2023年6月26日月曜日

探偵マーロウ

ついに俺たちのリーアム兄さんも70歳を越えた。

そして今作が彼の出演100作目の映画だという。

今年実はリーアムは三回目なのだが、どうにもいまいちぱっとしない映画が多かったが今回は良い。観た後爽快感があり、明日も気楽に頑張ろうと思えた。

映画はいたって普通のミステリーで、ものすごいどんでん返しがあるという風でもなかった。

ただ、1939年あたりのアメリカの表現が徹底していて、役者が実に自然に溶け込んでいて画としては見ごたえがあるし、美しい。

特に主役のリーアムはハマり役で、ずっと見ていても飽きない。

よくネットで「一緒にいて安心できる人が最高の相手」という恋愛のアドバイスがあるんだけど、リーアムはその点では100点満点である。この混迷した時代に、精神崩壊をギリギリの瀬戸際で食い止めながら、リーアムを見ていると、まるでそんな混沌など存在しないかのような安心感と包容力を感じる。

それではなぜリーアムが良いのかと考えてみた。自己分析では、

まずは特筆すべきその声。

しわがれており、今までも年齢より老いた声を出すような人だと思っていたが、その割に字幕を観ていなくてもはっきりと聞き取れる。彼にはおそらくテクニックがあり(いわゆるparticular set of skills...)役者をやり続ける間は、発声練習をしているに違いない。

全身からあふれ出す善人オーラ。

リーアムは人の良さで知られている。違法アップロード映画についてめくじらを立てるというよりは、「違法だよ~」といつものペースで注意したり。格闘しかけてくるアンソニー・ホプキンスにニヤニヤしながら相手をする動画なんかも上がっているw

その善人オーラがいちいちどのシーンでも発揮されており、字幕を観ているのが本当にもったいないのだ。

表情の芝居がわかりやすく、魅力的でかわいい。

彼はもともと表情をつくるのが非常に上手い。一番うまいのは「悲壮感」の顔。これはリーアムがやると無茶苦茶ハマるので、シンドラーのリストはリーアムで本当によかったと思う。

その次に有名なのが怒るリーアムである。これはなんかしらんけどギャップが凄いので96時間でハマった人がたくさんいる。

それから、女性に対する優しい顔。一番いいのはお子さんに対する優しいリーアムフェイスである。これは誰もが癒される。そして、女性に困ったことをされた時の戸惑いを見せる表情などもかわいらしい。

私は「クールリーアム」も好きである。時折見せる「飽きれて見捨てるような」顔。まあとにかくどんな状況も顔で表現できてしまう人なのだ。

話の筋はそれほどおもろくはないので省略するけど、リーアムの作品には暴力がつきまとう。なぜか、窮地に陥るとやたら殴ったりけったりするのである。なので血の気の多さは健在である。この強さと優しさと誠実さの奇妙なバランスこそがリーアム・ニーソンの味ではないだろうか。

あとはやっぱり、衣装だ。

マーロウは基本的にずうっと背広で、何種類かを使い分けているが、ダンディズムがすごい。また、帽子もよく似合う。調査する時は必ずタバコを持ち歩き、相手に勧めることでアイスブレイクしている。トレンチコートも相変わらず似合う。一生着てて欲しい。

まあちょっと、リーアム以外に褒められる部分があまりないんだけども、「リーアムファンだから観に行ったけどよかった!」と素直に言える作品である。

リーアムファンじゃないとちょっぴりきついかもしれない。意外と話が長いのである。

 

2023年6月11日日曜日

リトル・マーメイド、観たよ

あれこれ言われてたけど、「綺麗な海の映像」に惹かれてドルビーシネマにやってきたよ。

横浜のほうが博多より大きくない??

調べたけどよくわからんかった。同じか?

席が近すぎたのかなあ。

アースラ巨大化するとものすごいうるさいんよw座席が振動するわ(音で)。

ところで今回実写化して一番よかったのはトリトンのお父ちゃんだったんだけど

ハビエル・バルデムだったんだね~。

この人、初めて見たのが「食べて祈って恋をして」。

フィリポ、すごく良い人なんだよな。で、この人、泣くのがすごい上手なんだよね。濃い顔なんだけど繊細な感情表現をする人。それが見事なまでのはまり役だった。

もともとイケメンだからかもしれんがドルビーシネマのドアップで一番美しかったのはトリトンのお父さんだったと思う。

そして、アニメ版より「父と娘」のやり取りがきちんと描かれていることに好感を持ちました。というかそれがメインじゃない?

