2022年9月27日火曜日

レゴバットマン ザ・ムービー、とっても面白かったですww

なんかツイッターでバットマンの本質は「レゴバットマン」が一番深く考察している、と見かけたので興味本位で観てみたら、めっちゃ面白くて最後まで観てしまいましたw

マットリーヴス版でも、「そうそう、バットマンって多分本当はこんな感じよね。現実逃避した、わがままでかわいそうなお坊ちゃんの話だと思う」って思ったけど、それをさらにギャグテイストにして、それこそ、やっぱ漫画が原作なんだなって思わせる内容。なのにとても説得力がある。

ブルースがかわいいと思えるところは、「親しい人を失うこと」を恐れていること。これがものすごくかわいそうで同情するから、あんな妙ちくりんな所業も許せてしまう。もちろんブルースは頭もいいし有能だけど、だったら警察官になれよって誰もが思うと思う。しかし彼は頑なにひとりで行動することを好む。同僚と仲良くなったあと殉職でもされたら、メンタル的に耐えられないから。

レゴ版だけれど、冒頭ではブルースのとてつもなく孤独な私生活が生々しく描かれる。帰宅してもアルフレッドに声もかけず、冷蔵庫の夕食を独り言をぼやきながらレンチンして、ひとりでご飯を食べて、ひとりでギターの練習をして(笑)(そういう設定)、ひとりで映画を観てどうでもいいところで笑う。

アルフレッドにゴードンの退職祝いに行ってくださいと言われゴロゴロ転がって嫌がるブルースが爆笑である。実写だったら絶対やらないと思うけど。とにかくブルースは、ブルースとして外に出るのを嫌がる、だけど、外に出たら出たでナルシシズムを発揮して人当りのいいブルースウェインになってしまう(この辺はちょっとパティンソン君版とは違うけど原作通りかな)。 二重人格ですね。

ジョーカーには「私情を抱いていない(憎しみすら)」と言い切って怒らせるんだけど、どうもジョーカーですら、彼には本当は必要な人間なのだろう。というのは、割とストーリーの前半でジョーカーが降伏宣言してきて、バットマンはその存在意義を失ってしまう。

「残りの人生楽しんでね!」と引退宣言されるバットマン。 

この時の孤独感の表現もすごい。子供向けとしてはあまりにも生々しいのだ。

ひたすらアルフレッドに「現実を見てください」と、「自分の家族を持ってください」と懇願されるブルースだけど、自分がトラウマもちであることすら否定する始末。しかし血の繋がってない家族「ロビン」をうっかり引き入れてしまったことで、ブルースは少しずつ家族のよさをもう一度受け入れて、「楽しい」と思うことを受け入れていく。

いやこりゃ、大変だ。

だけど気持ちはすごくわかる。

なんだかんだ、人にはこういう一面がある。幸せになることを拒否してしまう一面。私なんかも典型だけど、どうせ人は裏切るから、などと過去のトラウマの出来事を引っ張り出してはもう人と関わらないほうがどっちかというと幸せなんだ、と思い込んでしまう。ブルースの場合は死別だからまだかわいそうな子、で済むけど、多くの人は別の理由だろう。

親御さんに虐待をうけたことがあっても結婚できる人とか本当にすごいなって思いますよ。

トラウマを乗り越えるって、勇気とかそんなんじゃないですからね。

勇気を出して乗り越えるというより、自分が傷つけられてもいいから自分を差し出せるかっていう、寛大さや余裕が必要だと私は思っています。マザーテレサみたいな感じでしょうか。平たくいうとそれが愛なのかもしれない。

この映画のブルースってナルシストじゃないですか。でも、褒められたときに「自分は優秀だから当然」と受け入れられるのは、トラウマで完全に折れたわけではなく自己肯定感があるからこそ、「傷つきたくない」「自分を守れるのは自分しかいないから、必死で守る」ってなっちゃうんですよね。プライドも高いと思います。

普段ちょっとしたミスでアルフレッド殴っちゃったり、急ブレーキ踏んでロビンが頭ぶつけた時はブルースは素直に「ごめん!」って言えるんですよね。もとはすごく常識人で良き人間なんです。

