彼女もつらいことだらけだったんですよね。その、フランス人の「怒るべき時は徹底的に怒る」この激しさがすごくいいと思っています。

彼女の人生はもしかしたらフランスという国の歴史と同じなのかもしれません。

人生はつらいし、次から次へと不幸なことに見舞われるけど、でも、今日のご飯は美味しいし、ジェラートも美味しかったでしょう?そして、もしかしたら、今日あなたが拾ったお客さんが、幸運を招いてくれるかもしれない。親切にしたらね。

 

というライトなメッセージなのかもしれないけど、すごくストーリーテリングが上手で、きちんとしみてくるのがよかったです。

また、邦題は非常に残念です。このタイトルは、おそらくフランスにあこがれを抱く日本人のためにつけたものだと思われます。それ自体は成功していると思います。今日なんて、GWだからか超満員でしたよ。一日、一回しか上映しないのに。だけど思ったより内容がいいから、クチコミで広まってる可能性もありますね。

原題は「Une belle course」、これはフランス語がわからなくてもなんとなくわかりますね!「美しい旅路」ということですが、この旅は人生のことを言っているのだと思います。タイトル最後あたりできちんと回収されるので、理解できていると面白くなるかも。

2023年4月29日土曜日

タリーと私の秘密の時間

シャーリーズ・セロンが高く評価された映画のうちの一つ(アカデミー賞は犯罪者の映画)と聞いてなんとなく見てみたのですが、とても見やすい映画でした。

読みやすい小説を読んでいるかのごとく、ストーリーがするすると頭に入って来ます。なんて頭のいい脚本なんだ…。(そういう映画ありますよね)

ですがこれ、起承転結の「転」でとんでもないどんでん返しがあり、私はとあるホラー(ミステリー?)映画を思い出しました。

なので私の中ではホラー映画に分類されると感じています。

シャーリーズ・セロンは太って役作りをしていますが、(それも評価された)太っているのに顔が美人なのでやっぱ天性のものなんだなあ、美人なんだなあと思いました。

 

主人公は3人目の子供を産んで、病的に育児に追われ(この辺は映像の見せ方も非常に上手いです)、旦那はその間なぜか、ベッドでビデオゲームをしています。ヘッドホンをして、いわゆる据え置き型のシューティングゲーム。

ここで主人公があまり文句を言わないのが逆に怖い。

すると突然、ベビーシッターが現れます。この人が、夜中限定のバイトで育児をめんどうみてくれて、時には掃除をし、時にはカップケーキをつくってくれたりする。このカップケーキが、アメリカのクオリティとしては商品レベルのハイクオリティ。

そのシッターがいることで、主人公はめきめきと調子が良くなっていくのですが、ある日「辞める」と言われ…。

さて、その理由は?そのシッターはいったい何者なのか?気になって目が離せません。

そのすぐ次のエピソードがどんでん返しで、そういうことか!と真実がわかるのですが…。

 

育児問題映画というカテゴリだとはっきり言えますが、問題は奥さんである主人公がほとんど文句を言わないところなんですよね。でやっと最後に、ひどい事故で旦那が気が付く。

いやそりゃーないっしょ。

あれ、私は死んだなって思ったし、普通は死ぬと思う。

しかしその事故でなにもかもが正常に戻るんだけど、それはないっしょ、って思った。

私が脚本書いたら、旦那がひとりで子供3人に囲まれて絶望しながら葬式してるシーンで締めますよw


音楽もライトだし、一応全員救われたよね?っていうエンディングでしたが、それが逆にホラー感マシマシでした。

ある意味笑ってしまう。 


育児ノイローゼによる、精神分裂はあると思いますし、私も自分の中に複数の人格や外部の人格(由来が外部)を飼っていて、「その人の面倒を見ることにして自分のケアをする」とか「その人に励まされて元気になったことにする」「別の人格に問いかけてその子の言うことを聞く」などということを繰り返していますが、それは、「自覚があるから」異常ではないと思っています。

でもまあ、突然歩きながらニヤニヤし始めるので、すれ違う人がすごい顔で見てる時は、ありますね。

2023年4月8日土曜日

ノック 終末の訪問者 観てきました

面白くないわけではないのですが、あまり強烈な面白さは感じませんでした。

理由はおそらく以下。

・訪問者の要求が理不尽・無茶苦茶すぎる。

中盤でエリックが「本当かも」と思い始めるが、正直その根拠が薄い。それに訪問者たちがやっている謎の儀式の理由がよくわからないので、ただただ残酷な連中という印象しかない。

彼らを味方と認識させるためのエピソードも甘いし、もうちょっと強めの根拠が欲しかった。

・ストーリーに枝葉や他の可能性が少なくて広がりがあまりない

確かに逃げ出そうとしたり、味方側が強力な武器を手に入れる「転」はあるものの、エピソードの積み上げとしては弱いかなと感じた。「話が進んでる感」が少なめかな…。ちょっとだるい。

過去のエピソードとつなげるところも、薄いですよね。ちょっと面白くなったかなと思ったらそうでもないみたいな。

・感情移入がしにくい

主人公のゲイカップルの表現もそんなに感情移入できないレベル、訪問者が語る自分の置かれたシチュエーションもいまいち伝わってこない。子供はうるさいだけだし、いったいどこに感情移入したらいいんだ。 

これなら「オールド」のほうがいいですね。

・オチが弱い、意外性がない

結局それなの?っていうオチ。もやって後味が悪く、この気持ちを抱えたまま、エリックが見たという素敵な未来を生きられるものだろうかと。

その辺もメッセージが不透明でした。

・宗教を、「神」をテーマにしているとして、それはこの表現・結末でいいのか?

