2023年1月28日土曜日

イニシェリン島の精霊

実は今日役所に11:30に予約をしてわざわざ行ったので、せっかく外出したのだしと最後の「イベント割」を使って「イニシェリン島の精霊」を観てきました。

早速色々な解釈が飛び交っていて、考察が面白いですね。

構成は巧みで飽きさせません。どう決着するのか気になってしまいます。ノースマンの数倍は面白いですが、何しろアクションはあまりないので…。ただ、ややグロいシーンがありまして、それがいかにこの島の島民が狂気に包まれているかを、よく示しています。とともに、あのグロシーンのせいで完全にA24系のホラー映画の様相を呈してきます。

映像はとても綺麗で、アイルランドを理解したような気になれました。文化的価値がありそうな映像です。

この島の狭いコミュニティでの軋轢は、様々な現実を連想させます。

まず、私はコリン・ファレルのキャラクターがあまりにも「いるいる」「あるある」なので驚いてしまいました。舞台はアイルランドの島なのにも関わらず。前職の会社はこんな「つまらない空気の読めない独身中年男性」であふれていたからです。

主人公パドリックの良いところは正直あまりなく、凡庸で、頭も大してよくなく、一番まずいのが「空気が読めない」ところです、いや、正直読めていてもなぜかぶち壊しにきます。そして、周囲にめちゃくちゃ依存しているのです。でも、こういう人周りにいっぱいいたので、嫌なものを再度見せられているとともに、頑なにパドリックを拒否するコルムが、パドリックを、なんとか懲らしめて改心させてやれないものか?とずっと期待していました。

ですが、正直この手の中年は本当に変わらないです。

パドリックはセクハラをしないので、よかったですが、前職はこれがセクハラをしまくる、みたいな会社だったので、女性に総スカンを喰らい、寂しくなって立場の弱い男性陣に声をかけまくり、飲み会では女性に触れないので年下の男性社員に強引に肩組みして、下ネタを強要、声が大きく気が短く、男のプライドが高く周りと関わってないと不安になってしまうタイプ。 その上、「自分は間違っていない」と大声で主張する。

なんとなく行きつく先がわかるような気がしますが、映画でご確認ください…。

さて、会社で例えるとパワハラセクハラおじさんですが、こういう人って、日本の小さなコミュニティにもいると思います。

私の妹はコルムタイプで、空気の読めないバカと付き合いたくないからと田舎に引っ越してしまいました。数年お会いしていないですね。昔から、映画のセリフ通り「つまらない人間に付き合っている暇はない」と露骨に周りを拒否していました。

まあ、問題は、「昨日まで仲良かったじゃないか」という発言なんですけど、これも怪しいものです。

頭のいい人や、優しい人、思慮深い人は普段は微笑して話を聞いてくれるかもしれませんが、堪忍袋の緒が切れると、ある日突然態度が変わったり、突然転職すると言い出していなくなったりしますよね。

パドリックの周りは皆、彼より頭のいい、思慮深い人たちだったのです。

その辺の会話劇は、一種コントのような、コメディタッチの脚本ではあったのですが、次第に戦争の様相を呈してきます。


さて、これを国際問題に例えると更にわかりやすいです。


ある日、今まで友人だと思っていたロシアが、「ウクライナは俺の配下に入れ、さもなければ攻撃する」と宣言してきました。もちろん、前兆はあったと思うのですが。

このたとえだと、終盤の恐ろしい出来事はたとえとしてすんなり入ってくるなと思います。

戦争、長引いていますよね。実際、「国がなくなる」ことって最近あまりないので、永遠に、民族同士の争いは、それこそ「お互いが死ぬまで」続く。というか、死が存在しないので、統合されたとしても、仲良くとはいかないのでしょう。

 

そういえば、○○○○が死体で上がった件。これだけが謎だったのでずっと考えていたのですけど○○○○○が殺したのでは。という考察を読んで、「あー、辻褄があってしまうww」と思いました。鶴見中尉みたいだなw