大人というのは、色々な過去をまるっと飲み込めるかどうかだと思うんですよね。

アルフレッドがブルースに大人になってほしいと思っているのは、そこのところだと思うんですよ。

私は毎週リリーフランキーさんのラジオを聴いているんですが、「30すぎて許せないものをたくさん持ってるってのは、じゃあお前はどうなんだよって話だよな」って言ってたのは、まあ、

「大人になれよ」

って話なんだろうなあって思います。

パティンソン君のバットマンを予告編で初めて見たとき、子供っぽいなあって思ったのは、そういうことなのかもしれません。彼は幼少期のトラウマで大人になれない。一見悲壮感ただよう悲しき青年だけど、現実的に考えるといつまでメンタルひきこもっているんだろうっていう話でもあります。逆に言えば、子供っぽいからこそ、ああやって妙な格好をして夜中出歩いて、ヒーローとして活躍することで自己満足を得ている。ある意味大人のあこがれの趣味とも言える。

 

この映画はギャグもかなり面白いんですけど、私が一番笑ったのはアルフレッドの奇妙な行動の数々ですね。

1.変身するアルフレッドw

2.ペアレンタルコントロールを仕掛けるアルフレッド

他にも色々あった気がするけど全体的にさすがとしかいいようのない執事wでしたw ブルースと言い争って「クビにすんぞ」って言われても引き下がらないところとかかっこいいです。もうアルフレッドしかブルースは育てられないですよねw

 

2022年9月26日月曜日

LAMB観てきました

予告編やビジュアルからして実に奇妙な映画です。

なぜ、羊が二本足で歩いているのだろうか……

いや、羊なのか?

この子は何者なの?悪魔の使い?それとも天使?

これが、映画を観ている間ずっとつきまといます。

「アダ」まるで、桃太郎のような存在。

子供が欲しいけどいない夫婦に突然手に入った、子供のようななにか。

桃太郎は幸せな話ですが、この夫婦が、アダを通して本気で築きあげた家族、それ自体は確かにとても幸せそうなのですが、どこか疑問を抱かざるをえません。

川上から流れてきた桃に入った子供の親は、彼らではないからです。 

つまり、アダが、羊であろうが人間であろうが、この夫婦の子供ではないことは確かなのです。

その証拠に、少ししつこいエピソードも盛り込まれています。そして第三の目撃者もいます。

もしこれが、羊の話ではなくすべて人間の話であったら、人権がからむので大変なことになっていたでしょう。そう、この話はファンタジーなのです。

ファンタジーなのに、どうにもうまくいきません。そこがすごくリアル。

私の目から見てもアダはシュールだし、かわいいと言っていいのかわかりません。草を出せば食むのに、食卓にも座るし、人間の言葉を理解して行動する。しゃべれないのに息は荒い。どんなに子供が欲しかったとしても、「これではない」という違和感が満載です。

この、「かわいいと言い切れない違和感」がリアルなんですよね。

このまま育ってしまっても、人間社会には溶け込めない。アイスランドの、ド田舎の、羊飼いのお手伝いとして生きていくのだろうか。

私は映画を観ていて実に恐ろしいのは人間のほうだと思いました。

アダはどこか不気味です。というか、私ならこの子を子供にはしないと思います。だって自分の子供でないことは確かだし、誰かから預かってくれとも言われていないから。

それを、「人間っぽいから」と勝手に人間として育て始める「マリア」が怖いなと思いました。

旦那は、悲しそうにすることもあるけれど、奥さんが子供を欲しがっていることはよく知っているので、家族ごっこに本気で乗っかってくれます。優しい人なのです。

マリアはとてつも無く怖い女性です。映画を観ればわかります。

彼女の「なにがなんでも自分が欲しかった幸せを守る」「そのためならなんでもする」という静かな意志が、かなり怖い。

正直に言いましょう。これは母親のエゴの話だと思いますよ。

こないだツイッターで、「子供は親のエゴで生まれてくる。だから親は責任をとらないといけない」と言っていた人がいて、本当にそうだなと思います。

どうしても子供がほしくて不妊治療にお金をかけ、不安で周囲に当たり散らし、医者にも不満をもらし、やっと授かって生まれたらそれはそれで旦那が協力的じゃないと周りに愚痴を垂れる。育児がこんなに大変だと思わなかったと言われた時は唖然としました。

その逆もしかりで、つきあってる女性が妊娠しても「おろしてくれ」と普通に頼んでいる男性のLINEのスクショも出回りましたよね。

人間って結局客観的に見るとエゴイストなんですよ。

 

この映画の実にうまい設定が、他人の子供ではなく、家畜の子供だから奪い取っていいと思っているところなんですよね。

NOPEっぽさありました。

動物の赤ちゃんなら奪い取ってもいいのか???