あとよかったのが執事ね!あれはよかったね。やっぱり昔っから王子を見ている執事は王子本人より真の気持ちがわかっているんだなあ。

つまり、あれは、アリエルの父と

エリックにとっての義父である執事と、義母である女王様と、

それら保護者と保護される「子供たち」と、それの自立と、親離れの話なんだよね。

だから最後にすべての保護者と和解して、子供ふたりが自立していく様がとても美しいのですよ。それは、アニメよりきちんと丁寧に描かれていて、それがよかったです。

 

親御さんが泣く話だと思うんだけど、なかなか親と和解できる人間が少ない日本人のひとりとしては別の意味で泣けますね。理想の世界っていうか。

 

みんなが批判している件についてはこう思う。

確かにアリエルには華がない。素朴すぎるっていうのかな。ただ、もしかしたら歌声や生命力みたいなものを大事にしたのかも。

ただ、美しさでいうとやっぱり黒人ならゾーイ・クラヴィッツレベルは見たかったかな。ルッキズムが~って言われそうだけどディズニーだし。

多様性という意味では、エリックは今回英国人だが孤児なので、あんまし関係ないと思っている。つまり逆に言えばエリックは孤立してもおかしくない状況にあったなか、自分の肌の色に関係なく南米の世界になじんでいたのだ。(多分南米?だと思う)

エリックは人種や種族に関係なくしゃべれもしないアリエルと仲良くなれるので、実に良い子である。

また、アリエルの姉妹全員肌の色が違うのはおかしくない?という指摘は、よくセリフを聞いていればわかる。彼女らは、「七つの海」それぞれの守護者ということになっている。

なので明らかにエジプト海(紅海?)っぽい子もいれば、明らかにアジアの海っぽい子もいる。北の海っぽい子もいる。

アリエルは明らかに南米、カリブ海などの担当だろう。そう考えると辻褄があう。

つまり、エリックが部外者だったのだが、彼は実にうまく地域に溶け込んでいるのだ。

南米を支配しにきたのでは、という考察も見たのだが、彼の義母は肌が黒い。地元の女王である。エリックは実は王家の人間ではなく、王子であることに困惑している。

今回は、エリック王子が親の束縛を振り切るのと、アリエルが自分の種族を抜けることで、父から離れるという話になっているのだ。

 

あとね、「チケット・トゥ・パラダイス」でもまざまざと感じたんだけど、結婚は駆け落ちではなく、周りの人すべてに祝福されるものでなくてはならないのよね。そういうの私はとても涙が出ちゃう。

だって、結構うまくいかない結婚見てきたから。

結婚するのがいいとも思わないし、結婚しないのが悪いとも言わない。「祝福されて結婚してそれを維持する」のがものすごい大変だからこそ、親のような目でこの理想の奇跡を観ていたいのです。

できればみんな仲良く生きられればいいなと、エブエブの時のように思います。 周りのすべてに感謝できるかが、大事なのです。

 

 

ちなみに「リトル・マーメイド」アニメ版はアメリカにいるときにリアタイで観た映画なのですが

あの時期は、本当につらくて、アメリカ生活はトラウマで、そのトラウマのシンボルがこのアニメといってもいいくらいなのですが

30年くらいたって、実写化され、繊細な表現が加わったことにより

気のせいレベルですが、トラウマがだいぶ払拭された気がするのです。少し救われたのかもしれない。過去の記憶を美化して救うというか。

当時は若い女の子があの無茶苦茶な詐欺師に引っかかるシナリオが恐ろしかったし、あんなに戦わんといかんのかみたいな記憶があったのですが

アメリカもだいぶ多様性も含めて優しくなったんだよ、みたいなメッセージすら感じました。トリトンのセリフが少し増えているのと、表情が多めに映されているのがその証拠だと思います。

2023年6月10日土曜日

M3GAN、最高!

M3GANは前々からとても楽しみにしていました。

これはおもしろいやつでしょー!!

予告編自体が面白いからな。

実際期待を裏切らない面白さです。もうちょっと長くてもよかった!例えば、冒頭のジェマの「別のプロトタイプを急いでつくらなきゃいけない」くだりを端折って、最初からミーガンの開発にいっちゃってもよかったのでは。

「ブルース」っていうロボットの伏線がすごくよかったと思います。ジェマが学生時代かなんかにつくった商品化しなかったロボット。しかも、ミーガンの作り方はブルースの延長上で頭の構成は同じなのです。 

しかし、ミーガンは圧倒的にビジュアルとキャラがいいですよね。

美少女、頭が良い、普段は寡黙だが観察力が優れていて、なんでも情報をキャッチしてしまう。人形だからと油断していると、実は彼女すごい腕力。

なんでそんな腕力、備えさせたんだよ…wロボットってブルースみたいにでかく作らないと、普通は「細ければ弱い」ってならない?

表情がとても細やかな調整がされていて、意外と表情豊かで好きだったりします。

個人的にはミーガンの性格が好きなんですよね。

女性キャラならではの腹黒さがすごくいい!