昔キリスト教の聖書で羊を生贄にするシーンが気に入らないと言っている女性がいたのだが、それに近いものを感じた。

私の中では、キリスト教をはじめとした古くからの宗教は、人間を堕落から救い、良心を植え付け、治安のよいコミュニティを維持するための道徳の教科書みたいなものである。イスラム教は同信者の女性は圧倒的保護のもとに置かれている。そうでなければ、元来血の気が多い中東地域のイスラム教徒はレイプし放題になってしまう。

宗教を否定するなと言っているわけではないのだが、なぜ世界を救うのに犠牲が必要なのかが理解できなかった。

また、犠牲が必要な場合、多くのホラー映画は悪魔のいけにえの儀式に、祭壇に供物をささげよ…ってなるじゃないですか。

それを逆手にとって「善良な宗教でも犠牲が必要」としたのかもしれませんが、それもどうなの??と思いました。

そして、キリスト教を否定するのかと思いきや、美しい愛をもって犠牲をささげる覚悟をするシーン。いや、美しくなくない? 犠牲そんなに大事なの??


まあ日本人はどっちでもええか。ってなるのかなあ。

 

シャラマン監督は映画をつくる力はあるなあと思うんですが、他のホラー映画やサスペンスと比べるといまいち不可解というか、最初の1/3以降の面白さ(問題提起以降)がほぼない、というか、見届けるだけで、小さな進展はあっても面白い展開はなかったなと思いました。 

NOPEやRRRや、エブエブみたいなすさまじく個性的でおかしなことをやろう!という情熱は、感じませんでした。かというと、すっごい怖いというほどでもない気がする。怖さだとNOPEの、でっかいものが襲ってきて勝てそうにない感じとかのほうがやっぱりうまかったと思います。あとGジャンって吠える?んだよね。サウンドがよかった。

あとジョーダン・ピール監督って有無をいわさない力量と熱量で強引に突っ走るあの感じが好きですね。アトラクションみたいな感じで。

 

2023年4月2日日曜日

「コンペティション」観てきました

かわいいバンデラスが観たかっただけなんですけど、そういう意味ではかわいいバンデラスは堪能できました!特に前半はいちいちリアクションが細かくてカワイイ。

そして後半になるにつれ、ストレス倍増したバンデラスの演じる「フェリックス」がだんだん悪い奴になってくるのが、これまた、バンデラスの得意技でよかったですねぇ。悪い顔するんだなこれが。

映画「アンチャーテッド」は微妙だったが、あの悪役のバンデラスの、スペイン語がすごくセクシーでよかった。

この映画のキャラクターは3人だが、どいつもこいつも曲者。

ペネロペ・クルス演じる映画監督「ローラ」は奔放な感性で賞を勝ち取る気鋭の新星。

アントニオバンデラス演じる「フェリックス」はいわゆるトムクルーズのような、キラキラでキザな二枚目俳優。

オスカル・マルティネス演じる「イヴァン」は気難しく、芸術家気質な俳優で、生徒に演技論を説いたりするキャリアを丁寧に積み上げた感じの真面目な俳優だ。

この3人がぶつからないはずはなかった。

ただ、どいつが一番悪いかとかそういうのは正直なんとも言えない。どいつもこいつも問題ありだし、ちょっと空気読めよって思うこともある。

ローラが実は一番しっかりしてるんだけど(そりゃそうだ)、無駄に俳優を怒らせたり、そもそも取り返しのつかないことをしたりする点でどうかと思った。

フェリックスは仕返しをしちゃうし、怒りに任せてやばいこともうっかりやっちゃうタイプ。

イヴァンは普段は大人ぶってるけど、裏ではボロクソに文句言ってたりするから、脇が甘い。

中盤までは純粋なギャグもあって面白かったんだけど、終盤にかけては恐ろしい展開もあって、ちょっとホラー感のあるブラックユーモア映画だった。

印象に残ったのはローラのセリフ「芸術家で子供がいないのはアドバンテージよ。子供なんかいたら自由に創作できないし、保身に走ってしまうわ」っていうのはちょっと引っかかったけど自分からすると、擁護されている感じもした。

実は婚活を一応していた時マッチングした人を捨てまくった理由(おい)は、「束縛されたら嫌だなあ」という本音からだった。男に付け狙われるようになってからようやくそれが確信に変わった。私は子供に24時間体制で付き合うあの「育児」ってやつに耐えられるとは思えなかった。

私は自分が芸術家気質だとは思ってなかったんだけど、最近父親に避けられている感じ(笑)がするのでちょっとそっちにようやく傾いたなって思っている。というかですね、お前は芸術なんか向いてねぇよって言われたから押し殺しすぎたんだよね。私は芸術に接してないと死ぬと思いますw

 

2023年3月28日火曜日

ELLEという映画

この映画は、ベネデッタと同じ監督なのですが、ベネデッタを観た後「この監督かなり独特だなあ」と思ってこちらの映画もGYAOで配信してたので観て見ました。

独特というのは、ロボコップでは一切そういう表現はないので、氷の微笑あたりからだと思うのですが…(氷の微笑はほとんど覚えていませんw)

ベネデッタ観たとき、「女性の描き方が凄いな」と思ったんですけど、何が凄いって、罪レベルの2面性ですね。

確かに女性は強い生き物ですし、嘘や芝居をすることに慣れています。そうでなければ生きていけないからです。世の中は男性中心に出来ていますが、女性に出産などのハンデがある以上どうしても仕方がないことだから。

しかし、ベネデッタは同性すら裏切り、しかも最高の信頼はそこには存在しない「キリスト」であったため、私は「信仰が強い(=推し活最高レベル)」と感じました。

 

「ELLE」の主人公ミシェルはさらにその上を行きます。

推定49歳、離婚済、企業の社長、会社の男性社員とセフレ関係、父は犯罪者で投獄中、母は若い愛人と遊び、整形(ボトックス)して無理をしている。息子は麻薬売人から卒業してハンバーガー屋で働いているが、その彼女の子供はどうみても肌の色がふたりと違っていたw

カオスです!!