 

その結末は最後にわかります。

 

やはり人間は傲慢だと言わざるをえない内容でした。

 

もうちょっと設定を掘り下げてくれてもよかったと思うけど、それをあえて語らない、北欧神話のような、ポエムのようにシンプルな映画でした。

ロバート・エガースの「ウイッチ」と雰囲気がよく似ています。

 

また、映像も綺麗でした。

アイスランドの自然の表現は、黒ではなく白で表現されます。

ザ・バットマンでは暗闇の中からバットマンが現れていたので、黒が引き締まるドルビーシネマは最高の視聴環境でしたが

LAMBは白から始まります。

霧の中から何かが現れるという表現が多いです。白、意外と表現が難しいなと感じました。私が観たスクリーンは残念ながらハズレだと思いました。白に色収差がかかってわっかのグラデーションができてしまっていたのです。

でもLAMBは小さい作品だと思われているのか、あまり、視聴環境に力をいれていなかったようです。残念です。まあ、福岡だと流行らない内容だと思いますが、人は結構入っていました。 

また、NOPEに比べるとものすごく静かな映画で、ちょっと退屈に感じるかもしれません。NOPEは前半退屈だという人が多いですが、2回目はもう内容を知っているので最初からディテールを拾うのに忙しかったです。

NOPEはトリッキーなアクションホラー映画で、LAMBは静かで詩的で、北欧神話のような、やるせないホラー映画だと思います。 

北欧って、ミッドサマーもそうだけど、「綺麗なのにどこか怖い」あの雰囲気は最高ですよね。

2022年9月16日金曜日

フリー・ガイ 2回目

フリー・ガイをもう一度観てみた。この映画は2021年で一番気に入っていた映画。

やっぱり素晴らしい映画だと思う。2回目のほうが泣けたw

まずはキーズの「続編をリリースするよりバグを直しましょうよ!」で心臓グサグサくるw

そして売り上げを上げたい社長の気持ちもわかるが、実はソースコードは盗品なんだよな。リアリティある。エンジニアリング業界の闇を的確にとらえているなと。

恋愛ものとしても完璧だ。

ゲーム内のキャラクターと恋をするのはあるあるとして。

実はそのキャラクターって、「誰かがつくったものなのだ」とゲームのキャラに言わせるのも秀逸だ。散々伏線を張って最後にもってくる。

そしてそのつくった人はすぐそばにいたりするのもいい。 最後に気づくのも素晴らしいエンディング。

一般市民を「モブキャラ」と捉え、「自由に生きていい」というメッセージに変える脚本の手腕も完璧だ。

私たちはそろそろ、特殊能力をもった完璧な勝ち組ヒーローものなんて受け入れられなくなってると思う。

一般市民が巨大な権力と戦うストーリーは熱い。

そして一番やばいボスキャラが完全にギャグで、特権使ってヤバいギャグをぶち込んでくるのも「とっておき」感が素晴らしい。

映画の終盤に近付くにつれて、それが加速していくんだから構成が完璧だ。

ひねりはないと思われるかもしれないけど、3本柱のストーリーを同時に展開させて、

仕込むギャグのレベルも高いし、ゲームならではのギャグも研究されてていろんな視点から見ても納得の内容だと思う。 


2回目に観たら、途中でカメオ出演していたチャニング・テイタムに気づいた。

彼はなに?もう変態キャラとして確定してるの?wイケメンなのにもったいない。でもすごく良い味出してるから、これからも変態でお願いします!!