そしてセリフ。ちょっとアンソニー・ホプキンスを思い出すような、上品で知的なひねりのあるセリフで相手を追い詰めます。

そして「あなた悪いことしたでしょ!」って聞かれると、丁寧にはぐらかす。

そういえば、プロメテウスのデイヴィッドもそんな感じでしたよね。 

しかしですね、ミーガンは悪いことするやつらを攻撃するので、スカッとしちゃうんですよね。すべては、ケイディを守るためなのです。

実際、ケイディが泣き始めた時の対応が、完全なる母親のようで、理想的すぎて私もその場を見ていた投資家(?)と共に泣きました。

世の中には理想的な母親などいなくて、AIがその代わりを果たす日が来るのかもしれません。

主人公のジェムは子供がいないので読んであげる本すら持っていないのに、ミーガンは声音を完璧に変えておもしろおかしく絵本を読んでくれます。数学も教えてくれる。しつけもしてくれる。

最後にミーガンが「子育て丸投げするからよ!」みたいなこと言っててマジで笑いました。 

そう、この映画のいいところってブラックユーモアなんですけど、結構苦笑しながら「いいぞ!やったれ!」ってちょっと思っちゃうところがいい。

オチはそういう意味ではちょっと残念。

ミーガンがイイ子に再調整されるとかでもよかったのでは…。(そして2で再覚醒)

あと、もっともっとミーガンに「ヤンデレ」してほしかったです。ケイディあなたのためなのよ。って。

 

でもそれだとちょっと予定調和すぎるし、スピルバーグ(AI)寄りになっちゃうかね。


割とどうでもいい「ミーガンダンス」が大人気なのわかります。でもあそこが最高なんですよ。ちょっと「シャイニング」を思い出すあの感じ。あとちょっとエイリアンやターミネーターを思い出すシーンも。

結構、本筋に関係ない面白いディテールって流行るんですよね。私は、芸術のそういうところがいいな~っていつも思ってます。ゲームとか漫画とかも、「小ネタ」がめっちゃ流行るじゃないですか。あれいいですよね。

 


2023年6月1日木曜日

アルマゲドン・タイム 観てきました

水曜有休が取れたのでこの映画、結構やってなくて、日比谷まで超久しぶりに行ってみた。

ジェームズ・グレイ監督本人の少年期の自伝みたいな内容で、フェイブルマンズとジャンル的には似ているのだが、、 

前にも書いた通り、フェイブルマンズ一家は私に言わせれば結構お金持ちな家庭。

主人公の少年は、映画が撮りたいと思ったら割とすんなりカメラが手に入るような経済力。ちょっとその辺が信じられなくて、感情移入しづらかった。

でも、今回のアルマゲドン・タイムは違う。

「絵を描くのが好き」な主人公のポール。

陰キャではないかもしれないが、なぜか反抗的な態度に出がちで、先生からは怒られてばかり。

彼の理解者は寛大なおじいちゃん。アンソニー・ホプキンスが演じているんだが、やはり存在感がすごい。

こんなじいちゃんいたら、ハグどころじゃない。毎日、悩み相談しにいってしまいそうだ。ポールが唯一子供らしく無邪気な声を出すのはおじいちゃんの前だけである。

ことあるごとに問題を起こし、父には殴られ、母には「もう庇ってあげないわよ」と言われ、自らの枠をはみ出そうとして、教師の指示に従えないポールは、徐々に追い詰められていく。

そして唯一できた友人ともなぜか犯罪をしてしまう。

ポールはおじいちゃんのいうことしか聞けないので、アンソニー・ホプキンスが丁寧に説明をする。ポールはユダヤ系で(この辺はフェイブルマンズと同じだ)、苗字が違っていたら名前だけで差別されると。だからとりあえず大学までは出ろと。

ポールは上流階級の学校(なんと、トランプの祖先がいるwのですごくわかりやすい)に転校させられても、疑問を抱き続ける。最後らへんなんてもうパーティーなのに途中で出て行ってしまう。そしてポールはようやく、じいちゃんの言ってたことの意味をかみしめるのだった…。

時代は差別だらけだし、学校にはトランプの祖先がいるしで、中流階級ならではの切羽詰まったシチュエーションはとてもリアルだった。テンポもいいし、次から次へと問題を起こしてしまうポールがどうなるのかとても気になる。ポールは、結局じいちゃん含め周りにものすごい助けられている。それに気づくのには時間がかかる。彼はとにかく、早く「芸術の道」へ行きたいのだ。

フェイブルマンズと比べると圧倒的にポールの方が私に近かった。

中流階級ってのは大学に行けるくらいの学費はあるんだが、甘えて失敗ばかりしているとどうしても落ちぶれていく。私もそれはまざまざと感じている。じいちゃんの世代のユダヤ人が一生懸命貯めた財産なのである。

最後、家族のだんらんにも参加せず絵を描こうとするポールには自分が強く重なった。私のおじいちゃんもとてもいいひとだけど、やはりこのホプキンスじいちゃんには負ける。私が女性だから、

「戦い続けろ」
「嫌なことを言われたら言い返せ!」

などとは言ってくれないのだ。

なのに私は、男性と同じ道を必死で歩く宿命にある。


今年の正月早々、アンソニー・ホプキンスのインスタグラムアカウントに、強いメッセージがアップされていた。それは少々長めのメッセージだが、要約すると、

「絶対に誰かに貶められるな」

という内容である。

私も幼少期の頃周りに絵を描く自由を阻害され、非常に怒って泣いていたことが何回もあり、そのたびに先生に叱られた。「なぜ泣くのか」と。

もうあの時から、私の戦いも始まっていたのだ。