しかも今作のテーマはレイプで、冒頭からミシェルがレイプされています(汗)。

この映画は若い女性より、私のように40代くらいか、30代ですでに男性に失望している方などが向いているかも。

主人公は熟女なので、レイプされてもそれほど驚かないどころか、始終冷めた反応。父が犯罪者のため、彼女は生き残りとして時々いやがらせを受けていました。なので何に対しても冷めていて皮肉をいうクセがついています。

しかしなあ、最大の問題点は、レイプ犯の正体なのですよ。

この映画にはたくさんの人間が登場し、みな複雑に絡み合っています。

クリスマスパーティーにはミシェルの母親とその恋人、お向かいのご夫妻、息子カップル、会社のセフレおじさんとその嫁、元夫とそのガールフレンド、など、無茶苦茶な組み合わせがやってきます。ちょっとメンタル強くないとやってられないですね。 

この中にレイプ犯がいるのです……。

ミシェルは映画の中盤で、再び現れたレイプ犯のマスクをついにはがします。正体は意外な人物。

そして、問題は、そのレイプ犯の目的をつとめることでした。もし彼女の身体を気に入っているのなら、熟女ミシェルとしては恋人にできないか、と思ったようで(多分かなり気に入っている)何度かけしかけますが、

最後らへんでも言われていることですが、この男性、「レイプでないと興奮しない」「レイプでないとセックスできない」らしいのです。

 

この物語は決してレイプ犯を改心させようだとか、そういう愛の物語ではありません。だからなおのこと、 バーホーベン監督の意図が気になりました。

多分、バーホーベン監督って、女性には3枚くらい上手でいて欲しいんじゃないかなと思いました。

正直ミシェルみたいに生きたいとは思わないのですが、相手が改心しないとわかった時のクールすぎる対応は、かっこよくて現実的だと思いました。

終わり方のちょっと空しいけれどかっこいい感じはベネデッタと似ていました。

そして案外、現実の犯罪ってこんな感じじゃないかな?ってちょっと思いました。自分ひとりで解決するのは本来危険ですが、警察が信頼できないという考え方はわからなくもないです。

特に性犯罪系は、警察の事情聴取でセカンドレイプされがち。 

(まあ基本的には一回はレイプされたことを警察に話すべきだと思います)


あと、レクター博士が言っていたことを思い出しました。犯罪の動機は「切望」。一番近くて、しょっちゅう見かける対象を獲物にする。

まさにその通りでしたね。 

映画の構成はなかなか巧みだったと思います。


2023年3月26日日曜日

シン・仮面ライダー観てきました

この映画は公開された週末に賛否両論の不可思議な感想が散見され、「いったいどういう映画なんだ……」とまったく見当がつかないまま観に行きました。

予告編を見た感想では、「シン・ウルトラマンよりはマシだろうな」と思ってたのですがほんとそういう感じでした。

シン・ウルトラマンのセクハラシーンが気にならない人は別の感想を抱く可能性は高いと思います。

やはりヒロインがセクハラ的な目線で撮られるというのは、昭和のおっさんの下卑た視点であり、令和的にはちょっと女性視聴者の怒りを買うと思いますし、作品全体の品性が下がると思いますね。

その点では本作は素晴らしかったと思います。

ヒロイン「ルリ子」は美しいけれど、キツすぎない。外見は超可愛くて、お姫様扱いですが、めったに笑わずテキパキした「デキる女」でありながら、時折見せる「デレ」が完璧な塩梅。

個人的に庵野作品のヒロインの中で一番ツボりました。一番いいと思います。

綾波はちょっと狙いすぎかなと思ってたし、アスカも強烈すぎるところがあるので…。

また、作品全体に漂う男女関係の清潔さもよかったなと思います。

こないだターミネーター観てて思ったんですがジェームズキャメロンに代表される当時のハリウッド映画って、世界の危機が迫ってるときにラブシーンとか入れてくるんですよね、「今ターミネーターが襲ってくれば面白いよな」とか思っちゃいますねw

主人公もよい。

主人公はちょっと(´・ω・`)なキャラクターで、「人をいとも簡単に殺す能力を持たされた」ことに始終戸惑いを見せ、戦わず解決する方法はないのか、と苦悩しています。またルリ子に言わせると「コミュ障」

最近コミュ障ヒーローが流行っているのか…??

とはいえ、喜々として人を殴り殺していたら、とてもじゃないけど平和を目指したヒーローとは言えません。

主人公の、池松さん、結構棒読みというか朴訥すぎる喋り方だったんだけど、あれはキャラに合わせた演出なんだろうか。でもわざとでなくてもあの本郷だったらあってるんですよねwペラペラしゃべれる一文字みたいなキャラだったらヒロインと恋愛関係になってしまってたかもしれません。しかしこの映画のいいところはストイックなイメージだと思います。

池松さんは芝居自体はめちゃくちゃ上手いので、セリフだけ棒にしたのかなってちょっと思いました。

他の役者さんも配役がすごくよかったです。

一番よかったのは森山未來くんですかね。彼は、昔からお気に入りの役者さんで、特に今回は清潔感や高潔感が出ていてとても美しかったです。私のイメージする森山くんのいいところが存分に生かされていたのが嬉しかった。

本郷奏多くんも昔からお気に入りなのですが、アルミンやった時あれもう悪役辞めるんかいな。ってちょっとがっかりしたのですが今回悪役に返り咲いておめでたい!悪役のほうが絶対いいとこ引き出せるタイプの役者だと思います!

あと松坂桃李くんはすぐに声でわかりました。彼がいい声で本当によかったです。

斎藤工さんと竹野内豊さんは素顔で出てくるのですぐにわかりますが、こんな脇役に使うのは贅沢かなと思いつつ、ふたりとも黒いスーツに身をつつみイケメンっぷりを発揮!