あえて欠点を挙げるなら、モロトフガールのデザインはまずい。けど、あえてだと思う。

2022年9月11日日曜日

NOPE 2回目

あの興奮が忘れられず、終わってしまう前にと観てきました。

今度は普通の画面だけど、Sony Digital Cinema 4Kという案内が出ました。これはキャッシュトラックの時も出たのですが、この上映方式はコントラストがとても美しく、通常サイズのスクリーンでも非常に快適に鑑賞することができます。黒が結構黒いです。IMAXのほうが全体的に明るいのですが、NOPEは夜と昼のシーンがあるので昼シーンはIMAXのほうがいいかなと思います。

また、NOPEはスクリーンが大きいほうが迫力あるシーンがいくつかあるのですが、やはり終盤は小さいスクリーンでも手に汗握りますね。結末を知っていても、見せ方が上手いんだなと思います。

あと、やはり音響はこの映画にとってなくてはならないもので、音で「それ」が近づいているのを知ることができます。気配の代わりですね。主人公たちも近づいてくるとなんとなく察知し、一番近い時はすべての電子機器がダウンするのでそれの演出もいいのですが、音楽がぐにゃーんと歪んで消えていくあの演出はNOPEにはとても重要。

そして独特の音は、やはり劇場で聞かないと、狙った演出にならないと思うんですよね。

音が大きい時は、「あ、怒ってるな」っていうのが本能的に感じ取られるようになっています。

また、Spotifyでサントラが聴けますが、弦楽器の使い方がとにかく素晴らしい。

スタッフロールで大量の弦楽器奏者の名前がつらなっており、弦楽器がこの映画の3割くらいをつくっているといっても過言ではありません。非常に重要な役割を果たしていますし、センスがいいですね。

 

主題について、多くの方が困惑しているようですが、2回目の視聴でやはりテーマは「動物愛護」であり、「動物を支配することの危険さ」を警鐘しているのがよく伝わってきました。エピソードを追うごとにそれは強くなっていく。だから、 ゴーディーは伏線であり、人間にとっては注意喚起を促す事件でありました。なのに、それを生き延びた人たちはなぜか学習しておらず、傲慢にも次の生き物を手なずけようとする。その結果、ゴーディーの回想シーンの後、最後がラスボス「Gジャン」なのだと思います。

私はこの映画を観ていて今まで出会った色んな生き物のことを思い出しました。 

海でダイビングやスノーケリングを楽しむうちに、水族館に行く気が失せました。水族館の生き物は「飼われている」から、とても快適な環境で美しく観ることができますが、まったくライブ感がない。あれじゃ映像と大して変わらない。また、飼われているものを見る「不快感」がありました。それは、この映画に通ずる、「人間の傲慢さ」が原因だったのだと思います。

こないだ野生のイルカが人間を噛む事件がありましたが、イルカもストレスをためやすい生き物です。野生の生き物には手を出してはいけない。これは大原則で、ダイビング中も基本的には一切生き物には手を触れませんでした。ウミガメは結構近づいてきますが、触るのは禁止されています。マンタ鑑賞ダイビングでは「取る距離」が定められており、それを逸脱するダイバーは手で制止されていました。

だけど、人間だってそうですよね?

セクハラの何が問題かというと、その辺の見知らぬ女性をいきなり触ったり、距離感を間違えるから反撃され、警察に訴えられるわけです。治安なんですよ。動物や人間にはそれぞれパーソナルスペースや、なわばりがあるということだし、「見てはいけない」も同じです。私はあまりにも職場で好奇の目にさらされるのに限界を感じて辞めましたし、若い頃は本当に様々な目線にさらされたなと思います。ピリピリするのはそのせいなんですよね。

 

2回目、気になったのは

エンジェル、やっぱりいいですね。大変お気に入りのキャラクターです。

オーディションに参加したブランドン・ペレアは、台本通りの「気のいいハッピーな家電店員」を覆す芝居をして、ジョーダンピールに採用されました。これすごくいい話だと思います。役者の解釈によって、キャラクターが造形され、あの「生意気なのにいいやつなエンジェル」が出来上がったわけですよ。

エンジェルはいいやつだけど、最初からやたらいい人だと視聴者はかえって不自然に感じるし、なんなら疑ってしまうかもしれません。

エンジェルは最初退屈そうに皮肉をまじえながら接客をし、なんだかんだで事件に巻き込まれますが、始終かったるそうに元カノの愚痴なんかを言っています。でもそれがあとで効いてくる。やたら首を突っ込みたがり、助けてくれる言動から、「なんだいいやつじゃん」と好感を持つわけです。

