2023年10月8日日曜日

グレタ・ガーウィグの映画を分析してみた

 「バービー」に衝撃を受け、彼女の映画をあらためていくつか観て、思ったことをまとめたいと思う。

彼女の映画はびっくりするほど、毎回同じようなテーマで進むうえ、主人公の性格がかなり似ている。

ざっくりまとめるとこんな感じ。

・彼氏より女友だちが好き

・レズビアンじゃないけれど、男性とのセックスを否定する(良くない、という表現が多い) 

・男性を完全に見下している。(笑)

・ティモシー・シャラメを悪人にしている。

・主人公の女性が男性を選ぶとことごとく失敗する。(若草物語だけは売上に忖度したとか言われている)

・母親との関係を重視(父はあまり重視されない)

・主人公の女性がひとりで生きることを強要される(もちろん本人の行動の結果だが)

グレタ・ガーウィグのいいところは、今までディズニープリンセスのほとんどが「Happily Ever After」だったのと対局にいるところだ。

つまり「結婚=しあわせ」を完全否定するスタイルを貫いている。若草物語だけが少し忖度しているが、プロポーズを断るシーンからもわかるように、彼女らは結婚に重きをおいていない。

最初若草物語のティモシー・シャラメがあまりにもひどかったため、すっかり嫌いになってしまったものの、「レディ・バード」を見て、「わざとだったのか」と確信した。彼女は世界有数のイケメンにことごとくクズ野郎を演じさせ、そしてなぜか大人気にしてしまう。

「バービー」は間違いなく今までの作品の集大成である。ビジュアルが華やかでテーマがわかりやすいため世界で大ヒット、特にアメリカではかなり肯定的に受け入れられている。だがあれは必ずしも幸せの物語ではなく、今まで挙げたような、「女の苦しみ」を詰め込んだ映画なのだ。

ざっくり各作品を分析してみた。

フランシス・ハ

中途半端な女性を軽やかに描いた話。ややギャグ寄り。男性は性欲解消のために付き合うが文句いいまくって、女友だちに愛を告白し、一緒のベッドに入る仲。

演じているのがグレタ本人なのでむしろこっちが自伝に見えなくもないが、内容は本人の人生の内容ではない。

ちょっとドンくさくて失敗する女性像が描かれる。バービーと同じく、「何者かになる必要はない」テーマがメインに語られる。

 

レディ・バード

18歳を節目に大人になっていく女性の物語だが、設定がグレタ本人とほぼ同じため、自伝的映画とされている。

男性と結構遊んでいるが、正直うまくいっていない。

母親との関係が主な内容だが、アメリカらしく、愛されていることはよく伝わってくる。なので、愛情表現があまりなかった自分の経験と重ねることはできなかった。気持ちは、わかる。

若干、キリスト教を肯定するような表現があるが、あっさりしているので悪くない。おそらく、散々反抗した挙句、自分が神(母)に守られていることを実感し、気持ちを改めた、程度の話であると思われる。

この映画でも「何者かになりたい」娘に対し、「金(功績)が幸福なのではない」旨が母から語られる。 

数々の賞を受けているが、ちょっと小奇麗にしすぎな感じもしないでもないので私はあんまり好きではない。

「母」の存在は他の映画にも出てくるのだが、唯一問題が起きやすいのがこの映画だ。だけど、私が母と経験した確執に比べたら出力30%くらいのほのぼのとした問題である。 アメリカ人は直接的に気持ちをぶつけあうので、見た目は派手だが、内部に渦巻く憎悪は私に比べたら10%もないと思う。


ストーリー・オブ・マイ・ライフ

最初に観たのがこれ。姉妹が楽しいのはわかるがちょっとうるさすぎるだろと思っていたが、グレタ監督の作品をいくつか観たら納得いった。彼女は同性とキャッキャするのが好きなのだ。

また、ティモシーシャラメはなんとかならんのかくらいうざかったがレディ・バードを見たら納得いった。バービーもそうだけど、クズ男性を演じてくれるイケメンを、グレタ監督は熱望しているのだ(笑)

ジョーが小説家なんて目指すがために結婚もできず孤独になっていく姿は、自分と重なるし共感できるところが多いにある。恋愛は本当にうざい。他の作品を観てからだとそれがくっきりとわかる内容だ。

 

バービー

今までの集大成である。

バービーで強烈なのは「低知能のバカで純粋な男たち」の描き方だ。あまりにもリアルで背筋が凍った。だが、グレタ監督がいつも小馬鹿にしている男たちを、真剣に、本気で、映像化してしまった問題作がこちらである。なおメイキングでグレタ監督は何度も爆笑しているww

レディ・バードを観ても思ったけど、グレタ監督は相当な問題児(問題女子)である。

日本で男性をバカにすると、まるで当然かのように、「男性の立場はどうなる」と人権みたいに尊厳を要求してくる上、バカにされ続けると逆上して対象を殺害し、頭部切断の上、自首するとかわけのわからない猟奇的事件が起きてしまう。だから私はこの映画を観たときにとても怖いなと思ったのだ。

「ケン」は武器を持たないため、せいぜいビーチバレーボールを投げたり、なんか適当にパンチ繰り出しているだけだったが、現実には肉切り包丁が存在する。

もしグレタ監督にリアリティがないとしたら、男性の凶暴さが描かれていないところである。

とはいえ、私でも、暴力映画をつくってくれと言われたら間違いなく女性を主人公にし、男どもを抹殺するだろうし、もしグレタ監督がそっち方面に目覚めたら同じことになってしまうだろう。リュックベッソンがやってるから需要ない気がするんだけどね。

グレタ監督は「バービー」で暴力のかわりに、女性が男性を本気でとっちめるなら「馬鹿で短絡的な男性特有の思考回路」を利用して勝手に滅亡するように仕向けたらいい、といっているのだが

それがものすごくリアリティがあって、私は怖いなあ、と思いつつ、グレタ監督にあこがれるのであった。

絶対男嫌いだろ、と思う表現も多いのだが、彼女は男性に救いのある内容ももちろん描いている。

レディ・バードでは同性愛者の男性をなぐさめ、バービーでは女性に認められないと自分の存在意義を見失ってしまうケンをなぐさめる。

しかし、これもグレタ監督のひとつの罠であり、彼女は世界の支配者に値する人間かもしれない。だが、彼女は正しい。もし、女性が世界を支配してうまくいくと仮定するならば、そのトップにはグレタ・ガーウィグ監督がいるかもしれない。

 

 

 

 

 

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