竹野内豊さんはなんであんなにスタイルがいいんだ……。びっくりしちゃったよ。

斎藤工さんに関してはやっぱりウルトラマンのほうがいいですww


テーマは「幸福とはなにか」みたいなところだと思うんですが、ヒーローは悲しみや苦しみを忘れてはいけないんだというストイックな脚本がとてもよかったです。

ただ、なんというのか、終盤になると少し緊張の糸がきれたような、冗長な感覚が少しありました。

個人的には終わり方はあんまり好きではありません。が、作品の特に前半から中盤までの描き方はエヴァンゲリオンっぽい庵野節をすごく感じましたし普通に面白かったです。

原作はYouTubeで2話までしか見てなくて、仮面ライダーに「されてしまった」理由は知っていたので少し助けにはなりましたが

庵野さん作品特有の「長くて難解な説明セリフ」が多いので、一回だとちょっと理解できなかったかもしれません。 (全部一回で理解できれば、予習は必要ないかも)

ただ、それがないと脳筋ヒーローものになりかねないので、設定自体は面白かったです。もし続編があるならAIをもっとからめて欲しいなと思いましたが、一文字の性格があんまり好きではありませんでしたwやっぱりストイックなヒーローが好きですね~。

2023年3月23日木曜日

「羊たちの沈黙」がやっぱりすごい件

GYAO!が3月末で閉鎖する。この動画サービスはひそかにオタクたちの間で人気だったと思う。ちょっとレアな映画を流してくれたり、無料でアニメを周期的に流してくれることもあった。特にマスターキートンのアニメを時々流してくれるのがとても嬉しかった。

最後の大盤振る舞いで、有名な映画をいくつか流してくれているのだが、その中に他の配信ではなかなか観れない「羊たちの沈黙」があったので、ものすごく久しぶりに観てみた。

やはり40代の私にも刺さる。それに初めて観た時からだいぶ知識が増えているので、どれだけレベルの高い作品なのかが手に取るようにわかった。アカデミー賞がどうとかいうレベルを超えている。単純に完成度が高く、展開が面白く、品格が高い。この映画が大成功した要因を自分なりに分析してみた。

配役が完璧で、俳優が優秀だった

まずはどうしても役者に注目してしまう。

アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターを絡ませたのが大正解だった。実はこのふたり、目がとても似ている。目が大きく青グレーで色素が薄く、なんとなく親子に見えなくもないのだ。 

ジョディ・フォスターが大成功だったのは、なんとも頭のよさそうな、クールで生意気な雰囲気がぴったりだったのだ。彼女なら、若くてもなんとかやってくれるんじゃないかと期待してしまう。そして彼女がチラ見せする恐怖が外見とギャップがあり、絶妙なのだ。

アンソニー・ホプキンスは、実はこの後の作品も、似たような感じの役を演じるので(もともとメソッド法を否定しているタイプ)たまたまぴったりだったとも言えるのだが、彼は裁判所にまで赴いてリサーチを行ったという。

英国訛りの格調高い英語がこの役にはぴったりであった。

 

主人公のキャラクター設定が共感しやすく魅力的

クラリスは実はFBIはまだ見習いであり、研修中のシーンから始まる。研修生の割には優秀であることも示唆される。またジョディ・フォスターのたたずまいがそもそもクールで知的で自信があるけれど奢らない雰囲気を醸し出しており、優秀だけど生意気すぎない良いキャラをつくっている。

研修生であり、獄中の犯罪者にセクハラされるなど、若い女性でも感情移入しやすい内容になっている。というか、正直この時代はまだセクハラに寛容だったのか、彼女は各所で口説かれまくるのだが、そのたびにクールに受け流しており、その姿が女性陣には「あこがれ」として映る。

そして重要なのがレクター博士との関係性だ。これについては後述する。 


レクター博士のキャラクターが斬新 

カニバリズムの犯罪者で、元精神科医でなぜか人を食べる。当時は異色の存在だったと思う。また、今でこそ鬼滅の刃や東京喰種などの漫画に人を食べる表現が出てくるが、それでもレクター博士のレベルのキャラクターはなかなか出てこなかった。彼は素の状態で興奮もせずに人を殺し、人肉を食すのである。

彼はワインのつまみに人の臓物を食べる。続編では綺麗に調理して盛り付けて食べているシーンもある。

ちなみに私はまだ恐ろしくて見ていないが、彼がこうなったのには理由があり、それも映画化されている。幼い頃に人を食べさせられてしまったのだ。

レクター博士にとって「他人のトラウマ」はご褒美であり、栄養である。その理由は、自分が人を食べさせられたトラウマから来るものではないかと思う。

私も、自分と同じくらい傷ついている人はいないかとついつい探してしまうし、好きになるキャラクターは大体ひどく傷ついた人間ばかり。レクター博士の気持ちはわかる気がする。

彼は恐ろしく知性が高く、芸術を愛し、ジョークやなぞなぞが大好きで、そして言葉遣いが(基本的には)綺麗で上品である。

残虐なのには変わりがないが、それまで多かった「悪い奴はただやみくもに人を殺したり暴力を働く」イメージを覆した。知性が高くこだわりの強い悪役ほど、敵にまわして怖いものはない。 


主人公ふたりの関係性が斬新

レクター博士は、純粋で勇敢で頭のいい人間はすぐに見抜き味方とみなす。クラリスの外見は前述した通り、美しい上に頭の良さがうかがえる。レクター博士は最初こそ「安っぽい格好」「田舎から出てきたんだな」とあっというまに彼女を考察して言い当てるが、動じない彼女を気に入り、ウインクを飛ばしている(笑)。

レクター博士はおそらく最初からクラリスが好きだと思うが、問題はクラリスの心境である。女性というのはいつも言っているが複雑で賢く、本音をすぐに見せないし、罠にかかりそうでかからない。女性が罠にひっかかるときは「あえて」である。

クラリスは自分のトラウマは真剣に話すが、裏ではレクター博士の情報を聞き出すことを忘れてはいない。

クラリスがレクター博士を信頼しながらも、恋愛関係にはならないところに、作品の深みがあると思う。

レクター博士はクラリスに下品なセクハラをした男を始末する(笑)。これがレクター博士の愛情の示し方だ。この辺も女性視聴者は共感し、レクター博士に好意を抱くだろう。そして面白いのは、クラリスがそれをわかっているところだ。

「彼は私を追ってはこない。「それが無礼だ」と知っているから」

 