私が気に入っているシーンはやっぱり「We're in trouble!」って言いながら家に入ってきて包丁持って机のしたでプルプルしてるシーンですね。かわいすぎて何度観てもお気に入りですww包丁で勝てる相手じゃないところが、エンジェルの天然でかわいいところをあらわしていますね。

その後も、本番の作戦中に「正直言うと怖くて…」と言っているし、ビビリがひとりいるほうが癒されますね。

あといいなと思ったのは、作戦中に「ねえ、これってさ、人のために、地球のためになることなんだよね?」って聞いてくるところですね。このまさに天使な性格により、彼は厄災をまぬがれたのかもしれません。まさに、天使。 

あとご老人も2回目はますます好きになりましたね。いいキャラですよね。彼は、最高傑作を撮影できるなら死んでもいいと思ってたんでしょうね。格好良かったです。カメラマンの神ですね。

クリーチャーの雑な造形が批判されがちですが、まあ、あんなもんかなと思いつつ、もう一工夫は欲しかったですかね。明らかに布にしか見えない時もあるし。 変形したあとスッと戻る感じは不思議な生き物という感じで好きですし、なんかああいうの海で見たことある気もします(サイズは手のひらだが)。


NOPEの看板を見て感動のあまり泣き出すかわいいブランドン・ペレアはこちら。自分で動画アップしてるのが笑えるけどw

 


 

2022年9月9日金曜日

パーム・スプリングスを観ました

パーム・スプリングスというのはカリフォルニア内地で有名なリゾート地だ。カリフォルニアにしては珍しく、一応温泉地である。日本のように男女分かれて裸で温泉三昧ではなく、あくまでも温水プールではあるが。私が子供の時に連れて行かれたのだが、ビーチとかではないのであんまりおもしろい記憶がない。が、大人たちに言わせるとなかなか極上の金持ち向けのリゾートらしい。 ワイナリーとか、ゴルフ場のイメージがある。私はハワイのほうが断然好きだけど、カリフォルニア内部からのアクセスは確かに速いし車で行ける。

この映画が上映していた時、あまりにもリア充なキービジュアルのせいで敬遠していた。最近公開されたリア充が次から次へとサメに喰われる映画と似たような感じかなと思っていた。

ストレス発散にと観始めた映画であったが、最初は確かにふざけた怠惰なラブコメという感じがした、というか、最初から勃起不全だの、浮気だのとどうやら煮詰まった連中であることはわかった。 

この映画のテーマは「モラトリアム」である。

高度経済成長期が終わった日本は団塊世代の子供たちが就職できない就職氷河期に陥り、金持ちな親のもとで育ち実家で無職でくすぶる「ニート」「フリーター」が流行った。私の世代である。

この氷河期がうっかり就職もせずに過ごすと老後えらいことになるわけだ。今の40代で、犯罪を犯すやつなんかが、結構それに当てはまるのかもしれない。しかし我々の世代は単純に日本経済の犠牲になっただけなので、苦虫をかみつぶしながら、今日も自分より下の世代を育成しつつ、こき使われる。50代~はバブルがまだ続いているかのようなふるまいをし、ハラスメントし放題だと思っているのだから完全に板挟みだ。 

この映画の主人公は完全にモラトリアム化しており、ループする日常に大満足してしまっている。何度か自殺を考えたものの、死ねないのであきらめてしまい、偶然女性が同じループに入ってきたので彼女を愛し、ずっと年をとらずにループを生きることに満足してしまったのだ。

このモラトリアムは、氷河期世代には刺さるものがある。

さて一発奮起して実家を出て就職するか?それとも親の寿命がくるまでしゃぶりつくすのか?

