2023年4月30日日曜日

パリタクシー 観てきました

日本の俗物的な景色に飽きて、パリが見たいなあと思って観に行きました(明解な動機)。

パリは、今まで私が旅行で訪れた中で一番洗練された都市で、一番驚いた街です。

「こんなのが現実に存在すると思わなかった」というのが正直な感想でした。

バンコクにも驚きましたが、バンコクがやっているのは豊洲ららぽーとやグアムのショッピングモールのいいとこどりです。それでもめちゃくちゃ綺麗でしたけどね。あと、そもそもタイ人は性格が良いのと、温暖な気候や美味しいご飯も相まって、最高な国ではありました。が、パリには勝てないですね。

パリの美しさというのは、伝統を真剣に守り通しているからこその美しさなんですよね…屋根裏部屋があこがれの場所になるのはパリくらいのもんでしょう。

なので、この映画を観て「いやこんな綺麗じゃないでしょ?」と思った方、騙されたと思って一度行ってみるといいと思います。遠いし、めっちゃ高いけど。私は親のはからいでアパルトマンに泊まれたんですけど、狭いのに快適なんですよねぇ。オシャレなの。

この映画、予告編では、もっとほのぼのとした話かと思ったんですが、そうでもなかったです。なにしろこのおばあちゃん、「パリ解放」の1944年に運命の男性と出会っているという年齢。早々に妊娠してしまうのですが、そこから人生は狂ったジェットコースターのように彼女を振り回します。

なのに、92歳で彼女は美しい微笑みでタクシードライバーと我々を魅了します。

もっと人生語ってくれないかなあ、なんて思っている時に日が暮れてしまって、彼女とは一度お別れをするのですが…。

この後の展開で結構号泣なんですよね。なんていうのか、美しい終わり方だと思いました。

最初、このストーリーが始まった時はタクシードライバーのシャルルもやる気がないし、なんでこんなに寄り道するんだ、とか思うんですけど(正直車のシーンが多くてだるい)、

ところどころで、歴史を感じるモニュメントなどを見て涙ぐむご婦人を見ていると色々あったんだなとは思ってましたが。

彼女の人生は失敗だったかもしれないし、シャルルがつらそうに生きているのを見て、きっと同情し何かバトンタッチできないかと思ったのでしょう。偶然の出会いから、ここまで広げられるのはフランス人らしい展開だなと思いました。

フランス人って、怖いのかなと思ってましたがそうでもないです。

すごく軽やかで明るい。彼ら多分わかっているんだと思うんです。散々、世界大戦で虐められて、でも基本的に人類はみんな友達なんだと。だけど、怒るべき時はしっかり怒らなければならないと。

おばあちゃんの過去で怒りのあまり恐ろしいことをするシーンがあるのですが、私は痛快だなと感じました。しかし彼女の人生はそれでさらに窮地に追い込まれてしまいます。本当に、彼女もつらいことだらけだったんですよね。その、フランス人の「怒るべき時は徹底的に怒る」この激しさがすごくいいと思っています。

彼女の人生はもしかしたらフランスという国の歴史と同じなのかもしれません。

人生はつらいし、次から次へと不幸なことに見舞われるけど、でも、今日のご飯は美味しいし、ジェラートも美味しかったでしょう?そして、もしかしたら、今日あなたが拾ったお客さんが、幸運を招いてくれるかもしれない。親切にしたらね。

 

というライトなメッセージなのかもしれないけど、すごくストーリーテリングが上手で、きちんとしみてくるのがよかったです。

また、邦題は非常に残念です。このタイトルは、おそらくフランスにあこがれを抱く日本人のためにつけたものだと思われます。それ自体は成功していると思います。今日なんて、GWだからか超満員でしたよ。一日、一回しか上映しないのに。だけど思ったより内容がいいから、クチコミで広まってる可能性もありますね。

原題は「Une belle course」、これはフランス語がわからなくてもなんとなくわかりますね!「美しい旅路」ということですが、この旅は人生のことを言っているのだと思います。タイトル最後あたりできちんと回収されるので、理解できていると面白くなるかも。

2023年4月29日土曜日

タリーと私の秘密の時間

シャーリーズ・セロンが高く評価された映画のうちの一つ(アカデミー賞は犯罪者の映画)と聞いてなんとなく見てみたのですが、とても見やすい映画でした。

読みやすい小説を読んでいるかのごとく、ストーリーがするすると頭に入って来ます。なんて頭のいい脚本なんだ…。(そういう映画ありますよね)