テンポがよくて目が離せない 

映像の編集や構成が上手い。次から次へと巧みに物語が展開し、かと思うと突然止まったりする。特にボールペンの時はしつこいくらいボールペンを映していて、映像だけでこれが重要なのだとわかるようになっている。そういう緩急がとても上手いと思う。


ミスリードによる凝った脚本

レクター博士が入れ替わっている時と、あと終盤の「犯人を突き止めた」と思った時のミスリードの表現が非常に上手い。よく見ると、レクター博士が入れ替わっているのに気づいてしまう人は多いと思うが、初見だとわかりづらいかもしれない。

見事なエンディング 

絶体絶命かと思われた終盤からのエンディングは見事で、緊張感を持たせたり限界まで引き延ばしたりするテクニックは優秀だなあと思った。最後の最後でタイトルを回収するところも見事である。

 

また、この映画がもたらした影響は大きかったのか、様々な映画で似たようなテクニックや演出を見ることができる。

この映画によりFBI捜査官が流行したのか、私は数年後に「FBI心理捜査官」というベストセラーの本を読んだ記憶がある。

 

この映画は「人の心理」についてもよく洞察がされている。トラウマに着目している点からも、我々人間がただ貧困などが原因で犯罪を犯すような単純な生き物ではないこともよく表現されていた。特に「目の前にあるものを切望する」はよく会社のハラスメントで見かける光景であり、納得のいく考察であった。

本来であれば犯罪者本人を掘り下げるところを、あえてレクター博士という難解な人物にスポットを当てることによって、大変深みを増す作品となった。確かにはらわたを切り裂いて飾るとか、警官を襲って好きなだけ殴るとか、そういうシーンもあるが、残酷なシーンは綺麗に編集して一番グロいところはあまり見せていないし、品格を感じる。

知的好奇心を刺激されるレクター博士のセリフに皆が翻弄される知的スリラーであり、終盤はホラー映画としても楽しめる。

 

また、ザ・バットマンは明らかに影響されている感があって、獄中にいる賢い犯罪者に意見を求めにいく「カットされたシーン」なんかはとても似ているなあと思った。

2023年3月21日火曜日

フェイブルマンズ、観てきたんですけどね

いや、びっくりするほどつまらなくてびっくりしました、ほんと

エブエブ見た後だとベーグルは二番煎じだし、「Walk On By」はNOPEと同じだし、何もかもがふわっと大したことないな~と思ってしまう内容。

主人公「サム」はおそらくスピルバーグ本人だと思うんだけど、裕福な家に生まれ育ち、父が天才的なエンジニアで謙虚で真面目で妻が浮気がちでもまったく怒らない。怒ったのは息子に対して一回だけ。ポール・ダノが真面目なおとうさんやってる・・・!!!!という衝撃。

母親のほうが最初から「もしやADHDなのでは」と思うくらい素っ頓狂で、躁鬱で、幻聴のような夢を見るし、顔は可愛いけど自由すぎてどうなの?子供みたい、って思っていました。がそれは杞憂ではなく本当に悪い方向へ進んでいくのでちょっと驚きでした。

私は自分の母にも父にも問題はありまくると思っているので、共感はするものの、ちょっとどうかなと…。 

しかしですよ、息子サムは母の自由人芸術体質を引き継ぐものの、それであまり苦しむほどでもないんですよね。

なんか、ザ・バットマンのぼっちゃんと比較すると断然楽そうに生きているなと思いました、、

いじめもあるものの、カメラマンとして活躍するし、結局ガールフレンドもできるしで、そんなに無茶苦茶落ち込むとかでもなさそうだった。 しかも結局裕福だからカメラ買うのに一苦労、とかでもないし。

なんともパンチの無い内容でした。


個人的によかったなと思うのは、随所に変態的芸術家おじさんが出てきて、裕福な家庭でのほほんと自由に映像を撮るおぼっちゃんなサムに警告をしていくシーンです。

「芸術はお前を切り刻むぞ。ほんとうにいいのか」と。


私は特に最近思うんですが、私は、結婚しようと思えばできたし、妊娠する能力も出産する力もあったと思います。でもどうしてもその気になれなかった。気に入った相手がいないから、ということもできるのですが

私はフェイブルマンズの母親みたいになってしまう可能性が大だったから、どうも直感的にそれから逃げていたのだと思います。

今まで、多くの男性が私にブチギレてきました。男性はうまくいかないとすぐにキレる。特に交際や結婚の願望を砕かれるといちいちものすごい怒ります。私が直に断らなくても。 

私は男女交際においては確実に直感を優先させるべきだなと感じています。トラブルになると感じたらどんな手段を講じてでもその男性から逃げるべき。男性は直情的に瞬間的に暴力をふるう傾向にあるため、簡単に殺されてしまう可能性があるからです。

「芸術は孤独だ。家族とも切り離される」という風な警告をされますが、それはある意味芸術に生きる人間にとっては幸福なのです。私は、自分のことをクリエイターと定義することはあまりありませんが、本当にお金だけを稼ぎたいならこの仕事を選んだとは思っていません。ビジュアルデザインは結局はクリエイティビティが仕上げるものであります。そこにどうしても芸術性がからんでくるからです。

ものをつくりたい!と願う人、ものをつくっていないと鬱になってしまうような人は、孤独であるべきだし、孤独にならないと時間が確保できません。そのくらい、時間というのは確保するのが難しいと感じています。


私は生まれた時から孤独だったけれど、それは私が選んだことなのか、ずっとわからずにいました。

でも、この映画を観て思ったんですけど、やっぱり私は孤独になるべくしてなり、孤独から芸術の道を選んだのだと確信しました。そして、やはり長い年月をかけても「普通の人」にはなれませんでした。戻れないのではありません。最初から孤独でした。

そういう人はどうあがいても普通の家族をつくったり、普通の仕事には就けないと思います。事務員の面接でもはっきりそう言われたことがあります。ですが、それは悲しむべきことではありません。みんなと、違う力を持っているだけなのです。