我々には永遠の命などない。いつかは老いて、介護が必要になるかもしれない。親が亡くなったあと、自分が喰らいつくした分、資産は残っていないかもしれない。その時自殺しようにも、かなり億劫にはなるかもしれないw

さてこの映画の面白いところは、モラトリアムに完全に浸っている男性のかたわらで、女性がループを利用して脱出方法を勉強し始めるところにある。

あまり男性を批判したくはないけれど、これはあるあるかもしれない。

女性はなぜか現実を直視する傾向にある。

私が実家を出た理由は、親と一緒にいると発狂しそうだったから。ほうっておけばニュースにある刺しちゃった事件を起こすかもしれないと思った。運よく、正社員にも一度なって、その後派遣で美味しい仕事にもありつけるようになった。採用する側はまだバブルをひきずっているので、若い女性としての私を採用したのかもしれないが、そんなものは利用してナンボだ。(実際女性というのはこういう時男性を利用して就職するのはありだとは思う)

だが、男性はなぜか安心すると動かなくなる人が多い。

例えば、派遣の仕事自体はよかったのだがとにかく時給が低かったため、再度正社員の転職先を決めた私は、当時社内で付き合っていた男性に事後報告したのだがひどく狼狽された。彼はひとつのモラトリアムに浸っていた。

今のぬるい職場が最高で、彼女が時給が低いと言って転職しようとしているのが信じられないらしい。ぬるま湯にいきなり氷水をぶっかけられたような気分だったのだろう。

映画の主人公も同じくであった。彼は今の幸せが壊れるのが信じられないという風であった。女性は「臆病者」と罵る。

結末はご自身の目で確認してほしい。

モラトリアムの罪とはなんだろうか?

例えば。

上の社内恋愛は放っておいたら、私はいつまでも時給が上がらず、万年派遣社員だ。正社員登用が無いのは知っていた。しかも実はそのあと、正社員も給与が低い会社だと知った。

よく同棲したまま、結婚できないカップルがいる。これは放っておくと、女性に飽きられて捨てられる結末が多い。女性には出産のリミットがあるからだ。婚活で売れ残るのは実は男性が多いともいう。女性のようにメイクなどで着飾らないので、老いると目にみえて醜くなってしまう。

実家暮らしニートは上記の通り、資産の食いつくし、経済のますますの冷え込み、犯罪などにつながるし、本人が五体満足でも無能ということになるし、年をとってからの就職は非常に厳しくなる。体が健康でもメンタルを病むだろう。

ループのぬるま湯につかることの罪とはなんだろうか?おそらく、女性は発狂する予感があったと思う。私なら発狂する。一見楽そうではあるが、毎日周りは同じことを繰り返す、そして死なない人生。なにか楽しいことがあるだろうか?もってせいぜい数か月だろう。

非常に深い主題である。人生の時間が有限であることの意味を非常にカジュアルに、ギャグをまじえて語る。軽快で、一見不真面目なノリなのに、説得力がある。最後までお笑いのノリも忘れていないし、さわやかで押しつけがましくない。

とてつもない良作ではあるが、あまりにもノリが軽すぎてアカデミー賞とかはとれないと思う。だけどこういう軽いノリの映画は未来永劫残って欲しいジャンルだ。

2022年9月7日水曜日

マット・リーヴスの「猿の惑星」シリーズ

ザ・バットマンがとてもよかったしクローバーフィールドも大好きなので、猿の惑星を観てみようとレンタルしてきた。なんとか3部作全部観た。主演はアンディ・サーキス、猿のモーションキャプチャーと演技もキャプチャしている。

1はマットリーブスじゃないので、あんまり期待していなかった。こちらはCGが稚拙で、いきいきとしているのは主役のシーザーくらいのもの。話は面白いのだが、なんとなく安っぽい。

2新世紀が一番気に入った。ドアップの演出から、人間との勢力争い、猿どうしの仲違いによる混乱など、テンションが低くて展開が遅いこと(それでも3よりは早い)以外は面白かった。そしてマット・リーヴスらしい暗い絵面と、ゲイリー・オールドマンの涙を誘う名演技などが光った。やはりエモーショナルなシーンは得意分野なんだなと思った。

3聖戦記に関しては、正直だるかった。というのは、これはマット・リーヴスの悪い癖なのかもしれないが一個一個のシーンがテンポが遅い。話としては面白いのだが緩急がなく一定のテンポで進むので人間の脳だと飽きてしまうw 

私は最近クリエイティブの本質について考えていたことがある。

人の脳は飽きやすいのだ。

ではどんなクリエイティブが人をひきつけるのか。それは、「コントラスト」だと私は思っている。テンポで言えば緩急。クライマックスとそうでない部分の熱量の差。文字組で言えば、ジャンプ率。フォントのウエイト。色はもちろんそのまま、コントラストだ。配色が美しくてもコントラストがなければ早めに飽きてしまうものだ。