いや、終盤の狂気を見ているとやりかねないなと思いますよね。うん。

 

この作品がアカデミー賞ノミネートなのは正直あまり納得がいかないのです。というのは、NOPEに一枠もくれてやらずにイニシェリン島にそんなに枠をくれてやるのは何か圧力でもかかっているのでは?と心配になります。ましてや、ザ・バットマンに、「それなの?」みたいな枠を与えるのもなんか違うような気もしますし。メイクアップはわかりますけどw

2023年1月22日日曜日

CONTROL 動画集(2)

誰も私にPS5買ってくれない売ってくれないのでしぶとくCONTROLプレイしてます。

個人的にこの「ちょうちん」の任務は爆笑しました。

すごいやばいです。まさかその提灯だとは誰も思わないだろ!!

サムは、いったい、提灯に、何を感じたというんだ!!

アヒルちゃんはかわいいから一応残しました。



2023年1月21日土曜日

「ノースマン」観ました

ロバート・エガースだからなあ、と思って観に行ったんですけどね。

 

いやあ、つまらなかったですね、後ろの人とかいびきかいてましたね。どうやったら後ろの人間を起こせるのか色々考えたんですけどちょっと難しかったです。

あらすじ読んでも、すごくありきたりな復讐劇だったけど、本編はまさにありきたりで、すごく残酷ならまだなんか特色になると思うんですけどそれほどでもないんですよね…。

伝説の映像化といえば、「バーフバリ」なんかがあると思いますけど、バーフバリって、内容は割とありきたりなんだけど、「ありえないアクション」や「こんなん人間じゃねぇだろw」みたいなCGを使うことによって、ありえないからこそ面白いみたいなところ、あったんですよ。

でも「ノースマン」は、DUNEみたいな筋書だけどDUNEよりCGも劣る(CGは基本ほぼ、無し)し、みたこともない生き物が出てくるわけでもなく、バーフバリやRRRのようなむちゃくちゃなワイヤーアクションが出てくるわけでもない。

印象に残ったのはものすごく北欧神話なシーンばかり。要はミッドサマーのような、綺麗な残酷さや不気味すぎる儀式など。しかしアリ・アスターに助言を受けていると書かれている割に、ミッドサマーほどではないわけですよね。

なんかずっと中途半端だな~と思ってて、

ニコール・キッドマンのキャラクターが意外と一癖あっておもしろい役どころなんだけど、ほとんど生かされていないのがもったいなかったなと思いました。

アニャ・テイラージョイも相変わらず普通の役どころだし…。

ビョークは一瞬しか出てこないし、ウイレム・デフォーも最初だけです…。

あれだけ豪華キャストにしといてもったいないな~というのが本音。実はあまり乗り気じゃなかったのでは?と思いました。

今までのロバート・エガースの映画と比べるとまったく毛色が違います。映像の暗さや撮り方の癖は同じだと思うんですけど。誰かに頼まれて仕方なく作ったのかなとすら思いました。

どうせなら、ライトハウスやウイッチみたいに、精神病っぽい話にして、母親の「女性特有の病的な精神状態」に重きをおいたり、女が国を狂わす話にしてもよかったんじゃないかなあと…。 ラスボスが母親だったら私の評価はかなり変わってたと思いますよww


2023年1月14日土曜日

SHE SAID 観ました

映画「スキャンダル」(2019)と内容が似ていますが、今回はよりドキュメンタリーに近い体裁になっており、真に迫っていて緊迫感があり、無事告発記事の発行までたどり着くのかが心配になるという意味では、強く引き込まれる内容でした。

さて今回のセクハラ事件ですが、FOXよりはある意味大変有名であった、「映画界でのセクシャルハラスメント、および性的暴行・虐待」の事件で、特に「ワインスタイン」と聞いたら「あ~~有名だよね!」と思い出す人、多いと思います。FOXの方があまり興味がなかったのは、私がFOX派ではなかったのと、日本では映画の方が浸透していたので「あのキラキラした女優たちが(ある程度想像はしていたが)本当に性暴力を受けていたとは…」とわかっていても結構ショッキングではありましたね。