寂しいとか一瞬でも思ったら、それを絵にしたり、映像にしたり音楽にしたり、複合芸術にしてもいい。わたしたちはそういう人種なのだと思います。

大事なのは普通になれないということから、「絶対に目をそらさない」ということです。これは迂回なので大量の時間を無駄にしますし、自分に傷をつける自傷行為です。普通になろうだなんて努力するのは違っていると思います。最低限のマナーだけでいいのです。

2023年3月12日日曜日

Everything Everywhere All at Once 通称「エブエブ」観てきました

アカデミー賞を総なめにしようとしている恐るべきモンスター映画「エブエブ」。どんなもんやと観に行きましたがまんまとやられました。涙なしでは観られない、壮大でありながら、実に普遍的な日常の愛の物語でした。

「愛」をテーマにした映画はそれこそ挙げるのもアホらしいくらいに多数存在します。

このテーマで描くこと自体は全然いいんですけど、もう使い込まれて擦り切れてしまった、愛の物語をどう別の視点から料理するか、だと思うんですよね。

その点では100点満点を超えていると思いますね。マルチバースだし、別の宇宙にまで果てしなく物語を広げるのに、すごい勢いで小さくまとめるその手腕。広げた風呂敷を、あっけないほどにあっさりと、収束させるあの脚本力はすごいものがあるなと思いました。

別にSFにする必要もなかったと思うんですが、やっぱり面白いですよね。特に冒頭はマトリックスの1作目を思わせる面白さがあります。マトリックスでは平凡な会社員プログラマーが。エブエブでは平凡以下の主婦が。「世界を救ってくれ。本気を出してくれ」と懇願されるわけです。まずそこで最初の1/3の展開は楽しめますね。どういう法則でその世界が動いているのか。エブエブの場合はコメディ要素がかなり強いのですが、登場人物的には真剣そのものです。 

クリストファー・ノーランとかリドリー・スコットには絶対描けない奇妙奇天烈すぎるその世界観。あまりにも真面目な人だと耐えられないと思います(日本には多そう!)。

ジョーダン・ピールのノリとか、ゴールデンカムイの不真面目な部分とか斜め上の展開が理解できる人なら大丈夫だと思います!が、史上稀に見るカオス具合ではありました。

あと観客が女性だとさらにのめりこめるのではないでしょうか。

私もすごく共感するところがあって。

例えばあの時、バカな彼氏と結婚なんかしていたらどうなっていただろう。その後婚活パーティーでマッチングした人とちゃんと付き合おうと努力していれば?福岡移住がもっと早かったら?福岡ではなく、外国に移住していたら?それとも沖縄に引っ越していたら?どうなっていただろう。

女性には男性より少し多めの選択肢が用意されています。大きいのは「出産と育児」です。これによりキャリアが分断される人は結構多いと思います。実際妊婦の欠員補充で2回入社したことがありますが、復帰しても実質週の半分くらいしか働けないし、安定してきたと思ったら2人目を妊娠で、また産休。たまに仕事なめくさってる主婦もいて独身の私は結構イライラしました。

主人公のエヴリンが、「結婚しなかった自分」が別の宇宙でそれはそれは輝いているのを見て、「私はあなたなしであんなに輝いているのよと、旦那に見せたい」と懇願するのですが、そのセリフのリアル感よ。 

旦那にしてみれば、立つ瀬がありません。

ただ、今女性の生き方は多様性が叫ばれています。

結婚しなかったほうがよかった、というのは多くの既婚女性が一度は陥る感覚だと思うんですよ。

でも本当にそうでしょうか?

映画を観れば、答えは出ると思います。

私はその後の展開でかなり泣かせていただきました。

結婚したほうがよかったのか、しないほうがよかったのか、実はどちらも、正解ではないと思っています。

例えば、私は彼氏を振り切って別れてしまいましたが、うまくいかないのが100%わかりきっていたのです。だから絶対に間違っていないと言い切れます。

でもエヴリンはどうでしょう?彼女は自らその男性の手をとった。子供が産まれたときも喜んでいたし、今だってとても気にかけている。彼女が「輝いている」と思った別の宇宙の自分が「良い」とは限らない。その場の主人公の彼女は、正しい選択をしたのだと思います。

よく婚活をしている女性が陥る幻想、「結婚をすれば幸せになれる」という思いこみも違うんですよね。

自分が結婚したいと思う人がいたからした、でいいんですよ。

結婚したいと思う相手がいないなら、昔みたいに無理やりよくわかんない男性の支配下に置かれる必要はないと思いますね。

念のため言っておきますが、この映画は結婚の話ではありません。それがエヴリンの選択に強い影響をもたらしているだけです。

一番大きい問題は娘。娘は難しいですよね~、それに子供が親に逆襲するのってとても怖いところあると思うんですよ。

父親も問題ですし、税務署にいるおばさんも問題だし、娘の取り巻きも問題だし、別宇宙の人も同じ顔の人が存在する。けど、彼らにはそれぞれの幸せがある。

 

キャラクターとしては「ウェイモンド」が大きなキーパーソンじゃないかなと思いましたし、気に入りました。役者のキー・ホイ・クァンは、インディ・ジョーンズ魔宮の伝説で目立ってた、あの小さな中国人の男の子で、当時は「なんてうるさい少年だよw」って思ってたんですけど、、

驚くべきことに、彼の声があまり変わっていませんでした、、www

ですが!今回は、ウェイモンドは色んな宇宙に存在するので、それぞれバージョンが異なります。私は最初に指示を出してくる通称アルファ版の彼が結構好きでした。まあ、でもあれは、優秀だけど単なるミッションインポッシブルと言えば言え…。

やっぱりオリジナルが一番いいね、と最後は思えるのがこの映画の凄いところだと思いますね!