眠たい色合いの写真や絵は早めに飽きるが、絵の中に一か所シャープなコントラスト(ピントが合っている部分)があると美しくていつまでも眺めてしまう。美大向けのデッサン教室に通ったときにそれを学んだ。背景は綺麗にぼかすこと。手前のどこかに描き込む部分をつくれと。これは映画の撮影でももちろん存分に使われている。またドアップとひきの画面を交互にもって来るなどもコントラストだと私は思う。


猿の惑星シリーズは、一番最初の映画を子供の頃に観て驚愕した覚えがある。あれほどの恐怖や驚きが、そのあと制作された映画にはない。どこにもなかった。ティムバートン版で非常にがっかりし、猿の惑星にはもう期待しないと思った。マット・リーヴス版は完成度としては悪くないのだが、最初の映画にはやはり負ける。猿の惑星の問題点はなんなのだろうとちょっと考えた。

まずはキャラクター。猿の見分けがつきにくい。シーザーはわかるが、それ以外がなんとなくしかわからん。 

そしてNOPEを観た人はご存知だと思うが本物のサルは使えないので、全部CGになってしまう。8割CG映画だ。ちょっときついものがある。アバターだって好きじゃないし、次作もどうかなと思ってしまう。やはりリアルな俳優の映像のライブ感が好きだ。

どういうわけか、猿の惑星は人間の俳優もなぜか見分けがつきにくく、個性もいまいち。わざとなのだろうか。ザ・バットマンにあれだけ似たような警官が出てきたのに、なんとなく誰が誰だかわかっていた。2に関しては、ゲイリーがいたし、若い男の子や綺麗な女性もいたんだけど、3は女の子以外の人間がよくわからなかった。なにしろボスキャラの顔に全然個性がなかったw 

それから、マット・リーヴス版は、猿VS人間とはっきり描かれていない。複雑極まりない関係の中、シーザーはもまれて疲弊するって感じの構図になっている。はっきりしないので、元祖の映画みたいにひたすら猿から逃げるような怖い構図になっていないので、ある意味、感情移入しづらかった。

細かいエピソードを観ていくと色々面白いけど、結末でなにか壮大な問題解決が行われたかというとそうでもない気がする。

これがバットマンであれば、どうせブルースはこれからも戦わなきゃいけないので、セリーナに「なんも変わらないわよ」って皮肉言われてもまあそうやね、と思うのだが、猿の惑星はあれでいったん終わりなので未消化すぎてもやった。

ただ、アンディ・サーキスはすごい頑張ったと思うし、もはや猿なのかアンディなのかわからないくらい似ていたし、これからもアンディ見たら猿思い出すと思うw

2022年9月4日日曜日

ひたすら新幹線をぶっ壊す映画「ブレット・トレイン」

ブレット・トレインには原作があるらしい。しかも日本人の作品だ。私はそれを読んでいないのでそれ前提で感想を書く。

そもそも主人公は違う人間らしい(ブラピではない)のだが、原作主人公は脇役にまわってしっかりと存在感を放っている。

だが、映画全体がギャグテイストのため、ブラピがアホで雑な白人殺し屋をやることで、全体的にファンキーなテイストで成り立っている。これが木村が主人公だと暗くなってしまう。それはそれでありかもしれないが今回の映画には合っていない。とにかく全体的に「タランティーノっぽい」極彩色の派手なアクションが目白押しだし、最後はとてもハリウッド映画っぽく終わる。完全なるアメリカ映画だ。我々日本人からしてみれば、「ひたすら新幹線破壊された」「すっごい損害額になってそう(震)」っていう映画。ネイサン・ドレイクが日本で遺跡を発見しにきたらこうなりそうだ。

唯一感心したのは、一応駅の順番が大体合っているところだw

真田広之氏は米原で乗ってくるが、みなさんは米原で降りたことはあるだろうか?私は一回だけあるのだが、「ここどこやねん」みたいな場所で、なのに、いろんな乗換が可能な割と重要な駅であった。映画では霧がかかっていて(笑)もはやマジでどこやねんである。

キャラクターが次々と現れて、どうつながっていくのか?というちょっとしたミステリー調になっている。そういう意味では面白いのだが、ちょっと全体的にバカなので、前半はいらつくことが多い。