ですがこれ、起承転結の「転」でとんでもないどんでん返しがあり、私はとあるホラー(ミステリー?)映画を思い出しました。

なので私の中ではホラー映画に分類されると感じています。

シャーリーズ・セロンは太って役作りをしていますが、(それも評価された)太っているのに顔が美人なのでやっぱ天性のものなんだなあ、美人なんだなあと思いました。

 

主人公は3人目の子供を産んで、病的に育児に追われ(この辺は映像の見せ方も非常に上手いです)、旦那はその間なぜか、ベッドでビデオゲームをしています。ヘッドホンをして、いわゆる据え置き型のシューティングゲーム。

ここで主人公があまり文句を言わないのが逆に怖い。

すると突然、ベビーシッターが現れます。この人が、夜中限定のバイトで育児をめんどうみてくれて、時には掃除をし、時にはカップケーキをつくってくれたりする。このカップケーキが、アメリカのクオリティとしては商品レベルのハイクオリティ。

そのシッターがいることで、主人公はめきめきと調子が良くなっていくのですが、ある日「辞める」と言われ…。

さて、その理由は?そのシッターはいったい何者なのか?気になって目が離せません。

そのすぐ次のエピソードがどんでん返しで、そういうことか!と真実がわかるのですが…。

 

育児問題映画というカテゴリだとはっきり言えますが、問題は奥さんである主人公がほとんど文句を言わないところなんですよね。でやっと最後に、ひどい事故で旦那が気が付く。

いやそりゃーないっしょ。

あれ、私は死んだなって思ったし、普通は死ぬと思う。

しかしその事故でなにもかもが正常に戻るんだけど、それはないっしょ、って思った。

私が脚本書いたら、旦那がひとりで子供3人に囲まれて絶望しながら葬式してるシーンで締めますよw


音楽もライトだし、一応全員救われたよね?っていうエンディングでしたが、それが逆にホラー感マシマシでした。

ある意味笑ってしまう。 


育児ノイローゼによる、精神分裂はあると思いますし、私も自分の中に複数の人格や外部の人格(由来が外部)を飼っていて、「その人の面倒を見ることにして自分のケアをする」とか「その人に励まされて元気になったことにする」「別の人格に問いかけてその子の言うことを聞く」などということを繰り返していますが、それは、「自覚があるから」異常ではないと思っています。

でもまあ、突然歩きながらニヤニヤし始めるので、すれ違う人がすごい顔で見てる時は、ありますね。

2023年4月8日土曜日

ノック 終末の訪問者 観てきました

面白くないわけではないのですが、あまり強烈な面白さは感じませんでした。

理由はおそらく以下。

・訪問者の要求が理不尽・無茶苦茶すぎる。

中盤でエリックが「本当かも」と思い始めるが、正直その根拠が薄い。それに訪問者たちがやっている謎の儀式の理由がよくわからないので、ただただ残酷な連中という印象しかない。

彼らを味方と認識させるためのエピソードも甘いし、もうちょっと強めの根拠が欲しかった。

・ストーリーに枝葉や他の可能性が少なくて広がりがあまりない

確かに逃げ出そうとしたり、味方側が強力な武器を手に入れる「転」はあるものの、エピソードの積み上げとしては弱いかなと感じた。「話が進んでる感」が少なめかな…。ちょっとだるい。

過去のエピソードとつなげるところも、薄いですよね。ちょっと面白くなったかなと思ったらそうでもないみたいな。

・感情移入がしにくい

主人公のゲイカップルの表現もそんなに感情移入できないレベル、訪問者が語る自分の置かれたシチュエーションもいまいち伝わってこない。子供はうるさいだけだし、いったいどこに感情移入したらいいんだ。 

これなら「オールド」のほうがいいですね。

・オチが弱い、意外性がない

結局それなの?っていうオチ。もやって後味が悪く、この気持ちを抱えたまま、エリックが見たという素敵な未来を生きられるものだろうかと。

その辺もメッセージが不透明でした。

・宗教を、「神」をテーマにしているとして、それはこの表現・結末でいいのか?