あと、ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンは本物のアクションスターで、ジャッキーやジェットリーと仕事してた人たちなので、ものすごいアクションがカッコいいですね。ちょっとむちゃくちゃなシーンが多かったですが、動きはやっぱり綺麗でした。

なのでSF設定を利用した無茶苦茶なアクション映画って感じだと思うんですが、私はやっぱり、これほどまで上手に「愛」を説明できる映画ってあんまりないと思うので、そこを一番評価したいです。 

また、アメリカ受けした要素は、やはりアメリカンドリーム。「不可能だと思い込まない」こと、「絶望を覆していくこと」というもうひとつの夢のあるテーマじゃないですかね。

2023年3月10日金曜日

今更ながら、「シェイプ・オブ・ウォーター」観ました

恥ずかしながらこの映画のことは、デス・ストランディングで知りました。というかギレルモ・デル・トロ監督自体をデスストで知ったんですよ。

ナイトメア・アリーは監督名でこの人は高評価を受けているから凄い参考になるだろうなと思って観に行ったのですが、期待通りの感じでした。画面に隙が無いんですよね。ちょっと頑張りすぎかと思うくらいのこだわりを感じます。画作りがわざとらしいくらいに完璧。

特に本作は照明へのこだわりをすごく感じました。

また冷戦という設定からの、小道具大道具、セットへのこだわりもすごいですね。

お話は童話のように始まり、ファンタジーのような展開でありながらも、主人公が成人しており周りも大人なので、大人の事情がふんだんに盛り込まれています。だからこそ、大人が観るファンタジーとして、よくできている。逆に言えば、大人になってもこういうのが観たいよね、という童心をくすぐる内容でもあります。

私はE.T.を思い出しました。コロナ禍でたくさん昔の映画をTVで流してくれた時期がありましたが、E.T.が一番素直に泣けました。

あの映画のいいところは、異世界から来た宇宙人を友人として捉え、決して研究しようだとか、金にしようとしないところで、それをする大人たちを敵として捉えていたところ。

SFなのに、宇宙人のことを研究しようともしない。あまりにもピュアすぎて、涙が出ました。スピルバーグって、あの時すでにだいぶ大人なはずなんですけど、設定にこだわったSF映画もつくれたのにそういう要素を完全に排除しているところが凄いと思いました。

本作もそんな感じの話です。

ただ、ちょっと私が引っかかったのは、大人の恋愛の話なので、セックスについての話題が出てきたりするのが、生々しくて嫌だなあというところです。

それ以外は実にシンプルで、E.T.ともあまり変わらないかもしれません。ですが、時折すごく「人生って虚しくて儚いな」と思う言葉が散りばめられていて、、

これはギレルモ監督の癖なんですかね?ナイトメアアリーなんてそればっかりでしたもんね。

人生は失敗の積み重ねだ。(これ英語だとshipwreckって書いてあって結構怖い)

私の存在は私の目しか知らないんだよ。僕らは、遺物なんだ。

そんな言葉がしょっちゅう出てきて退廃的な感じがしました。

そういう理由から子供向けとはいいがたいし、R15はそうだと思います。これ、大人向けなんですよね。

そして負け犬要素が強めの清掃人であまり美人でもなく喋れない主人公。ゲイで売れない絵描き、冷めきった夫婦の奥さん、いつ捨てられるかわからないスパイ。彼らが、主人公イライザの愛を理解し、共感しすることで、半魚人は守られていきます。

やわらかくレトロな音楽が包み込む、芸術的な作品だと思いました。

また、イライザの女優さんには確かに共感がもてるし、少し大げさな芝居が上手でした。しゃべれないから、感情は大きめに出すんだと思うんですが、普段はとてもおとなしいのでギャップがありました。色々な表情を実に巧みに使い分けますよね。すごく地味だったイライザが、途中からヘアバンドや靴が赤になったりと、細かい変化も見逃せません。

あとなぜかスパイのお兄さんが好みでした。きちんと生きているんだけど、ついついスパイの道を外れてしまう…見た目や喋り方がかわいいのもあいまってお気に入りのキャラクターでした。


ただ、私が子供なんですかね、もうちょっと、子供っぽいファンタジーの方が好きかもしれません。多分恋愛ものが苦手なんでしょうねw

変な生き物が出てくる映画なら第9地区がやっぱりトップランクですね。あれは、生々しい下ネタを「ゴシップ(ギャグ)として」扱うからよかったです。主人公は最後まで奥さんに連絡を取ろうとしていて、なんかそれがね、すごく沁みたんですよね、そういうののほうが好きかも。

2023年2月24日金曜日

「ベネデッタ」観てきました

17世紀イタリアに実在したという、ベネデッタ・カルリーニという修道女のお話です。監督はロボコップを創ったあの御方。

どちらかというとビジュアル重視で観に行ったのですが、私は「ヨーロッパ」「修道院」「宗教史(キリスト教)もの」「ペストの時代」というだけで観たいと思ってしまう派です。 その辺は期待を裏切らず、フランスでつくっただけあって本格的なロケーションや衣装、セットに感動でした。あとやっぱり讃美歌とか宗教音楽が好きなので音楽もよかったです。

ベネデッタは同性愛でいったんは有罪にされた女性ですが、そこはあんまり重要ではないなと私は感じました。レズビアンものが観たい場合はちょっと期待はずれになるかな?本格的にレズが好きならやっぱ「キャロル」ですかね。アトミックブロンドも思いのほかレズビアン色が強かったですね。

それでは何に重きをおいているかというと、よくキリスト教ものにある

「本当に神の奇蹟というものは存在するのか?」「信仰とはなにか?」

というところが大きい疑問になると思います。

キリスト教を礼賛する内容ではありません。

ただ、ベネデッタの信仰心自体は本物ではないかな?と私は思いました。

冒頭から、ベネデッタは同性愛っ気があることが示唆されますが、そのシーンで彼女は奇跡的に事故から救われます。その他にも、ちょっとした奇蹟を起こしたりもします。彼女が視る夢も、内容自体は本当だと思われます。

ただ、その夢の内容から私が感じたことは、

彼女にとって、「キリスト」は推しだったのではないかと…。

言い方はあれなんですけど。

「天使にラブソングを」で、「彼(主)から離れられない」という歌があると思いますが、要は、そういうことだと思うんですよ。修道女は、キリストに恋をする。

そして、ベネデッタは、「キリストの嫁」宣言をします。夢の中で花嫁と呼ばれたと。

ではなぜ同性愛か?