このノリ、どっかで見たことが…ああ、「キル・ビル」かな。2かも。ヘビの使い方がイイ感じに似ていた。

あまりにもバカすぎると思っていたが、終盤大ボスが出てくるあたりでみなさんの怒りや恨みつらみが爆発するのがクライマックスとして最高だった。なにしろ大ボスにも、恨みがあるのだ!!なのにブラピは最後までバカだった…。だから主人公なのかもね。 

列車の進行と、物語の進行がシンクロして素晴らしいのに、ブラピのキャラがアホすぎてなんともいえない、不真面目感があるけど、まあ娯楽映画ととらえればね…


キャラクター別感想

レディバグ(ブラピ)

こいつそそっかしすぎるんですよね。殺し屋には向いてないでしょw多分ブリーフケースを回収するだけとかそういう任務がいいよ。それでもまともに出来てなかった感あるけど。

「ヒットマンズワイフズボディーガード」を思い出す設定で、アンガーマネジメントに問題があるからセラピーの話を持ち出してきたりする。このキャラはカーヴァー(ライアンレイノルズ)の代わりに出てきたそうで、もうその時点で色々かぶりすぎててカメオ出演数秒で大爆笑。

見方によっては、「アホな白人」なので嘲笑してもいいと思う。日本荒らしてるしw

タンジェリンとレモン

すこぶるウザイ二人組だったけど、レモンが「俺は人の本質を見抜ける」と言ってたのがよかった。そうなんだよね。本質見抜くのって大事なスキルだと思うよ。だからレモンは好き。タンジェリンはうざいだけだった。

木村

いい感じのキャラなのだが、周りがうざすぎて存在感がかき消されている。

木村(父)

真田広之氏。下手すると息子よりキラキラしている。すごい貫禄なのに愛嬌があって最高だった。あとやっぱり刀アクションが超本格派でかっこよすぎる。

彼が話を始めるとブラピがウザがるのでさらに白人のバカっぷりが顕著になった。もしやちょっと白人をバカにした映画なのかもしれんw

プリンス

プリンスだが女子。すごくかわいいし、とてもいい存在感を放っているし、性格がやばいのもいい。終盤で父に対するうらみつらみを淡々と語りだすシーンがとてもよくて、あそこは観客がシーンとなってた。考えさせられるキャラクター。

「誰かの妻とか他人の人生の脇役になるつもりはないの」が好きです。

そしてプリンスに騙されたのは実はレディバグだけっぽい(やはりバカ)

ホーネット

いいキャラなのにすごく出番が短くてワロタ。あとジョジョ感がハンパなかった。そのままアニメに出れる。

チャニング・テイタムのカメオ出演

多分ここは笑いどころのトップ3の3番目くらいじゃないだろうか。あのチャニング・テイタムは、ロストシティよりいいかもしれないぞww

マリア

ロストシティつながりでサンドラブロック。美しすぎた。ていうかブラピは彼女のこと好きなのかねぇ。ついでにチャニング・テイタムも呼んだ感じ?ロストシティ楽しかったんだろうね。だってノリノリだったもん。

大ボス、白い死神

なかなか出てこないので実はどっかに紛れてるのかと思ったらちゃんと大ボスとして出てきた。実は彼のキャラはとても良いのだ。彼が適当なボスキャラだったら映画の評価はB級のさらに下になりそうだが、彼が言う「運命は自分で曲げるものなのだ」的なセリフがすごくよかった。

なのにブラピは最後までバカキャラだった。

 

私が笑ったところは以下:

第一位:やはり走って新幹線に飛び乗る大馬鹿野郎のタンジェリン。その後の車内への乗り込み方もおかしい。なんだあれ。ひどすぎるよ。絶対にリアルでやらないでね(できません)。

第二位:レディバグが代打をつとめる前にアサインされていたライアン・レイノルズ。カメオ出演だけで大爆笑だ。ライアンの代役ならしょうがない、と思ってしまうのが効果的すぎる。

第三位:カメオ出演のチャニング・テイタム。セリフに大注目だ。しれーっと座ってるんだけどカメラに映るだけでなぜか笑ってしまうから得だよなあ。なんで いるんだよ みたいな。