2022年5月22日日曜日

「流浪の月」観てきました

とても良い映画でした、ポン・ジュノ監督が嫉妬した!とおっしゃってたそうですが、わかる気がします!登場人物の心理状態が結構グロくて、みんなそれぞれに泣いたりわめいたり、傷つけあったりするところがポンジュノ監督好きそう~!

画面も暗いシーンが多いとも言えますが、主人公が大切にしている空間「誰もが優しくて誰も傷つかない空間」ではサンキャッチャーがきらめき、ウインドチャイムが鳴り、カーテンがはためくなど、日本映画にしては美しいものが見れたなと思います。

先に映像の話をすれば、私は松坂くんが演じる「文」が水の中に入っていって、仰向けになって月を眺めるシーンがとても美しいと思いました。青と黒だけの動画が撮れるもんなんだ!と驚きながら観ていました。アンティーク店とその上にあるカフェなどの舞台も完璧で、特に松坂くんがカフェのコーヒーを作っている場面はすべてが美しいです。 

そもそもこの映画を観ようと決めたのは、やはり予告編で、松坂くんが全力で陰キャをやるのに観ない理由が無い!と思ったのと、相手役が広瀬すずちゃんだった時点でもう完璧だなと思いました。

広瀬すずちゃんも少し病んだ発言が多くて前から好きなのですが、ハマるきっかけになったのは「怪盗探偵山猫」っていう謎のドラマでした。このドラマですずちゃんは超がつくほどのけだるいツンデレ美少女をやっていたのですが、ハキハキしたキャラではなくやはりどっか病んでいていい感じでした。 

あらすじは公開されているレベルで書くと、主人公の佐伯文(松坂桃李)が更紗(のちの広瀬すず)が雨に濡れているのを見て自宅に招いたところ、居座ってしまい、誘拐として逮捕されてしまうことが発端になっています。舞台はその15年後。更紗には婚約者がいますが、ひょんなことから文を見つけてしまい、そこから平和だったはずの日常が音を立てて崩れていきます。

ここで問題なのは、 更紗が「誘拐された」時、更紗は家に帰りたがらなかったこと。そして文をとても気に入り、文のそばにいたがったことなのです。

このあらすじも私はぐっと引き寄せられるものがありました。
世間的に悪とみなされるものが本当に悪なのか?という疑問ですね。

法律上では誘拐犯とされ、世間的にはロリコン犯罪者とされる文。

ですが、このキャラクターがとてもいい。

文自身も大きな傷の持ち主であるからか、とても優しく、ロリコンと呼ばれていますが私に言わせれば、父性のかたまりであり、相手をいたわること、同情すること、味方になり意志を尊重することなど、 子育てに必要なものはすべて備わっているような気がします。彼のそばにいる女性や女児はみんな安心して居座りたがるのです。

本当の優しさというのは相手が嫌がることをしないことです。

更紗の婚約相手は支配欲が強く、何かを体を求めてきますが、それはどうも愛情からではないように思えます。

BANANA FISHという漫画で、アッシュがエイジを信頼する理由は「見返りを求めないから」だと言いますが、それに似たようなものが、文にはありました。

とある理由から文は自分自身の存在に苦しみ自信がないため、普段は静かすぎるくらい静かで、表情もあまりなく、淡々と家事やコーヒーショップの仕事をこなしますが、それが実に人として美しいなあと思いました。何しろ部屋がちらかってないしシャツに丁寧にアイロンをかけるし、根は本当にまじめなんだと思います。

更紗の婚約相手が実に対照的で、常に何かしら相手からリアクションを求める、しゃべりすぎる、いちいち激昂するなど非常にうざく感じます。

文の信念は、誘拐犯として逮捕される直前に言うあのセリフであり、その時の手のぬくもりと握られた強さを、更紗は信じてなんとか生きてこれた。それが私は一番深く感動しました。

更紗は周りにガンガン振り回され、現在も婚約者にひどく束縛されている。ひとりでは生きていけないから仕方がないという。

まるで現代の日本を象徴しているかのような発言です。

私は、この映画は女性向けだろうなと感じました。男性に子供の時からいいように振り回されてきて、ほとほと疲れた人たちへ、文の言葉は染み渡ると思います。

あなたの人生は、あなたのものだと。


そして、松坂桃李くんはいろんな映画に出てすごいなって思いますが、今回もその演技力がすごいなって本当に思いました、特に、最後らへんでついにキレるところとか、ぶるぶる震えてるところとか、ひとりであそこまで感情を高めるのはすごいことだと思います。文は普段は本当におとなしいので、ギャップが凄まじかったです。あと役作りだと思うけどものすごい痩せてて心配になるくらいでした。

2022年はイケメン陰キャが豊作すぎて私はフィーバー状態でございます……ありがとう!!!

 

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