ベネデッタは本当はキリストと交わりたかった。それを示唆するシーンもあります。ですがキリストは故人であり、当時の彼女にとっては単なる推しです。

代わりに、バルトロメアと交わり、オーガズムを知ることで、キリストへの想いを昇華させていたのではないかと…。

そう考えると、バルトロメアのことはあくまで「キリストの代わりに肉体を借りている」人間ということになります。全体的に、ちゃんと愛している感じはしないんですよね。

バルトロメアがかわいそうじゃん、っていわれそうですが、私はあまりそう思いませんでした。そもそも誘惑の仕方からして頭が悪すぎる。修道院でセックスに耽るのはご法度だと彼女でも知っていたはずです。

それにしても拷問シーンは怖かったですね。これは監督さすがだなあと思いました。拷問というのは、拷問をしているシーンが怖いのではありません。

「これからこれを使って拷問をするよ」と道具を見せられている間が一番怖いです。まてまてまて何をするんだそれで。という。そして役者の演技が真に迫りすぎていました…。

しかし、この拷問をきっかけに、ますますベネデッタの黒さが浮き彫りになってくるのです…。

ベネデッタの使命

ベネデッタは、賢く、したたかで、本当に強い意志を持った強い女性だと思いました。

彼女の使命は、キリストの名を借りて、ペシアの人々に勇気をもたらし、統一すること。

そう、彼女は、ある意味女王として、アイコンとして君臨するのが使命なんだと思います。かつて、ジャンヌ・ダルクがそうであったように。

カリスマ性と、リーダーシップがありました。

そう考えると、バルトロメアは邪魔だったのかもしれません。彼女がいなければ、裁判になることはなかったわけですし…。

しかし、彼女がいることにより、そして性的な仲になることにより、ベネデッタの信仰は疑われます。これが、視聴者にものしかかってくるわけで、その疑念が映画の最大のテーマだと思います。ベネデッタは、単なる美しく若い信仰心に燃える奇蹟の修道女ではないということが、だんだんわかってくる。

しかし、彼女が、教会の掟を破って同性愛に手を出したとしても、おそらく、キリストへの想いは本物ではないかと、私にはそう思えました。

 

現代的な解釈をすれば、恋人も愛さず、本音を言わず、職務と使命に燃える徹底的なリーダーシップの在り方を見せられたようにも思います。時には、このくらい強いリーダーシップが必要なのかもしれません。 嘘をついてまで信念を貫きとおすのが、良いことなのかはわかりませんが、少なくとも街の人々はベネデッタを信じていたし、好かれていたのもわかりました。そういう、カリスマ的なリーダーの「光と闇」を的確に描いていると言えます。それが「女性」であることが、いいなあと思いました。

 

2023年2月18日土曜日

「バビロン」観てきました

ショービズの話で、「ラ・ラ・ランド」を下品にしたような感じですかね。

ただ、私前に「ラ・ラ・ランド」酷評したんで、こっちのほうが好きだと思います。

エマ・ストーンがちょっと苦手なんですよね…。

その点、マーゴット・ロビーは本当にキュートで魅力的で、天才的女優と感じました。表情の変わりようがくるくると目まぐるしくて、目が離せません。

それから後半の、ストレスたまってぶちまけるシーンも最高でした。

これがわたしたちの期待するマーゴット・ロビー!ハーレイ・クインの狂気!!もしレディガガが大成功しても、私はマーゴット・ロビーのハーレイクインを永遠に愛すると思います。

また、マーゴット・ロビーの個人的な性格によるものなのかもしれませんが、男性に対する愛情表現が愛くるしくて共感が持てました。

そして!

お相手役のディエゴ・カルバが今回、「またもや新人イケメン発掘」でした。2022年はロバート・パティンソンを始め、ブランドン・ペレア、ラーム・チャラン等世界各国のイケメンを映画で楽しむことができた素晴らしい年でしたが、今年のトップバッターはディエゴ・カルバかな!

最初はカオスなハリウッドで雑用係として働いていたマニーでしたが、周りが大狂乱でもひとり冷静にものごとに対処していく優秀さをジャック(ブラピ)に買われ、あれよあれよと出世していく。後半からは、綺麗なスーツに身をつつんだ絶世の美男子姿も見ることができます。 

タンクトップの時もあったんだけど、身体が引き締まっていて美しいし、どっかメキシコで苦労した感を漂わせながらも、謙虚で真面目で正直な感じが始終好感がもてました。

実質主人公はマニーだと思います。

ブラピは水先案内人であり、大した役どころとは感じませんでした。あとせっかく黒髪で出てきてくれたけど、ブラピに黒髪が微妙に似合わないんですよね。やはり元から金髪だからなのかも。

ジョニー・デップは昔から黒髪がよく似合っていてゴスなメイクや衣装で我々中二病の心をつかんだし、ロバート・パティンソンもなんだかんだで金髪ではないので(テネットでは染めてた)、茶髪を少しダークに染めたくらいならよく似合ってるし、もともとヴァンパイアやってたしそのころからちょっと暗いんですよね。でもブラピはいつもの少々ちゃらい役どころでした。


全体的な感想として、ハリウッドの歴史とか、あの世界独特の文化とか、とにかく映画が好きな人がつくり、映画好きの人のための映画だと思います。しかもアメリカ映画ね。

あとネリーが初めて映画の撮影に挑む時のあの緊張感!映画製作や、撮影の現場に興味がある人にもおすすめです! 1920~1950年くらいなので、最新の撮影技術の話ではなく、昔はサイレントで字幕を手描きで描いてたとか、カメラが手回しだったとか、そういうのに興味がある人には大変おすすめです。特にトーキーに変わったとき撮影の手法が完全に変わってしまうのが、みどころだったな~と感じました。現場の悲壮感。

私もWEB制作を20年やってきたので、映画一本作れなくもないですね。ちなみに令和の今でも現在進行形で悲鳴をあげています。悲鳴の種類が変わっただけです。