ワインスタインの性的嗜好は非常に醜く、とにかくしつこい。録音された音声が流れるのですが、まあとにかくしつこい。ホテルの廊下での会話らしいのですが

何度「嫌です。部屋に入りたくありません」と女性が言っても、

「5分だけでいいよ。1分だけでいいよ。何もしないから。今日だけだよ。明日から忘れてあげるから」と意味不明な誘いを続けます。これが実に3分5分くらい押し問答が延々と流れます。女性が泣き声で嫌がっても、まあ、しつこいです。

でも日本人はまた別の意味でしつこいですからねぇ。ある意味まだ紳士的なのかもしれませんが…。

一番えげつないなと思ったのが、女性と二人きりで仕事をすることになったワインスタインが、何度拒否られても最終的に押し倒し、

「一回だけ挿れさせて」

と言うシーンですね。「Just one thrust」という英語がunbelievableでしたね。ええ~そういう言い方するのぉ~!!!これはショッキングだ…。しかも大手映画会社の社長が……。

チャラい日本人大学生が「さきっちょだけだから!」って言うのとだいぶ重みが違うと思いません?女性は、ワインスタインのことを尊敬できる上司だと信じて部屋に入ったのに。ただの本能に負けた雄豚だったなんてね。ガッカリですよね。

そのあと死にたくなった、なんてのもよくわかります。死にたくはなるよな。。

私なんか、検査器具をいきなり入れられただけで死にたくなった。あの時は、「私は医者から見たら家畜なんだな」と思った。 

なんかこの、人間の尊厳を奪う行為、、どうなったら無くなるのでしょうね。

まあ、逮捕するしかないわけですが、この映画の大半は報復を恐れて声を上げられない女性たちの悲しいお話で、最後らへんは今思い出しても泣けます。

私の受けていたセクハラはちょっと証明がしづらいので、せいぜいインターネットの会社クチコミに書くくらいしかできませんが、それでも十分だと思っています。

会社をセクハラで辞める時、次の面接で不思議がられるのはアメリカも同じようで、私も説明がしづらいんですよね。一番の理由はセクハラだったんですけど、それをブラックと呼んでいいのかわからない。残業時間が凄かったわけではないから。

ただ、ミラマックスの場合、辞めるときに「セクハラについて口外しないこと」と契約を結ばされた上で示談金をたくさんくれるようです……wふざけんなよって思いますよね。

 

しかしワインスタインの性的嗜好はちょっと頭がおかしいとしか思えなくて、それであの名作映画を数々と生み出せるのは、才能と引き換えになんか失ってしまったんですかね…。

(なにかというと「妻と子供が」って言うらしいです)

 

経営者で結婚していて、よその女に色目を使いたがる人はものすごいたくさん見てきました。ほぼ例外はなかったと思います。なぜか権力を持つとよその女に手を出したくなるみたいで、実際不倫して左遷された部長もいました。

映画では「殴ったりレイプをするようだったら必ず報告しろ」と人事が言っていましたが、なにかあってからでは遅いし、そもそも女性社員の前で脱ぐ時点でもうダメよね…。露出狂よ。

キャリー・マリガンってもう女捨ててるようなところあるかなあと思っていたけど、私的にはまだまだかわいいと思った。けど一番好きなキャリー・マリガンは 、男に性的に絡まれた時

「Fuck Off!!!!」

って大声で叫ぶ彼女。


映画のテイストとして、「スキャンダル」は特にトランプのあがきがユーモラスに描かれていて最後までブラックジョークテイストがありましたが、「SHE SAID」はかなり真面目です。

スキャンダルのように実際のセクハラを映像で観るわけではないので、フラッシュバックなどはないと思います。ですが、彼女らの怒りがものすごいよくわかる人間としては、感情移入しかないですね。