昔キリスト教の聖書で羊を生贄にするシーンが気に入らないと言っている女性がいたのだが、それに近いものを感じた。

私の中では、キリスト教をはじめとした古くからの宗教は、人間を堕落から救い、良心を植え付け、治安のよいコミュニティを維持するための道徳の教科書みたいなものである。イスラム教は同信者の女性は圧倒的保護のもとに置かれている。そうでなければ、元来血の気が多い中東地域のイスラム教徒はレイプし放題になってしまう。

宗教を否定するなと言っているわけではないのだが、なぜ世界を救うのに犠牲が必要なのかが理解できなかった。

また、犠牲が必要な場合、多くのホラー映画は悪魔のいけにえの儀式に、祭壇に供物をささげよ…ってなるじゃないですか。

それを逆手にとって「善良な宗教でも犠牲が必要」としたのかもしれませんが、それもどうなの??と思いました。

そして、キリスト教を否定するのかと思いきや、美しい愛をもって犠牲をささげる覚悟をするシーン。いや、美しくなくない? 犠牲そんなに大事なの??


まあ日本人はどっちでもええか。ってなるのかなあ。

 

シャラマン監督は映画をつくる力はあるなあと思うんですが、他のホラー映画やサスペンスと比べるといまいち不可解というか、最初の1/3以降の面白さ(問題提起以降)がほぼない、というか、見届けるだけで、小さな進展はあっても面白い展開はなかったなと思いました。 

NOPEやRRRや、エブエブみたいなすさまじく個性的でおかしなことをやろう!という情熱は、感じませんでした。かというと、すっごい怖いというほどでもない気がする。怖さだとNOPEの、でっかいものが襲ってきて勝てそうにない感じとかのほうがやっぱりうまかったと思います。あとGジャンって吠える?んだよね。サウンドがよかった。

あとジョーダン・ピール監督って有無をいわさない力量と熱量で強引に突っ走るあの感じが好きですね。アトラクションみたいな感じで。

 

2023年4月2日日曜日

「コンペティション」観てきました

かわいいバンデラスが観たかっただけなんですけど、そういう意味ではかわいいバンデラスは堪能できました!特に前半はいちいちリアクションが細かくてカワイイ。

そして後半になるにつれ、ストレス倍増したバンデラスの演じる「フェリックス」がだんだん悪い奴になってくるのが、これまた、バンデラスの得意技でよかったですねぇ。悪い顔するんだなこれが。

映画「アンチャーテッド」は微妙だったが、あの悪役のバンデラスの、スペイン語がすごくセクシーでよかった。

この映画のキャラクターは3人だが、どいつもこいつも曲者。

ペネロペ・クルス演じる映画監督「ローラ」は奔放な感性で賞を勝ち取る気鋭の新星。

アントニオバンデラス演じる「フェリックス」はいわゆるトムクルーズのような、キラキラでキザな二枚目俳優。

オスカル・マルティネス演じる「イヴァン」は気難しく、芸術家気質な俳優で、生徒に演技論を説いたりするキャリアを丁寧に積み上げた感じの真面目な俳優だ。

この3人がぶつからないはずはなかった。

ただ、どいつが一番悪いかとかそういうのは正直なんとも言えない。どいつもこいつも問題ありだし、ちょっと空気読めよって思うこともある。

ローラが実は一番しっかりしてるんだけど(そりゃそうだ)、無駄に俳優を怒らせたり、そもそも取り返しのつかないことをしたりする点でどうかと思った。

フェリックスは仕返しをしちゃうし、怒りに任せてやばいこともうっかりやっちゃうタイプ。

イヴァンは普段は大人ぶってるけど、裏ではボロクソに文句言ってたりするから、脇が甘い。

中盤までは純粋なギャグもあって面白かったんだけど、終盤にかけては恐ろしい展開もあって、ちょっとホラー感のあるブラックユーモア映画だった。

印象に残ったのはローラのセリフ「芸術家で子供がいないのはアドバンテージよ。子供なんかいたら自由に創作できないし、保身に走ってしまうわ」っていうのはちょっと引っかかったけど自分からすると、擁護されている感じもした。

実は婚活を一応していた時マッチングした人を捨てまくった理由(おい)は、「束縛されたら嫌だなあ」という本音からだった。男に付け狙われるようになってからようやくそれが確信に変わった。私は子供に24時間体制で付き合うあの「育児」ってやつに耐えられるとは思えなかった。

私は自分が芸術家気質だとは思ってなかったんだけど、最近父親に避けられている感じ(笑)がするのでちょっとそっちにようやく傾いたなって思っている。というかですね、お前は芸術なんか向いてねぇよって言われたから押し殺しすぎたんだよね。私は芸術に接してないと死ぬと思いますw