2023年1月4日水曜日

HIGH LIFE

クレール・ドニ監督、ロバート・パティンソン主演の2018年の映画です。突如としてアマプラに現れたため、さっそく観てみました。

全体的にアート色が強く、パティンソン君が好きそうな世界だなあと思いましたが、アーティスティックなフランス人らしい画作りと、SFな内容が微妙にかみ合わず、特にセットや衣装が安っぽく、設定も甘い感じが気になりました。

ただ、表現したいものは伝わってきたような気はしています。

ストーリーは、宇宙における人間の繁殖能力の実験であり、パティンソン君を含め乗組員は犯罪者であり、実験体として扱われます。ひとりだけ、女性の博士が乗っていて指揮をとっていますが、この人がなかなかの曲者。

どうしようもない犯罪者たちの中で、ひとりだけ実験に精子を提供せず、無欲を貫く修道士のようなモンテ(パティンソン君)を好きになってしまいます。

まあ、なんというか、パティンソン君にはよく似合う役どころでした。

いつもあの冷めた目で状況を俯瞰しており、悪い奴は相変わらず無言で突っ込んでって殴ってますが、普段は寡黙で無茶苦茶冷めた態度で周りを批判しているだけ。

彼が、女博士に「色気を隠そうとしないのか」と言うシーンがあるのですがちょっと刺さりました。

博士は無欲を装い、自分では子供が産めないらしいのですが、欲は残っているのです。

なんか全体的にそういう感じの話で、途中で「ブラックホールのペンローズ過程の実験」をやると言い出すのですが、なんか、説明が不足していて、普通に失敗します。というか失敗するだろwと思いましたが…。

おそらくシナリオ的には、ブラックホールが何かしらこの絶望的な状況を変えてくれるだろうという筋書なのだと思いますが、インターステラーにも言えるけど人間ごときがブラックホールに干渉したら普通に死ぬだけだと思います……。 なんかもうワンクッションないとダメですよね…。

なので、どちらかというと閉鎖空間における男女の精神や欲の話と、生殖について考えるような、そんな感じのふわっとしたお話。

いきなり最初からパティンソン君が赤子をあやしてるシーンから始まるので、すごくデスストランディングっぽかったです。

でも、デスストって、SFが好きな小島監督の作品だから、ファンタジーとSFが見事に合体してて緻密な設定がそこにあるじゃないですか。

 

もし、ああいう風にならなくても、ふわっとしているならふわっとしているだけ、あいまいさをポエム化しきれていたら、いいなと思うのですが、

どうにも起承転結やテーマなどがあいまいなまま終わってしまうので、もったいないなあと思いました。 


パティンソン君の美しさを撮ることに関しては命を懸けているなと感じました。髪の毛を剃っているので、顔がよく見えました。天使のようにも、死神のようにも見える、不思議な存在でした。そして相変わらず芝居が生々しいというか。純度が高いですよね。よく海外ではgenuineと言われていますが、pureよりもっと科学的に純度の高い、なにものにも染まらない個性を感じます。


そして個人的にとてもよかったのがスタッフロールで流れる歌です。歌自体も良いですが、歌っているのがパティンソン君で、これがまた独特なんですけど、つぶやくように歌っているのに、音程がピシっと合っていてさすが音楽好き!普通に上手い。というか、音程が合っていて声質がしっかりしているので、ボソボソ歌っているのにちゃんと雰囲気が出てて音楽になっている。ブルースの声にすごい近いから、ぼっちゃんが歌ってるみたいでよかったです!

 

本当は音楽で活躍したかったらしいのですが、才能自体はあると思います。ただまあ、大衆受けはしないですかね。やっぱ芸術家気質なのかも。 


最近思うのですけど、「意味不明なもの」にぶち当たった時、

「なんやこれ、意味わからん!だからつまらない」という人と、

「これはなんだ!もっと知りたいぞ!おもしろい!!」という人に分かれると思うんです。

私は後者の人間でありたい。

前者の人間とはどんなに話をしても、どこかでぶったぎられて、それ以上世界が広がらず、そこで宇宙が終わってしまう。そんなつまらない人間にはなりたくないなと思いました。

 

新年早々w